2000年〜2001年度運動方針(案)

【第3章】国民春闘の前進、賃金闘争の強化

1.日本の賃金闘争の到達点と現状

 (1)春闘は、これまで曲折はありながらも未組織労働者もふくめ日本の労働者の賃金水準を引き上げる役割を果たしてきた。しかし、ここ数年は実質賃金の低下がつづいており、賃金闘争のあり方が根本から問われている。この背景には、日経連の「新時代の日本的経営」にもとづく「世界一高い賃金」などの思想攻撃がつよまり、総額人件費の抑制、賃金の切り下げ攻撃とともに、年功型賃金から能力・成果主義賃金への移行など賃金の個別化が強引に推進され、春闘の解体・変質攻撃が本格的にすすめられていることがある。
 (2)総額人件費の抑制は、すでに進行してきた福利厚生費等の削減、一時金の削減や退職金の切りすて・削減から、最近では賃金本体の直接的な切り下げ攻撃にまで踏み込み、公務労働者もまきこんで広範囲にすすめられている。また、これまでの年功型賃金の崩壊に裁量労働制の導入・拡大が拍車をかけ、中・高年差別や女性の差別賃金など労働者間の賃金格差がひろがり、総体として賃金切り下げが進行しているのが今日の特徴である。
 (3)大企業では、国際競争力強化を名目にリストラ・「合理化」が強行され、中小企業では長引く不況や銀行の貸し渋りなどによる倒産があいついでいる。また、正規労働者の派遣・パートなど不安定雇用への切り替えが大規模にすすめられ、これにともなって賃金水準の低下が進行している。リストラを免れた正規労働者にも、長時間労働とサービス残業が強要されている。さらに「請負」労働者や建設現場・タクシー・ダンプ労働者など、出来高・歩合給中心の労働者の賃金も不況と業績不振のあおりで大幅にダウンしている。
 (4)これまで大企業職場では、企業の業績をあげることが雇用と所得向上のための「労使共同目標」とされてきた。しかし今や、その「神話」は現実の前に崩壊している。大企業は2000年3月の最終利益を26%増と3期ぶりに増益に転じさせ、2001年3月期の決算見通しは最終利益が前期比2.9倍にもなるものと予想されている。リストラ・人減らしで、企業利益はめざましく改善しているのに、労働者の雇用と所得は依然として減少しつづけているのが今日の賃金動向の特徴となっている。

2.賃金闘争の前進にむけた新たな「萌芽」

 (1)全労連が、昨年大会で大幅賃上げとともに最賃闘争や賃金底上げの重視、すべての労働者を視野に入れたたたかいの探求をうちだした背景にはこうした実態がある。2000年春闘では、この方向にそって全国一律最低賃金制の確立と結合した企業内最低賃金や産別最低賃金のとりくみが各産別で追求され、建交労の集団交渉による最賃協定の前進、全印総連の企業内最低賃金のとりくみ、医労連による看護婦最賃のとりくみなどの前進がみられた。
 (2)賃金底上げのたたかいでは、丸子警報器の争議勝利と結合したパート賃金の改善、東京の「時間給1000円」をかかげた業界団体への申し入れ、大阪・高槻島本地域労連、東大阪地域労連、埼玉や神奈川での「時間給100円アップ」の事業所訪問活動などがとりくまれ、具体的な成果も生まれている。新しい賃金闘争への挑戦はまだ具体的成果は十分ではないが、すべての労働者を視野にいれた賃金闘争、底上げ闘争への萌芽がみられる。
 (3)大幅賃上げをめざすたたかいは、長期不況と中小企業の経営困難、財界・日経連による春闘解体攻撃、JC・大企業組合の低額・一発回答の受け入れなど、春闘全体の否定的影響のもとできわめてきびしい結果にとどまった。しかし、下請け単価の切り下げ、大企業の横暴に苦しむ中小企業経営者、業者団体、農民など国民諸階層との共同がひろがり、全国・大産別・産業・業種・地方・地域の統一闘争も強化されるなど新しい前進面をつくりだしてきており、今後の闘争への展望をひろげている。

