全国労働組合総連合(全労連)

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労働市場改革分科会の審議事項に関する意見書

2026/04/23

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 日本成長戦略会議労働市場改革分科会(以下、分科会)は2026年3月11日に初回会合を、4月3日に第2回会合を開催し、日本の経済成長の実現をはかるためとして、労働生産性の向上、労働移動の円滑化、柔軟で多様な働き方(労働時間制度と運用の見直し)による労働参加の促進といった3つの論点について議論を進めている。この議論は労働者の雇用と労働条件の在り方に大きな影響を与えるため、多くの労働者から注目されている。そのため、全労連はすべての労働者の処遇改善を求める労働組合の立場から意見を述べる。

Ⅰ.総論

1,3者構成主義の原則について

 厚生労働省のホームページによれば、「労働現場のルールは、現場を熟知した当事者である労使が参加して決めることが重要となります。国際労働機関(ILO)の諸条約においても、雇用政策について、労使同数参加の審議会を通じて政策決定を行うべき旨が規定されるなど、数多くの分野で、公労使三者構成の原則をとるように規定されています。」と記載されている。

 しかし、驚いたことに、労働移動や労働時間など労働者の労働条件に大きく影響を与えるこの分科会には労働者の代表がひとりしかいない。対して使用者側は5人おり、3者構成の原則を踏みにじっている。日本成長戦略会議の下に置かれた分科会だとしても、厚生労働大臣を分科会長として、厚生労働省において行う会議なのだから、自ら掲げた重要な原則は守ってしかるべきではないか。

 直ちに3者構成原則に基づいた構成員の任命をし直し、議論をやり直すことを求める。あわせて、労働者代表は公正・公平に任命・選出することを強く要求する。

2,議論の前提認識について

 日本経済の成長を目的とした議論において、「労働市場」に着目することは確かに重要である。その際、分科会は、日本の労働市場の問題として、この30年間、企業が労働者全般(エッセンシャルワーカーにとどまらず)の実質賃金を抑制して内部留保をため込んできたこと、海外投資や投機を優先し、人的資本投資を含む国内投資を控え、非正規雇用や請負労働など労働条件の劣悪な労働力を活用してきたことなどに焦点をあてるべきである。実質賃金が上がらないため、消費購買力は低迷し、それにあわせた価格破壊・コストカット追及のため一層の賃金抑制や非正規雇用の活用という悪循環が発生しているのであり、これが、日本の労働生産性指標の低さの背景にある。労働生産性が低いというと、その語感から、まるで労働者が非効率にだらだらと働き、価値を生み出していないかのような受け止めが生じがちだが、日本の労働者は諸外国に比べ長時間・過密労働を行い、必要な価値(商品・サービス)は生み出している。それにもかかわらず、指標としての労働生産性が低くなってしまっている背景には、経営者・使用者の誤った行動・選択があることを、議論の前提におくべきである。

 また、賃金抑制と合わせ、男性を中心に過労死を発生させるほどの長時間労働を許容し、女性に家事・育児・介護の責任を押し付ける社会構造を生み出し、分科会の主要課題でもある労働力不足や少子化を招いていることにも注目するべきである。

 高市政権は第6次男女共同参画基本計画のパブコメ後の答申案にあった「企業による労働時間短縮に係る取組を促進するため、労働時間に係る情報開示の在り方や時間外労働の上限規制を含め、労働時間制度について検討する。」を「働き方の実態とニーズを踏まえた労働基準法制の見直しについて労働政策審議会で検討する。」(第一分野「ライフステージに応じて全ての人が希望する働き方を選択できる社会の実現」)と書き換えた。

 しかし、労働基準法の柱をなす労働時間規制を緩和し、長時間働かせることを容易にする労働立法・労働政策は、個々の使用者の短期的な利益には結びつく一方、それが社会に広がることによって経済成長を妨げてしまう。そのことは、過去30年の日本経済の低迷ぶりから明らかである。今の政権の成長戦略は、むしろ停滞戦略であり、転換を図るべきである。

