2014国民春闘共闘情報
全労連HP

第47号 2014年8月15日

2014年春闘・制度的諸要求(最終集計)

職場の成果を法制度改善につなげよう!

 国民春闘共闘委員会(全労連、純中立労組懇、地方共闘などで構成)はこのほど、2014年春闘における制度的諸要求(各種休日休暇、労災対策、雇用保障、各種手当など)の獲得状況をまとめました。20単産・4地方602組織(連合会・単組・支部などの交渉単位)から報告が寄せられ、1331件の条件改善を獲得しています。前年の584組織1195件から18組織・136件増加しました。改正労働契約法や高年齢者雇用安定法など制度活用の取り組みも進み、非正規で働く仲間の要求が大きく前進していること、メンタルヘルスケア関係・ハラスメント対策での成果獲得の増加、製造業や福祉・介護職場を中心にした人員増要求の前進、消費税増税や物価上昇による生活悪化を防ぐため、賃金・一時金引上げと併せて各種手当など可処分所得増額に関する要求を多くの組合で勝ち取っていることなどが特徴としてあげられます。一方で、「残業代ゼロ」制度の攻撃が強まるもとで、春闘方針では残業規制の強化を強調しましたが、その点では十分な取り組みとはなりませんでした。しかしながら、多くの組合で労働時間短縮に関する要求を前進させています。これらの成果と教訓を土台に、職場の制度要求前進の支えとなる法制度整備を実現させ、秋年末闘争、来春闘での要求前進につなげていきましょう。

【正規雇用で働く仲間の諸要求改善】
 正規雇用で働く仲間の条件改善は、18単産・4地方の487組織から914件の制度改善報告が寄せられました。前年同期(2013年8月15日時点:498組織・879件)を35件上回っています。

時短関係
 休日休暇・残業関係・育児・介護休業など労働時間短縮に関する要求での前進回答は123組織156件で、前年同期(112組織・155件)とほぼ同水準となっています。
 所定内労働時間の短縮では、JMIU(3件)、化学一般労連(2件)、全倉運輸(1件)で6組織6件の年間休日増による所定内労働時間短縮を勝ち取っています。
 週休2日制に関する要求は、検数労連が全国港湾団交で「2020年度までに週休2日制の完全実施」の回答を引き出しています。
 休日休暇関係での要求前進は、有給休暇や慶弔休暇の取得条件緩和、時間単位・半日単位での有休取得、リフレッシュ休暇、誕生日休暇の新設など63組織73件となっています。「研究集会などに対する代休保障」(福祉保育労)、「配偶者の出産に関わる休暇を半日取得可能にし、出産日からではなく、入院日からとする」(建交労)などの改善報告も寄せられています。
 残業関係では、郵政産業ユニオンで「年間360時間超の超過勤務手当を35%に引上げ」を勝ち取ったほか、「時間外基礎分母を150時間とし、2025年までにすべての職種で到達させる」(検数労連)、「公休日出勤の賃率5%引上げ」(自交総連)、「ノー残業デーの実施」(生協労連)、「お泊り会に関して超過・深夜割増で計算しきちんと支払う」(福祉保育労)など25組織で25件の成果を獲得しています。
 育児休業・休暇関係での要求前進は13組織14件となり、「子育て職員の時間差退勤を認める」(建交労)、「小学校入学前の子の育児期間中は所定外労働時間免除」(全倉運)、「育児休暇中の賃金・一時金全額保障の明文化」(出版労連)、「女性社員のみに認められていた育児時短制度の対象を全社員に拡大」(民放労連)などの前進報告が寄せられています。
 介護・看護休業関係では、「子の看護休暇の有給化を検討」(化学一般労連)、「子どもの看護休暇の対象を小学校卒業までに延長」(全印総連)、「介護・看護のための短期休暇制度有給保障」(出版労連)など20組織で22件の要求前進を勝ち取っています。
 その他、「終礼の簡素化」(JMIU)、「職場労使懇談会の時間内設置」(生協労連)、「夜勤協定の締結」(日本医労連)などの報告が寄せられています。

