全国労働組合総連合(全労連)

ページの上部へ
お知らせ
  • ホーム
  • 【談話】経団連「2026年版経営労働政策特別委員会報告」の発表にあたって

【談話】経団連「2026年版経営労働政策特別委員会報告」の発表にあたって

2026/01/21
事務局長談話
春闘

2026年1月21日

全国労働組合総連合

事務局長 黒澤幸一

1月20日、日本経団連は「2026年版経営労働政策特区別委員会報告」(以下、「報告」)を発表した。序文では「『春季労使交渉における経営側の基本スタンスを示す』との報告書本来の原点に立ち返り、全体構成を見直した結果、『新しい経労委報告』となった」としているが、「報告」で示されているスタンスは、それぞれの企業の努力による労働生産性の向上と賃上げ原資の確保、労働者の能力・実績に応じた賃金支払いの実施であり、新自由主義路線を継続しようとするものに他ならない。

「報告」では「『成長と分配の好循環』に不可欠な『構造的賃金引き上げ』の実現に向け、経団連は2023年以降これまでにない熱量と覚悟をもって賃金引き上げのモメンタムの維持・強化に取り組んできた」としている。しかしこの間、名目賃金は上昇したものの労働者の生活改善に直結する実質賃金は、「2022年4月以降マイナス基調が続いている」としている。その背景のひとつには賃金引き上げを「人への投資」と位置づけ能力・実績主義を強めてきたこと、総額人件費や企業の支払能力など「賃金・処遇決定の大原則」に則った賃金政策を進めてきたことがある。その結果、例えば経営悪化に苦しむ医療や介護分野で働くケア労働者の賃金水準は他の産業と比べても著しく低い水準におかれ、それが人手不足や地域における医療・介護の崩壊にもつながっている。

また、「報告」では賃上げについて、制度昇給(定期昇給など)を見直すことやベースアップについて世代別の配分を示唆していること、賃金カーブ全体の検討が必要であることなどにふれている。同時に最低賃金について大幅な引き上げ状況を「自社にとって最適な賃金水準・賃金カーブを検討する契機とすることは有益」とするなど、総額人件費を押さえ込もうとしているように見える。経団連は「コストプッシュ型インフレ」(資源などの高騰による物価高騰)から「デマンドプル型インフレ」(需要が供給を上回り物価が上がる)に移行する必要があるとしているが、それを実現するカギはケア労働者をはじめすべての労働者の大幅賃上げや全国一律時給1,700円以上の最低賃金制度を実現することに他ならない。

「報告」が示している賃上げの基本スタンスは「賃金引き上げ原資の安定的な確保に向けた『生産性の改善・向上』」であり、そのために「労働投入の効率化」を図る「働き方改革」の深化とAIやDX等のデジタル技術を活用して製品・サービスの高付加価値を生み出すことにある。この間の労働政策審議会の議論でも使用者側委員が裁量労働制の拡充を強く要望してきているが、今回の「報告」でもより柔軟で自律的に働ける環境整備が必要だとして「裁量労働制の拡充は喫緊の最重要課題」と位置づけるとともに、「労使で対象業務を決定できる仕組みの創設を強く求めたい」としている。これは言い換えれば、デジタル技術の活用で労働者を減らすとともに、必要なときに必要なだけより安く使える労働者が確保できる仕組み作りをすすめるとともに、「働き手の希望に応える」ことを口実に労働者を長時間・過密労働に駆り立てようとするものである。

「報告」では「『時間外労働の削減』に資する取組みに企業が過度に注力したことが付加価値の国際的な低迷を招いた可能性がある」と指摘し、労働者から「もっと働きたい」という声が出されているとしている。しかし、全労連・労働法制中央連絡会が実施した「働く時間に関して本音を語る緊急アンケート」の結果でも明らかなように、「もっと働きたい」との回答はごくごくわずかでその理由も「生活が苦しく収入を増やしたい」という理由であり、6割の労働者は「労働時間を減らしたい」とし、自らの健康や家族との時間を大切にできる働き方を望む声が圧倒的に多いことがわかっている。必要なのは物価上昇を上回る賃上げと労働時間の短縮であり、能力・実績主義の強化による格差の拡大や裁量労働制の拡大による長時間・過密労働ではない。

最低賃金については、「全都道府県で初めて1,000円を超えた」とし、目安を大幅に上回る答申が増えた背景を「物価上昇による生計費の影響が特に重視された」とする。しかし、発効日の遅延・分散化について「最低賃金引上げ効果の波及の遅れを懸念する声が上がっている」とするに留め反省はない。他方、「中小企業支払い能力の改善・向上」が引き上げには必要と強調し、生存権保障の観点から「労働者の生活の安定を図り経済の向上めざす」最低賃金制度の目的を没却するものと指摘しなければならない。

「報告」では労働移動の積極的な推進が必要だとしている。具体的な内容として雇用保険の所定給付日数の見直しや再就職手当の給付率改定をあげているが、その解説には「所定給付日数分を受給し終えてから再就職するインセンティブにつながっている」「(再就職手当の)給付率を改定することで基本手当の受給継続よりも再就職することのインセンティブ効果の向上が期待される」としている。加えて、「多様な人材」の労働参加の促進が必要だとしている。働きたい人が安心して働ける環境を作ることを否定するものではないが、労働者自身によるキャリア形成や自己研鑽、あるいは兼業・副業の推進などをあおり、労働力を確保したいという企業の勝手な都合で労働者を使い捨てするようなことがあってはならない。

内部留保は637.5兆円(前年比6.1%増)と13年連続で増加し過去最高となっている一方で労働分配率は他の先進国と比べても「日本の低下幅が一番大きい」と経団連自身が認めている。

全労連は26春闘で、「みんなで一緒に賃上げ交渉しよう」と呼びかけるとともに、「全国一律最賃と賃金引き上げに向けた中小企業政策の提言(案)」について全国各地で経営者と懇談を行うことを提起している。そしてそれらのとりくみを通じ、労働者の大幅賃上げ・底上げを実現し賃金が上がる国に転換すること、賃下げなしの労働時間短縮やジェンダー平等の実現でやりがいを持って働き続けられる職場・地域を作ることをめざす。

内部留保の還元による大幅賃上げの実現、すべての労働者がやりがいを持ち、安心して働ける職場とワーク・ライフ・バランスの実現のため、大企業が社会的責任を果たすよう強く求める。

以 上

すべて表示する