3.賃金闘争の重点と具体的展開

 (1)こうした到達点をふまえ、全労連の今後の賃金闘争としてとりわけ賃金の底上げや最低賃金闘争を重視する。そのため、各産業・職種ごとに賃金実態調査にとりくみ、男女、中高年、雇用形態などによる賃金差別を明らかにした「低賃金黒書」などを作成し、社会的な告発・アピールをはかる。地域経済の活性化や業者・農民生活の改善とも連動する賃金底上げや最低賃金について、業界団体、農民団体などとの共同を強化していく。また、地域ごとのパート・派遣労働者の「賃金マップ」作成にとりくむ。さらに、各単産は一律要求や企業内最低賃金の協定を重視した賃金闘争にとりくむ。
 (2)最低賃金制度の確立、改善のたたかいでは、ヾ覿汎盧把稍其發龍定化と普及にむけて各単産の目標を決めてとりくむ。∋唆畔椋把稍其發粒領にむけ、看護婦・タクシー・トラックなどを重点に単産と地域の連携、同一産業組合との共同をすすめる。C楼菠餝膾把造琉き上げにむけて地域シンポや宣伝行動などを強化する。い海譴蕕留親阿鳩觜腓靴徳換餔賣Ш把稍其眄確立の意義について啓蒙をはかりつつ、政府交渉・団体署名・最賃体験運動などにとりくみ、法制化についての研究に着手する。ッ羆・地方の最低賃金審議会の委員獲得にむけて中央・地方の一斉交渉など全国的な運動を展開する。
 (3)大幅賃上げのたたかいは、「生計費原則にもとづく大幅賃上げ」「大企業内部留保の社会的還元」「大幅賃上げによる不況打開」という基本を堅持し、底上げ・最賃闘争と一体でとりくむ。各単産は、産別・業種の横断的な賃金確立にむけた到達目標を設定し、統一闘争の強化や集団交渉の配置などにとりくむ。全労連は、大幅賃上げ要求の実現のために、大企業が労働者犠牲のうえに大儲けをつづけている事実を告発し、「ピクトリーマップ」や「賃金諸資料」の作成、宣伝行動の強化などによって国民世論の喚起をはかる。また、未組織をふくむ広範な労働者の要求を結集する「要求アンケート」のとりくみを重視するとともに、統一闘争については早い段階から日程・行動を調整する。
 (4)年収ベースではマイナスとなるような人事院勧告がつづいている。また、人事院勧告制度は、国・自治体の財政困難を理由にした公務員労働者の賃金切り下げに利用されるとともに、すべての労働者に低賃金を押しつけ、国民の生活水準を改悪する役割をはたしている。全労連は国民犠牲・大企業本位の逆立ち財政をあらためさせるたたかいと結合しながら、公務労働者の賃金改善、生計費原則にもとづく人事院勧告の実現にとりくむとともに、不当に剥奪されている公務員の労働基本権回復に向けた具体的な運動を強化する。
 (5)能力給・成果主義賃金の導入・拡大が職場の競争をあおり、人間関係を荒廃させているだけでなく、技術の継承の消失、企業経営の危機を招くまでに至っている。こうした観点から成果主義賃金の見直しをすすめるとともに、「評価基準の公開」、不適正な評価を許さない職場からのたたかいを強化する。これから導入しようとする企業にたいしては、すでに明らかになっている問題点にもとづいて職場で十分な議論をおこない対応していく。
 (6)2000年春闘では賃金要求とあわせて、制度に関わる10大要求を提起したが、行動提起の不足から十分な運動には至らなかった。「児童手当」の引き上げや年金・社会保険・税制などの抜本的改善についての政策提起を重視する。同時に、要求アンケートの作成段階から賃金以外の諸制度面での要求集約をはかり、秋の早い段階から切実な要求にもとづいた制度要求を提起する。春闘の前進をはかるため、対話と共同をさらにひろげ、中央・地方で国民春闘共闘委員会の拡大強化に全力をあげる。
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