全国労働組合総連合(全労連)

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労働施策総合推進法国会審議

2025/05/15

6議員がハラスメント禁止法制定など求める

ハラスメント法制、女活法、均等法改正に関わる労働施策総合推進法改正案の審議が14日、衆院厚労委員会で行われました。質問に立った立憲、国民、れいわ、維新、共産党の各議員が、包括的ハラスメント禁止法や罰則の必要性、ILO190号条約批准など質問しました。厚労大臣は今回の法改正で、ハラスメントは許されないものであることを法文上明確にし、対象を就活生や利用者に広げたことなどを強調しました。審議の概要は以下。次は16日の朝9時から質疑が行われます。

立憲民主の堤かなめ議員は、相談窓口が機能していないことや、「ハラスメントと言われるのが怖いから絶対に管理職になりたくない」との若者の声などを紹介しながら、「使用者に任せるのではなく国として責任を持たなくてはなくすことできないのではないか、ハラスメント禁止を法制化し、適正な事実認定、被害者救済を行うことが必要」と述べました。労働局のハラスメントのあっせんは「違法行為を認定するのではなく、行為の結果生じた問題を当事者の歩み寄りにより解決するもの」とされており64%が未解決。イギリスのACAS(未解決23.6%)など諸外国に倣って、ハラスメントとして認定し救済すべきではないかと指摘しました。また、「企業の半数が措置義務違反となっている。せめて措置義務を100%果たさせるべき」と求めました。

求職者へのセクシャルハラスメント以外のハラスメントについてはどう対応するのか質問し、田中雇用・均等局長が「ハラスメント防止指針の中で明確化していきたい」「面接だけでなくOB・OG訪問やインターンなど接触するあらゆる場面を範囲にする」と回答しました。またハラスメントによる精神疾患の認定件数が5年連続で過去最多を更新しているなどますます深刻な問題になっている。ハラスメントは学校、塾、公務職場、地域でもどこでも起こっている。パッチワークのような現状を改め、全体を網羅できる包括的なハラスメント禁止法、法的拘束力を持ち問題解決できる有効な改定が必要と強調しました。

酒井なつみ議員(立憲)は、女性活躍推進法の女性管理職割合について、今のままでは30%達成には35年かかると指摘し、フランスやノルウエーではクオータ制や、目標に達しないときに説明責任やペナルティを課すことで40%を達成したと紹介し、要因分析の結果公表も必要ではないかと追及しました。

今回の改定でILO第190号条約を批准できるかと質問し、大臣は、「条約ではハラスメント法制の制定が求められていること、対象に求職者など雇用関係にないものが含まれていることについて検討してきた。今回の改定は職場におけるハラスメントを行ってはならないことを法文上明確にし、国が規範意識の醸成に取り組むほか、カスタマーハラスメントの強化、就活等セクシャルハラスメント等の強化などを盛り込んだことにより、本条約の締結に資するものと考えている。しかし条約で求められている内容と今回の改正含めた国内法制全般との整合性についてさらに詳細な検討が必要。」と答弁しました。

猪口幸子議員(維新)は、ハラスメント加害者への罰則規定が必要だとして、米英ではストーキングについて「執拗さ故に被害者の心の多大な負担になり脅威を感じさせるもの」と定義し罰則規定付きで規制していると述べました。

浅野哲議員(維新)は、個人事業主が対象になっていないことを指摘し、包括的ハラスメント法の制定を求めました。「労働法制では難しい」と述べる大臣に対し、「他国ではハラスメント行為そのものを禁止する法体系を持っている国もあり、厚労大臣がリーダーシップを発揮して前に進めてほしい」と要望しました。また、求職中のセクハラについて、「求職者が就職先の企業に相談するのは難しい」と、第3者的な相談窓口の必要性を訴えました。

八幡愛議員(れいわ)は、男女賃金格差の原因について管理職比率と平均勤続年数と言うが、その背景には様々な要因があるとして、上司にパートナーの有無、結婚可能性の有無など聞かれすべて否定したうえで、やっと昇進した事例を紹介しながら改善の必要性を訴えました。公表義務化を中小に広げることを求めました。間接差別についてAGCグリーンテックの勝利判決やCEDAW勧告を紹介しながら限定列挙をやめるべきと述べました。カスタマーハラスメントについて、東京都のカスハラ条例のように顧客の権利に配慮した規定がないことを指摘、大臣が指針で具体化すると答弁しました。ハラスメント禁止法を求めました。

田村貴昭議員(共産党)は、ハラスメント対策は事業主の雇用管理上の措置義務としているだけなのはなぜか質問し、大臣は「未然防止と、個人間の問題にとどめず職場環境整備が必要なためとし、今回ハラスメントを行ってはならないことを法文上も明確にしたと」答弁しました。田村議員は、会計年度任用職員に産・育休をとらせず雇止めを行う自治体が「禁止されていなければ違法ではない」とうそぶいていることなど紹介し、「禁止されなければいつまでもなくならない」と追及。大臣は「法的には、刑事責任や民事上の不法行為、賠償責任で裁くことができるため職場では未然防止のために事業主に雇用管理を義務付けている」と答弁しましたが、田村議員は「包括的禁止法が見送られ、規制が後追いになって救済が遅れる」「性別による経済的差別は190号が禁止するハラスメントにもあたる」と強調しました。間接差別の限定列挙についてAGCグリーンテックの地裁判決は「3類型以外の間接差別を初めて認定した」と指摘し限定列挙をやめるべきと強調しました。

包括的ハラスメント禁止法について、大臣は「複数の法律でそれぞれ関連するハラスメントについて定める現行の法体系との整合性において課題がある。事業主の相談体制の整備などを具体的に進めるとともにハラスメントを行ってはならないという国民の規範意識を醸成することが重要。カスハラ強化、規範意識の醸成に国が取り組むことを責務とした」と繰り返しました。

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