2008国民春闘共闘情報
全労連HP

第 45 号 (確定版)  2008年06月30日

 

「なくせ貧困」 ― 各単産・単組で実践

パート賃上げ・企業内最賃など前進

 国民春闘共闘  第2回代表者会議で春闘総括

 国民春闘共闘委員会は6月27日、東京・東京労働会館で第2回単産・地方代表者会議をひらき、「08春闘の中間的な総括(案)」について討議、確認しました。討論では14単産・地方の代表が企業内最賃の協定化や、自治体・非正規労働者の時間給引上げの実現など来季の春闘に引き継ぐ成果を報告。夏季闘争で、最低賃金の時間額1000円以上、公務員賃金改善のために奮闘しあうことを確認しました。




派遣の正社員化、名ばかり管理職の改善でも成果

 写真

 代表者会議には19単産・団体・6地方の代表ら58人が参加。代表幹事あいさつで坂内三夫全労連議長は、(1) 賃金闘争では千載一遇のチャンスを逃したとして、政財界の賃上げ容認、マスコミの利益還元キャンペーンのなかで、大企業労組が500円〜1000円のベアで店仕舞いしたと批判しました。(2) 一方で春闘共闘は、パート・非正規の時間給引上げ、待遇改善などで貴重な前進をしたと強調。(3) 派遣労働の問題でも、正社員化や名ばかり管理職の改善など「大企業の雇用政策に穴をあけつつある」と紹介しました。(4) 国民の共同で、被災者生活再建支援法の改正、後期高齢者医療制度廃止法案の参議院での可決など要求実現の運動を紹介し、当面する夏季闘争で全力をあげて闘うことを呼びかけました。

 小田川義和事務局長が「08春闘の中間的な総括(案)」を提案(写真)。1月の代表者会議で決定した「08春闘方針」を振り返りながら、この間のたたかいによって勝ち取ってきた到達点を紹介し、改善点や議論を深めなくてはならない点を指摘しました。

 (1) 賃金改善要求について は、春闘登録組合での最終集計が、62%の回答引き出し、37%の妥結である点を紹介し、第2次集中回答日(4/23)直後の調査での回答引き出しが50%に達していない実態について、たたかい方の議論を求めました。また、単純平均が5788円、1.93%(前年比+115円、+0.03P)、加重平均で6720円(同+−0円、+0.08P)となった経緯を紹介し、3月段階で大企業労組での賃金抑制の影響を受けつつも、粘り強いたたかいで回答の上積みを図ってきたことを評価しました。

 (2) パート(非正規)労働者の賃上げ では、時間額や日額、月額の引き上げなど16単産・390組合(前年は335組合)での回答引き出し、時間給アップの単純平均が26.8円(前年は17.8円)に達し、獲得組合数、引上げ額とも前年を大幅に上回ったことを評価しました。企業内最賃協定の締結、改訂でも11単産・240組合(前年比13組合増)の協定を評価。とくに、「誰でも」適用される最賃額が16万2926円になり、統一要求水準(月額15万円)を超えていると紹介しました。

 (3) 働くルール確立の取り組み では、職場の制度的諸要求の獲得数が5月の中間集計で、のべ1336組合(前年同期比プラス21組合)に達していることを評価。法改正が施行されたパートの均等待遇が55組合、合併時の継続雇用や正社員化などでの成果を紹介しながら、子育て支援策や均等待遇などは、法制度の改正点を職場に定着させるためにも、さらに強化が求められる課題だと強調しました。

 (4) 春闘全体の進ちょく状況 については、26単産・4181組合の最終進ちょく状況が、要求提出組合数で73%(前年同期73%)、回答引出し50%(同47%)、妥結・妥結方向33.4%(同31.5%)に到達し、スト権確立60%(同55%)、スト実施18%(同17%)となっていると紹介。昨年の低下傾向から改善の兆しが見えてきたことや、相変わらず春闘長期化の傾向にあることを指摘しました。

