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 2008年12月4日

 内閣総理大臣
   麻 生 太 郎  殿

全国労働組合総連合(全労連) 
議 長  大 黒 作 治 

非正規労働者の雇用安定など景気悪化のもとでの緊急対策を求める要請書

 今秋以降、カジノ経済の破たんによる金融危機が深刻化し、実体経済にも影響が出始めています。そのもとで、短期収益の悪化や輸出の減少などを理由に、自動車など輸出型産業の大企業及び関連企業で、派遣労働者の契約打ち切りや期間工の雇い止めなどが相次いで強行されています。また、大銀行を中心に、原材料の高騰や下請け単価引き下げ、あるいはバブルの崩壊や個人消費の減退などによる経営難に苦しむ中小零細企業に対する融資を渋り、引き上げをおこなうなどの「貸し渋り、貸しはがし」がおこなわれ、倒産件数を増加させています。

 今回の金融危機は自然現象ではありません。過剰な流動性資金をもとにしたマネーゲームによるバブルが弾けたことが原因です。そのマネーゲームに参加し、資金を提供し続けた大企業が、その責任を履行しないまま、不安定な雇用関係に押しとどめていた非正規労働者や中小企業に、ツケ回しすることは許されません。
 また、90年代後半からの「構造改革」によって、労働者保護法制の規制緩和や社会保障改悪を連続して進め、セーフティネットを壊し続けた政治、行政の責任も問われます。
 派遣契約を一方的に破棄する派遣先企業には、その結果が労働者の生活を全面的に破壊し、いのちの危機の崖っぷちに追い詰めることへの「痛み」は全く感じられません。「ハケン切り」が路上生活者を生み出し、生活保護申請に直結する問題であることの認識も不十分なように感じられます。このような事態を招いた責任の一端を政府は負うべきです。

 国内消費が減退し、景気が悪化し、さらに雇用状況が悪化する「負の連鎖」を食い止めるためにも、雇用の安定や雇用の場の確保、最低生活の保障をはじめとする社会保障の充実、中小企業対策の強化などの対策を大胆に講ずることが必要です。
 供給サイドである企業の活動の自由を保障し続けた結果である景気悪化に歯止めを打つには、需給サイドである労働者、国民の家計に直接的な効果が生ずる対策が必要だと考えます。

 以上のような問題意識から、下記事項を申し入れ、緊急の対策を早期に講じていただくよう要請します。


1 雇用の安定に最大限の努力をおこなうこと

 (1) 「労働者の職業を安定させるための事業主の努力を助長するように努める」(雇用対策法第1条)の趣旨を全面的にいかし、財界、大企業に、派遣社員や期間社員の解雇をやめるよう行政指導や、監督をおこなうこと。

 (2) 雇用保険の6兆円もの積立金を活用して、失業した労働者の生活と再就職への支援をおこなうこと。また、雇用保険への国庫負担の削減をおこなわないこと。

  1. 失業給付受給資格に必要な就労期間を6カ月にもどし、短期就労者への適用拡大をおこなうこと。
  2. 給付期間の上限を延長するなど、この間の失業給付削減を見直すこと。
  3. 雇用保険積立金を活用し、失業者、求職者への生活援助制度、住宅困窮者への家賃補助制度などを設けること。
  4. 非正規雇用の正規雇用化をはかるため、中小企業を対象とする補助金制度を設けること。

 (3) 政府の責任で、とりわけ状況が深刻な青年、高齢者、シングルマザーなどの雇用の場を創出すること。

2 内需主導への転換を図るためにも、「構造改革」をやめ、雇用の安定、最低生活の保障など「憲法第25条」を実現する施策を強めること

 (1) 雇用の安定をはかため、労働者派遣法の派遣労働者保護法への抜本改正、期限のある雇用契約は合理的な理由がある場合に限定する労働基準法の改正などを早急におこなうこと。

 (2) 最低賃金を時給1000円以上に引き上げ、全国一律の最低賃金制度を実現すること。最低賃金引き上げをすすめるため、中小零細企業への賃金助成制度を設けること。

 (3) 指導・監督を強化して違法な「ただ働き」をなくし、雇用拡大のためにも長時間労働を是正すること。

 (4) 社会保障費2200億円の削減などの抑制策をやめ、医療、介護、年金、生活保護制度などの充実を図ること。

  1. 後期高齢者医療制度の廃止、国民健康保険への国庫負担金の増額、物価高騰に見合った生活保護水準の引き上げなどを早急におこなうこと。
  2. 介護保険を改善し、介護労働者の労働条件を改善すること。

 (5) 消費税増税は断じておこなわず、庶民減税をおこなうこと。

  1. 消費税の食料品非課税を早急に実施すること。
  2. 公的年金等控除の最低保障額を140万円にもどし、一定所得以下の高齢者の老年者控除を復活すること。生計費非課税原則にのっとり、非課税限度額の引き上げをはかること。

 (6) ムダな大型開発は中止し、米軍への「思いやり予算」を廃止をはじめとする軍事費削減をおこない、「政党助成金」を廃止すること。
 また、大企業、大金持ち優遇の税制を見直し、これらを対象とする税率軽減措置を廃止すること。

3 中小零細企業・事業者の経営安定のための対策をとること

 (1) 銀行に、貸し渋り・貸しはがしをやめさせ、中小企業への資金供給という社会的責任を果たさせるよう、強く指導すること。

 (2) 公的な融資を充実し、中小企業の資金供給をささえること。さし当り、部分保証制度そのものを撤回し、全額保証にもどすこと。

 (3) 円高などの犠牲を下請企業に押しつけるなどの不当な単価たたきを許さないため、下請二法を厳格に運用し、立ち入り検査などを強化すること。

4 「カジノ資本主義」からの根本的転換をはかるため、投機マネーの規制を強化すること

 (1) ヘッジファンドなど投機集団にたいして、情報公開をはじめとして抜本的な規制強化にふみだすこと。デリバティブなどの投機的な金融商品にたいする規制強化をはかること。

 (2) 原油や穀物など生活必需品を投機の対象としない国際的なルールをつくること。

 (3) 投機マネーに対する適正な課税をおこなうこと。

以 上

 
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