2008国民春闘共闘情報
全労連HP

第 50 号  2008年08月12日

 

 08人勧  官民較差極小でベア見送り

勤務時間15分短縮し7時間45分に

非常勤職員の給与、均衡重視の指針示す

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 人事院は11日、国家公務員の2008年度の給与と勤務時間などについて、勧告・報告を行いました。給与勧告は、(1) 官民較差は「0.04%、136円」と極小で、ベースアップは見送り、(2) 一時金も支給月数(4.50月)が均衡しており、改定を見送る、(3) 給与構造改革の実施は「本府省業務調整手当」を新設、(4) 非常勤職員の「給与決定に関する指針」を示し、これにそった改善を各省に求めるとしています。また、勤務時間に関する勧告は、1日15分短縮し7時間45分として、民間との均衡をはかるというものです。
 今年の勧告では、ガソリンや公共料金、食料品などの高騰が公務・関連労働者の生活を直撃しているもとで、人事院が本来の役割を発揮して、公務労働者の生活悪化を食い止めるための積極的な給与改善を行うことが求められていました。春闘共闘の賃上げ最終集計でも2.08%(前年比0.08P増)で、若干のベアを勝ち取っており、この点も無視した内容になっています。
 こうした対応について公務労組連絡会は、「本府省優遇をすすめつつ、政府・財界の賃下げ攻撃に追随し、切実な賃上げ要求には『ベアゼロ』で応えた勧告に怒りをもって抗議する」としています。国公労連も「民間との格差が著しい初任給すら改定しなかったことは、きわめて不満である」と表明しています。


「人勧と最賃」を結合、職場の運動が反映

 一方、今回の勧告・報告では、所定勤務時間の短縮とともに、超過勤務の縮減やメンタルヘルス対策、非常勤職員の処遇などについて言及、具体化させることができました。 この間、公務労組連絡会は公務・民間労組との共同を重視し、官民2000人を結集して「人勧・最賃」の改善、引上げを求める「7・17第4次最賃・人勧デー中央行動」などを取りくみ、人事院要請行動を展開してきました。地方でも人事院地方事務所に対する「包囲行動」を展開するとともに、各職場から「賃金改善署名」を取り組み、民間組合の協力を得ながら24万筆を集約しつつ、上申闘争を展開するなど、要求の切実さとたたかう決意を示してきました。(公務労組連絡会の声明=別紙)





 2008年勧告の主な内容

◎ 本年の給与勧告のポイント
  月例給、ボーナスともに水準改定なし

@ 民間給与との較差(0.04%)が極めて小さく、月例給の改定を見送り。医師の給与は特別に改善
A 期末・勤勉手当(ボーナス)も民間の支給割合と概ね均衡
B 給与構造改革の着実な実施−本府省業務調整手当を新設


◎ 官民給与の比較
 約11,000民間事業所の約44万人の個人別給与を実地調査(完了率89.0%)
 ※ 調査対象事業所数を約900事業所増加させ、企業規模100人未満の事業所もより綿密に調査

<月例給> 官民の4月分給与を調査し、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴、勤務地域の同じ者同士を比較
※ 官民較差が極めて小さく俸給表改定は困難なこと、諸手当についても改定する特段の必要性が認められないこと等を勘案して、月例給の水準改定を見送り

○官民較差
136円0.04%〔行政職(一)…現行給与387,506円平均年齢41.1歳〕

○医師の給与の特別改善(2009年4月1日実施)
国の医師の給与は、民間病院等の給与を大きく下回っており、若手・中堅医師の人材確保のため初任給調整手当を改定(年間給与を独立行政法人国立病院機構並みに平均で約11%引上げ)

<ボーナス> 昨年8月から本年7月までの1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較

○民間の支給割合
公務の支給月数(4.50月)と概ね均衡


◎その他の課題

(1) 住居手当
・自宅に係る住居手当は来年の勧告に向けて廃止を検討
・借家・借間に係る住居手当は高額家賃負担職員の実情を踏まえ、引き続き検討
(2) 単身赴任手当
・経済的負担の実情、民間の同種手当の支給状況を考慮して改善を検討
(3) 非常勤職員の給与
・各庁の長が給与を決定する際に考慮すべき事項を示す指針を策定
・非常勤職員の問題は、今後は政府全体としてその在り方を幅広く検討を進めていく必要


◎勤務時間に関する勧告のポイント

職員の勤務時間を1日7時間45分、1週38時間45分に改定(2009年4月1日実施)
・職員の勤務時間は民間と均衡させるべきもの。民間の労働時間は職員の勤務時間より
1日15分程度、1週1時間15分程度短い水準で安定
・勤務時間の短縮にあたっては、これまでの行政サービスを維持し、かつ、行政コスト増加を招かないことが基本。公務能率の一層の向上に努める必要
・勤務時間の短縮は、仕事と生活の調和にも寄与


 

 

