【月刊全労連】いまこそ、日本国憲法の理念と「教え子を再び戦場に送るな」の決意を胸に
まるで100年前の世界に戻ったかのように、「力による現状変更」が公然と進行している。歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは、トランプ氏の思考には「弱者が強者に従うことが平和」「ウクライナが降伏を拒否したから戦争になったわけで、責任はウクライナにある」と考えが貫かれているという(2025年 5 月9 日付日本経済新聞)。
100年前、日本は強者の一員になることを政策とした。その結果が1945年の敗戦と亡国だったという歴史的事実を、私たちは決して見失ってはならないと思う。自民党議員の沖縄戦の経緯を無視して「自分たちが納得できる歴史をつくる」という暴言が報じられているだけに、歴史的に考えることを重視したい。
原点を知り、学ぶことの大切さ
5 月3日、朝刊各紙の社説は、一部に「改憲論議を停滞させるな」という主張があったものの、全体としては、今の世界情勢に照らして日本国憲法の掲げる普遍的な理念の重要性が浮かび上がっている、というトーンのものが多かった。
朝日新聞は「戦後80年と憲法 この規範を改めて選び取る」というタイトルで、アメリカの暴走、ロシアやイスラエルの蛮行、欧州各国の防衛力強化、中国の周辺海域での力の誇示などの情勢のもと、日本はどんな国であろうとするか、と問いかけ、「指針は既にある、普遍的原理を掲げた憲法を改めて選び取る時である」と述べている。東京新聞は「永遠の戦後」目指してと題して、カントの最晩年の著作『永遠平和のために』から「永遠平和は空虚な理念ではなく、われわれに課せられた使命である」という言葉を紹介した。
同日付の朝日新聞の「声」欄に掲載された愛知県の高校生の投書も紹介したい。
「現行憲法は戦争で家を焼かれ、家族を奪われ、生活を失った人々の苦しみと、平和への願いから始まりました。その思いに共感してこそ、憲法を理解し、憲法と私たちの関係を考えることができるはず。憲法を変えるかどうかという前に、まずその原点と精神を学ぶこと。それが真の民主主義の出発点ではないでしょうか。知らなければ正しく考えることはできないのですから」
この投書は、歴史をふまえて憲法教育や平和教育をすすめている全教の組合員をはじめ現場の教職員を力強く励ましていると思う。
私は長野県の高校教員だった。長野県は、全国まんもうで最も多い3万数千人の満蒙開拓移民を送り出し、そのうち7000人は青少年義勇軍だった。地域の経済的な理由や行政の割り当て、メディアの影響とともに、教員の勧誘があった。その背景に、大正のころ、長野県内でも盛んだった自由主義的な教育が、1933年の二・四事件(教員赤化事件)という反動的な取り締まりで弾圧された結果、満蒙開拓団という国策に協力し、教え子を送り出すことにつながったという歴史的な関連が語り続けられている。戦争を美化し、いのちを軽んずるような教育が、学校の教室ですすめられるようなことは、二度とあってはならない。
再び「戦前」へと向かう危険な流れ
戦後80年・被爆80年、教職員組合が向き合うべきは、戦後を続けること、二度と核兵器を使わないという課題だと思う。そのためのよりどころは、戦争を二度としない仕組みとしての日本国憲法をいかすことと、1951年 1 月の日教組中央委員会で採択されたスローガン「教え子を再び戦場に送るな」の決意を改めて心に刻むことだ。
安保法制=戦争法から10年、政府は、安保3 文書の具体化、日米同盟の強化など、戦争する国づくりをすさまじい勢いで進めている。第217通常国会では、憲法23条が保障する学問の自由を侵害する日本学術会議解体法案も提出している( 6 月 11日に成立)。戦前、学問や科学が政治権力によって制約を受け、利用された反省をふまえ設立された日本学術会議には、真理・真実を追究することが人類普遍の福利に貢献することにつながるという理念が貫かれている。その立場から軍産学共同をすすめようとする政府の動きを批判するのは当然のことだ。その歴史的な経緯を顧みることなく、権力への批判を封じようとするのは非常に危険だ。
また、戦後、GHQ(連合国軍総司令部)による民主化と非軍事化政策の柱の一つに労働組合の結成が位置づけられ、憲法27条が労働を権利と定め、28条で労働三権を保障している。
第一次世界大戦へ向かうヨーロッパを描いた小説『チボー家の人々』の主人公ジャックは、フランスとドイツの戦争が迫っている中で、戦争に動員される両国の労働者が平和を願う一致点で連帯することを信じた。残念ながら、当時、国境を越えた労働者の連帯よりも、排他的な愛国心が勝ってしまうのだが、このような歴史をふまえて、憲法27条は働くことを基本的人権に位置づけ、その保証を政府に義務づけている。権力におもねることなく、正当に批判する労働組合も戦争を防ぐ仕組みだ。
この点からも、現在、政策的に進められている労働基準法緩和の動きを警戒する必要がある。そして、「このままでは学校が持たない」という現在の危機を解消するどころか、主務教諭の創設などによって教職員間の分断を図り、上意下達の学校をつくろうとする給特法等改定法案も断じて容認できない。
「個人的なことは政治的なこと」
本稿では、歴史をふまえることとともに「普遍」という言葉を何度か用いた。普遍、言い換えれば、いつでも、どこでも、だれにでも、というこの言葉は、個人から社会全体へ、自分を超える視点に立つことを促す。
この春のテレビドラマで「個人的なことは政治的なこと」という言葉が注目されたのは記憶に新しい。私とまわりの世界は無縁ではない、という認識を持ち、一人ひとりがバラバラな「私」だけの世界から「私たちの世界」へのまなざしを持つことは、より生きやすい世界を作る糸口になる。たたかう労働組合が求められている所以だ。
全日本教職員組合中央執行委員長 檀原 毅也
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