全国労働組合総連合(全労連)

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最低生計費試算調査の最新結果を記者発表  全国どこでも時給1900円は必要

2026/07/10

全労連・国民春闘共闘と静岡県立大学短期大学部の中澤秀一准教授は7月10日、この間、全国各地で実施してきた最低生計費試算調査の新たな結果(アップデート)を発表する記者会見をおこない、健康で文化的な生活をするためには、東京などの大都市と地方でほとんど差はなく、どこでも1900円は必要との結果を発表しました。
会見には最低賃金がもっとも低い宮崎県から、スシローでアルバイトで働く首都圏青年ユニオン回転寿司ユニオン委員長の長友祐士さんと、25年改定で発効日が26年3月1日まで先送りされた群馬県から、群馬県労会議事務局長の小野里隆さんも出席しました。

最賃平均1121円ではとても足りない

中澤准教授は「2022年以降、食費や水光熱をはじめとした物価上昇が激しく、2025年以前に調査を実施した地方の結果をアップデート行った。宮崎、栃木、群馬は調査を今年実施した結果。お盆やお正月、祝日も休める働き方として月150時間を基準にすると、どこでも1800円は超えている」と報告。現行の地域別最低賃金と比較して「加重平均1121円ではとても足りない。政権が掲げる1500円はすぐに達成しなければならず、労働者が健康で文化的な生活をするためには1900円、さらには2000円という水準をめざさなければならない」と提起しました。また、地方から大都市への人口流出にも着目し、「最低賃金の高い地方ほど若年者の流入が多く、低い地方ほど流出している。少子化や地方経済の問題を変える鍵は最低賃金にある」と述べました。

小野里さんは調査を実施するにあたって「一人暮らしをする若者が少なく調査は難航した。そのことからも、いまの賃金水準ではが若者が自立することが難しい状況は明らか」と報告しました。昨年度の発効日先送りによって「引き上げ額は78円だったが、実際には中央の目安額63円を18円下回る45円しかない。年間で5万円と大きなマイナス」と怒りを込めました。「群馬の調査結果である時給1851円は最低賃金1063円の1.7倍。それだけ低く抑えられている。東京や他の地方と結果を比較しても差はなく、最低賃金を全国一律にする必要性を実感した。今年の審議会にこの結果を提出し、全国一律の実現と大幅な引き上げ、10月発効を訴える」と述べました。

長友さんはスシローのキッチンやホールでの接客、社員不在時には時間帯責任者も担っています。時給は1105円で月160~170時間働きますが、賃金から税金や社会保障が引かれると手にできるのは13万円程度。そこから家賃、水光熱費、食費などを引くと自由に使えるお金はわずかです。「公共交通が少なく、電車は1時間に1本あればいいぐらい。車がなければ仕事にも買い物にもいけず、車は生活必需品。車はガソリン代、毎月の保険料、貯蓄を車検の積立に回すなど大きな負担がある。家賃も上昇しており名古屋、埼玉とほぼ変わらない。ギリギリの生活」と述べ、地方で暮らすことは決して安くないことを訴えました。最低賃金の改定にむけては「昨年、宮崎の審議会にお寿司の値段を都会と宮崎で調べて提出した。差は10~30円で最低賃金のような差はなかった。スシローは全国展開しており業務内容は地方でも都会でも同じ。しかし基本給は違っているという問題がある。それを根本から解決するのが全国一律にすることだと強く求めたい」と訴えました。

【調査結果の総括表】

【調査結果の概要】

もう後ろ倒しにはできない最低賃金1500円

―最低生計費試算調査の結果から見えてくること―

〇近年、最低賃金はすべての都道府県で1,000円を超え、全国加重平均額は1,121円となった。しかし、長期化する物価高騰を踏まえれば、依然として十分な水準とは到底いえない。石破前政権下で閣議決定された「2020年代のうちに全国平均1,500円」の目標は、期限を示した点では一定の意義があった。一方、高市政権はこの目標を「2030年代前半まで」と大幅に先送りしようとしている。景気対策、物価高対策を求める国民の声を無視してまで目標を後退させることが果たして正当化できるのか。全国労働組合総連合(全労連)とその地域組織が2015年より取り組んできた最低生計費試算調査の結果からみても、目標の後退は容認できない。

○全労連とその地域組織は、最低生計費試算調査に取り組んできた。現在では30以上の都道府県での調査の実施に至っている。本調査は調査手法として生活に必要な費用を一つひとつ丁寧に積み上げる「マーケット・バスケット方式」を採用している。なお、1960年代にマーケット・バスケット方式は、生活保護基準の算定方式として採用されていた。

○具体的には、主に各単産の労働者を対象に二つのアンケート調査を実施し、積み上げの指標としている。「生活実態調査」では、昼食の摂り方、外食や飲み会の費用、日常の買い物先、日帰り行楽や1泊以上の旅行の回数や費用、結婚式・葬式や忘新年会・歓送迎会などの交際費、自動車・バイクの必要性などを尋ねている。「持ち物財調査」では、家電・家具・寝具・日用雑貨・被服・履物など、ふだん使いしている計300以上の品目をリストアップして、これらの所有の有無および数量を尋ねている。さらに、対象の市で「価格調査」を実施し、所有が認められた品目の最低価格、標準価格などを確認した。これらの結果をもとに、政府の統計資料なども利用しながら、あるべき普通の生活に必要な費用(=最低生計費)を科学的に算定した。

