【月刊全労連】「絶対に全員一律のベースアップは行わない」と宣言されたわたしたちの労働組合が、ストライキできるようになるまで
私たちのたたかいとストライキ
はじめて真剣に考えたストライキ
今年第29期を迎えるシーエックスカーゴ労働組合が、初めてストライキについて真剣に考えたのは今から3 年半前の秋闘でのたたかいだった。日本生協連の物流子会社であるシーエックスカーゴは各地域生協の宅配や、店舗に向けての仕分けを行い納品することが主な役割なため、「私たちの労働組合はストライキはできない」というのが労働組合員の共通認識だった。
その考え方が大きく変化したのは、22秋闘で社員全員のベースアップを強く訴え、たたかっていた時だった。その最中で当時の常務取締役から、「シーエックスカーゴは今年も、これから先も絶対に全員一律のベースアップは行わない」と宣言された。その時私は、これはもうストライキを構えたたたかいをすると心に決めた。ちょうどその頃から、オープンショップの当労組では「ストライキくらいしてたたかってほしかった」という理由で脱退する人が出てきていたこと、そして一部の執行部メンバーは、上部団体である生協労連の学習会などでストライキについて学習を始めていたこともあり、三役で「ストライキについて真剣に取り組んでいこう」となったのである。
ストライキ実施への第一歩
規約を確認すると、「労働組合の最大の武器はストライキである。しかし私たちは話し合いで解決する」と記されており、これではストライキを背景にたたかうことができない。そこで、執行委員や労働組合員向けに学習を進めていくと同時に、27期定期大会での規約改定に向けて準備を進めることになった。
そして初めてのスト権投票で労働組合員の多くから賛同してもらい、無事にストライキ権を確立して迎えた団体交渉。経営側にとっても初めてストライキ権を確立されての団体交渉である。社長は会場に入ってきてから終始機嫌が悪い様子で、明らかにストライキ権を確立するという行動を起こした労働組合に怒っていた。その交渉でも全員のベースアップ回答はなかった。

ストライキ配置日を2024年 2 月 9 日と決めていたが、執行委員も初めてのことでの不安から、 2 月 9 日では早い、 2回目交渉後にするべきという意見が多く出され、結果 2 月 9 日のストライキは決行せず、宣伝行動日として位置付け、チラシ配布行動を取り組むこととした。 2 回目団体交渉で提示された再回答では、労働組合始まって以来の全員のベースアップ回答が出たのである。月給職3000円、時給職20円。後から思えばまだまだ交渉の余地はあったかもしれないが、初めての全員のベースアップ実現に舞い上がり、即妥結へと進んでしまったのである。
前年の団体交渉の反省をいかす
翌24年のたたかいでは、ストライキ行使を計画通りできなかった前年の失敗から、執行部、そして労働組合員の意思統一を最重点に、たたかいに向かうことを決意した。今回初めて我々の要求根拠や想いを伝えるべく 1 回目の交渉を「要求提出団交」として位置付けた。参加者全員が発言ワークショップで自分たちの発言をブラッシュアップし合い、交渉の場では涙に声を詰まらせて発言する労働組合員もいた
その声を受け止めての回答は、当初の指定日 2月14日から3 週間遅れた3 月 7 日に提示された。月給食5000円、時給職50円の回答である。初めて全員のベースアップを勝ち取った昨年を上回る額の回答だが、要求金額には程遠い。そこで、統一行動日の3 月13日に、この回答では私たちの生活は守られない、私たちはストライキを配置してたたかうことを書いたチラシの配布を会社入口で行った。 3 月21日の 2 回目交渉では全く前進回答が出ず、委員長が3 月28日にストライキを配置することを宣言して終了した。その後はストライキに向けて準備を進め、再回答期限日に人事から「再回答はない、ストライキ決行だよね?」と確認された。委員長の意思も強く固まった瞬間である。
そして、ストライキの決行へ
ストライキ当日の朝、本社正門前で出勤してくる社員へ向け宣伝行動を開始した。執行部から5人の終日指名ストライキで、当日勤務が休みの労働組合員、生協労連や関東地連からの応援も含め20人が参加。その後日本生協連本部前に移動し、更に応援に駆けつけてくれた仲間も加わり36人での宣伝行動となった。応援に駆けつけてくれたたくさんの仲間、そしてストライキには参加はできなかったが、同じ思いでたたかってきた労働組合員がここにいることが、力強い支えとなっていた。このストライキ行動には、 2 回目交渉から初めて組合活動に参加をした労働組合員も参加していた。自分たちの生活を守るためには、5000円のベースアップでは足りないと、自ら立候補して参加してくれたのである。この若い労働組合員は、来期で執行部の仲間に加わる予定となっている。

今回のストライキ行動の3 日後の3 月31日、会社側から社保加入者 2 万円、社保未加入者 1 万円の特別感謝金支給の提示がされた。この回答は労働組合員全員が満足できるものではなかったが、執行部として今回のストライキ行使の成果として受け止め妥結を判断し、また来年のたたかいに向け新たにスタートを切ることにしたのである。
シーエックスカーゴ労働組合書記長 和田 知恵
(月刊全労連2025年9月号掲載)
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