2010国民春闘共闘情報
全労連HP

第53号 2010年9月13日

2010地域別最賃改定状況

最高821円、最低642円

賃金闘争に逆風吹く中での2ケタ改定は運動の成果

 厚生労働省は9月10日、2010年度の地域別最低賃金について、全都道府県の改定状況を発表しました。最高額と最低額の格差は179円に拡大し、ワーキングプア解消にもほど遠い水準ながら、今春闘での賃上げが低く抑えられたなかでの2ケタ改定は、私たちの運動がもたらした成果です。

 

 今年は42府県で中央最賃審の示した目安額より1〜6円高い引上げが答申されました。東京と神奈川が初めて800円台を実現。全都道府県のうち最高額は東京の821円で、最低額は鳥取、高知、沖縄など8県の642円となっています。最高額と最低額の格差は179円となり、09年の162円、08年の139円からさらに拡大しました。
 今回の改定で、生活保護水準を下回っているとされた12都道府県のうち、7府県(青森、秋田、埼玉、千葉、京都、大阪、兵庫)が「逆転」を解消しました。
 全国平均(労働者数による加重平均)は前年度比17円増の730円になります。平均上昇幅は2008年度の16円を上回り、時給表示になった02年度以降では最高です。
 使用者側の頑迷な抵抗にもかかわらず、少額とはいえ目安超過額を答申した地方が42府県に上ったことは、私たちの運動がもたらした貴重な成果といえます。
 しかし今年の答申は、東京の821円でも、月155時間(平均所定内労働時間)働いて12.7万円にしかならず、ワーキングプアの解消からはほど遠い水準です。多くの地方で生活保護とのかい離を解消したとはいえ、生活保護制度にある「勤労控除」を無視し水準を低く見せかけ、逆に最賃額は異常な長時間労働で換算し大きくみせかけるなど、政府・厚労省のまやかし算定手法への批判も広がっています。
 各地では県労連・春闘共闘が審議会への異議申立てを行い、「最賃の大幅引き上げで景気の回復を」求めて、引き続き世論を喚起するとりくみを行っています。

2010(H22)年度 地域別最低賃金の改定状況
目安ランク 都道府県 改定最賃額 前年度決定額 生保かい離 目安額 引上額 目安比較
C 北海道 691 678 39 13 13 0
D 青 森 645 633 6 10 12 +2
D 岩 手 644 631 10 13 +3
C 宮 城 674 662 14 10 12 +2
D 秋 田 645 632 5 10 13 +3
D 山 形 645 631 10 14 +4
C 福 島 657 644 10 13 +3
C 茨 城 690 678 10 12 +2
B 栃 木 697 685 10 12 +2
C 群 馬 688 676 10 12 +2
B 埼 玉 750 735 14 14 15 +1
A 千 葉 744 728 5 10 16 +6
A 東 京 821 791 40 30 30 0
A 神奈川 818 789 47 30 29 -1
C 山 梨 689 677 10 12 +2
B 長 野 693 681 10 12 +2
C 新 潟 681 669 10 12 +2
B 富 山 691 679 10 12 +2
C 石 川 686 674 10 12 +2
C 福 井 683 671 10 12 +2
C 岐 阜 706 696 10 10 0
B 静 岡 725 713 10 12 +2
A 愛 知 745 732 10 13 +3
B 三 重 714 702 10 12 +2
B 滋 賀 706 693 10 13 +3
B 京 都 749 729 20 15 20 +5
A 大 阪 779 762 17 14 17 +3
B 兵 庫 734 721 13 10 13 +3
C 奈 良 691 679 10 12 +2
C 和歌山 684 674 10 10 0
D 鳥 取 642 630 10 12 +2
D 島 根 642 630 10 12 +2
C 岡 山 683 670 10 13 +3
B 広 島 704 692 13 10 12 +2
C 山 口 681 669 10 12 +2
D 徳 島 645 633 10 12 +2
C 香 川 664 652 10 12 +2
D 愛 媛 644 632 10 12 +2
D 高 知 642 631 10 11 +1
C 福 岡 692 680 10 12 +2
D 佐 賀 642 629 10 13 +3
D 長 崎 642 629 10 13 +3
D 熊 本 643 630 10 13 +3
D 大 分 643 631 10 12 +2
D 宮 崎 642 629 10 13 +3
D 鹿児島 642 630 10 12 +2
D 沖 縄 642 629 10 13 +3
平均/計 730 713 12地

