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【談話】「働き方改革関連一括法案」は部分修正ではなく国会提出の断念を

 安倍首相は、裁量労働を巡るデータねつ造への批判を受け、国会に提出を予定する働き方改革関連法案から、裁量労働制の適用拡大に関わる部分を削除することを明言した。
 実態を正確に把握せず、裁量労働制の適用拡大が労働時間の短縮や過労死根絶に資する策となるかのような誤ったイメージを振りまいた「根拠なき制度改悪」を撤回し、白紙に戻すことは当然である。この間の、野党6党の国会内での奮闘と呼応した労働組合や過労死家族の会、市民団体などとの共闘の成果とし、教訓として引きつぎたい。

 しかし、議論すべきは、経営者と一体的な立場とみなしうる権限をもたない労働者に労働時間の裁量を与えることで、長時間・過密労働の是正策となり得るのかということであり、その点では、労働時間管理をしない労働者を作り出す高度プロフェッショナル労働制も同様である。
 労働者に対して、始業・終業の時間を命じられないとしても、業務量はいくらでも増やすことができ、しかも事実上、残業代を支払わなくても違法ではないとされる制度がどのような事態をもたらすのか、使用者と労働者の交渉力の著しい格差、成果実績で評価する権限を使用者が有している現実、成果主義が蔓延するもとで労働実態の急速な劣化、裁量労働制導入職場から寄せられる深刻な長時間・過密労働の実態、これらのことからしても労働時間管理をしない働き方は労働者の命を削り、健康を損なうまでの「働かせ方の自由」を使用者に与えるのは明白である。過労死根絶の方向とは真逆を向いている。

 また、月100時間残業の法定化などの残業規制は、過労死を考える家族の会などの粘り強い取り組みと、医学的研究などで作りあげられてきた過労死認定基準を形がい化させ、現実に発生している100時間未満での過労死事件についての使用者の安全配慮義務を免責することになりかねない。残業時間の規制策としては極めて不十分である。
 予定される法案にはこれ以外にも、雇用の違いによる格差を固定化し、格差是正に背を向けていることや、雇用によらない働き方を国が誘導する内容など、企業にとって都合がよく、深刻な雇用、労働実態の改善には程遠い内容が多数含まれている。予定される法案がそのような内容となっているのは、生産性向上が最優先され、人間らしく働くためのルールの整備という労働法制の本来目的を捨象し、官邸主導で強引に決定されたからに他ならない。

 以上のことから、働き方改革関連一括法案の国会提出の断念、労働の実態を踏まえた「働きがいのある人間らしい仕事・ディーセントワーク」実現を目的にした労働法制改善を強く求める。

 2018年3月1日

全国労働組合総連合
事務局長代行  橋 口 紀 塩

 
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