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2022年度政府予算案の策定に対する財務大臣要請

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 「軍事費削って、くらしと福祉・教育の充実を」国民大運動実行委員会は12月22日、来年度予算編成中の財務省に対して、安定した雇用や営業、社会保障の拡充など国民生活を第一に考えた2022年度予算編成を求めて申し入れをおこないました。
 参加者を代表して全労連の小畑議長が鈴木大臣に要請書を手交し、各団体代表からも、10要請項目(末尾に記載、下線部分は重点項目)に沿って申し入れを行いました。
 全労連の小畑議長は、「ケア労働者は、コロナ禍のなかで自身の生活や健康をなげうって国民のいのちと暮らしを守るために奮闘してきたが、高い専門性が求められながら賃金は低い水準に留まり、もはや使命感や責任感だけでは限界で退職者も出ており、人員確保は重要な課題だ」と指摘。「女性の多いケア労働者の賃金引き上げと大幅増員は、利用者の安全を担保することにもなる」として要請しました。
 引き続き、全商連の太田義郎会長をはじめ、農民連の長谷川敏郎会長、新婦人の米山淳子会長、全生連の前田美津恵副会長、全日本民医連の岸本啓介事務局長、日本民主青年同盟の西川龍平委員長が具体的要求について要請をおこないました。
 これに対し大臣からは、いくつかの要請項目に対して政府の考え方を述べるとともに「要請は多岐にわたり防衛省などに関わるものもあるが、我が省に関わるものは文書も頂いているので関係部署に伝えたい」としました。
 なお、要請には日本共産党の大門実紀史参院議員、田村貴昭衆院議員、同秘書が同席しました。

 

財務大臣 鈴木 俊一 殿

2021年12月22日
「軍事費を削って、くらしと福祉・教育の充実を」
国民大運動実行委員会

代表世話人 全国労働組合総連合議長          小畑  雅子
同   全国商工団体連合会会長          太田  義郎
同   農民運動全国連合会会長          長谷川 敏郎
同   新日本婦人の会会長          米山  淳子
同   全国生活と健康を守る会連合会副会長  前田 美津恵
同   全日本民主医療機関連合会事務局長     岸本  啓介
同   日本民主青年同盟委員長          西川  龍平

2022年度政府予算案の編成に対する申し入れ

 2022年度政府予算案の編成にむけて大詰めの作業がすすめられているものと承知します。
 内閣府は、11月15日に21年度7月〜9月期のGDP第1次速報値を公表しました。その内容は前期(4月〜6月期)比で0.8%減、年率換算では3.0%減少という民間予想を上回る内容で、まさに新型コロナウイルス感染症拡大による日本経済への影響の深刻さを物語っています。とくに、東京オリンピックの強行と国内での爆発的な感染拡大による緊急事態宣言の発令で、個人消費の落ち込みや飲食業、宿泊業への直撃、企業の設備投資の鈍化など、日本経済回復への大きな障害となっています。
 厚労省が発表した「21年版自殺対策白書」では男性の自殺者数が減少する一方で、女性の自殺者数は15%増の7,000人を超えました。コロナ禍の下で、非正規雇用で働く労働者の雇止めやシフト減など、雇用環境の悪化が最大の要因といえます。ジェンダーギャップ指数の日本の順位は156カ国中120位、収入の男女格差は101位、女性労働者の賃金は男性の約半分という差別的な賃金実態にあります。また、NPOによる定期的なホームレスへの食糧支援の状況をみても、夏の時点にくらべ倍増するなど、より深刻な実態におかれています。労働経済白書のなかでも、雇用調整助成金制度特例措置や休業支援制度拡充などの政策的な効果で失業率を「2.6%抑え込んだ」と自ら評価しています。にもかかわらず、22年1月以降、雇用保険財政の枯渇を理由に暫時減額する方向ですが、年末年始の厳しい雇用情勢をふまえると、制度の継続、新たな雇用政策などセーフティネットの拡充が必要です。

