【読み合わせ資料】政府の失策が招いた米不足(587号・全労連新聞2025年6月号)

全労連新聞連載:国会で何が起きているの?
米価高騰が国民生活を直撃し、主食の米を十分に食べられないという異常事態が起きている。政府は参議院選挙を見据え、小泉新農相らが新政策を次々打ち出し、米価引き下げや米の増産を実現するかのように振る舞うが、実効性に乏しい。事態を打開するためには、米価高騰の原因をしっかりと捉え、責任を明らかにし、解消の道筋を示すことが求められる。
米価高騰の原因は、政府の政策が作り出した米不足にある。コロナ禍で「米需要の消滅」が生まれ、米価が大幅に落ち込んだ。「需要に応じた生産」を掲げる政府は、米価を支えるために必要な過剰在庫の買い入れを拒否し、2022~23年の2年間で50万トンの米の減産を農家に押し付けた。この結果、24年6月末の米の民間在庫量が3カ月分の需要量に満たない153万トンまで低下。政策的に米不足が作り出され、価格高騰につながった。コロナ後の需要増などが不足に拍車を掛けた。
「(備蓄米は)需要があれば無制限に出す」。小泉進次郎農相が5月21日の就任会見で強調した。米価引き下げを求める世論に押された政府は3月から備蓄米の放出を開始。91万トンのうち、31万トンを先に放出し、さらに30万トンの追加放出を始めた。しかし、効果は限定的だ。政府の指針でも今年6月末の民間在庫は昨年並みの158万トンの見込み。実際には100~110万トンまで縮小する可能性も指摘されており、3年連続の米不足は確実とみられている。
米生産保障する政策に
政府は舵切れ
備蓄米の放出で不測時に備える備蓄米の機能が失われていることも問題だ。そんななか「生産量を増やせないなら、輸入を増やすのも選択肢」(石破首相)など、輸入米の活用を押し進める姿勢を見せている。備蓄の崩壊と外国米への依存は米の価格と需給をさらに不安定にさせるだけだ。
米価高騰・不足を解消するために、農家を支援し、十分な量の米生産を保障する政策に舵を切ることが求められる。それには、政府与党が頑なに拒む農産物の価格保障や農家への所得補償が欠かせない。政策転換に向け、米と農業を守る国民運動を呼び掛けたい。
(農民運動全国連合会 岡崎衆史)