全国労働組合総連合(全労連)

ページの上部へ

2.妊娠・出産・育児に関する実態調査

2026/04/14

全労連女性部 5年ごとの調査(9602人回答)から見える女性労働者の過酷な労働実態2

全労連女性部は2015年4月から7月にかけて2つの実態調査を行い、9602人から回答を得ました。集約状況と特徴をそれぞれの調査について掲載します。

1.「女性労働者の労働実態及びジェンダー平等・健康実態調査」46都道府県から7,942人

2.「妊娠・出産・育児に関する実態調査」 45都道府県から1,660人

●女性たちは、仕事と家庭の両立を図るため、自身への負荷もいとわず、無理をしながら働いている。●最低生計費以下の賃金で働いている女性労働者が、正規雇用でも増えている。●差別・ハラスメントが減っておらず、ハラスメントの被害があっても解決したのは3人に1人である。●最も切実な二大要求は、賃金引上げと人員増である。●妊娠・出産・育児を理由として仕事をやめた経験のある女性労働者が、非正規雇用で約4割。●流産の経験は前回より増えている。特に看護師で突出。●「柔軟な働き方を実現するための措置」については、「短時間勤務制度」利用希望がトップ。●諸法制の整備はされつつあるが不十分であること、制度周知・活用が不十分であることなど、今後の対応が必要である。

回答者について

2020年以降に妊娠・出産した正規・非正規労働者が対象で、調査には、12単産、45都道府県から1,660人が、協力しました。全体として、組合員が93.3%を占め、その内訳は、正規88.5%、非正規(派遣、フリーランス・個人請負含む)9.3%となっています。

妊娠・出産・育児を理由として仕事をやめた経験のある女性労働者が、非正規雇用で約4割に及びました。仕事をやめた理由について、「職場に両立を支援する制度や雰囲気がなかった」と回答した人が、21.1%で5人に1人となりました。雇用形態別で見ると、正規は「職場に両立を支援する制度や雰囲気がなかった」が21.9%と最も多く、次いで「勤務時間が合わなかった」12.3%、「自分の体力がもたなそうだった」11.0%、「つわりや体調不良のため」9.6%となりました。「非正規・非常勤(無期)」は、「勤務時間が合わなかった」が最も多く26.7%、次いで「職場に両立を支援する雰囲気や制度がなかった」23.3%、「自分の体力がもたなそう」が20.0%でした。「非正規・非常勤(有期)」は、「つわりや体調不良のため」が最も多く26.5%、次いで「職場に両立を支援する雰囲気や制度がなかった」20.6%、「自分の体力がもたなそう」が14.7%でした。また、「退職勧奨・解雇された」が、全体で3.9%(前回6.1%)あり、前回調査時から減ったものの、そもそもないことが大前提であり、看過できません。妊娠期間中や育休・短時間勤務が終わって1年以内に解雇や雇止めなどの不利益取扱いを行うことは違法とされているにも関わらず、そのような違法行為が依然として職場にあることが改めて浮き彫りとなりました。さらに、「保育園にあずけられなかった」という回答も3.9%あり、前回調査時から改善されていません。国会においても少子化対策が論議されていますが、待機児童ゼロが実現されていないことが調査からもわかります。


妊娠・出産・育児にかかわってのハラスメントについては、法整備が徐々に進みつつあるものの、被害にあっている仲間が減っていません。2017年以降、マタハラ防止措置が強化され、2022年4月からは改正育児・介護休業法が順次施行され、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備や、妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認措置が義務付けられるようになりました。さらに、2025年4月、育児・介護休業法が改正・施行され、子の看護休暇の見直し、残業免除の対象拡大(小学校就学前の子を養育する保護者)等、就業規則等の見直しが義務化されましたが、ハラスメントを受けたことが「ある」は17.2%と、前回調査時より1.2%増えています。法改正にともなう具体策が、職場で徹底されていない実態があります。

ハラスメントが「ある」と答えた286人の内訳を見ると、「ことばや態度でいやがらせ」と回答した人が最も多く、「正規」73.3%、「非正規・非常勤(無期)」75.0%、「非正規・非常勤(有期)」は92.9%にものぼりました。2位以降について、「正規」では、「制度利用が認められなかった」13.5%、「異動、退職勧奨」12.0%、「妊娠・出産・育児によって低評価された」8.8%であったのに対し、「非正規・非常勤(無期)」は、「異動、退職勧奨」が16.7%、次いで「制度利用が認められなかった」と「妊娠・出産・育児によって低評価された」がともに8.3%であった。「非正規・非常勤(有期)」の2位以降は、「異動、退職勧奨」と「妊娠・出産・育児によって低評価された」がともに7.1%でした。「異動、退職勧奨」と回答した「正規」が、前回の8.8%から12.0%に増えており、さらに「非正規・非常勤(無期)」に対しては16.7%と「正規」より高くなっています。職場でより弱い立場で働いている非正規雇用の女性労働者に対して、ハラスメントの被害が強く・多くなっている現状が改善されていません。包括的にハラスメントを禁止する法制度の早期導入、ILO第190号「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」の批准が急がれます。

流産の経験が、医療・介護・福祉のケア労働者で高い

流産の経験が「ある」は全体の23.9%で、前回より1.8%増えている状況です。特に、「非正規・非常勤(有期)」は流産の経験「1回あり」が19.7%と高く、雇用の不安定さが影響している可能性が推測されます。職種別では、看護師27.9%、保育士25.2%、介護・福祉25.7%と高く、負担の大きい医療・介護・福祉等は、身体への負担や夜勤のある職種で、流産経験が全職種より高い結果となりました。
 

