【談話】第74回中央最低賃金審議会「令和7年度地方最低賃金審議会の審議結果を踏まえた論点と考え方の整理について」に対する見解
2026年6月30日
全国労働組合総連合
事務局長 黒澤幸一
中央最低賃金審議会は6月25日、臨時会議を開き、「令和7年度地方最低賃金審議会の審議結果を踏まえた論点と考え方の整理」を取りまとめた。これは、2026年度の最低賃金改定審議に反映させるため、改定審議の開始に先立ち取りまとめたものである。
報告は、2025年度最低賃金改定で39道府県が中央の目安額を上回る答申を行ったことについて、その背景に「近隣県との競争意識」や「最下位回避の意識」があったとの認識を示すとともに、「地方最低賃金審議会の決定が地域の実態と乖離した引上げ額を導き出すことは適切ではない」とした。
しかし、この整理は、昨年度の地方最低賃金審議会の議論や判断を十分踏まえたものとは言えない。地方最低賃金審議会に対し、目安額を大きく上回る答申を行うことを抑制し、中央が一律に目安額に沿った審議を求めるメッセージとして受け止められかねず、地方審議会の自主的・主体的な判断を萎縮させることが懸念される。
物価高騰が長期化するなか、賃金の引き上げは物価上昇に追いつかず、実質賃金は4年連続で低下している。最低賃金近傍で働く労働者からは、食費や光熱費を切り詰め、受診を控え、携帯電話を夫婦で1台にするなど、必要な支出さえ抑えざるを得ない実態が寄せられている。
昨年度、多くの地方最低賃金審議会が目安額を上回る答申を行った背景には、「最低賃金を引き上げてほしい」「働けば普通に暮らせる賃金にしてほしい」という労働者・住民の要求があった。また、最低賃金の低さによる就業者の他県への流出や人手不足に対する地域の危機感もあった。目安額を上回る答申は、こうした地域の実情と要求を踏まえた地方最低賃金審議会の自主的な判断であり、その意向は尊重されるべきである。
最低賃金法第9条は、生計費、賃金および通常の事業の賃金支払能力を考慮して最低賃金を決定することを求めている。しかし、四半世紀に及ぶ実質賃金の低下、さらには近年の急激な物価高騰によって労働者の暮らしが一層厳しさを増しているにもかかわらず、今回の整理は、最も重視されるべき生計費の実態について十分に踏み込んでいない。
全労連と各地方組織が実施してきた最低生計費試算調査は、健康で文化的な生活には時給1800円台から1900円台が必要であり、都市部と地方との間で生計費に大きな格差がないことを明らかにしている。それにもかかわらず、最低賃金には依然として大きな地域間格差が残されており、最低生計費と最低賃金との乖離は地方ほど深刻である。このことは、全国一律最低賃金制度の必要性を裏付けるとともに、全労連が掲げてきた「全国一律で今すぐ1700円、めざせ2000円」という要求の妥当性を示している。
政府はこれまで掲げていた最低賃金目標の「2020年代に全国加重平均時給1500円」を「2030年代前半」へ先送りするとみられる。しかし、最低生計費試算調査の結果から見れば、1500円は通過点にすぎず、その早期実現は待ったなしの課題である。
発効日について、報告が早期発効の重要性を示し、発効日を引上げ額との「交渉材料」とすべきではないと整理したことは評価できる。一方で、目安額を上回る引上げ額と指定日発効を結び付ける方向で受け止められかねないことを懸念する。大幅引上げと早期発効は、いずれも最低賃金制度の目的に照らして追求されるべき課題である。
物価高騰と実質賃金の低下が続くなかで求められるのは、地方最低賃金審議会への事実上の引き上げ抑制ではなく、すべての「労働者の生活の安定」が図られるように、生計費の実態に立脚した最低賃金の大幅引き上げと地域間格差の解消である。
2025年改定での「発効日の先送り・分散化」、そして、「近隣県等との競争意識」「最下位回避の意識」「地域間の過度な競争」の問題も、すべて制度が地域別であるがために起きた問題であると考える。整理の中でそのことが全く触れられていないことに強い違和感を覚えるとともに、地域別最低賃金制度であることの弊害を覆い隠す意図すら感じられる。解決には、最低賃金制度を地域別から全国一律にすることが唯一の解決策であることは明白である。
全労連は、現在行われている「目安制度の在り方に関する全員協議会」および2026年度の最低賃金改定審議において、「地域別制度」を解消する決断をすることを求める。また、中央最低賃金審議会として政府に対し、全国一律最低賃金制度への法改正を求める意見表明がなされることを強く求める。
以 上
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