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【談話】年金制度改定法案の審議入りにあたって

2020年4月15日
全国労働組合総連合
事務局長  野村幸裕

 年金制度改定法案の審議が国会で始まった。本法案は、現在60〜70歳の間で選べる年金の受給開始年齢を、2022年4月から60〜75歳に拡大。「在職老齢年金制度」を60〜64歳の減額基準となる賃金と年金の合計額について、月28万円超から22年4月に月47万円超へ引き上げる。また、短時間労働者の厚生年金適用拡大として、厚生年金の加入義務がある企業の規模を「従業員数501人以上」から段階的に引き下げ、2024年10月に「同51人以上」まで拡大することなどを柱としている。

 75歳まで引上げる意図は、マクロ経済スライドの発動等で年金額を減らしておいて、国民的な年金不信をあおり、「75歳まで働き、『自己責任』 で年金額を増やせ」ということに他ならない。昨年夏に、政府機関が「老後の生活に公的年金だけでは、2000万円不足する」と喧伝した。国の責任を投げ捨てるものと世論は批判したところである。現在、支給開始年齢を男性は2025年、女性は2030年まで、段階的に65歳に引き上げているもとでも、65歳定年制は、多くの企業で整備が進んでいない。生活できない低年金の下で、定年後も働かざるを得ない労働者が多くなっているが、現在70歳まで受給を延ばしている人は1%に過ぎない。
 他方、製造・建設・運輸などの現業系の重労働業種や医療・介護・商業・サービスなどの変形・交代制職場では「65歳まで働き続けられない」という声も上がっている。
 在職老齢年金制度については、廃止すべきである。年金支給開始年齢に達したすべての人が「減額せず満額受給する」ことは国民の権利である。在職老齢年金制度は、日本独自のしくみであり、欧米と比べても「例外的な仕組み」になっている。
 また、厚生年金に比べて給付水準の低い国民年金について、今回の改正案は改善策を何ら示していない。国民年金制度創設当時は、自営業者や農業などに従事する人が主な加入者だったが、いまはフリーランスや非正規労働者が多く、低額・無年金問題の解消など国民年金の改善も求められている。
 基本的にすべての労働者に社会保険(厚生年金・健康保険)が適用されるべきであり、パート労働者などの厚生年金の適用拡大については、企業規模で差があるのは「法の下の平等」に反する。また、所得の低い者にも定率で社会保険料を課すことは大きな負担となってくる。しかも、受給額は、負担に応じてということになれば、安心できる年金額とは程遠い。

 今回の年金制度改定法案は、先に成立した「改正」高年法などとも相まって、高齢者・女性を不安定で賃金の低いフリーランス、非正規労働者として活用しようとする意図も透けて見える。確定拠出年金の推奨は自己責任を迫り、政府として無責任である。
 労働者・高齢者に自助努力を求め、国の社会保障責任を果たそうとしない施策は、憲法25条に基づく社会保障制度として許されるものではない。本来行うべき年金改革は、マクロ経済スライド制度を廃止し、毎年のように減り続け将来の見通しが立たない年金制度を改め、減額することなく年金を支給する制度に改めること、すべての国民に高齢期の生活の安心を保障する最低保障年金制度を創設する憲法に基づく年金改革である。そのためにも、大企業・富裕層に負担を求めるべきである。
 年金受給者を組織する年金者組合は、全国で特例水準の廃止に対する違憲訴訟を提訴している。年金受給者の声を反映させる年金改定が求められている。

 2016年、安倍政権の下で、年金カット法案が、国民的議論に付されないまま、数日の国会審議で可決成立させられた。すべての国民生活にかかわる年金制度改革の審議を、再び国民的な議論を経ずに成立させる愚行はやめるべきである。

 新型コロナウイルス感染症への対応の議論が求められる国会において、「不十分・不急」の年金審議を拙速に行うことなく、コロナ問題が落ち着いて後に国民的議論の下で徹底審議することを求める。 

以 上

 
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