能登半島地震・豪雨災害メモリアル集会 あいさつ
全労連議長 秋山正臣
みなさんこんにちは。「能登半島地震から1年を検証」するメモリアル集会にご参加いただきありがとうございます。主催者を代表して、全労連議長の秋山より開会のごあいさつを申し上げます。
はじめに、たいへんお忙しい中、記念講演として「スフィア基準について」をお話しいただく榛沢先生に深く感謝を申し上げます。
さて、政府が防災庁の設立に向けた議論を進めるなか、内閣府は2013年に定めた「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を2016年、2022年に続き、昨年2024年12月に改定を行いました。あわせて、避難所運営ガイドラインなども改定をされています。
その避難所運営ガイドラインでは、スフィアプロジェクトを説明しています。
この国際的なプロジェクトでは「人道憲章の枠組みに基づき、生命を守るための主要な分野における最低限満たされるべき基準」を「スフィア・ハンドブック」にまとめています。
スフィア・ハンドブックにまとめられている国際基準、これがスフィア基準です。
東日本大震災以降、支援に訪れた海外の人々から、避難所の生活環境が難民支援基準を下回るという厳しい指摘がなされました。
古くから日本政府は、諸外国、特に欧米諸国とは違いがあるとして、夫婦同姓などをはじめ様々な制度を正当化してきました。日本国憲法は、基本的人権に関して先進的な規定を持っていますが、現実の人権保障では、先進諸国から周回遅れとなっています。グローバル化が進む中、国際的なルール、特に人権保障の遵守は重要な課題となっています。この点で最近注目されているのが「ビジネスと人権」です。
話しが横道にそれてしまいましたが、人権保障という観点から、避難所問題など、自然災害などの発生時における行政の対応を考えていくことが必要です。
本日の記念講演とともに、能登半島で起きている実態を地元から報告いただき、今後の運動や政府への改善要求つなげていきたいと思います。
もう一つ考えておきたいことがあります。
政府が、行政の効率化を図るとして、広域合併を進めるとともに、行政のスリム化を進めてきたことです。この結果、多くの業務が民間に委託され、正規職員が減らされる一方で、大量の非正規労働者が住民と接する窓口に配置されてきました。
地方では自治体の広域化によって地域の実情が細かく把握されなくなっています。また、経験と知識を持つ行政職員が急速にいなくなっています。国の行政機関でも同様の事態が起きています。
ついでに申し上げたいのが、災害などの発生時、デジタルがどれだけ役に立つのかということです。
被災した住民のいのちを守ることができるのは、人、人間以外にありえないのではないでしょうか。
デジタル化による行政の効率化は、自己責任原則の徹底であり、行政が本来的に果たすべき公的な役割を放棄するものでしかありません。政府が行うべきことは、非正規職員の正規化を進めるとともに、民間委託業務の再公営化など、公的な役割が発揮できる体制の構築にむけ、「公共の再生」を図ることです。
また、「公共の再生」と関わり進めるべきことは、ゆとりある働き方の実現です。
ゆとりある働き方は、一人あたりの業務量を減らし、誰かが急病になっても、出産や育児、介護などで休む必要があったとしても、気兼ねなく休むことができる職場をつくることです。同時に、障害があっても高齢になっても働き続けることができる職場環境をつくることです。
こうした職場体制であれば、災害が発生した時にかかる過重な負担を軽くすることにもつながると思います。
最後になりますが、「備えあれば憂いなし」といいます。だからといって、他国からの侵略に備え、自衛隊の人員増や敵基地攻撃能力を保有することを優先してはなりません。
地震や豪雨、豪雪、火山噴火など、大規模な自然災害への対応は自己責任だけで対応できるものではありません。
災害からの復旧・復興を迅速に進めるためにも、「公共の再生」を図り、誰もが安心して働き続けられるようとりくみを進めようではありませんか。
そのことを呼びかけ、主催者を代表してのあいさつといたします。