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【月刊全労連連載・国際のページ】組織拡大の前向きな動きが数字に 米国の労働組合組織率上昇へ

2026/04/15
国際連帯
月刊全労連

2025年のトランプ大統領就任以来、連邦職員組合を中心に労働組合の権利や組織への攻撃が続いてきました。米国史上最も労働組合に敵対的な大統領とのたたかいは、各分野で続いています。それ以前、2018年以降の教員スト、アマゾン、スターバックスなどの労働組合結成、医療や自治体でのストライキ、全米自動車労組の三大自動車会社でのストライキなど、米国の労働運動は様々な前進を作り出してきました。このコーナーでも高揚する米国の労働運動として紹介してきました。
では労働組合の組織率で見るとどうでしょうか? 米国の労働組合は日本と同様1990年代以降、少しずつ組織率で後退し、一部例外はあるものの組合員数でも減少傾向を続けてきました。

組織率でわずかに反転

毎年1 月末に発表される連邦政府労働省統計局の発表によれば、2025年の全米の労働組合員数は1650万人で、一年前との比較で46万3000人組合員を拡大しています。この増加数は16年ぶりの高水準です。組織率では11.2%となり、2024年の11.1%からわずかではありますが上昇しました。
長く続いてきた減少傾向からの転換という意味では大きな意味があり、労働者が労働条件や生活条件の改善のために労働組合を必要としていることを示しています。特にトランプ政権による労働者いじめの政策が恐怖や不安、先行き不透明感や困難さを生んでいること、労働者と労働組合に関する法律の枠組みが必ずしも労働者に有利なものではないことを考えれば、貴重な前進です。

組織率統計を詳しく見ると

組織率11.2%、16年ぶりの46万3000人の組合員増加の詳細を紹介します。組織率では11.2%は2023年の水準に回復したということですが、組合員数で見ると2009年の水準まで回復しています。実はトランプ政権と議会の対立による連邦政府閉鎖によって、統計の一部に欠けている月があるのですが、誤差の範囲と推測されています。
11.2%は全体の組織率ですが、分野によって大きな差があります。公務分野では36.4% の組織率に対し、民間部門では6.8%にとどまっています。ただし2025年は公務も民間もわずかに組織率を上昇させています。特に公務分野では組織率が35.7% から36.4% に0.7% 上昇。組合員数も23万6000人増加しています。
特に組織を伸ばしたのは、連邦政府職員の分野です。トランプ政権が連邦職員と労働組合を攻撃。一方的に協約を破棄し、組合結成を禁じる大統領令を出すなどの攻撃をしてきましたが、むしろより多くの連邦職員が労働組合に加入し団体交渉で自らの権利や労働条件を守ろうとしたのです。連邦政府職員に限った組織率では、29.9% から31.1% に上がりました。これは2011年以来の組合員数拡大となります。連邦職員全体が減らされている中での4 万人近い拡大は大きな成果です。州・自治体公務労働者の組合員は19万6000人増加となり、組織率は37.1% から37.6%に上昇しました。
民間部門では組合員数増加が22万7000人で、組織率も6.7% から6.8%になりました。医療、ケア、小売、教育サービス分野の組合員拡大が多く、従来ブルーカラーで組合員が多いと考えられてきた鉱山、製造業、運輸、電気ガス水道などの分野で組合員減少が見られます。しかし建設は例外で、ブルーカラー労働者の労働組合で元々一定の組織率があると分類されますが、組織を拡大させています。
新規に加入した労働組合員の人種分布を見ると、32%の組合員が白人で、68%が非白人の有色人種となっていますが、この割合には大きな変化はありません。ジェンダー分布では、その差は1 %未満とされますが、組織率でみると男性の組織率が11.3% から11.6% に上昇し、女性がそれより低い10.8% から10.9%の上昇にとどまりました。

人種や年齢、州による違い

組合員の主要な人種、民族の構成を見ると、アフリカ系アメリカ人(黒人)の組織率は12.7% と平均を上回り、白人の11.0%、アジア系の10.4%、ヒスパニック系の9.9% よりも高くなっています。ただ組合員の増加で見ると、ヒスパニック系とアジア系の組織化が進んでいることから、黒人の組織率が減少傾向にあります。特に黒人女性の雇用が減少していることも原因と考えられます。
青年の労組加入が増えていることも特徴です。45歳未満で見ると、組合員の増加が42万8000人で、45歳以上が3 万5000人なのと対照的です。
米国の労働組合組織率には州ごとに大きな格差があることも特徴です。ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカットなどの北東部、ハワイ、ワシントン、アラスカ、カリフォルニア、オレゴンなどの西部太平洋側の州の組織率は高くなっています。対照的に、ノース/サウスカロライナ、アーカンソー、ルイジアナ、ジョージア、テキサス州では組織率が低くなっています。しかし経済政策研究所の分析によれば、2025年に新たに労働組合に加入した人の半分近くが南部の州の労働者だとされます。

たたかうことで組合員拡大に

前述のようにトランプ大統領は就任直後から連邦政府職員の大規模なリストラと労働組合への攻撃を開始しました。3 月には大統領令で、連邦政府職員組合の既存の労働協約を破棄し、今後の交渉も行わないと各機関に命令します。これによって退役軍人病院の看護師から、政府の汚職捜査官まで50万人近い連邦職員から労働協約を奪ったのです。
これに対して連邦職員はかつてない規模で労働組合に加入し、たたかうことを選択します。雇用主である大統領が労働協約を無視し、組合の交渉力を事実上無効化する攻撃を続け、統計上は労働組合員とカウントされない労働者も増えています。仮にそれらが元のようにカウントされ、リストラで雇用を失った職員の分を加えれば、組合員の人数はさらに大きくなると推測されます。
民間部門で8 万4000人組織を増やしている建設の組合は、建設ブームで業界全体の労働者が増え、労働組合の協約の適用範囲が広がったことが増加の原因です。政府のプロジェクトなどが打ち切られれば、失業すると同時に組合員資格を失う場合が多いのですが、建設の労働組合は協約を結んでいない現場での組織化を進めています。医療分野は7 万8000人の組織拡大がされていますが、雇用人数そのものが他産業と比較しても急速に成長・拡大しており、組織率には変化がありません。
米国で新規に労働組合を結成するには全国労働関係委員会(NLRB)の管理のもとで組合認証選挙を行うケースが多いです。この間の労働運動の高揚によって2023年と24年の認証選挙の数は増加してきましたが、25年は42% 減少し8 万2625人しか選挙の対象になりませんでした。
労組攻撃のなか、組織率で前進したことは大きな成果です。最近の世論調査では、未組織の労働者の43%が認証選挙があれば組合結成を支持すると回答しています。つまり5000万人の未組織労働者が労働組合を待っていることになります。対話と学びあいで組織の強化と組合への加入を目指す私たちも、学ぶことが多くあると思います。

(全労連事務局次長 布施恵輔(全労連国際委員会))

(月刊全労連350号 2026年4月発行) 

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