全国労働組合総連合(全労連)

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2025年度最低賃金改定審議にあたって 最低賃金を直ちに全国一律1500円以上にするよう求めます

2025/06/24
賃金・最低賃金
非正規労働者
青年
女性
ジェンダー平等

2025年度の最低賃金改定に向けた審議がはじまるのにあたって、全労連・国民春闘共闘としての意見を述べ、記者会見の趣旨とします。
まずは、最低賃金を直ちに全国一律1500円以上に改善するように厚生労働大臣に求めます。そして、1700円をめざした審議を開始するよう要請します。

現在の最低賃金は加重平均で1055円です。月150時間働いても約16万円、年収でも約190万円にしかならず、年収200万円にも満たないワーキングプアを最低賃金がつくりあげています。いまでも、食べていけない非正規労働者、ひとり親世帯、学生アルバイトなどの方がいます。その方々の実力がないからでも、働きが足りないからでもありません。国の制度が安い賃金で働かすことを規制せずに、野放しにしています。そうした異常な状態にあるという認識を、政治、行政、そして社会として、発想を捉え直す必要があると問題提起したいと思います。最低賃金法の一番の目的は、「労働者の生活の安定をはかる」ことです。生存権保障です。その実現をはかることは政府の最低限の責任であると強調したいと思います。労働組合としても尽力していきます。

▼ 5年後に1500円では遅い

全労連・国民春闘共闘は、2016年に最低賃金を全国一律1500円を求めてから10年。石破首相は、岸田前首相が「2030年代半ばに1500円」としていたものを2020年代に前倒しして実現するとしました。そして、「賃上げ向上推進5か年計画」を5月22日に示していますが、歴史的な物価高騰が労働者の生活を脅かしており、5年後ではあまりに遅いと言わざるを得ません。直ちに、全国すべての地域の労働者が「せめて1500円以上の時給が得られるようにすること」「最低賃金制度を地域別ではなく全国一律にすること」が私たちの要求です。

▼ 最低生計費試算調査の結果「全国どこでも時給1700円~1800円は必要」

なぜ、直ちに1500円なのか、そして、全国一律でなければいけないのか。その理由は、全労連が全国で続けている「最低生計費試算調査の結果」にあります。この調査はマーケットバスケット方式でおこなっています。以前は政府も生活保護水準を決める参考にするために採用していた調査方法です。これまでに全国約5万人が参加しています。その中で、今日お示する結果は「25歳単身、賃貸ワンルームマンションに居住という条件」の試算です。若者が自立して一人暮らしを、ぎりぎり生きていける水準ではなく、人間らしく生活できる賃金はどの程度必要か試算したものです。
月に2回から3回の飲み会、携帯やサブスク代、週末は友人と映画やショッピングを月4回などを加味し、持ち物はその地域で価格調査をおこないました。これらの費用を積み上げ、時間額に換算するなどして割り出した試算です。 その結果、全国どこでも時給1700円~1800円は必要となるという試算となりました。「地方の方が物価も安く、生活費は安くて済む」というのは常識ではないということがわかりました。地方では自動車がなければ生活できません。都市部は、家賃は高いが自動車は必需品ではなく交通費も安く相殺される結果です。ネットで買い物があたりまえの時代に多くの商品の価格に差はありません。地方では最低賃金が安くても仕方がないなどということは、ないということです。

▼ 非現実的だ、経営者も大変だ、中小企業がつぶれてしまうってホントか

徳島県は、昨年の改定で時給896円だった最低賃金を84円(7.1%)引き上げ960円にしました。過去最高の引き上げ幅です。後藤田知事がその結果について、5月14日に開催された日弁連の最低賃金シンポジウムで講演を行いました。その結果、徳島県の経済は、実質賃金が7カ月連続でプラスとなり、求職者数も増えて働く意欲につながっている。決して、倒産や失業などが増えた形跡はないと述べていました。ある徳島の大学生に聞くと最低賃金が84円引きあがった後、賃金が月1万円増えた、別の大学生は月2万円増えたと言っていました。その効果は絶大です。
中小企業がつぶれないようにするのは政府の役目です。歪んだ経済を立て直すのですから、それなりのお金は必要になると思います。そして、大企業が500兆円を超えて溜め込む、内部留保を考えると労務費が公正に価格転嫁できる公正な取引がなされるように、政府が規制ルールを明確にすることが先決と考えます。

▼ 企業の支払い能力ありきでなく、人間らしく生活できる生計費をつくるための審議を

政府は、「賃上げこそ成長戦略で」と賃上げ5カ年計画で述べました。「成長なくして賃上げなし」と繰り返してきたことからすれば、その決意は評価できます。徳島県でも、最低1000円は必要だと打ち出して、そのための審議を繰り返した結果が84円の引き上げです。これまで、企業がこれぐらいなら払える、物価上昇分の引き上げありきの議論でした。これを、「労働者の生活の安定」に必要な最低賃金、賃金を明確にして、それをつくるための審議に切り替えるべきです。
誰もが、働けば人たるに値する生活ができる賃金が得られる経済でなければ、少子化も、人口減少も食い止めることはできないと思います。そのことを述べて、意見とします。

以 上

2025年度最低賃金額改定の目安審議に向けた意見書

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