【ゆにきゃん発 実践レポート③】大阪府職労の空調改善キャンペーン
組合員の声が職場を変える「大阪府職労の空調改善キャンペーン」
小松康則(大阪府関係職員労働組合)
きっかけ――職場のリアルな声をもっと聞きたい!
大阪府の本庁(大手前庁舎)では多くの職員が働いていますが、組合員・役員が減少し、組合員の声を十分に聞くことができていないという課題がありました。
これまで、支部ごとに職場集会やニュース配布などを行っていましたが、支部役員も多忙な業務を担っており、そうした活動の維持も困難になっていました。本庁への異動を機に組合を辞める組合員も見受けられました。
気軽に集まれる場をつくろう!~ランチタイムミーティング~
こうした状況を打開し、組合員の声を聞く機会を増やそうと、約1年半前から府職労本部主催のランチタイム集会を始めました。
しかし、多くの職員が多忙な中、「この日に集まって」と呼びかけても、なかなか参加者は集まりません。
そこで1週間連続開催というスタイルに変更し、来れる日とお弁当メニューを選んでもらうように工夫しました。
その結果、日によって2~3人の日もあれば、14~15人が参加する日もありますが、多くの組合員に参加してもらえるようになりました。
組合員との距離もグッと近くなり、最近では「ここに来るとほっとする」「毎月楽しみにしています」という声も出されるようになりました。

お弁当トークから見えた職場の課題
昼休みは45分と限られており、職場から組合事務所までの移動時間を考慮すると、実際に滞在できるのは20分程度です。
そのため、報告はできるだけ短くし、組合員の意見を聞くことを重視しました。
しかし、全員とゆっくり話す時間を確保するのは難しく、「ひとことカード」を活用することにしました。
このカードには、自由に意見を書いてもらえるよう、お弁当の感想やリクエスト、職場で困っていることや解決したいことを記入してもらうようにしました。
「残業中に暑すぎる(寒すぎる)」の声、続々!
この取り組みを続ける中で、多くの職員から職場の不満や課題が寄せられるようになりました。
特に多かったのは「残業時に空調が切られて暑い(寒い)」という問題でした。この問題は何十年も前から起きていたにもかかわらず、労働組合として取り上げられていませんでした。
これまで、「残業をなくすべきだ」と声高に主張してきた組合に対して、「残業時に空調を入れてほしい」とは訴えにくかったのかもしれません。
しかし、現実として、多くの組合員が長時間労働を余儀なくされ、その上で劣悪な環境に置かれているという実態がありました。
チャレンジ――温度計と700人のアンケートが動かしたもの
みんなで温度測定!キャンペーン開始
そこで、この問題を解決するために困難に直面している本庁の組合員に何ができるのか、どのように協力してもらえるのかを考えました。
職場にいるからこそできることは何か──その中で思いついたのが、残業時や始業前の温度測定でした。具体的には、執務室の温度を測ってもらい、その温度計の写真を撮影して送ってもらうようにしました。
さらに、暑さや寒さが業務にどのような影響を与えているのかを把握するために、アンケートを実施し、職員の声を集めました。早朝や昼休みにアンケート用紙を各机に配布し、その日の夕方には回収するという手法をとりました。
また、Googleフォームを活用し、オンラインでの回答も受付けました。20件、50件、100件と時間とともに回答が増え続け、最終的には1日で約700人の回答が寄せられました。しかも、自由記述欄にはぎっしりと思いが書き込まれていました。
これほど大きな反響を得たアンケートは、これまでに経験したことがないものでした。
そして、組合員から連日送られてくる温度計の写真やアンケートで寄せられた声を、府職労のX(旧Twitter)アカウントで発信したところ、大きな話題となりました。
これから――「声をあげるって大事!」~組合活動のこれから~
ついに変わった!空調の運転時間
この問題はさらに広がり、マスコミ報道や府議会でも質問で取り上げられました。府職労としても緊急要求を提出し、現場の声を直接伝えました。
その結果、2025年4月から空調の運転時間と期間が大幅に拡大されることが決定しました。これまで9時~18時半の運転時間が、メンテナンス期間を除き、ほぼ通年で8時~21時まで延長されることになりました。
この成果を組合員に報告すると、「組合の力ってすごい」「声をあげることの大切さを実感した」「温度測定してよかった」といった反応が次々と寄せられました。
今回の取り組みを通じて、「組合員の声が直接影響を与え、具体的な改善につながる」ことを改めて実証できました。1つのゴールは達成しましたが、同時に次のキャンペーンのスタートでもあります。成果をみんなでお祝いしつつ、自分たちの声やアクションに力があることを共有し、これからも声をあげ続けたいと思います。
今後も、組合員が気軽に声をあげられる場をつくり、一つひとつの課題をチャレンジの機会と位置付け、より働きやすい職場を実現していきたいと考えています。「声をあげれば変わる」─これからも、組合員とともに、より良い職場づくりに挑戦していきます!
「ゆにきゃん発 実践レポート」
参加者が始めた職場や地域で、変化を起こすチャレンジをレポートする『月刊全労連』の不定期連載。
ゆにきゃんとは、困難に直面する当事者が仲間と共に解決を目指すコミュニティオーガナイズの手法を学ぶ全労連主催のワークショップです。2020年の開始から500人以上が参加し、各地でキャンペーンがうまれています。参加者が始めた職場や地域で、変化を起こすチャレンジをレポートする不定期連載。