 厚生労働省は、使用者側の言い分にそって、労働時間法制や労働基準監督行政の在り方をどこまで緩めていけるかを検討するかのような議論に追従するべきではない。また、労働者の基本的人権である労働条件などについて「経済政策」に従属させる形で日本成長戦略会議において議論を進めるべきではない。厚生労働省はあるべき労働者保護の観点から労働基準法の厳守、規制の強化、労働時間短縮をめざすことこそが日本経済の成長につながるという方向性を示すべきだと考える。

 以下、2回にわたって議論された分科会における主要な論点について、私たちの意見を提示するので、今後の議論にあたって積極的に取り入れることを要望する。

Ⅱ.各論

1,働き方改革総点検の結果について

 3月5日に公表された働き方改革総点検の結果についても我々の意見を述べておく。このアンケートは働き方改革改革5年の見直しの中で調査されたものだが、その結果として労働時間を増やしたい人は10.5%、減らしたい人は30.0%、このままがいいは59.5%であった。これを見ると、変更を望んでいない人が一番多く、減らしたい人が増やしたい人の3倍もあることがわかる。このままがいい人の4割以上が「自分の仕事と生活のバランスを変えたくない」と回答し、減らしたい人の内6割が「自分の時間を持ちたい」と思っている。多くの労働者はワークライフバランスを大切にしていることがわかる。

 一方で増やしたい人の6割がたくさん稼ぎたい・家計が厳しいからと回答しており、収入が確保出来たら解決する問題であることが伺える。決して、自民党や財界がいうスキルアップのための「働きたいニーズ」はほとんどないことが明らかになった。

 全労連・労働法制中央連絡会が1月に公表した働く時間に関して本音を語る緊急アンケートでも、労働時間を増やしたい人は11%しかおらず、スキルの向上や、顧客のニーズに応えたいという人は全体の1.5%しかおらず、財界がいう「働きたいニーズが抑制されている」という声は少数であった。また、減らしたい人は57%に達し自分の時間や家族との時間を確保することが求められていることも判明した。

 加えて、働き方改革総点検では妥当と考える1月あたりの時間外労働時間も問うているが、93%の人が「45時間以下が妥当」と考えている。労働時間に対する認識としては、働き方改革で導入された上限時間の規制は一定効果があったと思われ、10時間以下が妥当考える人は全体の5割を占めることを見れば、より規制の強化が必要である。同時に月100時間の時間外労働も認められる特別条項は不要であり、廃止するべきであることもこの調査で分かった。

 このことから見ると、長時間労働につながる裁量労働制の拡大など労働時間規制緩和ではなく、労働時間短縮の議論を開始すべきであることは明らかである。

 また、働き方改革総点検では割増賃金の支払いについても回答されており「すべて払われている」54.9%、「ほとんど・まったく払われていない」12.3%の結果だった。これは残業代が不払いである労働者が相当数いるということであり、これは違法であることから早急に解決するべきだ。経済の成長を議論する前に、不払いの賃金の解決が先である。経済に重要な消費は個人消費が多くの比重を占めており、その多くは賃金であるからだ。経済成長を目的とした労働市場改革分科会で議論されないのは使用者目線だけで労働者本位の議論がされていない証拠である。

 

2,裁量労働制について

  裁量労働制について、使用者側から、対象業務の拡大や適用要件の緩和を求める発言が相次いであがっている。特に過半数労働組合がある職場では、労使の合意、もしくは合意がなくても労使が協議をしたことをもって、対象業務の決定や適用を決めることができるようにすることを求めている。しかし、これらの要求には、合理性がなく、認めることはできない。

 労働政策審議会労働条件分科会でも使用者委員が同じように拡大を求めているが、労働者委員は全員が裁量労働制の拡大について反対している。さらに、第207回労働条件分科会では、複数の公益委員が、使用者側の求める裁量労働制の拡大論に対する根本的な懸念・疑念を表明している。重要な発言なので、以下、引用する。

 「裁量労働制というのは実労働時間でなく、みなし時間で運用されるだけなので『賃金を増やしたい』希望に添えなくなる可能性が高い。(働き方改革総点検の結果によれば)『多く働きたい人』は賃金を増やしたいのであるから、裁量労働制の適用は、むしろ逆方向にあたる可能性がある。」神吉知郁子委員(東京大学大学院法学政治学研究科教授・労働法)

