2011国民春闘共闘情報
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2012国民春闘 第1回単産地方代表者会議

大黒作治代表幹事の開会あいさつ

2012年1月12日

 明けましておめでとうございます。
 単産・地方代表者会議の開会にあたって、ご挨拶申し上げます。
 2012年春闘が本格化します。経団連の「経労委報告」は、23日に公表されると聞いていますが、おそらく円高とEU諸国の金融危機、大震災からの「迅速な復興」を口実に、さらなる国際競争力の強化と大企業を中心とした、物事を効率第一に考え、利益優先社会のいっそうの追求です。しかし、あの東日本大震災から日本国民が改めて会得したのは、連帯であり絆の深まりでした。つまり、新自由主義に基づく利益第一主義、効率化と自己責任論からの見直しが国民の中に広がり始めたと言っても過言ではありません。自己責任論は、この間の財界の春闘対策にも反映されて、賃金の個別化を図るために、ベア要求を拒否し、定期昇給制度の見直しにまで及んできています。こういう財界の主張を覆して、雇用と暮らしを守るために春闘を発展させる条件と要求実現の可能性がどこにあるのかという点を明らかにすることが重要です。

 その第1は、世界経済の危機の中で、失業、貧困、格差の拡大がますます深刻になり、とりわけ若者の失業と非正規雇用の実態を直視し、その改善に向かってともに展望を切り開きたいと思います。24歳以下の失業率はEU平均で22%、米国でも18%、日本でも8%近いと言われています。失業者の生活保障や職業教育などが充実しているEU諸国では、労働力の安売りに歯止めがかかるため失業率は高くなりますが、日本では、雇用保険の受給率は失業者の20%程度、同一労働同一賃金、均等待遇も確立しておらず、「半失業」若しくは「失業予備軍」といわれる若者の非正規雇用率は45%を超えており、極めて深刻だと言わなければなりません。

 所得格差の拡大も深刻です。99%の怒りが表面化したアメリカでは、上位1%の人びとの所得シェアは、戦後10%から7%まで低下していたのに、1980年代から上昇し始め、2000年代に入って20%を超えています。日本でも戦前は20%台であったものが戦後の財閥解体などから7%程度で推移していましたが、2005年には9・2%と上昇してきています。その一方で、ワーキングプアが1000万人を超え、「貧困と格差」の拡大は数字的にも顕著です。しかも、この20年間全く成長しない国になった。
 経団連は、「国民所得が増えても消費は向上しない、貯蓄に回るだけ」と主張しますが、社会保障の不十分さと老後の心配のために貯蓄好き≠ニいわれた日本国民の貯蓄は、2006年の平均1008万円をピークに、880万円と下がり続けています。つまり、貯蓄を取り崩して生活しているのが実態であり、購買力の減少がこの国の成長をストップさせていることが明らかになっています。こうした現状から日本経済を再生へと向かわせるには、賃金の底上げ、最賃の引き上げ、公契約適正化の前進や安定した雇用など、内需拡大へと思い切った転換を迫るたたかいが求められています。

 第2は、相変わらず大企業が横暴を極め、資本金10億円以上の大企業は、この1年間で内部留保を257兆円から266兆円に増やし、手持ち資金も60兆円と「カネあまり」現象が続いています。それでもおそらく「経労委報告」では、国際競争力の強化と「震災からの迅速な復興」と称して、法人税の引き下げ、総額人件費の削減、労働時間や労働者派遣法の改悪、TPP(環太平洋連携協定)への参加などが盛り込まれると思います。大企業の横暴を許さず、内部留保を国内で環流させるために賃上げや下請単価の改善、安定した雇用に回せという要求を国民世論として発展させることが重要です。

 第3は、税と社会保障の大改悪をストップさせる課題です。野田首相は年頭あいさつで、24日から始まる通常国会では「公務員の賃下げと国会議員の定数削減、消費税の引き上げ」を「ネバー・ギブアップ」ですすめると声高に叫んでいます。しかし、政府による公務員の賃下げは、憲法違反であるとともに、春闘にも悪影響を及ぼし、地域経済の疲弊に拍車をかけるだけであり、内需主導の経済への立て直しに逆行します。消費税はマスコミの引き上げの大合唱が続く中でも、国民世論は反対が多数を占めていますが、それでもマスコミの影響を強く受けていることも事実です。大企業減税や金持ち優遇税制を改め、無駄な軍事費や大型公共事業の見直しこそ必要という私たちの考えを国民世論として高めるには、丁寧な学習や宣伝が必要です。

 第4に、大震災からの復興と「原発なくせ」のたたかいが本格化します。被災地にとって、日常生活を取り戻すには国の支援が必要であり、東電福島原発事故で多くの住民が福島県内外で避難生活を強いられています。全国で点検中の原発の再稼働をめぐる動きが強まってきた中、被災地本位の復興と「原発なくせ」をめざすたたかいに、若者や女性が全国で立ち上がっています。さらに、TPP参加に反対するたたかいも大きな広がりを見せており、これらのたたかいの合流を図るのも今春闘の大きな課題です。

 これまで培ってきた共同を広げ、中央・地方で大きく合流・発展させたいと思っています。中小企業を含め、労働者・非正規労働者にたえずメッセージを送り続けて、3月13日から15日の全国統一行動を集中した取り組みにし、国民の目に見え、音の聞こえる春闘を展開して、社会的影響力が高まったと評価されるよう奮闘したいと思います。
 いつ解散・総選挙が行われても不思議ではないと言われている中で、要求実現と政治の転換を求めるたたかいを結合させて、志と構えが膨らむよう積極的な討論を呼びかけて挨拶といたします。(以上)

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