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【談話】コロナ禍だからこそ最低賃金の大幅引き上げと地域間格差の解消を

2020年6月29日 全労連 事務局長  野村 幸裕

 6月26日、第56回中央最低賃金審議会が開催され、今年の地域最低賃金の改定に関する諮問が行われた。諮問した加藤勝信厚生労働大臣は、6月3日に開催された全世型社会保障検討会議での安倍首相の「新型コロナウイルス感染拡大による企業業績の急速な悪化を受け、本年度の最低賃金の大幅引き上げに慎重な姿勢で臨む」という引き上げに後ろ向きな発言を受け、「中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況を考慮して検討する」と審議会に求め、賃金を抑制するように注文をつけた。さらに使用者側は、安倍首相の発言を指示と位置づけ、「中小企業・零細企業の厳しさを考えれば、最低賃金抑制は当然」という意見を表明しており、新型コロナウイルス感染を根拠に、国民に低賃金を押しつけ、労働条件の向上を拒否しようとしている。さらに日本の最低賃金は、世界から見ても極めて低い水準であり、多くの国際機関からも指摘されているが、その問題には触れていない。

 リーマンショックの際、欧米諸国は賃金を引き上げ、内需を拡大して経済を回復させた。しかし日本は、労働者の賃金を抑制し、雇用を破壊しながら、落ち込んだ経済を、規制緩和と貿易によって企業利益を確保した先進国唯一の異常な国である。それによって、国民の消費購買力が縮小し、デフレから脱出できない国となった。今日の深刻な不況の元凶は、GDPの6割を占める個人消費が改善しないところにある。安倍政権は、口では「雇用と生活を守る」と言いながら、雇用と最低賃金を対立するものとする従来の論調を持ち出し、再び同じ誤りを繰り返そうとしている。新型コロナウイルス感染拡大によって縮小した経済を活性化するには、国民の消費購買力を向上させる以外に解決策はない。
 今回の新型コロナウイルスによる社会の混乱は、新自由主義による市場原理主義、自己責任論、小さい政府論によって日本の経済や生活基盤が脆弱化していたところに、感染の拡大が追い打ちをかけたことによる。しかし、政府はこの本質を見ずに、自己責任論による「補償なき自粛要請」「医療・介護の責任放棄。崩壊放置」「雇用か賃金か」などを繰り返そうとしている。

 さらに今回の新型コロナウイルス感染拡大によって、特に国民の日常生活を支える医療や介護、福祉、流通などのエッセンシャルワークに従事する労働者の多くが、最低賃金近傍の低賃金で働く非正規雇用労働者であることが明らかになった。不安定な雇用、自らの感染への恐怖などとたたかいながらの仕事である。最低賃金の引き上げは、エッセンシャルワークの社会的地位を向上させるうえでも重要である。
 最低賃金の地域間格差は、最高と最低の地方で時給223円の差となっている。同じ仕事でも、年収で40万円以上の格差となる。大都市圏での新型コロナウイルス感染拡大は、人口の一極集中による弊害とする指摘も多い。今年の審議では、この地域間格差の廃止・縮小の意思を示すことも求められている。今年の審議では、地域間格差の解消を求め、地域区分の見直しなど具体的な見直しの施策を表明されるように強く求める。さらにどのような議論がなされたかわからない密室会議で、社会的セーフティネットの水準を決めるのが「当然」という異常な審議を止め、公開を原則とする審議会の運営に戻し、国民の前で真摯に議論をしていただくことを強く求める。

 全労連は、新型コロナ感染拡大を乗り超え、政治・経済・社会の抜本的な変革のため多くの困難な労働者や市民のくらしを守るために、審議の公開などを求め、時給1500円以上の早期実現、全国一律最低賃金の確立を求めて、今年の最低賃金運動に全力をあげる決意である。

以 上

 
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