 現に会計検査院の調査では、補正を含む20年度予算は21兆円も繰越しとなっています。コロナ過の下で、医療提供・公衆衛生体制はもちろん、国民の暮らしや雇用、営業を守るための支援が十分にいきわたっていないことが明らかにされました。
 一方、財務省が発表した法人企業統計によれば、2020年度末の企業の内部留保(金融・保険業のぞく)は前年度末に比べ、2.0%増の484兆3,648億円と2012年度以来、9年連続で過去最高を更新しています。
 来年度概算要求を見ても、軍事費は5兆4,797億円と8年連続で過去最高を更新し、その内容も秋田・山口への陸上イージス配備は県民の反対世論の前に断念はしたものの、代替となる海上配備など今までの「専守防衛」から「敵基地攻撃能力」の向上や宇宙軍拡など、軍事大国化の道へと進めようとしています。かたや社会保障分野では、コロナ禍が続くなかで経営危機となっている医療・介護施設への減収補てんをはじめ、医療提供・公衆衛生体制の脆弱ぶりが露呈されたにも関わらず、公立・公的病院の統廃合など地域医療再編計画を進めようとしています。いま、第6波が想定されるもとで何よりも必要なことは、国民の安全・安心な医療提供体制、公衆衛生体制の拡充と、そこで働く医療・介護、保育などケア労働者への賃上げや労働条件の改善です。
 私たち「軍事費を削って」国民大運動実行委員会は、80年8月の結成以来、「軍事費を削って、くらしと福祉・教育の充実」を基本要求に掲げ、その実現にむけて取り組んでまいりました。
 こうした点をふまえ、深刻な個人消費低迷打開にむけて世界50か国以上がおこなっている付加価値税=消費税の5%への減税と大企業優遇税制や金融課税など、不公平税制の是正、所得再配分策を講じることが必要だと思います。
 貴職におかれましては、政府予算策定にあたり安定した雇用と社会保障の拡充など、国民生活を第一に考えた2022年度予算編成を求め、下記の要求を申し入れます。

1. 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を最優先し、在日米軍のための「思いやり予算」廃止をはじめ、軍事費や不要不急な予算を大幅に削減し、医療・福祉・教育・防災など国民生活優先の予算配分をおこなうこと。
(1)F35ステルス戦闘機など敵基地攻撃能力を高める兵器・装備品などの導入、イージス・アショアに代えて検討しているイージス・アショアシステム搭載艦の整備は即時中止し、歯止めのない軍事費を大幅に削減し、コロナ対策にまわすこと。

(2)米軍基地については、沖縄県民の民意を尊重し、普天間基地返還、高江ヘリパッド等の即時使用中止と撤去を米国政府に求めること。辺野古新基地建設を中止し、沖縄戦犠牲者の遺骨が含まれる土砂を埋め立てに使わないこと。この立場で米国と交渉すること。

2. 日本経済の回復にむけて、GDPの6割を占める個人消費拡大のために、当面消費税率を5%に引き下げること。複数税率は中止し、インボイス制度は実施せず、廃止すること。

3. 大企業に対する法人税の引上げをはじめ、溜め込み続ける内部留保への課税など、社会的還元の措置を講じること。金融資産を激増させている富裕層に対し、金融所得課税など応分の負担を講じること。

4. 社会保障費の抑制をやめ、医療提供・公衆衛生体制の拡充をはかること。
(1)政府が進めようとしている公立・公的病院の統廃合計画を直ちに中止すること。医療提供体制をはじめ公衆衛生、介護などの人員確保、予算の拡充をはかること。
 「地域医療構想」の策定で病床数の削減を都道府県に押しつけるのではなく、必要な病床数の確保、地域における安全・安心の医療体制を確保すること。医療費削減を目的とした「医療費適正化計画」の作成を都道府県に義務付けないこと。「達成」できなかった場合の罰則はおこなわないこと。診療報酬による病床削減、及び病床機能再編はやめること。

(2)コロナ禍で経営危機にある医療・介護施設への減収補填の助成措置をおこなうこと。

(3)運営が困難に陥っている国民健康保険の国庫負担率を引き上げ、当面医療費の45%に戻すことなど、国の責任で国保運営の改善を図ること。保険料(税)未納者に対する制裁としての「短期保険証」「資格証明書」の発行を直ちに中止し、すべての対象者に正規の保険証を交付すること。市町村の自治権を尊重し、一般会計法定外繰入や保険料決定の権限を侵害しないこと。保険者努力制度などによって法定外繰入に対する国庫助成の削減をしないこと。財政運営の都道府県単位化にともなう都道府県単位の保険料統一はおこなわないこと。

