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【秋田県労連の見解】秋田地方最低賃金審議会の答申について 半年遅れの最低賃金改正は80円引き上げの効果は半減し労働者の尊厳を傷つける

2025/08/27
賃金・最低賃金
くらし
非正規労働者
青年
女性

秋田地方最低賃金審議会は8月25日、2025年度の最低賃金について80円(8.41%)引き上げ、時間額1,031円とすることを答申しました。同時に、審議会は経営側の主張に寄り添い、「準備期間」を口実に半年も発効を先送りしました。今年度の改定審議は中央最低賃金審議会の日程が遅れ、各地方最低賃金審議会の審議に影響が出ていますが、3月31日発効は、遅延の許容限度を超えています。全労連に加盟する秋田県労連の見解を紹介します。



2025年8月26日
秋田県労働組合総連合幹事会

【見解】最低賃金に関わる秋田地方最低賃金審議会の答申について

過去最高の引き上げに敬意を表します

秋田地方最低賃金審議会は8月25日、2025年度の最低賃金について80円(8.41%)引き上げ、時間額1,031円とすることを答申しました。この引き上げ額は過去最高額です。8月25日時点で1,031円の金額はCランクで一番高い金額であり、最低賃金の引き上げを求める運動と世論の広がりが後押しした結果と考えられます。
同時に大きな問題を含む答申であったことが、金額が大幅に引きあがった事の喜びを半減させる結果となっています。審議会は最賃の発効を経営側の主張に寄り添い「準備期間」が必要との理由で2026年3月31日としました。年度の最終日まで発行されない異常な内容です。 秋田県労連は、過去最高の引き上げとなったことを評価しつつ、それでも労働者の生活実態と生計費から見てまだまだ低いこと、発効日を年度末にすることで最賃改定の効果を失わせ、それどころか半年以上にわたって大多数の他県が1000円以上となる中、秋田だけが全国最下位の951円にとどまることなどを踏まえ、秋田労働局長に異議申出を行い、改めて審議をしていただくよう求めます。

時間額1,031円では人間らしく生き、働くことには厳しい水準です

秋田県労連をはじめ東北各県が実施した最低生計費試算調査(2016年実施・2022年アップデート)では、時間給換算(月173.8時間)で時給1,459円、一般の労働者の所定内労働時間(月約150時間)では1,691円となります。秋田県で働き暮らしていくために、少なくとも時給1,500円以上が必要であり、このことを審議会でも訴え、最賃の大幅引き上げを求めてきました。また、秋田県労連・秋田県春闘共闘懇談会が行った街頭アンケート・対話活動では、最賃はいくらが適正かの質問に対し、「951円0人、1,000円23人、1,300円13人、1,500円14人」の結果でした。半数が1,000円、半数が1,300円以上で、1,500円が3割という結果です。対話活動でも、「秋田市内の大学に進学した。入学金・授業料は親の援助と奨学金を借りて納入している。しかし、生活費については親に頼るわけにはいかず、アルバイトで稼いでいる。アルバイトの賃金は最賃ぎりぎりで低いので、ダブルワークをしなくてはならない。余裕は全くない。卒業後は県外に出る。奨学金を返すには少しでも賃金の高いところで働く必要があり、現状では秋田に残る選択肢はない」と地元の大学生(3年生・男性)が語っています。賃金の低さ・格差の大きさから青年が県外に出てしまうことが問題となっていますが、それを裏付けるように切実な声が寄せられました。最賃引き上げによる賃金の底上げが大きく期待されています。このことも審議会で訴えました。
時間額1,031円(全国加重平均1,118円)では、最低賃金近傍で働く労働者の生活はもとより、労働者全体の実質の賃金底上げにつながりません。時間額1,031円で月173.8時間働いた場合で年間総額で約215万円、150時間で約185万円です。手取りは当然それよりも下がります。人間らしく生き、働くことは依然として厳しい水準です。賃金を抑制し、低賃金の非正規雇用を増やし、企業の活力を失ってきた「失われた30年」の流れから脱出し、大都市と地方の格差を是正する具体的なメッセージにもなり得ないと考えます。
今回の改定がそのまま発効されれば、東京(1,226円)との格差は時間額195円となります。現行の格差212円から17円縮まりますが、依然大きな格差と言わなくてはなりません。生計費に大きな格差がないにもかかわらず、年収で40万円以上の格差は到底容認できるものではありません。

