全国労働組合総連合(全労連)

ページの上部へ

最低賃金法第9条の「労働者の生計費」を把握するため最低生計費試算調査の活用を求める意見書

2026/06/29

全労連は6月25日、2026年度の最低賃金改定を議論する中央審議会に、全労連と地方組織が全国でおこなってきた「最低生計費試算調査」を活用し、「労働者の生計費」の実態を把握し、健康で文化的な最低限度の生活水準を維持できる改定額とすることを求める意見書を提出しました。
最低賃金の改定を審議する中央・地方の審議会では、「客観的データに基づく審議」が強調されていますが、もっとも重視されるべき「労働者の生計費」に関する資料は極めて不十分です。愛知の審議会で2024年に提出された資料の内訳は、「労働者の生計費」に関する資料は2点、「労働者の賃金」は4点、「事業の賃金支払能力」は12点と、「労働者の生計費」に関する資料が軽視され、「事業の賃金支払能力」に偏っていました。愛労連はこの点を労働局に指摘し、最低生計費試算調査を審議会資料として活用することを追求してきた結果、2025年に正式な審議会資料として採用された実績があります。他の地方審議会、中央審議会でも審議資料とすることを求めます。

最低賃金法第9条の「労働者の生計費」を把握するため最低生計費試算調査の活用を求める意見書

中央最低賃金審議会 御中

2026年6月25日
全国労働組合総連合(全労連)
議長  秋山 正臣

最低賃金法第9条第2項は、最低賃金の決定にあたり、「労働者の生計費」「労働者の賃金」「通常の事業の賃金支払能力」を総合的に考慮することを定めています。
しかし、中央最低賃金審議会の目安審議では、物価や賃金動向、企業の支払能力に関するデーターは多数活用されている一方で、「労働者の生計費」を具体的かつ客観的に把握するための資料は不十分であると考えます。
最低賃金制度は、労働者の健康で文化的な生活を保障するための最低規制であり、その水準を検討するうえで、実際に生活するために必要な費用を把握することは不可欠です。
最低賃金法が「労働者の生計費」を考慮要素として明記している以上、国および厚生労働省は、最低賃金審議に活用できる客観的かつ継続的な生計費調査結果を審議資料として示すべきです。しかし現時点では、最低賃金審議に直接活用できる全国的な生計費調査は十分に整備されていません。
そのため、最低賃金法が求める「労働者の生計費」を把握するため、既存の生計費試算調査結果を活用することが必要です。
全労連と加盟組織は2015年以降、全国各地で最低生計費試算調査を実施してきました。現在までに29都道府県で調査が行われ、蓄積されたデーターは5万人分を超えています。
この調査は、生活に必要な財やサービスを積み上げて生計費を算出する「マーケット・バスケット方式」を採用しています。同方式は、かつて生活保護基準の改定にも用いられた手法であり、最低限度の生活に必要な費用を科学的に測定する方法として広く活用されてきました。
また、最低生計費試算調査は単なる積み上げ方式ではありません。生活実態調査や持ち物財調査によって労働者の暮らしの実態を把握するとともに、地域住民や就労者による合意形成会議を通じて、地域社会で普通に暮らすために必要な財やサービスについて検証を重ねています。こうした手法により、地域住民の生活実態と社会的合意を反映した客観性の高い調査となっています。さらにこの調査は生計費調査を専門とする大学教授の協力・助言を得て実施されており、その信頼性と学術的妥当性も確保されています。
愛知地方最低賃金審議会では、最低生計費試算調査の結果が審議資料として提出され、参考資料として活用された実績があります。

◆最低生計費試算調査の結果について

調査では、若年単身労働者(25歳 単身・男性 ワンルームマンション・25㎡に居住という条件で試算)が地域社会のなかで普通に暮らすためには、月額27万~29万円程度(税・社会保険料を含む)が必要であることが明らかになっています。また、住居費や交通費の構成には違いがあるものの、生計費総額には大都市と地方で大きな差がないことも示されています。
例えば、宮崎県の最低生計費試算調査結果では、月150時間労働換算で時給1,892円(2026年6月時点)、東京都区部では時給1,900円(2025年5月時点)が必要との結果となっています。月150時間労働を試算の前提としているのは、祝日や正月休みなど常識的な労働時間によって算出するためです。ちなみに厚生労働省の「毎月勤労統計調査」の年間平均総実労働時間は、平均1,620時間であり、月135時間となっています。
これらの結果は、最低賃金が若者の自立、家族形成、貧困の防止、地域間格差の是正に果たす役割を検討するうえで重要な知見を提供するものです。さらに、近年の急激な物価高騰が労働者の生活に与えている影響を具体的に把握する資料としても有効です。
 よって中央最低賃金審議会に対し、以下を求めます。

【要請項目】

1.最低賃金法第9条第2項が求める「労働者の生計費」を把握するため、全国29都道府県・5万人超の調査実績を有する全労連・最低生計費試算調査を、中央最低賃金審議会の目安審議における基礎資料として位置づけ、活用してください。

2.全労連が実施する最低生計費試算調査の活用が困難であると判断する場合には、最低賃金法が定める「労働者の生計費」を客観的に把握するため、国の責任において継続的な生計費調査を実施し、その結果を審議資料として整備・提供すること。

すべて表示する