全国労働組合総連合(全労連)

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「職場でのハラスメントと性差別の実態アンケート」結果と分析

2026/05/29

~ハラスメント・差別、満足のいく解決はされていない!安心して仕事をすることができる法改正・制定、ILO条約批准を!~

全国労働組合総連合は、2025国民春闘より「あらゆるハラスメントと女性や性的マイノリティ差別の根絶をめざすキャンペーン」にとりくんでいます。今年、キャンペーン2年目のとりくみとして、初めて、職場でのハラスメント・性差別についての実態をWEBアンケートで集計しました。

2025年12月~2026年3月にかけて、全国の公務・民間で働くすべての労働者を対象に実施したアンケートには、男性・女性ほぼ半数ずつが回答、年代もバランスよく回答が集まりました。

今回の調査では、直近3年間のうちに、今の職場でハラスメントを受けたことがある人が、2割以上でした。現場に居合わせた人も含め、見聞きしたことがある人が、4割以上です。職場のハラスメント対策が進みつつあるとはいえ、あらゆる分野の現場で、ハラスメントや差別がなくなっていないことは大きな課題です。

ハラスメントの内容としては、パワーハラスメントが圧倒的に多く8割以上でした。次いで、セクシャルハラスメント、カスタマーハラスメント等が多く、満足のいく解決がされたのは、わずか1割超で、不満の残る対応や何も対応されていないケースも多くみられました。

昨年6月の労働施策総合推進法改正では、職場におけるハラスメントの実態を改善するには不十分です。現場で求められているハラスメント対策は、ハラスメントを受けた人のみにしぼると、トップ3は「相談しやすい相談窓口の設置」(50.3%)、「就業規則にハラスメント禁止と罰則を明記」(48.4%)、「ハラスメントを法律で定義し、罰則付きで禁止する」(45.3%)でした。ハラスメントを受けても相談できず、泣き寝入りしている労働者が、依然として多く存在しています。

労働者の実態をふまえて、職場で求められているハラスメント対策をすすめること、ジェンダーの視点から諸制度を見直すこと、安心して働き続けられるようにILO第190号「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」批准と包括的ハラスメント禁止法制定実現を求め、調査結果を公表します。全労連は、本アンケートに寄せられた労働者の実情や声を、あらゆるハラスメントと女性や性的マイノリティ差別の根絶をめざす法整備や実行計画の策定・見直しのとりくみに活かし、すべての労働者にとって人間らしくディーセントな働き方の実現をめざす社会をつくっていく決意です。

「職場でのハラスメントと性差別についてのアンケート」集計結果と分析

全労連は、職場でのハラスメントに関する取り組みの現状を把握し、政策に活かすため、2025年12月16日から2026年3月31日まで表記WEBアンケートに取り組み、797人の回答を得ました。

1. 回答者の属性

1)性別について 女性(396)49.7%、男性(388)48.7%、どちらでもない(3)0.4%、答えたくない(10)1.3%と、女性と男性がほぼ半数ずつ、それ以外は1.7%で少ない結果になりました。

2)年齢について 2026年1月1日現在の年齢について、25歳以下が3.1%と少なく、それ以外は各年代ほぼバランスよく集まりました。

3)労働組合加入の有無
( 職場の組合に入っている」88.6%、( 地域の組合に入っている」4%、 組合に入っていない」10.9%であり、職場の組合に入っている人からの回答が9割近くを占めました。未加入者からの回答が1割ありました。

4)41都道府県、22の産業から797人の回答が集まりました。産業で集約が多かったのは( 国家・公務」 247)、 映画・演劇・アニメ」 135)、 教育」 134)の順。都道府県では東京都 199)、北海道 76)、福岡 46)の順でした。

(1)職場におけるハラスメント対策について
職場のハラスメント対策が進んだ」48.6%、 労働組合はハラスメント対策に取り組んでいる」63.7%となっており、一定の対策はとられていると思われますが、 わからない」が職場では35.3%、労働組合では27.1%にのぼっています。本当に取り組みが進んでいないのか、取り組みをしていても見えていないだけなのかは不明ですが、実効的な対策をとることはもとよりハラスメントを許さない職場風土を確立するためにも、 わからない」という回答を減らしていく努力が求められます。

(2)ハラスメントの相談窓口について
職場に ある」との回答は83.3%と比較的高いのに対し、労働組合に ある」とした回答は59.1%と低くなっています。また、労働組合に相談窓口があるか わからない」という回答も32.4%あり、労働組合としての取り組みが弱いことが危惧されます。業務繁忙や役員のなり手不足によって十分な対応ができない、ハラスメントという相談内容の重さなどから及び腰になっているなどの要因が考えられます。賃金・労働条件などの改善も必要ですが、すべての労働者が安心して働き続けられる職場づくりの重要な課題として取り組みを進めることが求められています。

