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【月刊全労連連載】いっちょかみが行く「理論的な方法で格差拡大を追及」(2026年5月号)

2026/04/15
月刊全労連

今回は、人事院勧告をめぐり、国公近畿ブロック時代に統計の問題で人事院を追及してきた歴史をふりかえります。当時の(いまもそうですが)国公労連は人事院が行っている民間企業給与実態調査や生計費調査を理論的に追及してきました。その中心であったのが国公近畿ブロック(以下、国公近ブロ)だったと自負しています。それができたのも専門的知識を有する人が労働組合の役員として活動していたからに他なりません。その方は、京都大学の櫻田忠衛さんで、私もたいへんお世話になりました。

比較企業規模は引き上げろ

1991年の人事院勧告は、「官民賃金比較方式」と「調整手当」の見直しを打ち出しました。これに対し国公近ブロは、1992年1 月に「人勧基礎作業のしくみと批判」と題する冊子を発行し、改悪阻止に向けて理論的支柱を確立したのです。冊子は、勧告作業の法的根拠を明らかにし、しくみを分析した上で問題点をあぶり出しています。特に問題視しているのは、比較企業規模です。
2025年の勧告で人事院は、官民比較企業規模を「100人以上」に戻しました。2006年に企業規模を「50人以上」に引き下げたものを元に戻したわけです。問題なのは、中央省庁の幹部のみ比較企業規模を「1000人以上」規模にしたことです。国公労連は、以前から比較企業規模を「1000人以上」にするよう要求しています。公務にふさわしい賃金水準を確保するには、比較企業規模を「1000人以上」にするのが妥当だと考えているからです。
今回の見直しにより、地方出先機関で働く公務労働者と中央省庁で働く労働者の格差がいっそう拡大します。ただでさえ、地域手当による最大20%の格差があり、行政機関の格付けによる格差、役職による格差があります。それに加えて、比較企業規模による格差が持ち込まれたのです。「キャリア官僚優遇」そのものであり、地方で行政を支える末端の公務労働者を置き去りにしているといわなければなりません。

許される格差はどこまで

一般職公務員におけるトップである事務次官と地方出先機関の新規採用者との間に、どこまで格差が許容されるのでしょうか。
アメリカでは、一般的な従業員の給与とCEO の格差についてアメリカのナショナルセンターのAFL-CIO が調査を公表しています。2024年は285倍
と前年を上回り、最大の格差はスターバックスで6666倍となっています。スターバックスでの格差には驚くばかりです。従業員の平均年収は1 万4674ドル(日本円で200万円強)にすぎませんので、CEO の年収は日本円に換算すると約150億円を超えています。これに怒りを持って労働組合に結集し、2025年11月から無期限ストで賃上げを求めるのも当然です。
一方で日本では、労務行政研究所がまとめている「役員報酬・賞与等の最新実態」によると、社長の年間報酬平均は5354万円で25歳従業員の平均年収の13倍となっています。また、東洋経済が有価証券報告書から算出した役員平均報酬と平均年収を比較した記事によれば、最大の格差はルネサスエレクトロニクスの183倍で、最近は格差が拡大する傾向にあると報じています。
では、国家公務員の場合はどうなっているのでしょうか。内閣人事局の「国家公務員の給与」令和7 年版によると、トップである事務次官のモデル年収はおよそ2385万円、30歳の地方係員が年収421万円となっていますので、およそ5.7倍です。高卒の新卒者で地域手当0 %の地域で働くものの年収(諸手当無し)は、およそ340万円なので7 倍程度となります。
2025年の勧告で比較企業規模による本省庁と出先との格差は、今後さらに広がる可能性があります。どこまで格差が許されるのか、慎重な議論が必要です。

統計は正しく集計・利用を

最初に申し上げた「人勧基礎作業のしくみと批判」をまとめたのは、当時の国公近ブロ事務局長と櫻田忠衛さんでした。櫻田さんは、京都大学経済資料室の助手として統計学を専攻されており、「経済資料調査論の構築」という著書があります。この本では、調整手当見直しにおける統計利用の批判が展開されています。
統計の専門家として、統計の使い方に対する理論的批判を行い、人事院を追い詰め、当初のもくろみを大きく後退させました。統計の重要性と利用するにあたっての注意は、いまも役立っています。最近の政府統計は、多くの見直しがなされています。古いデータとの整合性がとれなくなっているものが多いだけでなく、政府に都合の悪いデータが見えなくされているケースもあります。
新宿区 若松町にある統計博物館の見学をしたことがありますが、政府統計が国民生活向上のために正しく収集され、集計・利用されているのか。私たちも強く関心を持つ必要があります。

関心は他にも

人事院勧告の問題で統計について学習したことと同様、労働組合活動をする中で、関係団体の学習会や学会、研究会など、様々なところに顔を出してきました。ここが「いっちょかみ」たるゆえんです。いまも多くの団体に所属しています。
労働組合にはもちろん入っており、組合費を払っている加入組合は現在3 つあります。また、生協の組合員として宅配を利用しています。そのほか労働法学会、過労死防止学会の会員となっています。学会の会員ではあるのですが、最近は日程が合わず、学会に参加できていないので申し訳なく思っています。
これら以外、いくつかの研究会や兵庫県民主法律協会等々の民主団体にも所属しており、学習会などにも参加しています。議長という役職についたこともあり、参加することをためらってしまうことがありますが、これからもできるだけ参加して学習していこうと考えています。いつまでこうしたことができるのかわかりませんが、身体の動く限り、いろんなことにいっちょかみを続けるつもりです。

全労連議長 秋山正臣

(月刊全労連2026年5月号掲載)

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