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30年来の友好続く米労組UEの新執行部とオンラインで懇談

2025/12/19
国際連帯

全労連は12月18日、今年8月の第79回全国大会で選出された米UE(電気無線機械労働者組合)の新執行部とオンラインで懇談を行いました。UEからは、スコット・スローソン議長、アンドリュー・ディンケラカー書記長、キンバリー・ローソン組織局長、マーク・マインスター元組織局長が、全労連からは秋山正臣議長、髙木りつ副議長、黒澤幸一事務局長、布施恵輔事務局次長、名取学常幹が参加しました。

全労連とUEは、今年8月の原水禁世界大会への代表参加や2024年4月にシカゴで行われたレイバーノーツ大会での交流など、30年以上に渡り友好と連帯を築いています。

画面左上から、マーク・マインスター国際局長、全労連、スコット・スローソン議長、アンドリュー・ディンケラカー書記長、キンバリー・ローソン組織局長

日米のたたかう労働組合の友情を確認

秋山議長が冒頭であいさつし、「全労連は来年のNPT(核不拡散条約)再検討会議とレイバーノーツへの参加準備を進めています。互いのたたかいを共有できる機会に感謝します」と述べました。

続いてスローソン議長は、UEと全労連の長年にわたる関係について、政党や資本からの独立、組合民主主義という「たたかう労働組合」の原則を共有してきたことが、その基盤にあると語り、両組織の価値観を改めて確認しました。

また、今年8月にはUE506支部のジョン・マイルズさんが全労連の招きで原水爆禁止世界大会に参加し、名取学常任幹事が第79回UE大会に出席するなど、相互交流が続いています。マイルズさんは広島での経験を職場の組合員に伝える機会も設けているとのことです。

世界中の労働者が厳しい状況に直面する中、今後も協力関係を深めていきたいと感謝の言葉が述べられました。

第79回UE大会にはシカゴ市長であり、シカゴ教員組合の組合員でもあるブランドン・ジョンソン氏が来賓として訪れた(名取常任幹事撮影)

UEの運動に学びながら前進する全労連

黒澤事務局長は、日本経済の状況や政権の動き、たたかいの方向性、レバカレについて報告しました。

日本で実質賃金が下がり続けている背景には、非正規労働者の増加と組合組織率の低下があると指摘し、対抗策としてUEに学びストライキでたたかっていることを紹介しました。政治面では、保守極右的な高市政権のもとで排外主義が強まり、憲法改悪や武器輸出、労働時間規制の緩和など、労働者の権利侵害が進められようとしていると述べました。

全労連は「対話と学びあい」を軸に、労働者同士をつなぐボトムアップの参加型民主主義を広げていると説明しました。さらに、2022年のレイバーノーツ大会から学んで準備してきたレバカレ2025では、700人が参加し、70の分科会で草の根の対話が広がったと報告し、職場からの運動が日本の労働運動を変えると強調しました。

全労連の活動を紹介する(右から)秋山正臣議長、黒澤幸一事務局長、髙木りつ副議長、布施恵輔事務局次長

日米の労働者を取り巻く状況、「非常によく似ている」
——スコット・スローソン議長

これに続き、スコット・スローソン議長は、日本とアメリカの政治情勢や労働者を取り巻く状況について、「非常によく似ている」と語り、次のように詳細を語りました。

トランプ政権のもとで、予想されていたとはいえ、団体交渉権や組合の権利、多様性政策が後退しています。移住労働者のコミュニティに対する大規模な攻撃が続き、学校や教会を標的にICE(移民税関捜査局)職員による取り締まりや収監が強化されており、UEはまさに反トランプ運動の最前線に立っています。

実際に、この会談の前日にはシカゴで、ストライキ中の労働者のピケットラインから移民労働者が引き抜かれる事態も起きました。政府の狙いは労働者同士を分断し力をそぐことにあり、団結を強めて対抗する必要があります。

また、新政権によって経済は不安定化し、関税政策がその影響を深めています。輸入の停滞によるサプライチェーンへの悪影響や、食料品・生活必需品の物価高騰が進む一方、賃金の伸びは抑えられ、物価上昇に対応できていません。

さらに、国民の権利侵害、保護施策の後退も深刻で、とりわけ裁判制度を含む民主主義の基盤への攻撃が大きな問題です。

富裕層への課税強化や移民排斥反対を訴えるUEの組合員(2025年8月のUE大会で名取常幹撮影)

トランプ政権に対抗する米労働者の動き

トランプ政権に対し、全米で大規模な抗議行動が広がっています。
「No Kings(王はいらない)」デモには約700万人が参加し、米国史上でも例のない規模となりました。