半年間で、鳥取県とは8万円以上、東京都とは28万円以上の格差拡大 
3月31日に発効されても、この金額は取り戻せません

発効日を2026年3月31日とすることは大変な問題です。審議会における経営側の主張に寄り添い「『準備期間』が必要との理由で発効日を2026年3月31日とする」と述べています。本年12月1日発効とした地方がありますが、年度の最終日まで発行されないのは秋田県だけであり、異常な内容です。2026年3月31日発効となれば、半年間改定を待たなくてはなりません。半年間は951円のままという事になります。すでにCランクで答申が出ている鳥取県と比較しても、半年の遅れでは8万円以上の賃金差となります。年度末に鳥取県より高い金額が発効されたとしても、この額は取り戻すことはできません。これではあまりにも秋田県の労働者に対して失礼だと思います。全国的に、今年は1000円を超えるということで報道等もされていますが、実質、秋田県のみ1,000円を超えないことなります。例年10月に改定額が発行されており、賃金改定を10月に予定している会社・事業所も少なくありません。発効日を年度末に持って行くのは「10月には上がる」との生活設計を無残にも覆すものであり、許されません。 また、秋田労働局の発表によると、最賃引き上げの影響を受ける県内労働者数は4万6千人とありますが、年度末までの雇用とされている労働者においては、雇用期日の問題はありますが、951円のままの雇用で終わることが考えられ、なんの恩恵も受けられません。

最低賃金の即時・大幅引き上げは待ったなしの課題です。

食料品や日用雑貨、各種サービスの値上がりはとどまるところを知りません。米の価格も跳ね上がっています。実質賃金がマイナスとなっている中、賃上げ要求は大きくなっています。こうした状況下、最賃改定が半年以上先というのでは、最賃及び最賃近傍で働く方々の生活は大変な状況に追い込まれてしまいます。秋田県だけ半年後の発効ということは、秋田県の地域経済にとっても、企業にとっても、消費を一段と冷え込ませ、期待を裏切り、働く意欲を奪い、行政への信頼失墜につながりかねず、人口流出を加速させることにしかならないという事を強く申し上げたいと思います。 公益見解で『準備期間』が必要としていますが、半年先延ばしにする合理的な根拠は示されていません。また、年度末まで発効しないことが、政府や自治体が実施あるいは準備している経営支援を受けることも先延ばしになる心配を持たざるを得ません。このことが杞憂にすぎなければいいのですが、そうでないとすれば、秋田県経済においても大きな損失となります。再考していただきたいと考えます。

国の責任で経営支援の抜本的強化を

秋田県労連は最賃改定にあたり、金額の大幅引き上げ、今すぐ1,500円そして1,700円へ、全国一律最賃の実現、経営支援の抜本的強化を掲げ、主張してきました。公益見解では政府等に対し経営支援の強化を4点にわたって述べられています。答申には記載されていませんが、労働局賃金室長が政府等に対しこの内容を伝えると説明されました。ここで、その方法についてまで言及できませんが、秋田からの強い要望であるとの認識を持っていただけるような方法で、伝えていただきたいと考えます。

「納得感の高い合意」形成に向け審議の透明性を高めるべき

審議の進め方も今年は従来と異なりました。秋田地方最低賃金審議会は他の地方と比較して公開の度合いが高い、審議の透明性が高いと評価されていました。しかし、今年は専門部会において公労使3者そろったところでの主張の展開は冒頭の労使双方の改定審議にあたっての考え方の表明だけであり、後は非公開でした。審議経過も形式的な説明にとどまり、労使双方がどのような主張を展開してきたのかは全くわかりません。特に公労・公使協議の他に、公益委員を除外した労使協議を何度か実施しました。3者構成である審議会の原則から外れ、本来ならば公開の場で行うべき労使の主張を非公開で行うのは「密室協議」と言われてもやむを得ないものです。それぞれの考え方や資料等の説明・確認が行われたとのことでしたが、そのことを非公開にする合理的理由はないのではないでしょうか。最低賃金決定の「納得感の高い合意」形成は、審議員の納得感でなく、労働者・市民の納得感です。多くの県民の賃金が決まる審議会で、委員がどのような根拠を持ってどのように主張し、議論し、その結果どうなったのかを明らかにするのは当然の義務です。こうした事が閉ざされるのは残念です。今後は公開の場でお互い正々堂々と議論することを求めたいと考えます。

最賃を今すぐ1500円以上、全国一律に

秋田県労連は引き続き労働者の生活改善と物価高騰に対応できる『いますぐ1,500円以上、めざせ1,700円』の実現、全国一律最低賃金制度の確立に向けて運動を強化していきます。
その活動の一環として、厳しい情勢の中審議された審議会委員及び関係者に敬意を表しつつ、時間額1,031円の決定と発効日2026年3月31日とすることに対し、加盟組合とともに異議を申し出て、1人の大人が独立してごく普通の生活をしていくにはどのくらいの収入が必要なのかを改めて審議していただき、秋田県で暮らし働き続行けるために都市部との格差を解消すべきであり、そこに踏み出す勇気を持った改定を行うこと、さらには新しい最賃額を極力早く適用させるべく、発効日を他県同様に早めることを求めます。

以 上

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