 「どうしても裁量労働制でなくてはならない理由が一体どこにあるのかを議論すべき。裁量労働適用労働者は満足度が高いとの意見が聞かれたが、調査から見えてきたのは、『裁量労働制だから満足度が高い』のでなく、『裁量を与えられているから満足度が高い』ということだ。働きやすさ、柔軟性のある働き方は、裁量を与えさえすれば、裁量労働制でなくても可能である。フレックスやテレワーク、上司から現場への権限移譲で労働者の裁量は担保できる。これらをもってしても、やはり裁量労働制でなければならない理由があるのか。あるとすれば、どこが論点かを整理することが必要だ」。黒田祥子委員(早稲田大学教育・総合科学学術院教授・労働経済学)

 「労働者に裁量を持ってもらい、力を発揮してもらうことと、労働時間を裁量労働制の『みなし労働時間』で把握することはイコールではない。裁量をもって働くことイコール労働時間をみなしとしなければならないということではない。その点を意識し議論を進めていくことが重要だ」原昌登委員(成蹊大学法学部教授・労働法) 

 これらの見解は、使用者側の裁量労働制必要論に対する重要な批判である。また、当分科会の委員からも「労使の交渉で(規制を)ゆるめるのは危険である」との発言があるなど、裁量労働制の拡大には慎重な意見が出ている。

 労働者に労働時間の配分や業務の遂行方法の裁量を委ねて能力発揮をしてもらうことは、一般的労働時間規制の下でも可能であるし、実際に多くの企業がそうしている。いわゆる「裁量労働制」とは、そうした業務に従事している労働者に対し「みなし労働時間制」を適用し、使用者から、実労働時間管理の責任と割増賃金の支払い義務を免れさせるだけの制度である。労働時間の配分の裁量は労働者に保障するが、業務量や納期・〆切についての裁量まで労働者に与えるとの法的規定はないため、使用者にとっては、残業代不払いで働かせ放題を可能とする制度である一方、労働者は容易に長時間労働に追い込まれることになる。まさに「過労死・過労自死」の温床となりうる同制度は廃止すべきものであり、規制緩和による拡大など、絶対にするべきではない。

3,エッセンシャルワーカーについて

 エッセンシャルワーカー、特に医療・介護労働者の処遇改善を求める意見が複数でていることは医療・介護分野の労働者の組合員がいる労働組合として歓迎する。特に介護労働者は介護報酬が低いため、平均の賃金が一般の労働者より8万円も低い。委員から「介護や医療では先に処遇を改善することによって人を集めて現場に余裕ができてそれによって生産性向上させる余裕ができるということもあっていい」と処遇改善を先に行うことも提案しているように、エッセンシャルワーカーの処遇改善は喫緊の問題である。

 私たちは、国の責任でエッセンシャルワーカーの大幅な賃金引上げ、処遇改善を早急に行うことを求める。そのために利用者・被保険者の負担を増やすことなく、国庫金負担を引き上げて医療・介護・障害福祉報酬の大幅な引き上げをすべきと考える。

4,労働移動について

 分科会では議論されている労働移動の目的は、労働者の意思ではなく国や財界の施策として低成長分野の産業・業種からDXなどの成長分野への労働移動である。これまで日本の産業を支えてきた分野の産業・業種への切り捨て政策であり、成長が見込めないからといって社会生活に必要な産業までつぶすことは許されない。

 何人も「職業選択の自由」を有しており、すべての労働者には自らの意思で転職をする自由があるのは言うまでもない。産業構造の転換や人手不足産業への対応として、労働移動が必要だというのであれば、それは国や企業による強制的な移動ではなく、あくまでも当該労働者の自発性に基づくものでなければならない。使用者ならびに政府は、なぜ特定の産業や企業が人手不足となるのかを、労働者とともに検討すべきである。長時間労働や過密労働、不安定雇用、低賃金、パワハラの蔓延などといった職場に、求職者が集まるはずがない。その職場に労働組合がなく、労働条件の改善がされなければそれよりいい条件の職場に労働者は転職をする。国としては、人手不足の解消のために、長時間労働規制の強化、最低賃金の抜本的な引き上げによる生活できる賃金の保障などの処遇の改善、中小企業支援の拡充など良質な雇用を広げるための支援を行うことが求められている。

