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対話と学びあい

【ゆにきゃん発 実践レポート④】訪問看護師の夜間・休日の「待機電話」「NO!電話に給料出んわ」キャンペーン

2025/09/15

訪問看護師の夜間・休日の「待機電話」「NO!電話に給料出んわ」キャンペーン

札幌地区労連 佐賀 正悟

きっかけ―自分たちで自分たちの要求を実現する

訪問看護師は、夜間や休日に、患者・利用者の急変や不安の相談に対応するため、交代で「待機携帯」を持っています。 夜間に「待機携帯」を持つ負担は大きく、強い拘束感があり、十分な睡眠もとれません。 加えて、「待機携帯」の電話対応時間は無給です。 この問題は10年以上、春闘で要求し続けましたが変化を起こすことができませんでした。

この問題の解決のため、看護師の津崎さんと当事者の岡さん、藤野さんに声をかけてコアチームをつくりました。 準備期間は6ヵ月、実践の期間は2ヵ月で、夜な夜な20回のミーティングを重ね、「さっぽろゆにきゃん」のトレーニングに3回参加し、戦略を練り上げました。

さっぽろゆにきゃんの様子

キャンペーンでは訪問看護師の仲間の声を集めて団体交渉で理事会を追及するために、訪問看護師一人ひとりからこのキャンペーンの成功のために作った5秒間のハンドジェスチャー動画や、待機携帯を持っている時にありがちな「待機携帯あるある」を集めました。 この2つの動画を団体交渉で流しました。

団体交渉には訪問看護師24人を含む総勢51人が参加しました。 これまでの交渉では本部役員が司会進行を行いましたが、この交渉はコアチームですすめました。 交渉に初めて参加した仲間が次々と生の声をぶつけました。 これらの追及に理事会から「電話対応を時間外手当の対象とする」との満額回答を引き出しました。

この回答は、要求を組合全体の重点要求としたことや報酬改定の追い風があるものの、キャンペーンが最後の一押しになりました。 当事者の訪問看護師72人中47人が参加し、キャンペーンのゴール達成以降も組合活動への結集につながっています。 この間の経過を振り返ります。

キャンペーンのハンドジェスチャーをするコアチーム

チャレンジ―リアルな職場実態を前面に

始めにこのキャンペーンに取り組んだ「待機携帯」の労働実態です。 待機携帯をもつと、夕方5時半から朝8時半まで、「いつ電話が鳴るか」という緊張感を持って待つことになり、拘束感があります。 訪問看護師の藤野さんは、「(患者から)夜中11時、12時に『眠れない』と電話相談が来ます。深夜にも電話がかかってきて夜はあまり眠れないしきつい。 『調子が悪いのですぐ来てほしい』と緊急出動になる場合もあります。なかには寝間着に着替えず仮眠する人もいました。電話を枕元に置いて緊張して待機する人もいました。 私も子育て中でしたが、家族への負担も大きい。 非正規職員からも、正規になると、待機の負担が大きいので、正規になることを躊躇してしまう」とのことでした。

当初、私はキャンペーンのゴールとして別の要求をと考えていたのですが、話し合いを重ねる中で困難に直面する当事者の力を結集出来るのは「待機携帯」の問題解消が必要と、ゴールに決まりました。

次にコアチームづくりです。 強い気持ちをもって活動している看護師の津崎さんに声をかけました。 津崎さんは「私は訪問看護の当事者ではないけど、以前にキャンペーン活動に参加し、そのとき変化を起こす経験をしました。それで希望と勇気をもらった。また新たな変化をつくれることを期待し、今回も参加しました」と話します。 岡さんは「相談しているうちに、こういう取り組みをやらないかと誘ってもらったのがきっかけです」と話していました。

どうやって当事者の声を集めたかですが、もともと訪問看護師の組合員は同じ時刻や場所に集まって会議に参加することが難しかったので、みんなの声を集めることも難しいと考え、コアチームのミーティングでは「同じ職場でも忙しそうでなかなか声かけられない」「貴重な昼休みに嫌がられるのではないか」「どのタイミングで声かけていいか」について時間をかけて話し合いました。 そして「関係構築」の手法を学び、「雰囲気づくり」に成功し、ほとんどの職場で動画を撮ってくれました。 +1

藤野さんは「『これをやってなんか意味あるの?』という声に、職場では緊張をしながら声掛けをしましたが、動画見た時に『声を上げてくれてありがとう』と言われた時、『やった!』と感じました」と振り返ります。 動画が集まるごとに共有し、励まし合いました。

これから―要求実現の感動を分かちあう

最後にキャンペーンのピークとなる団体交渉です。 団体交渉には倍近くの人数が集まりました。 団体交渉を本部役員以外のメンバーが進めるのは前代未聞で、コアチームのメンバーにとって大きなチャレンジでした。 本部書記長に「こういう風に変えたい、だから私たちに交渉させてほしい」と話し、理解してもらえたからこそこのキャンペーンもできました。

同じ訪問看護師が団体交渉に臨むことで、自分たちの要求だということがより明確になりました。 初参加の訪問看護師も多くいました。 団体交渉に向けて、みんなの声を集めて、みんなが発信できるようにしたいという目標のもと、何回も準備とシミュレーションを行いました。

コアメンバーの津崎さんは「団体交渉が終わって手当が出ると決まった時には、訪問看護師さんが『キャンペーンをしてくれてありがとう』と言ってくれたのが、すごく印象的でした。 変化を望んでいるけれども、自らがやれるとは思っていなかった人たちが、自分たちが参加して変えられると共有できた、素晴らしいキャンペーンです」と振り返りました。

(月刊全労連2025年9月号(343号) 2025年9月15日発行)

「ゆにきゃん発 実践レポート」 
参加者が始めた職場や地域で、変化を起こすチャレンジをレポートする『月刊全労連』の不定期連載。
ゆにきゃんとは、困難に直面する当事者が仲間と共に解決を目指すコミュニティオーガナイズの手法を学ぶ全労連主催のワークショップです。2020年の開始から500人以上が参加し、各地でキャンペーンがうまれています。参加者が始めた職場や地域で、変化を起こすチャレンジをレポートする不定期連載。
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