 (5) 春闘の取り組みの特徴点 については、要求アンケートが28万1930人で前年比減少ながら、家計簿調査、経営者への一言メッセージ運動(JMIU)等の成功例を紹介。2月下旬の地域総行動での自治体要請が、非正規労働者の賃上げの成功に反映したと評価しました。また、1月下旬の決起集会、2月中旬の「なくせ貧困」の国民共同の大集会、3月5日の中央行動などの成功が、その後の国会闘争(後期医療制度の撤廃、労働者派遣法の改正など)の起点になったと評価。なお、春闘長期化との関連で、3月下旬頃に先行組合の成果を後発組合に広げるための交流・決起集会開催を検討課題にあげました。

 (6) 法定最賃の改善、労働者派遣法抜本改正の取り組み では、中央・地方での最賃審議委員への立候補、4月23日の不公正任命への抗議行動、5月30日の08年人事院勧告に向けた行動と一体の厚労省前行動、6月20日のハンガーストライキなど、全国各地で「時給1000円」要求をアピールしたと評価。成長力底上げ戦略推進円卓会議が「小規模事業所の高卒初任給」を目標に、法定最賃を引き上げるとした点について、「時給1000円を先送りしかねないもの」と警鐘しました。労働者派遣法の抜本改正を求めるたたかいでは、野党四党の改正法案骨子が出揃ったこと、松下プラズマディスプレイ偽装請負事件での勝利判決を紹介しながら、労働者保護法として抜本改正する必要性を訴えました。

 (7) このほか、後期高齢者医療制度廃止法案の参議院可決など国民的課題での前進や、福田首相の消費税増税発言への警鐘、第79回メーデーの成功などを紹介。ひきつづく夏季一時金闘争とともに、最低賃金闘争、人事院勧告に向けたたたかいの前進を呼びかけました。


 
●主催者あいさつ−坂内三夫代表幹事

千載一遇の賃上げチャンス。活かしきれず

パート賃上げ、最賃引上げで貴重な前進

 08春闘の到達をどう評価するのか。何が前進して、何が不十分だったのか。来年に向けて、どんな点を改善し強化したらいいのか。若干、個人的な感想も含めて申し上げたいと思います。
 春闘の最大課題である賃金闘争については、結論から言えば千載一遇のチャンスを逃した春闘であった。08春闘は、それほど、久しぶりにまともな賃上げを実現するチャンスでした。
 今年は、財界もおよそ13年ぶりに一定の賃上げを容認する方向を示した。マスコミも、「大企業は利益を労働者に還元すべきだ」とのキャンペーンを張りました。また、労働者の生活は、ガソリン代や食料品など物価の値上がりで、賃上げしなければ生活がやっていけない。要求と期待が、かつてなく高まっていました。
 さらに、企業の利益は、5年前を100として1.75倍に増え、株主への配当は2.5倍に増えていました。つまり、労働者の要求が切実になり、企業の支払い能力、賃上げ原資は十分にあり、資本の側も今年は賃上げをある程度覚悟していた。福田首相さえも、「今年は賃上げをして欲しい」と財界に提言していた。まともな賃上げを勝ち取る条件が十分にありました。ところが結果は、自動車、電機など大企業の組合が、軒並み500円から1000円のベースアップで、早々と春闘を店じまいしてしまった。賃上げの条件が十分あるのに、肝心の労働組合が、サブプライムローン問題での経営の先行きが不安だなどとしてブレーキをかけた。
 大企業の労働組合が、もう少しまともに闘っていたら、今年は中小を含めて誰でも1万円の要求が実現していました。今年のように、三拍子揃った賃上げのチャンスなど、そう簡単に来ません。日本の労働者は、今のように大企業の企業内別労組が賃金相場をリードしている限り、まともな賃上げは望めない。それを示したのが08春闘ではなかったか。