(3)労働安全衛生委員会でハラスメントについて取り上げられていますか

「わからない」が52.4%ともっとも高くなっています。ハラスメントに限らず労働安全衛生委員会での議論経過や結果はきちんと組合員や労働者に伝えられているでしょうか。委員会の報告について、その内容の充実や責任の所在についてきちんと整理し実行する必要があります。

朝出勤した労働者を健康な状態のまま帰宅させることは事業主と労働組合の責任です。ハラスメントをはじめ職場の労働安全衛生について問題点を明らかにしそれを解決すること、組合員や労働者に対する周知や注意喚起など職場の安全衛生活動について充実を図ることが求められています。

(4)就業規則にハラスメントに関する規定はありますか

「ある」とする回答は48.1%、「わからない」は42.3%となっています。「わからない」という回答は「就業規則を見たことがない」「説明を受けたことがない」という労働者が多いからだと思われます。労働基準法第106条1項では「就業規則を労働者全員に周知すること」といつでも内容を確認できるようにしておくことが義務づけられています。従業員10人未満の企業については就業規則の作成・周知義務はないものの、民主的な手続きをへて、職場で働くうえでのルールを定め、共有することが必要です。

(5)ハラスメント研修は行われていますか

「役員や管理職を含め全員が研修を受けている」という回答が70.0%と最も多くなっています。一方で「研修が行われていない」が12.0%、「役員や管理職以外の職員・従業員が受けている」が10.0%となっています。ハラスメントは役職などにかかわらず誰もが加害者にも被害者にもなる可能性を持っていることから、企業の全員がハラスメントに関する知識を身につけ、お互いの人権を保障しながら働ける職場をつくることが必要です。

(6)直近3年間のうちに今の職場でハラスメントを受けたことや見聞きしたことがありますか

全体では「受けたことがある」は21.8%、「現場にいたことがある」8.3%、「話を聞いたことがある」31.9%、「見聞きしたことも受けたこともない」が37.9%となっています。「話を聞いたことがある」に比べて「現場にいたことがある」が少ないのは、ハラスメント行為が大勢の目の前ではなく、当事者どうししかいない場面で行われることが多いからだと推測されます。

 性別ごとの特徴を見てみると、「受けたことがある」「現場にいたことがある」で男性にくらべて女性の方が多くなっています。一方で「見聞きしたことも受けたこともない」と回答しているのは男性の方が多くなっています。しかし「話を聞いたことがある」という回答は女性とほぼ同じ割合であり、問題意識は性別に関係なく持っていると言えるのではないでしょうか。 また回答数が極めて少ないことから単純に比較はできませんが、性別について「どちらでもない」「答えたくない」と回答した人の多くがハラスメントを「受けたことがある」と回答していることは、女性や性的マイノリティといったジェンダー的に不平等な立場に置かれている人ほど、ハラスメントのターゲットになりやすいということを示しているとも言えます。

(7)前問で①~③と答えた方にお聞きします

1)どのようなハラスメントでしたか

 直近3年間における、今の職場で「受けたことがある」「現場にいたことがある」「話を聞いたことがある」ハラスメントの内容を質問したところ、一番多かったのは「パワーハラスメント」(85.2%)で、次に「セクシャルハラスメント」(27.2%)、3番目が「カスタマーハラスメント」(18.3%)でした。「受けたことがある」との回答だけを抽出しても「パワーハラスメント」は17.1%、「セクシャルハラスメント」は3.8%、「カスタマーハラスメント」は4.6%と同じ順となっています。

今回の調査では「受けたことがある」人数は174人(21.8%)と多くはありませんが、「見たことがある」「聞いたことがある」を含めて考えれば、職場においてどのようなハラスメントの実態があるかが認識されていると言えます。こうした点はハラスメントの直接被害の有無は別にしても問題が共有化されているということであり、職場におけるハラスメント根絶に向けて重要な点です。

また、性別毎にハラスメントの内容で分類してみると、「受けたことがある」「現場にいたことがある」「話を聞いたことがある」の合計でみても「受けたことがある」に限定しても、総じて女性の方が男性に比べて高くなっています。

2)加害者は誰ですか
加害者について聞いたところ、「受けたことがある」「現場にいたことがある」「話を聞いたことがある」の合計では「組織トップ以外の職務上優越的地位にある人」が突出して多い結果となりました。一方、「受けたことがある」という人に限っても、率・順位ともほぼ同様の結果となりました。