(4)生存権を脅かす差し押さえをやめ、差し押さえを助長する、自治体への交付金を減らす制度を廃止すること。
 国庫支出による無料の子ども医療制度を創設すること。少なくとも当面、国庫支出で子どもの均等割分を廃止すること。国保料(税)の申請減免を積極的におこなうこと。そのための国庫による財政支援を拡充すること。新型コロナウイルス感染症関連の国民健康保険料(税)の減免について、この制度を新型コロナウイルス感染症の感染拡大が収束するまで継続すること。

(5)後期高齢者のいのちと暮らしを守るために、医療費の窓口負担2倍化は直ちに中止すること。
@ 高齢者の年金給付をひたすら引き下げるマクロ経済スライド制を廃止し、2022年度の公的年金は減額しないこと。A 基礎年金の国の負担分、約3.3万円をすべての高齢者に保障すること。B 誰もが安心して老後を暮らせるために全額国庫負担による最低保障年金制度を創設すること。

(6)2013年からの生活扶助基準見直しで大幅に引き下げた保護基準を元(2012年ベース)に戻し、引き上げること。新型コロナウイルス対応で消毒などの購入にかかる費用に対応して生活扶助基準を引き上げること。気温上昇に対応して命を守る観点から夏季加算を新設すること。各自治体で申請・適用が迅速・確実に実施されるよう周知徹底をはかること。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により貧困に陥った人が生活保護制度を利用できるようにするために、預貯金、自動車、自宅、生命保険等の資産要件を大幅に緩和する特例措置を講じること。生活保護世帯の国民健康保険への加入計画は中止し、いつでもどこでも安心してかかれる医療証を発行すること。

(7)要支援・要介護1・要介護2を介護保険から切り離し、市町村に丸投げする「総合事業」は止め、すべての高齢者が介護保険で必要な介護を受けられるようにすること。
@生活援助(訪問介護)の利用回数を制限しないこと。
Aケアプランの有料化、利用料の引き上げなど、サービス利用に困難をもたらす制度見直しの検討をおこなわないこと。

5. コロナ禍で困窮する国民のくらしと営業、雇用を守る施策、財政措置を講じること。
(1)持続化給付金、家賃支援給付金の要件緩和と対象を拡大し、経済危機に苦しむ中小業者を支援する制度の拡充をはかること。
 また今後、雇用危機が深刻化するもとで雇用調整助成金制度特例措置や休業支援金など、コロナ収束まで継続させること。雇用保険会計にとどまらず、新たな雇用対策と予算措置を講じること。

(2)新型コロナウイルス感染症対応として実施された日本政策金融公庫による特別貸付は完全無利子にし、コロナ禍が収束するまで継続して実施すること。追加融資、条件変更など事業者の要望に沿った積極的かつ柔軟な対応を徹底すること。

(3)女性の貧困を招いている雇用不安と低賃金構造の改善は急務であり、看護師、保健師、
介護士、保育士など、医療、介護、福祉、保育、学童保育などの職場で働くすべてのケア
労働者の賃金を抜本的に引き上げること。また、これらケア職場の安全を担保するために、
職場の配置基準を抜本的に見直し、職員の大幅増員をおこなうこと。

(4)最低賃金については、「骨太方針」に沿って「全国加重1,000円」の実現にむけて、
@ 中小企業予算の増額、A 賃上げをした中小企業への直接補助および保険料等の減免、B 公正取引にむけた法的改正、C 地域における有効需要の創設など、実効ある施策を講ずること。
  上記を推進しつつ、早期に「全国一律1,500円」実現にむけて施策の推進をはかること。

(5)第5次男女共同参画基本計画の着実な実行へ「3年度及び4年度に重点的にとりくむべき事項」とされた「女性活躍・男女共同参画の重点方針」「骨太方針」にもとづき、以下について確実に実行する財政措置をとること。
@ 「生理の貧困」について、政府も2度の自治体の支援調査をし、各地で生理用品配布などの努力がされているが、このままでは自治体まかせで一時的な配布にとどまる懸念があり、学校をはじめすべての公共施設のトイレで、どこでも必要な人が生理用品を使えるよう、国の財政をとり、推進すること。
A コロナ禍で深刻となるDV相談やワンストップセンターについて、周知徹底や通話料の無料化をすすめ、相談員がボランティアなどではなく、専門性が求められる職務にふさわしい待遇改善と育成のための抜本的な財政支援をすること。