○あるべき普通の生活では、けっして生命維持に必要な衣食住だけではなく、栄養のバランスや快適な住環境などの「健康」要素や、人間の尊厳が保たれ、その人にとって生きがいとなるような「文化的」要素も想定している。

〇本調査では、これまでにのべ6万人以上のデータを集めている。そのうち、10~30代で一人暮らしをしている若者のデータは約5300人(これから結果公表分を合わせれば約6000人)分である。

○2022年以降の物価高は食費や水道光熱費などでとくに顕著で、われわれの生活に大きな影響を及ぼしている。生計費の変動が大きいため、2025、2026年に調査を実施あるいは結果のアップデートを行った地域をクローズアップする。

○宮崎県で若者が普通に一人で生活するためには、女性=月額285,871円、男性=月額284,182円(ともに税・社会保険料込み)が必要である。これは年額に換算すると約340万円となる。

○群馬県で若者が普通に一人で生活するためには、女性=月額276,294円、男性=月額277,596円(ともに税・社会保険料込み)が必要である。これは年額に換算すると約330万円となる。

○栃木県で若者が普通に一人で生活するためには、女性=月額285,095円、男性=月額283,784円(ともに税・社会保険料込み)が必要である。これは年額に換算すると約340万円となる。

○東京都北区で若者が普通に一人で生活するためには、女性=月額278,820円、男性=月額288,664円(ともに税・社会保険料込み)が必要である。これは年額に換算すると約340万円となる。

○最低生計費試算で想定した「普通の生活」とは、以下のような内容である。

・冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、掃除機などは、区市内の量販店で最低価格帯でそろえる。

・1か月の食費は、女性=約42,000~50,000円、男性=約50,000~63,000円。昼食はコンビニなどでお弁当やパンを購入する日と弁当持参の日が混合している。月に2回、同僚や友人と飲み会・会食行っている(1回当たりの費用=4,000円)。

・1~2か月に1回は日帰り行楽に行くほか、月に2回、恋人や友人たちと郊外のショッピングモールに行って、映画・ショッピングを楽しむ(1回2,000円で月に4,000円)。1泊以上の旅行は年に2~3回で、その費用は年間で6~10万円ほど。サブスクリプションに加入して月額2,000円。

○都市部の東京都は家賃が58,000円で突出しているものの、交通費は約6000円に抑えられている。いっぽう、地方部の宮崎県、栃木県、群馬県では家賃は40,000円前後であるが、自家用車を所有するために自動車関係費が約30,000~32,000円となっている。つまり、住居費と交通費がトレードオフの関係にある。そして、他の支出項目はあまり変わらないため、トータルとしての最低生計費は全国どこでもほとんど同水準にあるといってよい。

試算の月額=約28万円を、賃金収入で得ようとすると、時給換算で約1,600円(中央最低賃金審議会で用いる労働時間=月173.8時間で除した場合)が必要になる。ワーク・ライフ・バランスに配慮した労働時間で換算(月150労働時間)すれば、時給換算で約1,800円となる。最低生計費試算調査の結果は、最賃1,500円のエビデンスとなっていたが、近年の試算結果をふまえれば、いますぐ1,500円を実現し、1,800円、2,000円がめざされるべきである。先進諸国の状況を鑑みれば、2,000円水準の目標が掲げられたとしてもおかしくはない。

○最低賃金の低い地域ほど、普通の生活が遠い存在になっていることを意味する。普通の生活がより手近になる都市へ人口が流入するのは当然のことである。現行の地域別最低賃金は47都道府県でバラバラに定められていて地方経済を苦しめている。最高額の東京都(1,226円)と最低額の高知県、宮崎県、沖縄県(以上、1,023円)には大きな格差が存在するが、トータルとしての最低生計費は全国どこでもほとんど同水準にあることを明らかにした最低生計費試算調査は、全国一律最賃制のエビデンスにもなっている。地方経済を再生するためには、最賃を変えなければならない。

○30年間にわたって賃金が下がり続けるなかで、社会が壊れかけている。8時間働けば普通に生活できる=働きが報われる社会を取り戻さなければならない。若者世代にとって家族形成が遠い存在になっている。調査の過程で目の当たりにしたのは、一人暮らしの若者が少ないことである。生活費を節約するために若者は親元にいて独立しない(できない)のだ。家族形成を現実的なものにすることこそが、最も有効な少子化対策である。

〇かつては、「最低賃金を引き上げれば雇用が減る」が経済学の定説であった。しかし、近年の急ピッチの引き上げによって失業が増加したという話は聞かない。いま必要なのは、最低賃金を引き上げたら価格に転嫁できるように、中小企業に実効的な支援を行うことである。労働者の賃上げ→消費者の購買力の向上→企業業績の改善→さらなる賃上げの好循環を生み出すのは最低賃金である。

以上

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