こうした結果になったのは、ハラスメント全体のうち「パワーハラスメント」が85.2%と多くを占めており、直接仕事の上で接触する機会が多く、いきすぎた指導や叱責、人格否定、差別発言などがその原因となっていることが考えられます。言い換えれば、労働者が一日のうちで一番長い時間を過ごす自身の職場でハラスメントが発生しており、誰もが安心して働ける職場づくりの重要性が明らかになったと言えます。


3)誰かに相談しましたか

 ハラスメントについて「誰かに相談しましたか」という質問に対して、「受けたことがある」「現場にいたことがある」「話を聞いたことがある」の合計では、「職場の相談窓口・担当者に相談した」が35.1%と最も多く、次いで「労働組合に相談した」27.4%、「相談せず我慢した」24.9%となっています。 回答全体で見れば、「職場の相談窓口・担当者に相談した」が多いのは、問2の(3)で職場の相談窓口が「ある」と回答した人が83.6%、労働組合に相談窓口が「ある」と回答した人が59.5%いたことを考えれば、相談先の割合はその数値に見合ったものとなっています。しかし、労働組合に相談窓口があるかどうか「わからない」という回答が32.5%あったことをふまえるなら、職場の労働組合としての存在感や役割を高めることのできる余地はまだまだあると言えます。

一方、「受けたことがある」回答した人だけに絞ると、傾向的にはほぼ同様であるものの、「職場の相談窓口、担当者に相談した」という回答が態様全体に比べ6.9ポイント高く、「労働組合に相談した」は2.1ポイント低くなっています。このことは、解決に向けた実効性を比較したときに労働組合よりも職場の方が期待できると考えられていることや、自身が直接被害を受けていなくても同僚のことを心配した周りの組合員や労働者からも相談・情報提供しやすいという背景があると考えられます。 しかし、職場であっても労働組合であっても相談できたのは全体の約半数であり、「相談せず我慢した」という回答が約4分の1、「受けたことがある」人は全体に比べて1.6ポイント高くなっていることは看過できません。厚生労働省が発表している「令和7年度版過労死防止対策白書」によれば、精神障害にかかる労災支給申請は3780件にのぼるとともに、支給決定件数は7年連続で上昇し1055件(うち死亡は88件)となっていますが、労災認定されるのは「業務による強い心理的負荷」が認められる場合であり、言い換えればその原因の多くがハラスメントであると考えられます。こうした状況をふまえれば、ハラスメントの被害に遭っている人に何らかの手を差し伸べること、そして職場というコミュニティの総意として「いかなるハラスメントも許さない」という社会規範を作ることが必要であり、使用者任せにせず、労働組合としても職場における安全衛生活動によりいっそう取り組んでいくことが求められています。

4)満足のいく解決がされましたか

 ハラスメント問題の解決について、「受けたことがある」「現場にいたことがある」「話を聞いたことがある」の合計では、「不満の残るものだった」が29.7%、「何も対応されていない」が26.7%となっており、「満足のいく結果となった」のは13.9%にとどまっています。また、「受けたことがある」とした人に限ってみれば「不満の残るものだった」は34.0%、「何も対応されていない」が31.4%と全体に比べて高くなっており、当事者とそれ以外の人の間でうけとめ方に少なくない差があることが見てとれます。

 他方で、質問の記述部分では「関係者の事実確認が行われなかった」「職場が当該事案の存在自体を認めていない」など、当事者に寄り添っているとは言えない対応が目につきます。一方で「話をして気持ちが落ち着いた・楽になった」という回答も寄せられていることから、ハラスメントの根絶をめざす上で相談窓口・担当者の姿勢、信頼性、アクセシビリティなどのありようが問われています。

5)人事上の措置はとられましたか
ハラスメントをなくす手段として、加害者を処分することや人事異動などによって当事者どうしを引きはなすなどの対応が行われることがありますが、 受けたことがある」 現場にいたことがある」 話を聞いたことがある」の合計では、67.3%が 人事上の措置はとられていない」と回答しています。回答者の多くがハラスメントを 受けたことがある」当事者ではないことから、事案の顛末が詳細に伝わっていないことも考えられます。加えて、被害者への一定の配慮も必要なことや、加害者を見せしめとしないことなど、考慮すべき点もあると判断され、人事上の措置が行われたかどうかが明らかにされていないケースもあると思われます。一方で、ハラスメントをしない・させないという職場風土を形成する上では、ハラスメント事案の経過や結果をあいまいにせず共有することも重要です。