妊娠中の状況について、全体で「順調」と答えた人は30.8%でした。残り約7割は妊娠にともなう何らかの異常があり、「つわり」は28.8%、「貧血」17.3%、「切迫流産」20.1%と不調が多く、特に「非正規・非常勤(有期)」は「順調」19.7%と低く、不調が高い傾向にあります。職種別に見ると、看護師で「切迫流産」が25.8%と前回より2.2%増加しており、依然として高い水準にあります。看護職は夜勤や長時間の立ち仕事、責任の重さなど身体的・心理的負荷が大きく、妊娠期のリスクが高いことが改めて現れた結果です。妊娠中の労働者に対する業務軽減、配置転換、休暇制度の活用促進、上司・職場の理解向上等、母性保護及びSRHR(セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)のとりくみを一層強化する必要があります。

子育てに関して、パートナーの育休取得率は、「パートナーがとった」と「自分をパートナーがとった」を合わせて「正規」で21.7%【前回5.3%】と、約4倍に増えました。パートナーの育休取得期間は、「正規」においては、1か月未満は49.8%【前回59.9%】、3か月未満は75.8%【前回73.6%】、1年未満が95.6%【前回95.8%】という回答でした。前回調査時と比べると1か月未満は約10%減少し、取得期間がやや長期化していることから、パートナーと共同で子育てしようという意識が進んだと考えられます。

妊娠・出産・育児の際に、制度や権利が使いづらい・使えない・知らされていない

また、様々な制度、権利が整備・保障されてきたものの、職場では実際に妊娠・出産・育児の際に使いづらい・使えない・知らされていないという結果が明らかになりました。「知らなかった」と回答したのは、妊娠中に限ると、母性健康管理カードは46.5%(前回調査時52.8%)、時間外労働の免除は26.0%(同14.9%)、休日労働の免除は32.7%(同12.3%)、深夜業の免除は12.5%(同2.4%)、簡易業務への転換は28.6%(同11.4%)、妊産婦の通院休暇(何度かとった・とらなかった人1100人に聞いた)は30.9%(同23.6%)、妊娠中の通勤緩和のための勤務時間短縮等は58.2%(同19.2%)、妊娠中の休憩時間延長等は79.1%(同38.5%)、妊娠中の作業の制限・勤務時間の短縮・休業等は47.9%(同21.7%)となっています。このほか、「知らなかった」との回答は、小学校就学前の子をもつことによる深夜業の免除18.5%(同21.4%)、同時間外労働の制限・免除は32.6%(同43.2%)となっています。

妊娠・子育て中の労働者の権利を告知・説明することを使用者に義務付けるなど、必要な時に制度や権利を実際に使えるように職場で周知を広げることや実際に使える職場づくりが求められています。

両立支援制度の改善に向けて、子どものための休暇制度拡充を要求

両立支援制度の改善に向けての要求では、「子どもの看護休暇の日数増」62.0%、「参観日、PTA活動など家族的責任を果たすための休暇の新設・拡充」49.3%、「子どもの看護休暇の対象年齢引き上げ」39.9%と、前回調査時と同様に、子どものための休暇制度の拡充を求める回答が上位3つを占めました。この傾向は非正規も同様です。職種別における特徴は、看護師では「深夜業免除の要件の削除」及び「残業規制の期間延長」を求める回答が、他の職種に比べるとかなり多く、教職員については、「代替要員の配置の義務化」を求める回答が上位を占めました。

「柔軟な働き方を実現するための措置」として、短時間勤務制度の利用希望がトップ

2025年10月から義務化された3歳以上就学前までの子を持つ労働者に義務化された「柔軟な働き方を実現するための措置」について対象年齢の子がいる労働者925人の回答では、「短時間勤務制度」を利用したい(している)という回答が、正規は56.5%で、「非正規・非常勤(無期)」も62.5%でトップでした。「非正規・非常勤(有期)」では、上位が「時差通勤」50.0%、「短時間勤務制度」43.8%であり、子育て中の勤務時間や通勤時間帯に悩みを抱えていることがうかがえます。また、どの職種においても、「短時間勤務制度」を求める回答が多く、子育て中の労働者にとって、長時間労働の改善を求める声が最も強いことが現れています。

未来へ

全労連女性部は、これらの調査から見えてくる女性労働者の実態をもとに、「対話と学びあい」で仲間をふやしながら、連帯して様々な要求を前進させていきます。

ハラスメントの被害が改善されていません。職場でのハラスメントも暴力も差別も根絶することは、人権を守ることにつながります。ILO第190号「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約」の批准、包括的ハラスメント禁止法の早期導入、日本にいても世界水準で働けることを求めて、請願署名2年目のとりくみを広げます。

次に、男女の賃金格差、昇進・昇格等のキャリアアップの格差、正規・非正規雇用と労働時間・生活時間の問題等、ジェンダー不平等につながっている現状を改善していくことも大きな課題です。特に、26春闘で、医療・介護・福祉などケア労働者の大幅賃上げ・待遇改善、そして非正規の均等待遇を前進させることが重要です。ケア労働者の専門性に見合った賃金水準とそれをかなえられる報酬改定を求めて、そして、日本全国どこでも安心して医療・介護・保育等のケアを受けられるように運動をすすめます。非正規労働者の要求実現と組織化を進めます。最も大切なことは、要求の一致点で強く連帯して、ともに運動を前へ進めることです。

女性労働者の実態をふまえて、改善に向け実効ある施策をすすめるなど、ジェンダーの視点から諸制度を見直すこと、安心して妊娠・出産・育児や介護のできる法改正を求めます。

すべて表示する