2024年5月13日
全国労働組合総連合
中央教育審議会「質の高い教師の確保特別部会」は、給特法見直しに向けた議論のまとめとして、時間外勤務手当の支給を否定し、「定額働かせ放題」と揶揄される教職調整額を4%から10%に引き上げるなどの提言を文科相に提出した。今後、政府・文科省は、「改正」法案の提出に向けた準備を進め、来年の通常国会に上程することが予想される。
全労連は、今回の提言が教職員の長時間労働を何ら改善させるものではなく、いっそうの長時間労働、さらなる負担増、職場における共同の破棄につながるものとして厳しく抗議する。そもそも、勤務の特殊性を理由に勤務時間管理を行わないという論立ては、労働法制上許されないとともに、労働時間規制の緩和につながる危険性を有している。
政府・文部科学省が直ちに行うべきことは、一人あたりの業務量を減らすことにある。そのためには、教職員定数を定める標準法を改正し教職員の大幅な増員を図ること、少人数学級をさらに前進させることなど、子どもたちの豊かな成長につながる教育環境を整備することだ。
給特法は、原則として時間外勤務を禁止した上で、教育の特性上、法で列挙した業務においてのみ、やむを得ないものとして、時間外労働をさせることを許容している。そもそも教員の勤務で時間外労働があってはならないことが前提にある。
しかし長期にわたる人員抑制策などにより、教育現場は大きく変質してきた。長時間の時間外労働が当たり前となり、文科省の調査でも教職員の労働時間は法が定める労働時間を大幅に超えている。今回の審議で焦点となっていたのは、学校現場の長時間労働に法的な歯止めをかけることにあった。
しかし、提言は「一般行政職と同様な時間外勤務命令を前提とした勤務時間管理を行うことは適当ではない」として、時間外勤務手当の支給を否定した。同時に、「メリハリある賃金体系」により、人件費の総額を抑えて教職員賃金の序列化を進めようとしている。
労働時間の規制は、国際労働条約でも第一に取り上げられた課題だ。ILO第1号条約は、工業的業種における労働時間を一日8時間に規制するものであった。メーデーの由来も、労働時間を8時間にすることを求めるゼネストが始まりである。教職員も一人の生活者であり、社会生活に必要な時間が確保されるべきである。ましてや長時間労働によって健康を害するようなことがあってはならない。
全労連は、すべての労働者の労働時間短縮を求めている。しかし厚生労働省では、労働基準法の見直しに向けた議論で労働時間規制を有名無実化しようとしている。給特法見直しも同じ方向を向いているとしか思えず、到底容認できない。
無定量な勤務を強いる給特法改定の方向ではなく、長時間過密労働解消につながる給特法の抜本的改正と、大幅増員で子どもたちの豊かな成長につながる教育環境整備を政府・文科省に強く求める。
以上