 では、春闘にもう望みはないのかと言えば、そうではありません。春闘共闘が、賃金闘争を新しい方向に動かしてきた。パートの時間給引上げ、非常勤職員の処遇改善、最低賃金闘争などでは、貴重な前進がありました。今年は民間の390組合が、経営者からパート・非正規の時間給引上げ回答を引き出し、平均で約27円のアップを勝ち取りました。去年の春闘が224組合・18円でしたから大きく前進しました。地方における取り組みでも、自治労連を中心に多くの自治体で非常勤職員の時間給引上げを勝ち取りました。春闘共闘の運動が、全国的な流れをつくってきたと言えます。
 最低賃金のたたかいも、この間の運動が世論を動かし、昨年度の地域別最低賃金は全国平均で14円の引き上げとなりました。もちろん、それでもまだ低すぎますが、2000年から2007年までの8年間で15円しか上がりませんでしたから、1年で14円引上げたことは、運動の成果として評価できるのではないでしょうか。
 しかし一方で、6月20日に出された「成長力底上げ戦略推進円卓会議」の基本方針は、5年間で従業員10〜99人の小規模企業の高卒初任給への到達をはかるという極めて不当な指標で合意しました。これでは、5年間で68円の引上げにしかならず、とうてい納得できるものではありません。それでもなお、最低賃金が少なくとも生活保護基準を下回ってはならないという春闘共闘の主張が、この間の闘いによって国民的な合意となっている中で、今後の運動強化が重要です。

 派遣労働の問題でも、一定の変化が生まれています。2月8日に共産党の志位委員長が、衆議院予算委員会で派遣問題一本に絞って政府を追及しましたが、ホームページへのアクセスが17万件を超えたそうです。08春闘を通じて、トヨタが1200人の期間工を正社員化する、キヤノンが6000人の派遣社員の正社員化を発表する。コマツが750人の派遣社員を常用雇用する、マクドナルドやセブンイレブンが名ばかり管理職の改善を打ち出すなど、まだ、ほんの一部で不十分ですが、大企業の雇用政策に穴を開けつつあることは、重要な到達点です。働くルール署名でも、民主党、共産党、社民党、国民新党の60名近くの国会議員が紹介議員となる変化が生まれています。

 国民の共同要求でも、私たちの要求と運動が政治に反映するようになりました。具体的な例を二つあげます。一つは「被災者生活再建支援法」の改正です。今月14日にも岩手、宮城で大きな地震があり、被災者には心からお見舞い申し上げます。この法律は、地震などで被害を受けた人を支援する法律ですが、住宅は個人財産である、日本は資本主義国だから、国は個人財産に支援できないとして、これまで住宅本体には適用されませんでした。全労連は被災者と一緒に、法改正を求める運動を展開してきましたが、共産党の支援しかありませんでした。ところが、昨年の参議院選挙で与野党が逆転すると、流れがガラッと変わりました。全労連のシンポジウムに、自民党、民主党、社民党の議員も参加し、住宅本体への適用、過去に起きた新潟や能登地震にも遡って適用することで意見が一致して、臨時国会で全会派一致の賛成によって法改正が実現しました。
 もう一つは、後期高齢者医療制度の撤回の動きです。ご存知の通り、75歳以上を後期高齢者という名で差別し、家族の保険証から引き剥がして別の医療保険に移し、その保険料を年金から天引きする。医療費の自己負担を引き上げ、医者に掛かりにくくする。まさに、現代の姥捨て山と言わざるを得ません。全国で、高齢者の怒りが爆発しました。野党は共同で、後期高齢者医療制度を廃止する法案を国会に提出し、参議院で廃止法案が可決されました。自民、公明の与党も、一定の見直しを検討せざるを得なくなりました。しかし、衆議院では、廃止法案が審議もされず継続審議となり、臨時国会に送られました。
 医療や社会保障の分野では、労働組合も、医療・福祉団体や高齢者の団体も、全労連をはじめとする民主勢力が運動の圧倒的なイニシアチブをもっています。国民・県民も、そのことは良く知っています。ですから、この制度を廃止させることは、まさに民主勢力の真価が問われる課題となっています。

