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【談話】労働者保護を後退させる「残業代ゼロ」、解雇規制の緩和は認められない
‐ 経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議の労働法制論議にかかわって ‐

 4月22日に開催された「第4回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議」に、産業競争力会議の雇用・人材分科会の主査である長谷川閑史経済同友会代表幹事から、「個人と企業の成長のための新たな働き方〜多様で柔軟性ある労働時間制度・透明性ある雇用関係の実現に向けて〜」という提案が行われた。それを受けて安倍晋三首相は「労働時間規制の多様化を図る必要がある」として、「時間ではなく成果で評価される働き方にふさわしい、新たな労働時間制度の仕組み」と「労働紛争の解決を促す客観的で透明性の高い仕組み」について検討を指示したと伝えられる。
 長谷川氏が提案した「新たな労働時間制度の創設」は、第一次安倍内閣の時、広範な労働者・国民から「残業代ゼロ法案」と批判され断念に追い込まれた「ホワイトカラー・エグゼンプション」の焼き直しにほかならない。「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」の内容は、解雇自由な社会の突破口とされる「解雇金銭解決制度」そのものである。

 これらは、憲法第27条に根拠を置く労働基準法が定める8時間労働の原則や、解雇は適切に制限されるべきとの原則を踏みにじる労働者保護軽視の動きである。同時に、無定量な長時間過密労働でいのちを削り、心と体の健康を損なう労働者が後を絶たない現状や、「ロックアウト解雇」など労働者を使い捨てることに痛みを感じない企業が増加していることなど、労働者市場の現実を全く無視している。
 安倍首相は「新たな労働時間制度の創設」などの検討指示を撤回し、雇用の安定と質の向上など「労働者の働かせ方」の改善を企業に求める施策への転換を速やかに行うべきである。

 「新たな労働時間制度の創設」のポイントは、「労働時間と報酬のリンクを外す」ことであり、その具体策として「労働時間上限要件型」と「高収入・ハイパフォーマー型」なるものが提案されている。
 「働いた労働時間に応じて賃金を支払う」のは労働契約の大原則であり、「労働時間は1週につき40時間、1日につき8時間を超えてはなら」ず、それを超える「時間外・休日労働には割増賃金を支払わなくてはならない」という労働基準法の原則が厳重に守られる必要がある。「みなし労働時間制」(労働基準法38条2〜4)などは例外にほかならず、厳格かつ限定的に運用されなければならない。
 長谷川提案による新たな制度では、「本人の希望選択」、「年収要件」、「労使合意」、「労基署への届出」などを「制約要件」としているが、労働者と使用者の力関係が著しくアンバランスになっている現代日本の企業社会では、有効な歯止めとはなり得ない。ただ働き、長時間過密労働を「合法化」し、過労死・過労自殺を頻発させる“残業代ゼロ制度”、“過労死促進制度”となる危険性が極めて高い。
 また、「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」として、「日本の実情に応じた金銭解決システムの創設」を求めているが、裁判で違法無効とされた解雇について、使用者が一定の金銭を払えば解雇できる「解雇金銭解決制度」は、“究極の解雇の自由化”である。このような制度を許せば、使用者のリストラ解雇はやりたい放題となり、労働者や労働組合の権利は全面的に否定されることになる。

 安倍内閣は、このような「新たな労働時間制度の創設」や「日本の実情に応じた金銭解決システムの創設」を、6月にまとめる「成長戦略」や「規制改革実施計画」に取り入れ、厚生労働省の労働政策審議会にその結論をおしつけようとしている。
 労働者派遣法の全面改悪と同様に、労働者の声を聞かない労働政策の決定は断じて行うべきではない。こうした手法は日本も批准しているILO144号条約で求められる「政府、使用者、労働者の代表による協議」(労働基準委かかわる三者構成主義)に明確に違反し、民主的手続きを欠いている。
 経済政策を論議する場で、労働者の代表参加やその意見反映を排除して労働者保護改悪を論議し、強行する手法は即刻改めるよう強く求める。

  2014年4年24日

全国労働組合総連合
事務局長 小 田 川 義 和

 
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