2009国民春闘共闘情報
全労連HP

第 54 号  2009年09月01日

審議・改定状況一覧

 

33県で目安プラス1〜5円

 09地域別最賃  中賃の「現状維持」が重石

加重平均713円に。生活保護を下回る

 09年度の地域別最低賃金を答申する各地方審議会は、8月31日までに全国47都道府県で出そろいました。今年度の全体状況は、全国加重平均が10円アップして713円になりました。しかしながら、中央最低賃金審議会の目安が昨年につづき不当に低く見積もった「生活保護水準」と対比して乖離が残っている12地方のみの引き上げとし、残る35地方については「現状維持」としたため、本来の生活保護基準や最低生活費保障の要求には遠く及ばない水準になり、地域間格差がいっそう拡大しました。地域別の引上げ額、答申結果はつぎのようになりました。

1.各地方の答申結果について

(1)全体状況 ― 辛うじて2ケタの引き上げ

 今年度の地域別最低賃金改定額の答申が8月31日に和歌山に出され、47都道府県すべてで出揃った。改定最低賃金法の施行下で2度目の改定審議は、地域別に0〜25円の引き上げという結論をだした。今回の改定で、最も高くなったのは東京で791円となった。これに神奈川(789円)、大阪(762円)、埼玉(735円)、愛知(732円)、京都(729円)、千葉(728円)、兵庫(721円)、静岡(713円)、三重(702円)などが700円台で続く。逆に最も低いのは九州の沖縄、宮崎、長崎、佐賀の629円、次いで鹿児島、熊本の630円となった。東北の岩手、山形が631円で続いている。こうして、全国加重平均は昨年より10円アップして713円になった。

 「生活保護水準との乖離」が残っているとされるA・Bランクの地方を中心に、昨年にひきつづき一定の引き上げが実現した。また、「現状維持」とされた35県中33県でプラス1〜5円の引き上げを引き出し、表現どおりの「ゼロ」は2県にとどめた。これらは、改正最低賃金法のもとでの最賃改定審議を、全国の仲間が様々な運動で盛り上げたことによる。

(2)地域別にみた引き上げ額

 引上げ額のトップは東京の25円で、これに神奈川23円、大阪14円、埼玉13円、京都12円、北海道11円などが続く。生活保護との乖離是正(中賃目安の表)が求められた12地方で、相対的に高い引き上げが実現している。逆に「ゼロ」を押し付けられたのは新潟と岐阜の2県、さらに、+1円の改定となったのは群馬、山梨…長崎、大分など20県に及び、+2円の改定は山形、茨城…宮崎、大分の9県、+3円の改定は岩手、福島、鹿児島の3県で、+5円の改定が福岡に見られた。これらは従来型の中賃目安「現状維持」をもとに審議された地方である。とはいえ、「現状維持」の地方でも、多くが有額の上積みをさせている。

 こうしたことにより、最高額(東京の791円)と最低額(沖縄、宮崎、長崎、佐賀の629円)との格差は162円に拡大してしまった(08年は139円、旧法の07年は121円)。
 今年度の地方最賃審議会は、最も早い山梨、長野、大阪では8月3日に採決しており、地方によって約1か月のズレが生じた。中賃目安によって、生活保護との乖離是正を指摘された12都道府県のみならず、引き上げを拒む使用者委員と労働者委員との対立が、相当深刻になった地方も一部に見られた。+5円の福岡のように県知事の意向が反映した地方や、+3円の鹿児島のように公益委員がリードした地方も見られた。

(3)答申結果についての評価

 法改正期の07年(全国加重平均14円アップ)、改正後の08年(同16円アップ)と2年続いて大幅な引き上げを実現したが、今年は生活保護との乖離が残る12都道府県以外は僅かな引き上げにとどまった。とはいえ、この引き上げは全国の仲間の奮闘の結果であり、運動的観点からは大きく評価すべきであろう。しかし、改定額の到達については、率直に不満を表明せざるをえない。最も高い東京の791円でも、年間1800時間働いて税込142.3万円にしかならず、ワーキング・プアを抜け出しようがない。最賃法を改定し、憲法25条の文言をあえて書き込んで働く貧困をなくす趣旨を宣言し、さらに生活保護との整合性という具体的措置も記して「最賃決定における生計費原則の強化」を図ったにもかかわらず、中央・地方最低賃金審議会は、働くものの最低生計費の水準をみたすだけの改定額を答申できなかった。今回も法の趣旨にもとる各地の答申結果は、大いに批判されてしかるべきである。

(4)生活保護との整合性問題

 今回の審議における最大の問題は、生活保護を活用した最低生計費の算定にあたって、厚生労働省が、不当な手法で金額を矮小化させたことである。それは、
@生活扶助費を級地の加重平均をとったこと。
A住宅扶助について基準額でなく、生活保護受給者の実績値をもちいたこと
    (通常の労働者では入居できない特別に安い公営住宅などの家賃負担額)。
B生活保護で制度化されている勤労控除を含めなかったこと。
C173.8時間という長時間労働で月額換算したこと。
D税金・社会保険料の控除について610円の沖縄のケースを全体にあてはめたこと

―などである。

 地方最低賃金審議会では昨年来、自治体の生活保護行政の担当者が、生活保護制度の仕組みを紹介し、たとえば東京であれば時間額1150円程度なければ保護が適用されるなどと説明をしている。ここでも、中賃目安の誤りが指摘されている。
 中賃目安の算定手法については、昨年の新聞社説でも「比較する生活保護水準をまるでトリックのように低い数字ばかり使うのであれば、引き上げるべき最低賃金も不当に抑え込まれてしまう。最低限度の生活を保障するという改正法の趣旨がゆがめられかねない。生活保護との整合性はまだ不十分と言わざるを得ない」との批判が出ている(「毎日新聞」社説2008/09/14)。

 当局の算定手法の不当性を広く知らしめるため、全労連などはこの間、
@生計費算定のデータや手法を説明させ、問題点を前述のように明らかにさせてきた。
Aまた、自前の「最低生計費試算」を京都、首都圏4都県と東北6県で実施して「あるべき最低賃金の水準」を科学的に打ち出してきた。
Bこうした努力のうえに、労働者の最低生計費の指標とし得るまともな算定方法を確立させ、来年度以降はそれに基づいた審議をさせること

が重要となる。




2.当面の対応と今後の取り組みについて

 @ 地方最賃審議会に対する異議申立を、期間内に取り組む。その中で、生活保護を活用した、勤労者の最低生計費の算定方法のあり方を指摘し、記者発表などもおこなって、世論に問題を周知させる。各地方の報告では、今年は42都道府県(以上)が異議申立を予定している。

 A 発行日は10〜11月とバラつく。この間、総選挙のなかで、「最賃1000円以上の全国一律最賃制確立」の要求を世論化する宣伝を強めてきた。この反映もあって、政権交代を実現させた民主党をはじめ当時の全野党がマニフェストのなかで「時間額1000円以上」を掲げた意義は大きい。引きつづき、最賃底上げの街頭宣伝などを行い、ひろく周知徹底をはかっていく。あわせて、地域経済問題・中小企業活性化の課題にもふれ、ワーキング・プアと中小企業対策を政治の争点に押しだす。

 B 中央・地方の審議委員の偏向任命問題が、最賃審議の結果を歪めており、任命民主化の課題を世論化していく。

 C 以上の3点を要求の柱とし、それを補強する資料として、@最低生計費試算結果、A「まやかし目安(生保基準)」算定批判、B最賃生活体験記録、C低賃金労働者の声などをあわせて、各政党、全議員への要請行動を中央・地方で取り組む。

(以 上)

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