 当面する夏季闘争で全力をあげてたたかうこと。そして、09春闘にむけて活発な議論が行われることを期待して、主催者あいさつとします。



 
ベア獲得、パート賃上げ・均等待遇、働くルール

最賃闘争の強化・産別最賃の引上げ、憲法を守る取り組み…

 官民・地方の14名が発言。総括案を補強

 討論には14単産・地方の代表が発言に立ちました。ベア獲得のたたかい(建交労、化学一般労連、JMIU、出版労連、民放労連、自交総連、)をはじめ、パート・臨時職員など非正規労働者の賃上げ、均等待遇(生協労連、自治労連、自交総連、埼玉)、働くルール・子育て支援などの制度的要求の取り組み(全労連女性部)、最低賃金闘争の強化・産別最賃の引上げ(化学一般労連、生協労連、神奈川、出版労連、民放労連、東京、)と、今年度の地域別最賃引上げと生活保護の切り捨て反対闘争の重要性(全労連)について特別報告がありました。さらに、偽装請負・労働者派遣法の改正問題(化学一般労連)、労働委員の任命問題(神奈川)、公務員賃金、公務・公共サービス問題(公務労組連絡会、)や、国会での関連法規をめぐっては、暫定税率の撤廃(建交労)と憲法・9条を守る取り組み(自治労連、出版労連)の報告があり、各々総括案を補強しました。各代表の発言要旨は以下のとおりです。


建交労・藤好副委員長 暫定税率の廃止、サーチャージなど歴史的成果

 今年くらい経済情勢、生活・政治情勢がはね返って来る春闘はかつてなかった。やっと我々が労働者の生活擁護や政策変更に大きく反映できるところまで運動がすすんできた。
 建交労では昨年末から、ガソリン代、軽油価格高騰のなかで、賃金・労働条件や経営を守っていくことを追求してきた。経営者とも共闘を結び数度の国会行動、政府交渉を強めてきた。こうしたなかで、参議院選挙での民主党の勝利に注目した行動の結果、30年来、初めて暫定税率を1カ月廃止に追い込んだ。青森の企業では、この軽減分だけで2700万円の増収で、一時金の上積みを要求中だ。この成果は現場の確信になっている。いま、再び30円近く燃料代が上がっている。経営は苦しいが、粘り強くたたかってマイナスや賃金カットも止めさせている。

 このたたかいのなかで、日通は何もやらなかったが、「燃料サーチャージ」を行い、ヤマトが続き、128社がサーチャージ制度をやっている。この動きは建設関係にも波及し、28年ぶりに「単品スライド制」で国交省の実施要綱が出され、1%以上の燃料代UPなら既に契約済みの単価の改定に応じることになった。一昨日には、抵抗している大成建設の株主総会に出て、社長から「法律は守ります」との回答を引き出した。春闘の歴史の中で初めての成果だ。
 これにより、ダンプでは1日3万円の単価を4万5000円まで引き上げていきたい。この間、現場では要求を前面に出して交渉してきた。4月前後には関西の運輸集団交渉や生コン集交では3割ほど売上げ減だが、24時間ストを2回、48時間ストを1回打って、正規が5500円の賃上げを勝ち取った。日々雇用労働者も正規と同じ賃上げをと要求し、2回目の24時間ストを打ち抜いて同額の回答を勝ち取った。この間、運輸・建設業界の経営は悪化の一途を辿っているが、労働組合がたたかうことで、その状況を変えていくという取り組みになったと思う。

 今後、ダンプは暫定税率も道路特定財源も来年度予算に関わって、「福田公約」に基づき訂正されるので、この秋からのたたかいが大切になる。地方自治体の財源も含めて、根本的な変革が求められるようなたたかいをすすめていきたい。東南アジアでは、米価が2〜3倍にアップ、日本にも食糧危機が迫っている。職場からの要求と結びつけて、国民的運動を盛り上げたい。


化学一般労連・宮崎書記長 賃金構造を維持できず。「底上げ」の理解広がる

 原油高の中で製品価格にコストを上乗せできない。一方で、医療品、工業用薬品やファインケミカルなど独自の技術、競争力をもつところは、それなりに収益を上げている状況だった。
 春闘の結果としても、格差が色濃く出た。109組合中97支部に回答があり、単純平均5367円(前年比+196円)、加重平均5590円(同比−145円)となった。このようになった背景は、回答分布で9000〜1万円の高い回答が増え、5000円台の回答も増えた。一方、賃金構造維持分の6000〜7000〜8000円台の回答が減っている。構造維持分+ベアが27支部、構造維持分のみが9支部の計36支部となり、構造維持分に達しなかったのが43支部となった。構造維持分がはっきりしないところが16支部あった。したがって、スト実施3支部、スト通告・時間外拒否が昨年より増えたが、賃金水準の維持・確保ができなかったと判断せざるを得ない。