 使用者本位の労働移動(労働者の追い出し)である解雇・雇止め・退職勧奨は、今も少なくない職場で行われており、黒字でも人員整理としての解雇を強行するケースが大企業を中心に出てきている。政府・厚労省は解雇規制の強化、労働者保護施策の拡充をはかるべきであり、この分科会はその施策を議論する場にすべきである。労働条件の高い事業への労働者の自発的な移動と雇用の安定こそが、経済成長につながる。

 解雇を巡っては経団連が「解雇金銭解決制度」の創設を求めている。同制度については、厚労省内に新たな有識者研究会が立ち上がる予定とされているが、この制度の創設には反対である。あたかも労働者のための選択肢を増やすかのように言われているが、実際に想定される制度の効果は真逆である。使用者は予見可能な一定の金銭さえ準備すれば、狙いを付けた労働者を容易に解雇(そのやり方は解雇禁止に該当するものでもよい)できるようになる。労働者が裁判を起こし、解雇無効との判決がでても、予め見込んだ一定の金銭さえ支払えば契約が終了となるので、職場復帰を望んだ労働者の再解雇を含め、どのような乱暴な解雇であっても、使用者は躊躇せず断行するようになるであろう。労働移動を拒んだ労働者への不当解雇も誘発し、労働市場の不安定化を招く制度であり、その創設はするべきではない。

 また、分科会では使用者側の委員が、労働移動促進のための雇用保険制度の整備として、雇用保険の基本手当や給付日数の見直し(削減)を提言しているが、これにも反対である。基本手当や給付日数の削減は、失業者が生活苦・生活不安に追われ、就職先を吟味することもできず、あらたな業種に挑むためのリスキリングもはかれずに就労せざるを得ない結果をもたらす。失業給付という生活安定のための支援を失った労働者は、対等な立場で労働条件を決めることができず、劣悪な雇用を蔓延させる要因ともなり、とるべき施策ではない。

5,リスキリングについて

 分科会ではリスキリングについても議論されているが、この目的についても今後成長する分野へ労働者が移動する際に、必要なスキルを労働者に身に着けさせることが目的である。労働者が自身のためどのようなスキルをアップさせるかは自由であることは言うまでもない。

 しかし、厚生労働省所管の議論であるにもかかわらず、労働法制的視点が不十分である。そもそも現在の仕事に関して必要な学習・研修であるならば、従事した時間は労働時間とみなされるべきであり、勤務時間内で行うことが本来の在り方である。それが労働時間外・休日に行われた場合は割増賃金を含めて賃金が発生するのは言うまでもない。また、講座を受けさせ受講料などが発生する場合は企業負担とし、労働者個人に負担させるべきではない。そうしたコストを負担しにくい中小企業については、当面は国からの助成金の拡充で対処するべきである。

 また、現在の仕事とは関係なく個人としてスキルを上げたいという労働者もいるが、毎日が長時間労働となっていては学習する時間がないのは当然である。この面からも労働時間短縮が必要で、企業・国は労働時間短縮の施策を実行すべきである。

 分科会では室賀委員が「7時間労働+1時間の『ジブン時間』」として、労働時間を短縮して空いた1時間を学習や家族との時間に充てることを提案している。労働時間の短縮については全労連も法定労働時間を1日7時間にすることを求めている。やはり、現状の労働時間にプラスして仕事上の学習時間を確保することは、人手不足・長時間労働が蔓延している現場では困難である。

 あわせて、勤務時間外における個人としての学習・研修を業務上の評価の対象にしないことを企業には求めたい。ましてや賃金に差をつけることは実質上学習・研修を義務とするもので、あくまで学習・研修は個人の選択によって行なわれるものである。

6,労働時間制度の運用見直しについて

 第2回の分科会で厚労省から配付された資料の中に、「労働時間制度の運用面の見直しについての方向性」として「企業の希望や支援ニーズに応じ、労基署(相談・支援班)と支援センターが連携し、働き方の実態やニーズを踏まえた36協定の締結・改定等に向けた相談支援や、業務効率化に資する設備投資に使える助成金の提案など、企業が求める支援をパッケージで提供してはどうか。」とある。この記述には、強烈な違和感を覚える。労働基準監督署(労基署)も、働き方改革推進支援センター(センター)も、企業の都合に応じて、企業を支援する機関ではない。