年齢保障・初任給・格差是正
 年齢や職種による最低保障賃金の協定化や最低年収保障での要求前進は、建交労、JMIU、福祉保育労の7組織で12件となっています。建交労の運輸関係では、大型やトレーラーなど運転資格者や年齢による最低保障賃金を引上げるなど10件の成果を獲得。福祉保育労の職場では、産別統一要求「フルタイム労働者の年収300万円以上の確保」を実現させています。
 初任給増額などによる格差是正要求を実現させたのは、38組織・41件となっています。全農協労連の岩手で「初任給1万円引上げ」を実現するなど多くは初任給増額となっていますが、「配車均等化で給与格差是正」(自交総連)、「中途入社の賃金是正」(JMIU)、「35歳以下に月額4,000円の調整給を1年間支給」(生協労連)などの成果も勝ち取っています。

社会保障・母性保護・労災補償・安全衛生関係
 社会保障負担割合の改善は、全倉庫、全印総連での2組織2件となっています。
母性保護関係は、出産休暇日数の増日や出産休暇取得時の賃金保障、生理休暇関係のほか、婦人科通院休暇の有給化や子宮がんマンモグラフィ検診の実施など10組織で11件の成果を獲得。
 労災補償の上積み獲得は、JMIU(3件)、建交労、化学一般労連、全印総連(各1件)の5組織5件となっています。
 安全衛生関係は、58組織で69件の要求前進を果たしています。「原発作業の被曝防止」(JMIU)、「防寒服の改善」(生協労連)など労働災害対策に関する要求やインフルエンザ予防接種費用の会社負担、健康診断・人間ドックの拡充などに加え、メンタルヘルスケア関係、ハラスメント対策に関する前進報告が20件と前年(7件)から増加しています。

人員増・雇用延長・退職金
 人員増要求では、45組織51件で前進回答を引き出し、前年同期(30組織36件)を15件上回りました。単産別にみるとJMIU(22件)、福祉保育労(15件)、化学一般労連(5件)、日本医労連(2件)、全農協労連、建設関連労連、全倉運、郵政産業ユニオン、民放労連、静岡、埼玉(各1件)となっています。
 定年・雇用延長関係での成果獲得は16組織16件となっています。高年齢者雇用安定法が改正された昨年(47組織50件)からは減少しましたが、改正法を活用した取り組みが引き続き行われており、自交総連で「定年延長」を実現させ、JMIU、生協労連の2組織では協議・検討段階に入っています。
 退職金関係では、「退職金の増額」を中心に8組織で8件の制度改善を実現しています。

各種手当・職場環境改善など
 その他、348組織で542件の制度改善を獲得しています。その多くは、通勤手当、住宅手当、扶養手当、夜勤手当などの上積みや期末一時金の獲得など「各種手当の改善・新設」で221組織315件となっています。「転勤に伴う別居手当増額」(建設関連労連)、「消費税増税相当分の自動車通勤者に対し消費税増税相当分の通勤手当増額」(化学一般労連)、「大雪手当の支給」(生協労連)、「フリーバカンス取得時に3万円の手当支給」(民放労連)などの報告も寄せられています。
 設備関係の改善などの職場環境の改善要求では、53組織が67件の改善を実現しています。
 加えて、「事前協議同意協定の前進」や「財務諸表の公開」など120組織が160件の制度改善を勝ち取っています。また、「農協の設立精神を否定するいかなる動きに対しても断固反対を貫く」(全農協労連)、「トラック最低賃金法制化への賛同・協力」(建交労)、「産業政策提言の取り組みに協力」(全印総連)、「教育教科書の価格と教科書制度について組合から申し入れがあれば協議」(出版労連)など、制度政策要求で経営者との一致・協力が前進したという報告も寄せられています。

【パート・再雇用者など非正規雇用で働く仲間の諸要求改善】
 非正規雇用で働く仲間の条件改善は、14単産・3地方の226組織から417件の制度改善報告が寄せられました。前年同期(2013年8月15日時点:207組織316件)から101件増と大きく前進しています。

