【ゆにきゃん発 実践レポート⑥】法律事務所で初の組織化に挑む
ゆにきゃんで学んだCOで生まれたPEERS札幌
札幌近郊法律事務所職員労働組合(PEERS 札幌) 柿田 泰成
仲間の声は届かず、辞めざるを得ない状況がある
札幌市にある法律事務所で事務職員として働いている私は、さっぽろ青年ユニオンで他業種の労働相談対応をしてきましたが、2024年12月法律事務職員の労働組合である「札幌近郊法律事務所職員労働組合(通称PEERS札幌)」をゆにきゃんで学んだCO(コミュニティ・オーガナイジング)を用いて立ち上げることができました。
仕事を始めたばかりの事務職員にとって、裁判所や弁護士とのやりとりは専門用語の連続で、戸惑いの連続です。札幌には事務職員同士が交流できる「LO.C」という親睦会があり、研修企画や情報交換で励まし合える場があります。しかし、職場の悩みは共有できても、改善につながらないまま辞めてしまう仲間も見てきました。
特に印象に残っているのは、優秀で明るく周囲を支えていたMさんです。人間関係や働き方に悩みを抱えていたものの、弁護士本人に伝えにくく、結果的に退職しました。もし周囲が声を届ける橋渡しができていたら――そう思うと悔しさが残りました。
低い賃金、休暇の取りづらさ、人員不足、残業の常態化、休日連絡、注意すると不機嫌になる・・・ 事務職員の課題は多くあります。しかし使用者である弁護士は法律の専門家であり、「個人として向き合う」にはあまりにもハードルが高い。多くの職場は弁護士1~2人、事務1~2人という小規模であり、孤立しやすい環境があります。その結果、問題を抱えながらも声をあげられず、「弱い自分のせい」と思い込んでしまうこともあります。
仲間づくりは1on1 から始まった――COの学びを実践
ゆにきゃんで学んだCOの「関係構築」のトレーニングを思い出しながら、私は法律事務職員の知人一人ひとりに声をかけ、時間をとって対話しました。一方的に話すのではなく、相手の価値観を探りながら、共通することをみつけだしながら「一緒に労働組合をつくりませんか」と。10人に声をかけて3人参加してくれたらと想定していました。ところが、声をかけた5人全員が参加を快諾してくれました。これが「PEERS 札幌」の出発点でした。
最も印象的だったのは、ミーティングの中で、1人が職場の悩みを話し始めた瞬間です。別のメンバーが「それはひどい」と一緒に怒り、「体調は大丈夫?」と寄り添ったのです。全員が改善策を一緒に考えようと。1on1では、「自分にできるかわからないけど」と自信がなかったメンバーたちの変化が目の前で起きていました。「こういう組合をつくりたかった」。そう確信しました。
現場に届くアクション ――声を可視化し、つながりをつくる
私たちはCOの考え方に基づき、仲間とゴールまでのアクションを決めて実施しました。
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アクション① キックオフ
2023年9月、札幌大通公園でのオータムフェストで労組結成準備を公開し、10人が参加しました。知り合いの法律事務職員を誘い、食事を囲みながら職場状況を語り合い、悩みを共有しました。
アクション② 情報収集(ピーク1)
旭川の労組「こまくさの会」から実践を学び、労組が団体交渉権を持つ強みや財政・周知方法などを共有。参加者から質問が相次ぎ、活動の具体像が明確になりました。
アクション③ アンケート配布(ピーク2)
2023年11月、札幌地方裁判所の近くの十字路で事務職員にアンケートを配布。45分で30人以上に手渡しすることができ、受取率はほぼ100%。その後の回覧も含め、約50人に私たちの存在を届けることができた。回収したアンケートには「賃金が低い」「始業終業の明確化」「休憩の取得」「情報共有できる場がほしい」などの声が寄せられ、まさに組合の必要性を裏付ける結果となりました。
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「一人じゃない」と思える場があれば、現実は変えられる
24回のミーティングと3つのアクションを経て、「PEERS 札幌」は結成に辿りつきました。相談できる場があれば諦めずに働き続けられる人がいる。COで学んだように、対話と仲間づくりが社会を変える力になると実感しています。振り返ると、緊急的な課題があると認識していないメンバーが労働組合を結成できたのは、COによる影響が大きいと思われます。
私たちは何を大切にして、どのようなゴールを描き、それに向かってどのような行動を起こすのか。経験の差があっても、見通しや何をすべきかを可視化できていました。さらにいえば、コーチングにも助けられました。今回の立ち上げには、COを先に学んだ別の組合の人に伴走的にコーチングを受け、方向性の確認や悩みの明確化とその対応など、メンタル部分も含め助けられました。
今回は、労働組合の立ち上げにCOを用いましたが、既存の労組でも課題を解決するためにチームで進めたいときにも有用です。経験していない人はぜひ「ゆにきゃん」を体験してみてください。
(月刊全労連348号 2026年2月号)
「ゆにきゃん発 実践レポート」
参加者が始めた職場や地域で、変化を起こすチャレンジをレポートする『月刊全労連』の不定期連載。
ゆにきゃんとは、困難に直面する当事者が仲間と共に解決を目指すコミュニティオーガナイズの手法を学ぶ全労連主催のワークショップです。2020年の開始から500人以上が参加し、各地でキャンペーンがうまれています。参加者が始めた職場や地域で、変化を起こすチャレンジをレポートする不定期連載。
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