 労基署は労働基準法など法律に基づき、労働者の保護や事業所の監督・指導する行政機関である。労働者を守る唯一の国の機関であり、労働者にとっては助けを求める場所でもある。企業ではなく、労働者が求める支援をするべきであり、そのための体制の強化が求められている。

 センターは厚生労働省から全国社会保険労務士会連合会に委託された組織で、その役割は中小企業の労務管理上の相談であるが、それは労働者の保護や法の遵守の観点から指導・援助するものである。決して、長時間労働をさせるための「抜け道」を「指南」する機関でもなければ、企業の要望を聞きそれを実現させるための機関でもない。

厚生労働省は、今一度役割を徹底するべきである。

 

7,労働基準監督官の監督指導と「限度時間」規制について

 使用者側の委員から、「労働基準監督署の監督・指導において、時間外労働が45時間を超えた場合には適法であっても指導対象となるなど、過度な指導が企業活動を委縮させている。指導は簡素で分かりやすいものに。どのような時に、どういう形で指導されるのか明確に。労基署が行う指導は法制度の違反や予防に限るべきだ」という趣旨の発言があった。要は「時間外・休日労働の上限以内ならば限度時間を超えていても問題視するな」という発言であるが、使用者は指導方法をあれこれ言う前に法を守るべきである。
 労基署が調査に入った事業所では多くの法令違反が指摘されている。長時間労働をなくすことは過労死等防止の観点からも必要であり、長時間労働となる限度時間を超えることに関して指導することは当然、かつ重要である。しかし、労働基準監督官はまったく足りていない状況で、事業所に対して監督・指導が圧倒的にできていない。正規職での労働基準監督官、厚生労働技官、事務官を増員し、労働行政の機能強化をはかることこそが、必要である。

 そもそも時間外労働の「限度時間」を月45時間として、労基法の条文に明記したのは月の時間外労働が45時間を越えると過労死のリスクが高まるからである。過労死ラインは月80時間と言われるが80時間より短い時間での過労死も多く発生しており、そのことを「働き方改革国会」は重視し、過労死根絶の目標を立て、時間外労働の「限度時間」や時間外・休日労働の上限規制を制定したという経緯がある。労働基準法32条は「週40時間、1日8時間を越えて労働させてはならない」としている。まず、使用者はこの原則を厳守するべきであり、原則をどうしても超えなければ事業が成り立たないような臨時の事情があった場合の例外措置として、月の限度時間が設けてあるという認識を持つべきである。

 また、月45時間もの時間外労働となれば、週休2日制では22日の労働日の毎日2時間の残業を行うことになる。仕事による拘束時間は、労働時間8時間と昼休み1時間、通勤時間も含めると1日13時間にも及ぶ。このような労働条件では、ジェンダー平等社会など実現せず、少子化も解消しない。こうした議論があることを、使用者側も認識するべきである。

 以上の趣旨をもって設けられた限度時間について、まるで理解していないかのような使用者側の発言には呆れるばかりであるが、厚生労働省の会議でこのような発言を堂々と口にできるということは、いかに使用者が、労働基準法と労働基準監督行政を軽んじている、あるいは邪魔な存在として認識している証明である。

 最後に、厚生労働省に対し、分科会運営において担うべき役割をもう一度伝えたい。日本の労働市場は、過労死を発生させ続ける長時間労働と、短時間ながらも差別的な低賃金を甘受している不安定雇用がともに合法的に併存している不健全な状態にある。厚生労働省が行うべきことは、①現行法における労働者保護規定の弱さや瑕疵を見直し、規制強化をはかる。それこそが経済成長を促す措置であることを、使用者や官邸に理解させること、②法に基づき、労働時間に関して使用者に監督・指導する内容は、長時間労働の根絶・労働時間の短縮であること、の2点である。

 全国労働組合総連合は、厚労省が以上の方針を分科会において明確に打ち出し、議論を進めることを強く求める。

 以上

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