【月刊全労連連載・国際のページ】組織拡大の前向きな動きが数字に 米国の労働組合組織率上昇へ
米国のトランプ政権がイスラエルと共に行った国際法違反のイラン攻撃。正月のベネズエラ攻撃を始め、外交でも内政でも自らの政策の行き詰まりを打開するために、無謀な政策に打って出ています。世界の平和と民主主義、経済を混乱に陥れ、第二次世界大戦後の国際秩序に挑戦し、自らと関係者の私腹をこやすトランプ大統領には世界中で怒りと失望が広がっています。
米国内でも国民生活、経済そっちのけで不法移民摘発を口実に武装した連邦政府職員(ICE= 移民関税執行局)の職員を、政敵である民主党が知事や市長の自治体に送り込みわざと混乱を引き起こしています。昨年から子どもを含めて逮捕・拘束、親との分離、出身国でない国への強制送還など、およそ民主主義国ではあり得ない暴力を政権自らが行使し、抗議や監視を続ける人を含め、昨年から犠牲者も増えました。トランプ政権の攻撃のもとでも、2025年には労働組合の組織率が長年の微減傾向から上昇に転じています。攻撃されても労働組合でたたかう人が確実に増えている証拠でもあります。
全労連は、3 月16日に元全米港湾労組組織局長のピーター・オルニーさんを囲んで米国の労働運動、反トランプ運動の現在について学びました。オルニーさんは退職後も労働者教育やAmazon の組織化に取り組んでいます。
4 つの分野での運動
オルニーさんはトランプのファシズムに対抗する運動は4 つの分野で進んでいると報告しました。大衆的抵抗行動、裁判闘争、選挙闘争、文化面でのたたかいの4 つです。
大衆的行動では、米国の各地で反ICE の運動が強まり、特にミネソタ州でICE の地域での監視活動に加わっていた、レネー・グッドさん、アレックス・プレッティさんがICE職員によって殺害されたことが、さらに抗議行動を加速させていると言います。令状なしに市民を暴力的に逮捕し、職場や自宅、学校などから一方的に連れ去る異常な行動に怒りが広がっています。地域社会で、警笛を使ってICE の存在を知らせ、地域の移民を守ろうとする動きが急速に広がりました。短く3 回笛を吹くことで近くにICE 職員がいること、長く吹くことで誰かが拘束されていることを周囲に知らせる「警笛アクション」が今全米に広がっています。
3 月28日には、昨年の6 月、10月に続いてNO KINGS(王はいらない)という大衆行動が全米で呼び掛けられています。今回は1000万人に迫る参加者が、全米2500の都市で立ち上がる規模になる可能性があり、大都市部だけでなく小都市でも至る所で行動が計画されているのが特徴です。そしてメーデーでも大規模な行動が労働組合を中心に準備が進められています。
法廷、選挙闘争
裁判闘争では、連邦最高裁判所がいわゆるトランプ関税を憲法違反としたことが大きな成果です。そして連邦政府の社会的なプログラムを一方的に廃止したこと、職員を解雇したことなどで裁判を起こされていますが、下級審でもトランプ敗訴が続いています。連邦最高裁をはじめ、多くがトランプ政権時に任命された保守派の判事が占めているのに、トランプのあまりの無法な行動に裁判所がNO を突きつけています。
選挙闘争では、11月に連邦議会の選挙を含む多くの地方選挙が集中する「中間選挙」を前に、カリフォルニア州で選挙区区割りの見直しで下院議員の議席が5 増となり民主党議員が増える見込みになっており、またニュージャージー州、バージニア州の知事選挙で、トランプが支持している候補が大敗するなど、トランプ人気は確実に低下しています。11月の中間選挙で、現在上下両院で多数を占める共和党が過半数を失う可能性が高くなっており、今では中間選挙を無効、中止することもあると言い出したトランプ大統領。中間選挙を確実に実行させるたたかいがこれから求められるといいます。
ニューヨークでマムダニ新市長誕生
1 月に就任してニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長が選挙戦を制したことが大きな希望です。マムダニ氏は自ら「民主的社会主義者」と名乗り、米民主的社会主義者同盟(DSA)のメンバーであることも公言しています。イスラム教徒の彼が、世界で2 番目に大きいユダヤ人コミュニティーであるニューヨークで選挙戦を勝ち抜いたことにも大きな意味があります。
マムダニ氏は最低賃金時給30ドル、公共バスの無料化、保育料の無料化と家賃の引き上げ凍結など、市民や労働者のための非常に明快でストレートな要求を公約して支持を集めました。選挙期間中は4 万5000人のボランティアが個別訪問や電話がけに参加しました。一年前には無名だったマムダニ氏がここまで支持を広げた背景には、明確な公約、SNS での動画発信、演説の巧みさなど、候補者の能力とカリスマ性も大きな要因ですが、市民とどれだけ直接対話をしたかが勝利の要因といえます。市長就任後、公約を実現させるためには市議会や市庁舎内の抵抗勢力とのつばぜり合いが続きます。要求実現には選挙戦で力を発揮した運動、ボランティアの力が不可欠です。
ニューヨークでは顕著だと言えますがDSA の力の発揮も大きいです。DSA は現在10万人の会員が登録し、ニューヨークやロスアンゼルスなど大都市部の他にも全国的に会員が増えています。
文化分野では、最近芸能人やスポーツ選手が積極的に反トランプの考えを発言。大リーグワールドシリーズチャンピオンのドジャースが、ホワイトハウスへの招待に応じないよう大谷選手に伝えてほしいと思います。
イラン戦争反対の運動
イスラエルと無法なイラン攻撃を始めたトランプ政権への支持率は38%しかありません。戦争が始まれば大統領の支持率は上がります、トランプの場合はさらに下がっています。急な戦争であること、すぐに終わるのではと国民が考えていること、イラン戦争以外にも国内外で労働者に対してさまざまな攻撃を加えており国民の関心事が分散していることなど、困難な点はあります。
反トランプで一大運動へ
3 月28日には2025年から続く大規模な抗議行動NO KINGS(王はいらない)が予定されています。特に即時停戦とトランプの攻撃への対抗の行動として非常に重要です。さらにメーデーに向けて、ミネソタで起こったようなゼネストに近い行動の組織化が労働組合や社会運動の中で議論され、運動が進んでいます。
テスラの不買運動、国防総省の仕事を引き受け戦争に加担しているチャットGPT ボイコット運動をはじめ様々な課題でたたかう運動と、意見の違いを乗り越えてトランプのファシズムに対抗するために広範な統一運動を組織していくことが求められます。
ソーシャルメディアは運動を広げる重要なツールになりますが、対面での深い対話・会話と、コミットメントを引き出すことが運動の成功につながります。オルニーさんは最後に、6 月のレイバーノーツ大会でまた交流しましょうと呼びかけました。
(全労連事務局次長 布施恵輔(全労連国際委員会))
(月刊全労連351号 2026年5月発行)
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