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【談話】日本航空不当解雇2事案に対する東京地裁の不当判決を認めてはならない
‐ 不当判決をのりこえる全国的な運動強化を呼びかける ‐

 日本航空が2010年末に強行した不当解雇(整理解雇)の無効・撤回を求めた裁判で、東京地裁は3月29日に乗員組合事案(「渡辺判決」)について、同月30日には客室乗務員事案(「白石判決」)について、それぞれ原告の請求を棄却する不当な判決を出した。
 両事案の原告団は、不当判決を跳ね返し解雇無効のまともな司法判断を求めて、本日、東京高裁に控訴した。全労連は、原告団のたたかいに連帯し、支える取り組みをいっそう強化する。
 整理解雇四要件の適用のハードルを低くし解雇事由の流れをつくりだしかねない東京地裁不当判決を断じて許さず、雇用破壊に反対するたたかいの重点課題に位置づけて反撃を強めていく。

 「渡辺判決」は多岐にわたる争点があったにもかかわらず、裁判所としての判断はわずか16頁でしかない「薄っぺら判決」である。「白石判決」は、労働者の主張にことごとく反論して会社側主張を補強する「会社擁護判決」といわざるを得ない。
 両判決にはそのような違いはあるものの、中心の争点であった企業再建中の企業における整理解雇四要件の適用について、労働者保護の視点が欠落して会社更生計画を最優先し、会社側に都合の悪い立証事実は無視ないし軽視している点では共通している。その意味では、両判決とも二重の意味で不当判決である。

 二つの判決は、企業再生支援機構の関与する更生会社である日本航空の人員整理にも、「整理解雇四要件」が適用されることは認めた。その上で、「人員整理の必要性」、「解雇回避努力義務の履行」、「解雇者選定の合理性」、「手続きの妥当性」の各要件の判断でことごとく更生計画の実施を優先し、実質的にはこれまでの判例や学説が積み上げてきた「整理解雇法理」を逸脱した判断をおこなうという欺瞞的な内容である。

 企業が破たん状態に陥った原因や、整理解雇がおこなわれた時点では当初の更生計画をこえる人件費削減が達成され史上最高の利益が確保されていた事実はもとより、経営上、整理解雇を回避することが可能であったとの「稲盛証言」さえ判決には反映されていない。
 このような判決では、企業の維持・存続が危ぶまれるほどの差し迫った状況がなくとも整理解雇が許され得るという解雇規制の「抜け穴」が認められてしまうことになる。

 また、解雇者選定の基準として、過去の病気欠勤については会社貢献度に劣るとしながら、長期に会社に貢献してきたベテランを年齢によって選別解雇したことは「将来の貢献度が低い」として合理性を認めるという矛盾した判断基準をとっている。このような不合理がまかり通れば、会社側の恣意的な解雇者選定を規制する根拠は空洞化する。年齢が解雇者選定の基準とすることが一般化すれば、高年齢労働者を使い捨てにする企業が広がりかねない。

 様々な口実を隠れ蓑に、特定労働組合の構成員を狙い撃ちにした解雇(不当労働行為)が本件整理解雇の一つの目的であることや、雇用を守るためのストライキ権確立という労働基本権行使への不当な介入、関係労働組合とのおざなりの交渉経過などの事実は、判決に何ら反映していない。これでは、整理解雇をめぐって頻発する不当労働行為への歯止めを実質的になくし、企業のやり放題を許すことになりかねない。

 不確実性が増している経済動向のもとで、企業の存続が重視されるあまりに労働者の雇用が軽々に扱われ、生活破壊が進行する事態を見過ごすことはできない。今回の二つの判決は、そのような悪弊を助長するものであり、すべての労働者の雇用、権利、生活に関わる問題である。日本航空の不当解雇とたたかう原告団とともに、全労働者の課題として、不当判決をのりこえるたたかいへの結集を強く呼びかける。

   2012年4月11日

全国労働組合総連合        
事務局長  小 田 川 義 和

 
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