パートやアルバイトなどで働く仲間の諸要求獲得(再雇用・継続雇用除く)
時短関係
 労働時間の短縮に関わる要求では、「休日休暇関係」が最も多く22組織で24件の成果獲得となっています。慶弔休暇の新設・改善、有給による病気休暇制度の創設、結婚休暇や誕生日休暇などの前進回答報告が寄せられています。
 育児休業・休暇関係では、「月給制契約社員の育児休暇を有給化」、「月給制契約社員の育児時短勤務を現行6時間勤務から、4〜6時間勤務の選択制に」(通信労組)、「パート・スタッフ職員の育児時短を小学2年修了時まで延長」(生協労連)、「育児休業の取得期間延長」(日本医労連)の4件となっています。

初任給・各種手当・社会保障・退職金
 可処分所得に関わる要求では、期末一時金・奨励金の獲得、通勤手当の増額など、各種手当の改善が155組織251件と最も多く、前年同期(120組織158件)を35組織・93件上回っています。
 初任給増額・募集時給増額を獲得したのは、生協労連、日本医労連、全農協労連の7組織7件となっています。全農協労連では「契約社員の初任給1万円引上げ」を実現しています。
 退職金関係では、「退職時礼金を勤続3年以上で4万円に増額」(生協労連)、「パート職員の退職金制度実施」(日本医労連)など4組織5件となっています。

人員増・正規化・無期雇用化・雇用延長
 非正規雇用での人員増要求前進は、福祉保育労での1件となっています。昨年に引き続き改正労働契約法を活用した取り組みも進んでおり、正規化や無期雇用化要求では、前年同期(38組織43件)からは減少したものの22組織で23件の前進となりました。このうち、正規化を勝ち取ったのは、JMIU、日本医労連(各2件)、全印総連、民放労連、日本医労連、福祉保育労(各1件)の計7件となっています。JMIU、福祉保育労の2組織では協議・検討段階に入っています。
 無期雇用化の前進回答を引き出したのは、検討も含めると生協労連(10件)、金融労連(1件)、の11件となり、直雇用への前進回答は、全農協労連、JMIU、民放労連での3件となっています。生協労連からは、「無期転換になったことで労働金庫の教育資金融資がけられた」などパート職員の社会的地位向上にも繋がった事例も報告されています。
 定年延長や雇用延長関係では、「準職員の再雇用制度導入」(JMIU)、「雇用契約期間を2ヵ月から6ヵ月に延長」(出版労連)、「アルバイト組合員の65歳誕生日前日までの雇用延長」(民放労連)など5組織7件の前進報告となっています。

均等待遇・母性保護・労災補償・安全衛生など
 賃金引き上げや初任給増額、時短関係などを除く均等待遇の実現は、全農協労連、JMIU、生協労連、民放労連、日本医労連、福祉保育労の8組織で11件の成果を獲得しています。
 母性保護関係は「パートの生理休暇の有給化」など生協労連の2組織で2件前進し、安全衛生に関わる要求では「時給制契約社員の多目的検診実施」(通信労組)、「全構内労働者に労災ヘルメット支給」(民放労連)など4組織4件での成果獲得となっています。
 その他、「食堂で使用するエプロン・ブラウスの支給」(生協労連)、「パート職員の賃金体系表の提示(新設)」(日本医労連)、「食堂無料開放3日間」(民放労連)など17組織から18件の成果獲得の報告も寄せられています。

再雇用・継続雇用で働く仲間の諸要求獲得
 再雇用・継続雇用で働く仲間の要求前進は、一時金支給・激励金支給など各種手当の改善が最も多く28組織35件となっており、休日休暇関係(8組織10件)、均等待遇関係(6組織8件)、賃金保障関係(5組織6件)、労災補償関係(1組織1件)と続いています。
 休日休暇関係は、「再雇用者のリフレッシュ休暇新設」(JMIU)、「再雇用者の結婚休暇を有給化(本人5日・子ども2日)」(生協労連)、「夏休み3日間(新設)」(民放労連)、「定年後の有給休暇は正職員から継続」(日本医労連)などとなっています。
 賃金保障関係では、「無年金者の年収300万円確保」(JMIU)、「再雇用給与を臨時3級に引上げ」(福祉保育労)などを勝ち取っています。
 均等待遇関係では、「再雇用者の手当等の均等待遇実現」(JMIU)、「定年以降65歳まで賃金・労働条件を継続」(自交総連)などの報告が寄せられています。また、JMIUの組合では、再雇用者の労災補償上積みを獲得しています。

国民春闘共闘情報