6)どのような解決がされましたか(複数回答)
( 受けたことがある」 現場にいたことがある」 話を聞いたことがある」の合計で一番多かったのは 解決せず被害者が泣き寝入りした」で37.3%となっています。このことは 満足のいく解決がされたか」の質問で 不満の残るものだった」 何も対応されていない」が多かったことの結果だと言えます。また 受けたことがある」人以外も含めて、泣き寝入りせざるを得ないという認識が広がっているのであれば、深刻な状況だと言わざるを得ません。
続いて多いのが、 被害者が異動した」14.7%と 加害者が異動した」11.5%の人事異動による対応です。その内訳を見ると被害者の異動よりも加害者の異動が少なくなっています。前の回答にもあったとおり、加害者の多くが被害者よりも 職務上優越的地位にある人」が多いことからすれば、業務運営などの観点から職場の管理職を簡単に異動させるわけにはいかないという理由もあるのでしょうが、ハラスメントの原因となっている人物を 優越的地位」のままにしておくことは、ハラスメントをなくすどころか被害者を増やす可能性もあると指摘せざるを得ません。

3 あなたの求めるハラスメント対策について教えてください

1)予防措置
ハラスメント対策の予防措置として一番多かったのは 相談しやすい相談窓口の設置と周知」で56.9%でした。前記の質問で 相談せずに我慢した」という回答が全体の約4分の1あったことからも、 誰かに話を聞いてほしい」 相談で解決の糸口を見つけたい」といった人が多いと考えられます。なお、 労働組合としての相談窓口を周知する」が33.0%にとどまっていることは、労働組合がすでに一定の役割を果たしているという見方と、労働組合があまり期待されていないという両方の見方ができるため、さらなる分析が必要です。

また、 ハラスメントを法律で定義し、罰則付きで禁止する」38.2%と 就業規則にハラスメント禁止と罰則を明記する」40.1%が多くなっており、とりわけ 受けたことがある」人ではそれぞれ45.3%、48.4%と高くなっていることに加え トップによるハラスメント根絶宣言」も全体に比べて多いこととも特徴です。これについては記述部分で加害者に対する厳正な処分を求める声が少なくないことや、 満足いく解決がされたか」の質問で 不満が残る」という回答が多かったことなどをふまえれば、事案についてハラスメントかどうかが明確にならず、ハラスメントの根絶や自分の納得いく解決につながっていないという不満の表れといえます。こうしたことからも、全労連が主張しているILO第190号条約の批准や罰則付きの包括的ハラスメント禁止法の制定が急務です。

2)事後対応
ハラスメントに対する事後対応は、( 受けたことがある」 現場にいたことがある」 話を聞いたことがある」の合計と 受けたことがある」のみを比較すると、傾向が違います。

態様全体の回答で一番多かったのは 被害者の精神的回復まで事業主が責任を持つこと」で52.8%、二番目が 加害者への処分と再発防止のための教育」50.9%、三番目が 加害者・事業主がハラスメントと認め謝罪すること」48.2%でした。一方、 受けたことがある」人で一番多かったのは 加害者・事業主がハラスメントと認め謝罪すること」で57.8%、続いて 被害者の精神的回復まで事業主が責任を持つこと」の56.5%、三番目が 加害者への処分と再発防止のための教育」51.3%でした。また、 認定のためのハラスメント委員会の迅速な開催」も態様全体では44.6%あるものの、 受けたことがある」人は38.3%しかないことや 被害者の経済的不利の保証」や 被害者の社会的信用の回復」が態様全体より 受けたことがある」人の方が少なくなっているという特徴があります。

こうした結果になったのは、周囲の人が考えているより、被害者自身が心のケアを必要としていることの表れとも言えます。この間、さまざまな集会・会議などの報告でも 被害者が一番望んでいるのは、行為がハラスメントであると認定され、 事業主からも加害者からも)謝罪され、もう二度と起こらないようにしてほしい」という意見が共有されていますが、予防措置として多くあげられた、法律や就業規則における罰則付きでの禁止とセットで実現する必要があります。

4 労働組合に相談したいですか

回答で一番多かったのは わからない」で51.8%となっています。そうなった原因はさまざまあると思われますが、 労働組合が何をしてくれるのかわからない」 解決してもらえるのか不安」などという疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。一方で 相談したい」と 加入したい」、 すでに相談ずみ」の合計も32.5%あり、労働組合に対する期待もあることがうかがえます。

ハラスメントの根絶だけには限りませんが、 労働組合ができること」を職場で働く多くの労働者に対して見える化し、労働組合としての信頼をさらに高めていくことが求められています。

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