42地


2010年9月13日

最賃引き上げは地域経済の立て直しの要

―各地方最低賃金審議会の答申にあたっての談話―

全国労働組合総連合

事務局長 小田川義和

 8月6日の中央最低賃金審議会・目安答申から1ヵ月余、9月9日に沖縄県地方最賃審議会が結論を出したことで47都道府県すべての答申が出そろった。東京(821円)と神奈川(818円)が800円を突破し、最低額は佐賀、長崎、宮崎、鹿児島、沖縄の九州各県と鳥取、島根、高知の8地方がいずれも642円に改定された。全国加重平均は、730円で昨年より17円引き上げられた。
 こうした各地の答申は、私たちの要求や、雇用戦略対話の「合意目標」からしても不十分であり、かつ、地域間格差を広げるという問題を含んでいる。しかし、不況を理由に賃上げ相場が抑え込まれた2010年春闘の経緯や最低賃金改定への使用者側の激しい抵抗があったことなどに照らせば、すべての都道府県で10円以上の賃金底上げを実現したことは、運動の反映であることを確認する。

 今年の中賃目安は、全ての都道府県での10円引き上げを基本に、最低賃金が生活保護水準を下回る都道府県ではその乖離幅の解消もしくは縮小を優先するというものであった。この中賃目安との関係で各地の答申をみると、目安に上積みする答申を多くの地方で実現した点が注目される。目安と同額もしくはそれ以下となった地方は5地方にとどまり、+1円から+6円の上積みを引き出している。審議会の中で、中小企業の厳しい状況はふまえつつも、「異常に低い今の最低賃金」は改善すべきという合意が広がった結果であり、賃金底上げを求める多くの労働者・国民の要求を大切にしてたたかってきたことの成果である。

 同時に、答申が示した最低賃金の水準はなお不十分である。東京の821円でも、月155時間(平均所定内実労働時間)働いても12.7万円にしかならず、「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」(労働基準法第1条)からはほど遠い。あらためて、働くものの生活を支える最低限の生計費の検討や、生活保護基準をもとにした「正しい」最低賃金算定の必要性、全国一律時給1000円以上と安定雇用実現の緊急性などについて、使用者を含めた社会の常識となるよう運動をさらに強めたい。

 この間の審議を通じて、最低賃金の大幅引き上げのためには、地域経済振興策、中小企業支援策の実施が不可欠であり、最賃と中小企業施策の改善が、冷え込んでいる内需を拡大し、デフレ経済を脱却するための要であることが明白になった。
 そのことから政府には、最低賃金引き上げ効果を減殺する一方的な労働時間短縮や雇用削減などに中小零細企業が手をつけないよう、必要な経済対策・中小企業支援策の具体化を求める。

 全労連は、この間、国会に向けた最賃法抜本改正の請願署名と国会議員要請を柱に、中央・地方で数次の統一行動を配置し、審議会への意見書提出や意見陳述を行った。また、「最賃生活体験」や、東北、静岡、九州における「最低生計費試算」など、生計費に焦点をあてた取り組みも強めた。
 これらの取り組みによって、(1)最賃は時間給で10〜30円、フルタイム換算で月額1550〜4650円の「賃上げ」の獲得となり、(2)「最賃時給1000円以上」を政労使合意を経た社会的目標とさせ、(3)隣県との賃金格差をなくす平準化の動きを広げ、(4)最低生計費に格差のないことを明らかにして全国一律最賃制への理解を広げた、などの結果に反映した。
 これらの到達点を確信に、秋の新最賃改定期での賃金底上げ運動を強め、公務員賃下げ阻止、年末一時金闘争へとつなぎ、春闘勝利の展望を切り開くべく、全労連運動への結集を呼びかける。

以上

国民春闘共闘情報