【インタビュー】全国過労死を考える家族の会 寺西笑子さん
健康で充実して働ける社会へ 「労働組合は職場点検の役割を」

全国過労死を考える家族の会代表世話人
寺西 笑子さん
全国過労死を考える家族の会代表世話人
京都市在住
96年に夫を過労自死で亡くす。2001年京都下監督署にて労災認定
2014年~2025年過労死等防止対策推進全国センター共同代表
2014年~2024年厚生労働省過労死等防止対策推進協議会委員
高市首相は就任直後、上野厚労大臣に労働時間規制の緩和の検討を指示した。政府は26年の通常国会での法案提出を断念。また労政使の三者で構成する労働政策審議会が行ってきた働き方改革の見直し議論を、実質的に日本成長戦略会議で行う方針を示した。不十分ではあるが、残業時間の上限を定めた法律は、過労死遺族や労働組合の粘り強いたたかいで勝ち取ったものだ。全国過労死を考える家族の会代表世話人の寺西笑子さんに話を聞いた。
「馬車馬の如く働いて」命落とした夫
黙っていられない
――10月4日の自民党総裁就任会見で「馬車馬のように働いてもらう。私自身もワーク・ライフ・バランス捨てる」と発言しました
会見直後、新聞取材に「影響力考えて」と答えました。夫は馬車馬の如く働いて命を落とした、黙っていられませんでした。報道後、「誤った受け止めだ」「国民向けの発言ではない」など、支持者から多数の抗議メールが会に届きました。10月6日に過労死弁護団が発言撤回を求める声明を発表すると、矛先はそちらに向きました。
――過労死と認めさせるまでのたたかいは?
飲食店の調理師だった夫は、大型店舗の店長になりました。ちょうどバブルの崩壊直後で売上が激減。経験がないのに「右肩上がりの結果残せ、人件費減らせ」という社長の命令に、減らした従業員のシフト分を自らが働き、1日12時間、年4000時間を超す労働を強いられました。毎日「努力が足りない」と叱責され続けて、精神を病み、96年に自ら命を絶ってしまいました。
夫の働き方を知ったのは死後でした。相談先では「過労自死の認定基準はない。裁判しても勝てない」と言われ、悔しくてたまりませんでした。諦めきれずに相談した過労死110番で「認定基準をつくるために一緒に頑張りませんか」という弁護士の言葉に勇気が湧きました。タイムカードなどの証拠を集め、99年に労災を申請しました。
同年に厚生労働省が過労自死に関する判断指針を策定。遺族や弁護士が訴訟を通して国を動かした成果に「私も社会を動かしたい」と思いました。2014年には過労死等防止対策推進法が施行され、働き方改革関連法などの法律も整備されてきました。
規制緩和は時代に逆行
ハラスメント禁止法制定を
――19年から施行された働き方改革法の国会審議でも声をあげてこられました
残業時間の上限は特別条項を結べば、月100時間未満・年720時間(原則は月45時間・年360時間)と定められました。
会は裁量労働制の拡大、高度プロフェッショナル制度と併せて、上限時間を過労死ラインの月80時間にすることに大反対しました。青天井だった36協定に上限ができたことは成果とはいえ、やっぱり死に至る時間まで働かせることの合法化には反対です。
高市政権はその労働時間規制すら緩和しろと言っているのです。過労死防止法が定める「仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現」とも逆行します。
――全労連は1日7時間・週35時間の実現とハラスメント禁止法を求めています
国はハラスメント防止義務を事業主に課していますが、通報者が不利になるものは防止策とは呼べない。国連からも長時間労働是正とハラスメント禁止法制定の勧告が出されています。ILO190号条約を批准して、国が制度改善していくしかないと思います。
労働組合は36協定の遵守確認など、職場点検の役割を担って欲しい。ハラスメントで苦しむ人の悩みを聞き、解決に取り組む頼りになる存在であってほしいと思います。

(全労連新聞594号 2026年1月15日号)
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