2002年国民春闘共闘情報
インデックスへ

第52号  2002年7月16日

坂内事務局長が「医療改悪反対」を表明

参議院厚生労働委員会の参考人意見陳述で

日本医師会・連合・高退連も「反対」

 参議院の厚生労働委員会は16日午後、健康保険法「改正」案をめぐり参考人の意見陳述・質疑を行いました。これには全労連の坂内三夫事務局長(日本共産党推薦)が「反対」論を展開したのをはじめ、日本医師会・櫻井常任理事、連合・草野事務局長、日本高退連・西田会長の4人が揃って反対しました。「賛成」論を展開した健保連・対馬常任理事、全国町村会・山本会長も、健康保険財政への国庫負担削減をすすめる政府の姿勢を批判しました。委員会室には、全労連の単産・地方代表、東京土建・埼玉土建や社保協、民医連などから105人が傍聴に駆けつけ、熱心にメモをとっていました。なお、昼の議面集会(参)には約70人が参加しました。この場で「医療署名」が6万8287筆、「有事署名」が2万2287筆提出されました。


●坂内事務局長の参考人意見陳述

労働者・中小企業の意欲を削ぐ、国民の痛みに塩

「改正」やめて、廃案にすべき


 全労連の坂内事務局長は、まず小泉首相が今回の医療改革にあたり、「三方一両損」と解説したことについて、国庫負担率が1980年の30%から98年の24%へと6%引き下げられたこと、国民医療費の6%は1兆5000億円に相当し、丸々国の負担を国民負担にすりかえたと指摘。政府の「三両丸得論」だと批判しました。
 財政赤字の原因については、最大の原因が保険料収入の減少だとして、
1)リストラ・倒産などによって保険の加入者が減少し、
2)賃金が3年連続してダウンしたこと

の二点をあげました。これによる保険料収入が1673億円のマイナスに、政管健保の赤字1569億円でほぼピッタリだと指摘しました。
 また、赤字の原因の一つと言われている医療費の増加については、医療費に占める薬剤費の比率が21.2%に達し、欧米各国の数値を紹介しながら、日本は群を抜く高さであることを紹介。高すぎる薬の値段の改善が必要だと主張しました。
 診療報酬の引き下げについては、国立病院の経営が診療報酬に加えて一般会計から11.9%の予算措置、自治体病院も一般会計からの支出なしには経営できないなど、現行の診療報酬だけではまともな医療が困難であることを示しました。とくにGDPに占める社会保障給付費の割合が欧米で15%〜38.5%、日本は11.9%にすぎないとして、国のあり方の問題だと指摘しました。
 坂内事務局長は、抜本的な政策転換が必要だとして、
1)雇用対策による保険料収入の基盤維持、
2)政管健保への国庫負担率を法律どおり16.4%に戻す、
3)高すぎる薬価にメスを入れる、
4)病気予防・早期発見のシステム拡充

などをあげました。
 発言の最後に、「この国は歯車が狂っている」として、完全失業率、企業倒産、賃金ダウンなどの実態を紹介。労働者は年間3万7500円程度の負担増に加え、病気になれば3割の自己負担をしなければならない。社会の土台を支える労働者や中小企業の意欲を削ぐような改正、多くの良心的医療機関の努力を無にするような改正、国民の痛みに塩を擦り込むような改正は廃案にすべきだと結びました。




●日本医師会・櫻井常任理事の意見陳述

自民推薦だけど「健保法改正に断固反対」

「意見反映」なければ、自民党支持再考も


 自民党が推薦した参考人・日本医師会の櫻井秀也常任理事は、開口一番、「最初に今回の健保法改正には断固反対します」と表明し、医療保険制度の考え方、反対理由などを述べました。
 医療保険制度の考え方について、
 一つは現在の制度が日本はGDP比7.1%で、欧米は1.4倍から2倍になり国際的にも安い費用で行われていることを紹介。そのうえで、日本は世界一の高齢国、乳幼児の死亡率も世界一低いなど世界に冠たる制度であるとして、改革は長所を伸ばしていくべきで、破壊してしまうことに強い憤りを感じると述べました。
 二つ目に財政問題について、不足したら1)保険料アップ、次に2)公費負担で、銀行支援の何分の一かで足りるとして国庫負担削減を批判しました。
 反対理由については、2点挙げました。
 第一は老人保健法の一部自己負担に反対だとし、負担が高額になること、還付申請方式の煩雑さ、健康のために消費を控えてしまうことなどを挙げました。
 第二に健保本人の3割負担に反対だとして、保険料負担と患者の自己負担の合算で、公平か不公平かを見るべきだとしました。
 櫻井常任理事は最後に、低迷している日本経済について、「現在の不況は経済界自体の失態によるもので、それを医療分野で尻拭いすることは遺憾である」として、国民に安全と安心を保障することこそ真の社会保障だと述べ、良識ある審議を要請しました。
 意見陳述が一巡したあと、各党代表による参考人質疑で、山本文男議員(民主)の質問に答えながら櫻井常任理事は「このような考え方で自民党が進むのであれば、われわれも自民党は応援できない。選挙で票は入れないということだ」ときっぱり表明しました。




●連合・草野事務局長の意見陳述

負担増の法案は廃案に!抜本改革を求める


 連合の草野事務局長も冒頭に、「今回の改正案は、単なる患者・国民への大幅負担増による当面の保険財政対策でしかない」「抜本改正が実施されないままでの改正には絶対に反対である」ことを表明しました。とくに、今回の改正によって、国民・患者への負担増は、景気の低迷をさらに長期化させるばかりか、社会保障制度への信頼という点からも大きな問題があると指摘しました。
 今回の改正案に対する意見について、次の6点について論じながら反対意見を述べました。
 第1は、自己負担額を2割から3割へ引き上げることについて、公平な負担とは自己負担と保険料負担のトータルで考えるべきで、自己負担だけが公平というのはおかしな論理だ。
 第2は、総報酬制の導入、政管健保の保険料の引き上げについて、今回は保険料引き上げだけを目的としており、とうてい納得できない。
 第3には薬剤一部負担金の廃止について、コスト意識の喚起にもなり抜本改革までの間、制度の存続を求める。
 第4には、高齢者医療について、現行の老人保健制度を存続させた上での部分改正は単なる改革の先送りでしかない。
 第5は、高額療養費制度における自己負担限度額の引き上げについて、患者の医療費負担を軽減し生活を安定させるという重要なものであり、本来の姿に戻すことなく限度額を引き上げることには賛成できない。
 第6に、付則について、政府は抜本改革の内容は付則に盛り込んだと説明しているが、98年の改正でもこれが反故にされており、実効性の担保がない。
 草野事務局長は、「国民が長期不況に苦しむ中にあって、経済情況を悪化させるような大幅負担増を行うべきでない」として、今回の法案は廃案とし、医療・医療保険制度の抜本改革の断行を重ねて要望しました。