 一方、次の春闘につなげる成果としては、賃金底上げの理解が広がったこと。産別最賃の底上げでは、時給855円を875円に改めて要求を見直し、例年を上回る支部が要求を提出した。「誰でも1000円」要求も今年初めて取り組んだ。二つの要求の位置づけも明確にし、企業も産別最賃には理解を示してくれた。「しかしながら、ウチの実力では」とオチがつくが…。格差の拡大が産業内でも社会的にも問題になっている中で、底上げ要求の意義に確信を深めるとともに、ひきつづき重要課題として取り組んでいきたい。

 制度政策要求は、労働者派遣の規制強化に取り組んできた。独自の改正署名を110支部から約7000筆を集めて、厚労省交渉を行った。担当官は、「指導官を増やせ」の項目では全国319名が「今季31名増やし350名体制にします」と回答した。今後も規制強化にむけて、手を抜かずに攻めていきたい。また、職場のメンタル不全の対策にしっかり取り組み、うつ病、メンタル不全にならないよう、事前対策が大切、予防協約を統一的に取り付けたい。


生協労連・橋本副委員長 パート春闘「団交は最大の要求実現の場」を実感

 私たちは、「職場からワーキングプアをなくそう」「安心して働き続けられる職場と社会をつくっていこう」の方針のもと、取り組みをすすめてきた。賃金の底上げを粘り強くたたかって勝ちとろうと奮闘してきた。結果は、ベア・底上げを正規21単組(部分改訂含め30単組)、パート14単組(部分含め23単組)と昨年を上回る成果を上げたが、正規では「定昇のみ」が多く、パートでも「ゼロ回答」が10単組あった。

 行動としては、京都のパート労組のたたかいに大きな勇気をもらった。「団交は最大の要求実現の場だ」と労組員に徹底、京都の団交では声を掛け合いながら半数のパート労働者600人が参加し、10年以上も上がらなかったベアが2円アップした。福島でも200人以上が参加して15円アップした。要求を掲げて最後までたたかうことの大切さを改めて気付かされた。統一闘争の中で、みんなでたたかうことが大切だ。

 また、4月から施行された「改正パート法」を活用して、均等待遇に近づけたいと経営側と向かい合ってきた。交通費の支給を正規と同じにする、パートの再雇用(アルバイトになるが)も同じ条件で働き続ける条件にさせるなど、たくさんの前進をかちとってきた。
 最賃闘争では、1月17日の行動と交流集会でスタート。最低賃金の大幅引き上げと審議委員の獲得をめざしてたたかい続けている。法改正に合わせて、生存権が保障されるような水準が出てくるかは不透明だが、最後までがんばってたたかい続けたい。同時に、来年に向けて審議委員の獲得が重要だと思う。連合も「1000円要求」を掲げていたのに、ここにきて「高卒者初任給」に同意した。こんなのは許せない。「いまの最賃額では暮らせない。せめて時給1000円以上に」の要求は切実だ。審議委員を獲得して大きな力を発揮したい。今年は中央・地方で31名が立候補したがダメだった。来年こそカザ穴を開けたい。来春闘もベアと最賃でがんばる。


自治労連・高田中執 憲法キャラバンで首長と懇談。非正規の賃上げ実現

 憲法網の目キャラバンで自治労連は、(1) 自治体懇談、(2) 住民宣伝、(3) 学習・意思統一集会を重視して取り組んできた。地方組織ほぼすべての運動となり、本部ものべ29人がこれに参加してきた。自治体懇談を90自治体で実施し、大きな推進力になった。