6. 教育予算をOECD諸国並みに増やし、教育機関の教育・労働環境を改善し、子どもたちの成長・発達を保障すること。国民の教育費負担を大幅に軽減すること。
(1)35人以下学級の一部実現を契機に、「20人学級」を展望した少人数学級をすすめるための予算を保障すること。ゆきとどいた教育の充実を図るために正規教職員を増やすこと。そのために義務および高校標準法を改正し教職員定数を改善すること。また、「教育に穴があく」と称されている教員の未配置・未補充問題に対して、早急に解消するための施策を具体的に打ち出すこと。

(2)「高等学校等就学支援金」の所得制限をなくして、不徴収に戻すこと。私立高校への就学支援金を大幅に増額し、私学助成を拡充すること。消費税による財源に頼らず、大学の学費をただちに引き下げ、給付奨学金事業を拡充すること。

(3)ただちに大学の学費を引き下げるとともに、「給付型奨学金」の対象拡大や増額のための予算の拡充をはかること。授業料の減免制度の維持・拡充を図り、予算を保障すること。入学金制度を国の責任でなくすこと。新型コロナウイルス感染対策の「学生支援緊急給付金」を継続し、要件の緩和や規模の拡大など拡充を図ること。

(4)大学医学部定員を増員すること。今後の医学部定員についての考え方を示すこと。文科省の責任において大学入試における公正な入学試験を担保すること。地域枠学生の卒業後の進路については、憲法に保障された職業選択や居住地選択の自由に抵触するようなことのないように、実態の掌握と指導をおこなうこと。

(5)特別支援学校の実効ある「設置基準」を策定し、全国の教室不足を解消し教育環境の改善を図るための計画的対応を明らかにすること。また、特別支援学級の編制標準を6人とすること。

7. マイナンバー制度の当面の運用について、下記の点を改善すること。
(1)情報漏えいを誘発する「個人番号カード」の利用拡大をやめること。「個人番号カード」の不当な民間利用を防止するため監視・指導を強めること。

(2)個人情報保護を強化するための施策を図り、コンピューターシステムからの漏えい防止策が万全でない限りは、マイナンバー制度の運用を直ちに中止すること。

(3)マイナンバーカードと民間企業や自治体が付与するポイントを結び付けるサービス連携をはじめ、携帯電話へのマイナンバーカード機能の搭載、生体認証システムとの連携、企業や自治体職員の身分証明としての利用強要など、個人番号の利用拡大は、個人情報漏えいのリスクが高まり、なりすまし被害の拡大などにつながるので、おこなわないこと。

8. 防災・減災対策の拡充をはじめ、原発依存のエネルギー計画を見直すこと。
(1)当面、被災者生活再建支援金を直ちに500万円に引き上げること。被災者の生活と生業の再建、被災地復興に対して支援縮小ではなく、最後まで国の責任による必要な体制と予算・支援制度を確保すること。

(2)稼働40年以上の老朽原発の再稼働は中止し、廃炉にすること。原発の新増設はおこなわず、全原発の廃炉に踏み出すこと。福島第1原発のトリチウム汚染水の海洋放出決定を撤回し、福島県民をはじめ国民の理解と納得のうえでの処分方法を決定すること。

(3)2050年の温室効果ガス削減目標を100%とし、達成に向けて次期エネルギー基本計画の策定にあたっては、再生可能エネルギーの活用割合を大幅に引き上げること。

9. 下落した米価に対し、再生産が可能となる実効ある対策を実施すること。
(1)15万dの特別枠では不十分である。再生産が可能になる米価に回復させるために過剰在庫の市場隔離対策を実施すること。
(2)コロナ禍で生活困難になった人たちへの食料支援を直ちに実施すること。

10. 公務員総人件費削減を中止し、公務公共サービスの拡充をはかること。
(1)政府の総人件費抑制政策方針をあらため、公務公共サービス拡充をはかり、国民の付託に応えうる行政体制を増員によって確保すること。

(2)公務職場で働く非常勤職員や会計年度任用職員などに対して、正規職員との均等・均衡待遇を図ること。給料(報酬)、諸手当、期末手当・勤勉手当相当分が確実に支給されるように必要な予算措置を講じること。特別休暇、健康診断、安全教育や福利厚生の改善を図ること。労働契約法第18条と同様の無期転換ルールを制度化すること。

以 上

 

 
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