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「地域主権改革」を考えるシンポジウムを開催
国と地方自治体が果たすべき責任と役割を明らかに

写真 全労連は10月30日、日本教育会館で「地域主権改革」を考えるシンポジウムを開催しました。
 シンポジウムのコーディネーターに、一橋大学名誉教授の渡辺治氏をむかえ、シンポジストとして碇川(いかりがわ)豊氏(岩手県大槌町長)、綱島不二雄氏(復旧・復興支援みやぎ県民センター代表世話人、元山形大学教授)、尾林芳匡氏(弁護士、自由法曹団)がそれぞれの立場から発言し、東日本大震災の被災地の現状や今後の復興を通して、民主党政権がねらう地域主権改革の問題点を明らかにしました。労働組合・民主団体などから130人が参加しました。

「地域主権改革」の問題点をより鮮明にした東日本大震災

 主催者あいさつした全労連の根本隆副議長は、「東日本大震災と原発事故では、これまでの『構造改革』路線の弊害が明らかになった。『地域主権改革』は生存権や生活権を奪う『地域破壊改革』。本日のシンポジウムを契機に、『地域主権改革』の危険性や問題点への理解を大きくひろげ、たたかいを前進させよう」と呼びかけました。
 渡辺氏が問題提起をおこない、「国が担うべきナショナルミニマム保障の責任を放棄し、地方自治体を構造改革の担い手にするとともに、道州制導入により開発単位を大きくし、財界が主役となる国のかたちをつくること」と「地域主権改革」のねらいを明らかにしました。その上で「その問題点とともに、福祉型国家の必要性を大震災が示した」と指摘し、福祉国家型の自治体づくりという対立軸を鮮明に打ち出し、理解と共感をひろげる運動の必要性を訴えました。
 前町長をふくめて1割以上の住民が津波の犠牲者となるなかで、この8月に大槌町長に就任したばかりの碇川氏は、各自治体から応援も得ているが、「三位一体の改革」によってもともと職員が減らされていることに加え、職員自身も被災しているなか不眠不休で働いている実態をのべつつ、一刻も早い復興計画の策定にむけて、住民参加で地域復興協議会を立ち上げ、土・日に町内10ブロックで会議を開いていることなどが報告されました。また、地域主権改革については、「議論が深まらないまますすめられているのではないか」と懸念を示し、「道路・堤防の整備などは全国的な統一対応が必要で、市町村でやることには無理がある。国の責任のもとで、国の役割発揮が求められている」と指摘しました。
 綱島氏は04年のスマトラ沖地震の直後から、インドネシア政府が復興庁を立ち上げて復興計画を一括で担当したことと比べ、日本政府の対応の遅さを批判しまいた。とりわけ、村井宮城県知事が、水産特区構想などとして大企業本位の復興をねらっていることから、「住民に即した復興理念がないまま『構造改革』型の復旧・復興が行われようとしている」と懸念を示しました。そのうえで、「漁業権は江戸時代からつづく制度で、海を守るために国民が浜の漁民に負託した権利」とし、「水産特区」制度により海を大企業に売り渡す問題点を明確に指摘しました。
 尾林氏は、自由法曹団のプロジェクトでの議論を通して、「地域主権改革の正体」とする意見書を取りまとめたことを紹介し、「避難所生活からすぐに自立した生活にはなり得ない。復興事業などによる地元企業の振興と地域経済の回復なくして震災からの復興はあり得ない。『小さな政府』など『構造改革』路線に沿う政治思想の逆転が必要」と述べ、「各分野がバラバラに対抗するのではなく、一体的なイメージを共有して運動にとりくもう」と呼びかけました。

フロア発言で様々な問題点を各分野から報告

 その後のフロア発言では、「地方整備局の廃止は国民の安全・安心を奪い、地域によって防災にも格差が生まれる」(国土交通労組)、「深刻な雇用情勢のもとで国の責任で労働行政を担う重要性が増しており、増員が必要」(全労働)との指摘がありました。
 自治労連・滋賀県職労の参加者は、権限委譲などに関わる自治体ヒアリングの回答事例として、「専門的な内容が県から基礎自治体におりてくると人員的に対応できない不安」などを紹介しました。全生連の参加者からは「『義務付け・枠付け』一括法で公営住宅の整備基準が改悪。戸数削減や家賃の値上げなどが心配」「保育所人数基準の緩和で詰め込み保育が横行。こどもを荷物のように保育所に配達する『広域的保育所利用事業』が拡大している」と問題を報告しました。また、全教の参加者は大阪府の教育基本条例の動きを報告し、「橋下知事の『地域主権』は『首長主権』。あってはならない教育の政治支配が強まる恐れがある」と懸念を示しました。

政治の流れを変えることで「地域主権改革」にストップをかけよう

 シンポジウムのまとめとして渡辺氏は「『地域主権改革』が生活に与える影響や『構造改革』型の復旧が進んでいることが明らかとなった。一方では震災による雇用保険の給付延長や、健康保険料の支払い猶予などの特例措置は、国がやろうと思えばいつでもできることを明らかにしており、『特例』でなく『原則』にしていく運動が必要だ」とのべ、今後の運動の方向としては、「あるべきは、国と地方が重層的な責務を共同して担うことであり、分担論は憲法の理念にはない。政治の流れを変えることで、国民犠牲の地域主権改革にストップをかけるため、国民的な運動をすすめよう」と呼びかけました。
 閉会のあいさつに立った全労連公務部会の宮垣忠代表委員(国公労連委員長)は、「今回のシンポジウムで、この間の『構造改革』が国の果たすべき本来の役割と反することが明らかになった。国・自治体の役割は、国民の基本的人権を保障することにある。国民の安心・安全を守るため、公務・公共サービスの拡充にとりくもう」と呼びかけました。

 
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