2008年人事院勧告にあたっての声明

2008年8月11日・公務労組連絡会幹事会

1、人事院は8月11日、国会と内閣に対して、一般職国家公務員の給与と勤務時間等にかかわる勧告および報告をおこなった。
 勧告は、「0.04%、136円」の僅少な官民較差にもとづく月例給のベースアップ見送り、一時金の据え置き、本府省手当の新設などを内容としている。同時に、所定勤務時間の7時間45分への短縮が勧告され、また、非常勤職員の「給与決定に関する指針」を示し、これに沿った改善を各省に求めていくこととしている。
 昨年の勧告では、初任給周辺に限定したとはいえ、8年ぶりの本俸改善となり、一時金の0.05月の引き上げで9年ぶりの年収増となった。今年の給与勧告に対しても、組合員の期待が集まるなかで、一昨年の「ベアゼロ」勧告にふたたび引き戻し、月例給・一時金ともに改善を見送ったことは、断じて認められるものではない。

2、原油価格の世界的な高騰を背景にして、ガソリンをはじめ、電気・ガスなどの公共料金、食料品や日常の生活用品におよぶまで、今や値上げの嵐が日本列島をおそっている。
 物価上昇が公務労働者の生活を直撃するもと、今年の勧告では、労働基本権制約の「代償措置」たる人事院勧告制度が、その本来の役割を発揮して、公務労働者の生活悪化をくい止めるための積極的な給与改善をおこなうことこそ求められていた。
 しかしながら人事院は、あくまで「民間賃金準拠」に固執したばかりか、各種調査を見ても、民間企業がほぼ昨年並みの賃上げ額で推移していたにもかかわらず、俸給表すべてにわたって改定見送りを強行した。
 そのうえ、新設される本府省手当は、霞が関など中央官庁に限定して課長補佐以下すべての職員に支給するもので、民間でも類のない手当であるとともに、中央・地方の賃金格差をさらにひろげる点で到底認められるものではない。人事院がやるべきことは、手当の新設などではなく、深夜におよぶ霞が関の異常な長時間労働・超過密労働をただちにあらため、職員の負担を軽減するための実効ある対策強化である。
 このように、本府省優遇をすすめつつ、政府・財界の賃下げ攻撃に追随し、切実な賃上げ要求には「ベアゼロ」で応えた勧告に怒りをもって抗議するものである。

3、公務労組連絡会は、格差と貧困の解消をめざして、08春闘から全労連・国民春闘共闘の「なくせ貧困!」をかかげる国民規模の運動に結集し、正規・非正規を問わずすべての労働者の賃金底上げ、最低賃金改善へ全力をあげてたたかってきた。
 夏季闘争では、ほぼ同時に決着する「最低賃金・人事院勧告」を一体の課題にしてたたかいつつ、人事院総裁あての「賃金改善署名」に取り組み、730万公務関連労働者をはじめ、民間労働者との「対話と共同」をひろげ、24万筆の署名を集約した。
 また、「官製ワーキングプア」などと呼ばれる臨時・非常勤職員の処遇改善に、とりわけ重点を置いてたたかった。こうしたなか、十分とは言えないまでも、人事院が非常勤職員の「給与決定に関する指針」を取りまとめたことは、「非正規労働者を主人公に」を合い言葉にした要求と運動の反映である。今後、指針のさらなる改善を求めていくとともに、賃金改善にむけた職場での積極的な活用が求められる。
 同時に、持ち家にかかわる住居手当の廃止を押しとどめたことや、勤務時間の見直し勧告は、ねばりづよいたたかいの成果である。とりわけ、8時間を原則とした勤務時間制度に穴をあけたことは、単に「15分間短縮」にとどまらない意義を持っており、すべての労働者の労働時間短縮へとつながる契機にもなるものである。そのためにも、政府に対しては、内外の政治的な圧力に屈することなく、勤務時間短縮のすみやかな実施を強く要求する。

4、厚生労働省の中央最低賃金審議会は8月6日、平均で時給15円の最低賃金目安額引き上げを答申した。「時給1,000円」の要求と照らし合わせて、きわめて不満なものであるが、昨年につづく2けたの改善は、「最賃・人勧」を一体にした運動の貴重な到達点であり、今後の地域最低賃金決定の場へとたたかいを継続・強化していく必要がある。
 やむにやまれず立ち上がった漁業関係者の「いっせい休業」のたたかいは、政府から745億円の緊急対策を引き出し、その後も、酪農業者や運送業者などの運動が各地で展開されている。生活と営業が日ごとに悪化するもとで、「生活危機突破」のたたかいが大きな国民運動へと発展しつつある。
 福田内閣は、内閣改造で政権の延命をはかろうとしている。国民の間に先行きへの不安感がひろがっているなかで、有効な経済対策を示しえず、消費税引き上げさえねらう自公政権と国民との間の矛盾は拡大せざるをえない。
 こうした情勢のもとでむかえる秋のたたかいに、公務労組連絡会は、すべての公務労働者の生活改善をかかげ、「生活危機突破」のたたかいに結集し、引き続き奮闘する決意である。

 (以 上)  




 
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