全国労働組合総連合(全労連)

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事務局長の部屋

【月刊全労連連載】It’s Union Time「賃上げを自分たちの手で」(2026年2月号)

2026/01/15
月刊全労連
春闘

実質賃金の国際比較。このグラフをじっと見るたびに怒りが込み上げてくる。

OECD が公表するデータなのだが、2024年分が更新され、英語表記のデータをもとに、事務局のメンバーに早々にグラフ化してもらった。1997年、日本の平均賃金はピーク。その1997年を100とした場合、2024年の実質賃金指数は、日本が89.4なのに対し、韓国152.0、イギリス137.0、ニュージーランド132.2、スウェーデン127.3、フランス124.1、アメリカ123.3、ドイツ110.0と、他国は確実に実質賃金を引き上げてきた。日本だけが27年間で10% 実質賃金を低下させている。

実質賃金は、その時の物価を考慮した賃金。24春闘、25春闘でおよそ30年ぶりとなる賃上げを私たちの声で実現させたが、その水準では物価高騰に賃上げが追いつかず、どんどん生活が苦しくなっている。極度の人手不足が続くなか、賃上げ環境は労働者側が売り手となり、優位に立っているはずなのに賃金を上げられないのが現状だ。

大企業労使によって歪められる春闘

その原因は、賃金決定の大原則である労使対等決定の形骸化にある。日本独特の賃上げ交渉である春闘は、トヨタなど大企業の労働組合によって歪められている。トヨタ自動車労組など金属産業の労組が加盟する金属労協は12月3 日、26春闘において昨年と同額の1 万2000円(約4 %)以上を要求することを決めた。これは、連合が示す「5 %以上」にも達しない低水準だ。

「トヨタ労働組合は、09年に4 千円を要求したが回答はゼロ、10 ~ 13年は要求そのものを放棄した。14年になって4 千円を要求し2700円の回答を得たが、20春闘はベアゼロに抑えられた。平均賃上げ率が『約3 %』というが、6年間は賃上げゼロだった。(略)トヨタは、『成長と分配の好循環』というが、トヨタ労組を支える評議員らさえも、賃上げが『不十分』と答えた人が3 割も占めている。世界一の自動車メーカーのトヨタがこんな賃上げでは、金子議長(全属労協)が嘆くように『OECD 主要先進国中、最も低い水準』になるのは当然だろう」(労働ジャーナリスト柿野実・連合通信、2025年12月11日付 NO. 10037)。

私たち自身で「賃上げ」をつくる

それならば、私たち自身のたたかいで「賃上げ」をつくる以外にない。本来、すべての労働者の賃上げをめざす春闘は、労働組合に結集する労働者が勝ち取ったより高い賃上げの成果を「世間相場」として、未組織の職場や労働者の賃金に波及させる仕組みとして機能させてきた。ところが、大企業労組の春闘が相場を引き上げる気がないことは前述した通りだ。その結果、四半世紀以上にも渡る「失われた30年」の経済をつくり出してきた。この流れを変えるには、私たちたたかう労働組合が自らの手で「賃上げ」をつくる以外にない。労働者自らが、労働組合に加わり、賃上げを要求し、団体交渉して勝ち取る流れを日本社会の当たり前にしていくことが必要となっている。

回転寿司ユニオン・スシロー分会(宮崎)の若い仲間は組合員を1 人から20人まで組織し、25春闘で時給60円の賃上げを実現させた。東京新宿一般労組に所属するスーパーみらべるの仲間は、3年前に労働組合を結成し、1100円程度だった時給を1400円まで引き上げさせている。年9 %超えで3年で27.3%の賃上げである(「学習の友」12月号)。そうした実践をこの間数多くつくってきた。

一方で、非正規労働者への置き換えが進み、近年ではより細切れ労働を強いるスキマバイト、フリーランスなど、低賃金・無権利な労働へとどんどん導かれている。その多くが高齢者で、低賃金で働かせられる事態が急速に広がっている。2023年には65歳以上の就業者数が914万人と過去最多を更新し、70~74歳の就業率は34% に達している。65歳から74歳の労働参加率は、2022年時点で男性51.8%、女性33.1% である。低年金のもと働かざるを得ず、低賃金や悪条件であっても雇用を得ることを優先せざるを得ない。日本の低賃金構造は、資本側の意図的な戦略によってつくられている。打開するには、低賃金で働かせられている労働者をたたかう労働組合に組織化し、自ら賃上げを要求し、団体交渉で変えていく新たな流れをつくること以外に実現できないと考える。

そのたたかいが26国民春闘方針で提起した「みんなで一緒に賃上げ交渉しよう」だ。「対話と学びあい」で仲間を増やして、ストライキを背景とした賃上げ交渉に全力をあげよう。

全労連事務局長 黒澤幸一

(月刊全労連2026年2月号掲載)

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