26国民春闘新年号 座談会「みんなで一緒に、賃上げ交渉しよう」

26国民春闘は「みんなで一緒に賃上げ要求しよう」をスローガンに、すべての職場で要求を練り上げ、仲間を増やしながら、団結して大幅賃上げを勝ち取ることをめざします。11月から対話と学びあい推進月間(〜2月)が始まっています。職場での対話を大いに広げましょう。
ゼロから労働組合を結成して、仲間を増やしながら、職場を変えているJMITUアルファベットユニオン支部委員長の小林佐保さんと首都圏青年ユニオン回転寿司ユニオン委員長の長友祐士さんにお話を聞きました。
「労働組合なら解決できる」一人でも立ち上がった
小林 2023年初頭にGAFAM(ガーファム)で一斉レイオフがありました。アルファベットは、グーグルを傘下に持つ米国の持株会社で、従業員の6%(日本法人では100〜200人)がレイオフの対象とされていました。米国法人では、1月にロックアウト解雇があり、同僚が突然職場を去りました。情報が錯そうして、私たちはどうなるのか不安が広がっていました。労働組合をつくって、正しい知識を広める必要があると思いました。
長友 2022年に回転寿司ユニオンが結成され、賃金計算が1分単位になったことや朝礼前の準備時間も労働時間として認められたことが、店舗内でも話題になっていました。大学生が変えたと知って、感激しました。
私はパワハラを受けたことと、経験が賃金に反映されないことに不満を感じていて、頭の片隅でいつも「問題が起こったらユニオンに相談しよう」と思っていました。
小林 労働組合のイメージってどうでしたか?
長友 それまで労働組合は過激で怖い印象があったけど、本当は労働者の味方だと実績が示していると思いました。
小林 私は以前夫が鬱うつになった時に相談したときの対応や、結成に向けた相談時に、労働組合がリストラ対策や雇用の安全について実績があることがわかり、「役に立つものだ」と思いました。
役に立つ情報を発信して信頼勝ち取る
小林 結成時は、職場の友人からは「危ないものには関わりたくない」と言われて孤独でした。まず支部のホームページを立ち上げました。日本国内の法律を知る機会が少ない非日本語話者が社員の半分以上を占めています。役に立つ情報を英語で誠実に発信して労働組合の実績を宣伝しました。
長友 最初は一人でたたかう覚悟でしたが、パワハラの目撃者がいた方が団体交渉が有利に進むと聞いて、ベテランの渡辺さんに団体交渉への参加をお願いしたら「組合に入るよ」と言ってくれました。
会社のパワハラ相談窓口は、社員を守ることが優先され、アルバイトからの相談は解決に至らないことが多々あって、渡辺さんもそういう経験をしていました。
25春闘は店舗従業員の過半数の23人になった組合員で、賃上げを求めて2回のストライキを決行。時給60円の賃上げを実現しました。会社の妨害もあったけど、宮崎県労連の頼もしい支援や車道からの応援、高校生アルバイトがその場で加入したことなど、初めてのストライキは「お祭り」みたいでした。


職場が好きだからもっと良くなってほしい
長友 特に大きな不満は、調整時間給(10〜20円)の付与が店長の好き嫌いで決まることです。団体交渉で、公平な評価制度を要求したところ、全店統一の調整時間給制度が導入されることになりました。
小林 全店舗共通の制度、すごいですね。
長友 実は、大学生の時からこの制度が必要だと思っていて、団体交渉で提案しました。
小林 その頃からの野望だったんですか?
長友 はい。スシローが大好きだから、すべての労働者が経験や能力に見合った賃金がもらえたら、やりがいで溢れる職場になるだろうと、そのために何が必要かを当時から考えていました。それを会社に直接話せるのが楽しいです。
小林 労働組合は問題点を指摘するから、会社のことを嫌いだと誤解されがちだけど、実際会社が好きでないと続けられないですよね。
長友 絶対そうです!
労働組合は魔法みたい
小林 アルファベット社の退職勧奨には多くの人が応じ、拒否した人は「追い出し部屋」に異動となり、低評価による賃下げ・一時金を削減されました。組合を結成し、交渉や法的措置で対抗して、会社の態度は変わりました。
例えば、退職勧奨された労働者が組合を通じて「退職の意思はありません」と通知したところ、態度は一変。雇用が継続となりました。賞与の減額も翌年には翻りました。
会社の急変に拍子抜けしたけど、労働組合が職場の希望になると感じました。
長友 今までは「お金がない」で片付けられていたのに、組合が言ったらすぐに空調が修理され、換気用の扇風機が設置されました。組合は魔法みたいだと感じています。
小林 東京都労働委員会への団体交渉拒否の救済申立や解雇撤回裁判など、ここに至るまでは結構な頑張りがありました。
長友 初めてのストライキ後の急激なシフト減らし、組合敵視の発言などでスシローも、都労委に申立をしています。

「自分を守る盾」「その感覚が人間の尊厳にとって大切」
小林 現在社内で行われているPIP※は解雇したい人が対象にされ、精神的圧力や負担で退職に追い込まれています。これを止めさせたいです。
労働組合がなかったら、労働者は目立たないようにすることばかり考えて、まるでゴジラに踏みつぶされないように隠れて逃げるしかなくなってしまう。団結して立ち向かえば、自分の人生のハンドルをコントロールできる。そういう感覚を持つことが人間の尊厳にとって大切だと思います。
長友 人生の舵取りは自分でしなきゃ。労働組合は、自分たちでより良い職場をつくるヒーロー、職場で孤立させないコミュニティです。大学を卒業して社会に出るときの関心事だった、「自分を守る盾」そのものです。
26春闘は、回転寿司業界の組織化を進めたいです。働き方に見合った大幅な賃上げを求めて、労働者のヒーローとしてストも辞さない強気の交渉をしたい。はま寿司からも労働相談が来ているので、一緒にたたかえることを期待しています。
小林佐保さん JMITU Alphabetユニオン支部 委員長
2019年エンジニアとしてアルファベットの子会社であるグーグルジャパンに入社。2023年2月のレイオフをきっかけに組合を結成、執行委員長。団交拒否を続ける会社と都労委への申立や組合員の解雇撤回を求める裁判も続けている。現在組合員は43人にまで増えた。渋谷区労連に加盟。
長友祐士さん 首都圏青年ユニオン回転寿司ユニオン 委員長
大学生時代からスシローでアルバイトを始め、卒業後に一般企業に就職したが退職し、再びスシローへ。勤務歴は計8年以上、時間帯責任者としてスシロー宮崎恒久店の核になる存在。2023年回転寿司ユニオンへの相談をきっかけに加入、25春闘では、従業員の過半数を組織化してストライキを決行。60円の時給引き上げを勝ち取った。宮崎県労連に加盟している。
(2026国民春闘号外 2025年12月15日発行)
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