 同時に、住民宣伝や意思統一集会が各地で実践された。兵庫で民主団体といっしょに「憲法フェスタ」を開催した。これに合わせて憲法署名も広がり、8万3000筆以上が集約されている。首長・当局との懇談でも大きな意義があった。栃木ではこの運動に大きな確信が持てて、県労連を含めた運動の広がりが重要だと報告している。鹿児島では、懇談によって自治労連の提言=「地域経済政策」が当局の中でも高く評価された。この運動を通して、組織強化・拡大につながったと評価されている。長野では「信州地域づくりフォーラム」の実行委がつくられた。自治労連は「女性のつどい」を奈良で開催するが、この訴えも広がった。また、首長自身が自治労と自治労連の違いがわからなかったが「住民とともにたたかう組織」として良く理解してもらえた。

 非正規の賃金問題では、有利な情勢を生かし、非正規労働者の組織化も視野に改善要求をたたかってきた。岩手の各自治体では、正職員が独自カットされる中、奥州市、陸前高田市などでは日額50〜100円の引き上げ。茨城・結城市では臨職の時給100円、大阪・泉大津市では最高70円の引き上げなど。全体では時給で平均3.5%、全体としても平均2%の賃上げを実現している。
 賃金以外では、休暇制度や雇用制度でも前進を勝ち取っている。中野区では非常勤保育士の高裁勝利判決はすごい内容だった。結局、4月に職場復帰をかちとり、宮崎県の高崎給食センターでは、調理員の雇い止めを阻止した。休暇・雇用の制度でも大きな前進を勝ち取っている。

 職場の労働安全の問題でも、集中的な取り組みを展開。「メンタルヘルス・アンケート」で状況を把握し、東・西で学習会を実施してきた。「いの健」が公務災害の全国交流集会を開催し教訓を共有した。今後は非正規の労働安全問題でも運動をすすめ、組織拡大にも生かしていく。
 地域医療の問題で、「いのちと地域を守る大運動」を取り組み中。住民との共同が広がり、政府の医師抑制策を覆し、「医療にもっと予算を」と医療政策の転換を求める運動を進めている。


JMIU・三木書記長 要求づくりを徹底。若者のエネルギー引き出す

 いま、東武スポーツ争議解決のために、東武鉄道の株主総会行動に行ってきた。行動には300人を超える仲間が参加し、大きな圧力になった。総会では争議解決にむけて6名が発言した。
 今年の春闘は、要求提出244、回答引き出し232で、組合員平均では6600円・2.30%が到達点になる。久しぶりに元気良くたたかえた春闘だった。力になったのは「生活を土台にした要求づくり」を徹底してきたこと。要求アンケート、家計簿調査、社長への一言メッセージの「3点セット」が職場のエネルギーを引き出した。

 こうした運動で、1万円以上を18支部が引き出した。東京・東部地協の小坂研究所では、15年ぶりに1万円を勝ち取った。組合員は多いが数次のストでたたかう組合ではなかったが、生活を土台にした春闘をということで、1万円をなんとしてもと、今年は8回のスト、時間外拒否20日間やりぬいた。最後は72時間ストを背景に、これで1万円を取ろうと意思統一して本当に実現させた。職場には若い組合員が多く、元気にたたかってくれた。生活を土台にした要求を掲げ、みんなで春闘をがんばろうということが、職場のたたかうエネルギーを引き出し、若い組合員が結集し、若者を育てたのが今年の春闘の大きな成果だと思う。

 長野の前田製作所支部でも、若い人に団交に参加してもらい、若い人が直接生活のことを語ろうという取り組みをやった。若い組合員が団交の席で会社側に「俺の賃金がいくらなのか知っているのか」と問い詰めたら「23万円くらいか?」と回答。実際には20万円だったので、若い人たちが怒って、「そう言うんなら23万円にしてくれよ」と、大きな力になった。「労働組合に入ったら、団交で会社に言いたいことが言えるぞ」となり、団交にも若い人が新入社員を誘って、組合員も増えてくる…こういう成果も生まれた。若者を育てるのは要求だし、職場のたたかいだ。そう言う点では実り多い春闘だった。この教訓を来年にも活かしていきたい。