移民たちも自らの権利を守るため立ち上がっています。とくにロサンゼルス、シカゴ、ミネアポリス、ニューヨークでは運動が大きく広がり、地位社会が団結して移民収監車を止めたり、収監車が現れた際に車のクラクションで知らせ合うなど、日常の中での実力行使による抗議が続いています。

こうした厳しい状況の背景には、労働者の要求を真正面から代表する政党が存在しない現実があります。一方で、地方選挙では民主党進歩派の勝利が相次ぎ、最近ではニューヨーク市長選で大きな勝利を収めました。

対抗運動の中心を担うUE

UEは「たたかう労働組合」として、トランプ政権に対抗する運動の重要な役割を担っています。
新たな共同組織「Union for Democracy(民主主義のための労働組合)」には多くの組合員が参加し、2027年メーデーに向けた「May Day Strong Coalition」にも取り組んでいます。主要都市や産業で、ストライキを軸とした抗議行動の組織化を進めています。

また、トランプ政権のベネズエラ政策に対する声明の準備も進めています。ベネズエラへの攻撃は石油資源の収奪が目的であり、本来は社会保障に使われるべき予算が軍事侵攻に使われていることの異常さを告発しています。民主党・共和党の双方に対し、戦争政策をやめ、国民と労働者のための政策へ転換するよう呼びかけています。

西海岸北部に初のUE支部

UEは組織化の面でも成果を上げています。ここ数年で3万人以上の大学院生を組織し、今年8月にはイリノイ州シカゴのノースウエスタン大学で大学院生組合が結成されました。

さらに、オレゴン州ポートランドでは、若者を中心としたスーパーマーケットの組織化に成功しました。この職場はもともと独立系組合でしたが、UEのたたかいに共感し加盟を決断。労働協約獲得キャンペーンに成功し、賃金引き上げを実現しました。あわせて、西海岸の北部で初となるUE支部が誕生したことも大きな前進です。

迫られる協約改定と今後の課題

今後数年間で、大学院生組合やスローソン議長の出身支部のワブテック、鉄道の全国協約など、多くの労働組合が労働協約の期限切れを迎えます。厳しいたたかいが予想されるなか、使用者側はトランプ政権の反労働組合姿勢や、反労働組合的な委員に入れ替えられた全米労働関係委員会(NLRB)を利用し、団交拒否や労働者保護法を無視した攻撃を強めようとしています。

とりわけ大学院生組合の協約は大きな争点です。一部の大学は、大学院生の組合加入そのものの適法性を争ってくる可能性があります。UEの大学院生組合員の50%以上は留学生であり、移民攻撃が激化する中で、声を上げたくてもキャンペーンへの参加が難しい状況もあります。

2016年、バイデン政権下で、大学院生は全米労働関係委員会によって交渉対象として認められ、そこから組織化が広がっていきました。現在は対象から外されていないものの、将来的に否定される可能性も否定できません。だからこそ、日常的に団結を強め、ストライキでたたかえる力を蓄えていくことが重要です。

組織化戦略は「労働者が労働者を組織する」

スターバックス労組勝利のカギは組織化と支持拡大

秋山議長は、スターバックス労働者のたたかいの状況を質問しました。

マーク・マインスター元組織局長は、スターバックス労組について、物流部門まで組織化が広がり、たたかいは着実に前進している一方、厳しく長期にわたる闘争になるとの見通しを示しました。その理由として、全米労使関係法では交渉が店舗ごとに行われ、産別協約を結ぶことができない制度的制約を挙げました。

スターバックスでの組織化戦略は、「労働者が労働者を組織する」ことを軸にしています。プロのオルグや弁護士に組織化を依存するのではなく、労働者自身が組織化や提訴の方法を学び、教え合っている点が特徴です。圧倒的多数を組織し、利用客からの支持を広げることが、最終的な勝利につながると語りました。

また、キンバリー・ローソン組織局長からは、反労働組合的な高市政権に対し、日本の現場でどのようなたたかいや反撃が起きているのかについて全労連に質問がありました。またスコット・スローソン議長は、アメリカの関税政策が日本に与える影響や、全労連が取り組む過労死防止運動に強い関心を示しました。

交流これからも

最後に、来年4月にニューヨークで開催されるNPT再検討会議や6月のシカゴで開かれるレイバーノーツ大会で、組合員同士の交流を深めることと、双方の国際交流と連帯のさらなる発展を約束しました。

(全労連国際局)

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