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【月刊全労連連載・国際のページ】急速に崩壊する米国の外交と民主主義に労働者はどう立ち向かうか

2026/03/13
国際連帯
月刊全労連

1 月3 日、現地時間の深夜に米国がベネズエラの首都カラカス周辺を軍事侵攻し、ニコラス・マドゥーロ大統領と妻を拉致して米国に移送しました。大統領の居住施設などでの軍事攻撃で、80人以上の死者を出し、新型兵器の使用も疑われている今回の攻撃は自衛権の行使ではなく、国際法上も国連憲章上も全く容認できるものではありません。
全労連は1 月5 日付で軍事攻撃を非難し、日本政府にトランプ政権に厳しく抗議するよう求める事務局長談話を発行しています。世界の労働組合の国際組織、各国のナショナルセンターも米国の無法を厳しく批判する声明を出しています。
国際法、国連憲章の原則からしておよそ認め難い力による現状変更の「お手本」のような軍事攻撃ですが、高市首相は抗議の談話も出していません。自らインド太平洋地域を念頭に、力による現状変更は認めないと繰り返し言明してきたはずなのに、米国トランプ政権のやることには口を出せないとすれば、明らかにダブルスタンダードです。仮に日本周辺で力による現状変更があったとしてもそれを批判する論拠を失います。ここまで米国追随なのかと強く思わされる事態です。
その後もトランプ政権はデンマークの自治領であるグリーンランドの領有をデンマークに公然と要求し、「交渉」を持ちかけるだけでなく軍事攻撃まで示唆する横暴ぶりです。北大西洋条約機構(NATO)で軍事同盟を結ぶ欧州各国からも批判が出ていますが、トランプ政権はデンマークを含む8 ヵ国に追加関税を課すと脅すなど、その横暴、覇権主義的態度と国際法無視の姿勢は明らかです。

法の支配、民主主義を破壊するトランプ

米メディアのインタビューに、「国際法は自分を止められない。止めることができるのは自分の道徳心だけだ」と述べたトランプ大統領。ダボスで行われた世界経済フォーラムでグリーンランドの領有については軍事攻撃の選択肢を弱める発言をしました。しかし元々同盟国であった欧州との亀裂は覆い隠せないほど深刻になっています。
それも米国とトランプ政権が一方的に既存の国際秩序を破り、否定し、自らの思う通りになれと要求する態度は反発しか生まないのは当然です。米国がこれまでも南米やアジア、中東などに介入し、覇権主義的な態度で自らに従う政権を育て、反米的な政権を転覆させることで米国の資本、多国籍大企業の利益に適うような政策を実行してきたことは事実です。それを支えてきたのが自由貿易体制であり、新自由主義的な経済・社会政策だったわけですが、そのルールすらも踏み越えるのですから、もう付き合いきれないとなるのは当然と言えるでしょう。
世界経済フォーラムで演説したカナダのカーニー首相は、国際秩序の崩壊はもはや現実だと米国を強く非難し、大国によらない中堅国のイニシアチブを提起し注目されています。年初からベネズエラ攻撃、グリーンランド領有への露骨な態度、イランへの攻撃示唆など世界で紛争と戦争を巻き起こしているトランプ政権ですが、国内でも重大な危機を引き起こしています。

ICE OUT=ICE は出ていけ

この欄でも紹介してきましたが、トランプ政権は「不法移民の排除」を目的に連邦政府の移民関税執行局(ICE)を使って、各地で移民の摘発を進めてきました。職場や学校などをいきなり襲撃し、疑わしいとした人を根こそぎ暴力的に連れ去って収監、時には強制送還するなど当初から大きな問題となっていました。このICE のやり方には反対運動が強まり、労働組合も組合員と職場と地域を守るためも奮闘してきたことは紹介してきました。
トランプ大統領は民主党が知事や市長を務める地域に集中的にICEを派遣しています。中でも昨年末以来のミネソタ州の事態は全米に大きな衝撃を与えました。1 月7 日、ミネアポリスで米国人女性レネー・グッドさんがICE の職員に撃たれて死亡。グッド氏は当時、子どもを学校に送り届けたのち、ICE の活動を監視する活動に加わっていました。さらに24日、米国境警備当局の職員ともみ合いになった米国人男性アレックス・プレティさんが射殺されました。
発砲直前の様子をとらえた動画では、当局者の1 人が別の女性を押し倒すと、プレティ氏はその人と当局者の間に立ちはだかります。すると当局者は、地面に倒れた女性を助けようとしたプレティ氏の顔に催涙スプレーを噴射。複数の当局者が加わり、プレティ氏を地面に押さえつけ発砲しその場で射殺したのです。
2 人は白人で市民権を持っている米国人でした。この他にも犠牲者が9 人に上るという推計もあります。移民の取り締まりは口実に過ぎない、自らのやり方には歯向かうものには銃を向けるトランプ政権のやり方に急速に反発が広がりました。

労働組合が参加し大規模ストに

ミネソタ州では1 月23日に大規模な抗議行動が呼びかけられました。ミネアポリスは2020年に黒人男性のジョージ・フロイドさんが警察官に頸部を圧迫され路上で殺害され、その後ブラック・ライブズ・マターと呼ばれる人種差別反対運動が急速に広がった街です。移民や地域団体の他にも労働組合がこの行動には参加しています。
1 月23日、「ICE をミネソタから追い出せ:真実と自由の日」と題した抗議行動で、5 万人以上がミネアポリス中心部を行進しました。マイナス20度以上の極寒に耐え、参加者の眼鏡は曇り、霜が薄い膜となって張り付きました。ICE とその数千人の覆面捜査官が、戦争用兵器を携えてミネソタから撤退することを要求。さらに、合法的に連邦政府職員の行動を監視していたレネー・グッドさんを殺害した捜査官の起訴と、議会によるICE 追加資金の拒否も要求しました。
最初の主要イベントは午前10時頃、聖職者と地域団体が主催したミネアポリス・セントポール国際空港での抗議行動で始まりました。100人の聖職者が道路上で歌い、ひざまずいて市民的不服従の行為を行い、ICE に拉致された移民たちのために祈りを捧げました。拉致されたUNITE HERE 地方支部17のメンバーたちの顔と名前が特大ポスターに掲げられ、さらに約1000人の抗議者がこの行動に加わリました。
最大の集会は午後に行われ、労働者と地域団体がダウンタウンを行進し、ターゲット・センター・スポーツアリーナで集会を開きました。この集会には国際サービス従業員組合(SEIU)、全米教職員連盟(AFT)、通信労働者組合(CWA)の会長らが登壇し、2 万席のほぼ全てが埋まったと言います。
多くの小規模店舗は休業し、企業も休暇を許可するなど、多くの労働組合が積極的に抗議への参加を組織しました。しかし前述のようにこの行動の翌日の24日に連邦政府職員連合(AFGE)の組合員であったプレティさんが殺害されます。今トランプ政権の無法への抗議は全米に広がり、メーデーに向けて大規模な行動が連続して組織されようとしています。
米国の民主政治の崩壊の速さに驚かされますが、運動の力の強さにも驚かされます。連帯して運動を進めたいと思います。

(全労連事務局次長 布施恵輔(全労連国際委員会))

(月刊全労連349号 2026年3月発行) 

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