神奈川・水谷事務局長 改正法のもと、時間額は100円、150円アップを

 地労委労働者委員の不当任命裁判(3回目)で2月28日に判決が出た。主文は「原告不適格」で負けたが、判決理由の内容はびっくりするもの。「総合的に判断する」とか、「労働者一般の利益を代表する」などというのではなく、私たちの主張どうりに、(1) 労働者の代表として、労働者の団結権、権利、利益を保護するということで、不当労働行為を救済する代表であること、(2) 「連合独占について」は、直前まで1名を全労連にくれる事で連合も妥協していたが、連合独占になった事を評して「神奈川県が迎合、屈服した証拠」と書いた。(3) 「男女共同参画社会基本法の対象外」との県側の主張については「対象外でも女性を積極的に登用すべき」と踏み込んだ。(4) 労働省の昭和24年54通牒についても「選考基準に値するもの」と評価した。
 その後、県側の対応もガラリと変わり、技能オリンピックへの参加、勉強会の開催(「最賃」の講師依頼)などと丁寧になっている。中退共へ県の補助実現も前向きになってきた。

 組織拡大では、春5800名、秋5400名と合計1万人を超えた。建設労連の支部には自民党や民主党の役員も多いが、民主党がさかんにやって来て「ガソリン代の値下げを絶対します」「公契約法を議員立法で出します」と宣伝しているという。
 最賃闘争では、6月20日にハンストを決行したが、同日、政府の「円卓会議」がひどい捻じ曲げをやった。「高卒初任給水準」などではなく、法改正どおりに「生活保護施策との整合性」でやるべきだ。次の7・17最賃デーでは1000分の抗議のハンストで円卓合意を吹き飛ばしたい。関東ブロックで、中賃宛てのはがき運動を開始した。6万枚以上の「1000円要求はがき」を配布中。ぜひご協力をお願いしたい。

 また、4都県で実施した「生計費調査」の結果については、7月18日の記者会見で「憲法25条にもとづく最低生計費はこれだ」と世に訴えたい。県と懇談した際にも指摘したが、1975年には前年の春闘結果を受けて、神奈川で55円上がっている。当時240円だったから、今年に当てはめると3桁は当然だ。ワーキングプアをなくすには、14円、19円の水準ではなく、時間当たり100円、150円のアップが必要である。


出版労連・津田委員長 メディア規制許さず、出版の自由を

 今春闘では、賃上げ要求7000円、ボーナス30割を誰でも貰えるようにと要求した。しかし到達は、賃上げで6448円、一時金は23.3割になった。「要求にこだわりを持って」と強調したが、殆ど1次回答で妥結してしまうという傾向だった。
 もう一つの労働条件改善闘争では、均等待遇、物価値上げに対する生活防衛の2つをキーワードに要求してきた。均等待遇は、非正規・フリーランス、編集プロダクションの労働者の労働条件改善を求めてきた。組合のある企業は時給1300円にと。それを勝ち取れたのは3単組だが、9単組が増額を獲得した。しかし、本人たちにはまだ実態がよく湧かないところがある。

 一方で最近、メディア規制が厳しくなっている。先日も高市さなえが出したネット規制も法案が成立した。児童ポルノはまだもめているが、可決されると、とんでもないことになる。アメリカの例では自分の子どもの成長を写真に撮って現像に出したら逮捕されたという話も聞く。
 春闘の中で二つの裁判があった。一つは烏賀陽氏(ウガヤ氏=出版労連の組合員)に対するオリコンの損害賠償で、電話取材のコメントを記事にしたところ、オリコン側が5000万円の損害賠償を請求してきた事件。東京地裁は、100万円支払えという不当判決。情報源をカットするような判決だ。もう一つ、大江さんの(岩波)沖縄戦記述裁判は大阪地裁で勝利し、いま高裁で争われている。これらは憲法問題につながってくる。

 出版界にとって憲法は、政治問題でなくメシのタネだ。改憲されて規制が強まると出したい本が出せない、出版の自由はどこにあるということになる。出版の総売上げは2兆円しかない。出版労連では、関係業界団体と出版産業再生のために意見交換をすすめている。憲法を語れなくなれば、ただでさえ少ない出版産業の売り上げをどう伸ばすか。まずは1000万署名に全力をあげているが、組合員の理解を深め、次の春闘につなげていきたい。


民放労連・高橋書記次長 京都放送で構内最賃。琉球朝日は格差是正へ

 今年は「差別と貧困をなくし、放送の未来をひらく08春闘を」のスローガンを掲げ、要求基準は、有額ベアの獲得、誰でも最低1万5000円以上の賃上げ、最低賃金協定の締結など、とくに非正規・未組織労働者の生活水準の引き上げを図るよう提起した。これまでの到達点は、  放送局の賃上げ(手当込み)平均8039円。プロダクションを含めた全単組平均7190円、2.7%になっている。3月12日の回答指定日に有額回答があったのは4組合だった。直後に、単組代表者会議をひらき、この中で、九州のテレビ西日本労組やRKB映画社、青森朝日放送などがストを組織し、有額ベアを勝ち取る成果が生まれた。
 民放最賃協定を展望し、当面、企業内協定を取っていく方針で取り組んだ。京都放送が締結に成功した。企業内最賃を協定するとともに、他の2つの関連会社と構内最賃協定を締結した。 構内労働者の待遇改善要求では、昨年の56組合から今年は61組合に増加。その結果、金一封や商品券が配られている。経営者に雇用責任があることを自覚させることにつながった。

 京都放送労組は会社更生中だが、13年間一人の解雇者も出させず、毎年ベアを獲得。偽装請負を適正化させ社員化、直傭化を実現。そのほか、放送提言運動や各種署名も積極的で、民放労働運動のお手本だ。
 もう一つは、琉球朝日放送労組で、1年半前に労組をつくり加盟した。琉球放送はTBS系で、琉球朝日放送はTV朝日系列になる。特異な1局2波という体制。ここに契約社員だけの組合が出来た。

 琉球放送から来ている出向社員との賃金格差をなくそうが最大テーマになった。同年齢でほぼ半分という自分たちの賃金を、せめて6割までにせよと「一律9000円+格差是正」を要求。会社側は「格差是正要求はなじまない」と一律6100円の回答。組合は、職場討論をしてスト突入を決定し通告した。会社は「契約社員に何ができるか」とタカをくくっていたが、組合員が労務担当に対して「私は全日本トライアスロン選手権の取材があるが、ストに入るので取材はできません」「私は特番で生放送を依頼されている。迷惑を掛けるのは申し訳ないが、生活が厳しい仲間がいる。仲間のことができなくて、外に向かって何が言えますか」「明日から、アナウンサー、カメラマン、記者、みんな引き揚げます」と通告。

 労務担当が顔色を変え、「ちょっと待ってくれ。僕一人では決められない」と休憩に。その間、組合は、東京のTV朝日労組に支援を要請して快諾を得る。琉球放送労組も「組合員を待機させて待っている。後方支援の体制は整えた」と激励してくれた。深夜の団交再開で会社側から、「出向社員・同一年齢との対比で100円〜500円の上積み」を回答、あわせて「来春闘までに格差是正を整備する」ことを約束した。組合は持ち帰り、要求とはかけ離れているが、要求形態を会社が飲んだので、正社員化につながることを確認、ストを回避して妥結した。

 当該単組の委員長が民放労連に寄せた報告書を紹介したい。「みんなで組合を結成して1年4カ月、みんながまとまり始めたこと、会社にモノを言い始めたこと、それが組合を結成した最大の収穫であり、働く仲間が団結する組合の原点だと思う。私たちは契約社員だけの組合。1局2波という異常な形態の中で仕事をやらざるを得ない組合です。でも、今春闘でわかりました。誰一人として負けません。これからも地を這うように前に進んでいきます」と結んであった。


東京・梶幹事 「なくせ貧困総行動」に向けて、各団体、単産・地域が結集

 「2・13なくせ貧困総行動」について。国民春闘共闘の討論集会でも、坂内議長より「国民共同を08春闘で強力に推進していく」という提起があった。これを受けて、東京春闘共闘でも「2・13」を中心にして霞が関での昼間の行動に全力で取り組もうと奮闘してきた。
 最低賃金法は改正されたが、再度、全国一律最賃を実現するようにと強調しながら、大幅な最賃額の引き上げを求めていく。厚労省に、後期高齢者医療制度反対、医療制度の改善要求とも結合して集まろう。東京土建の仲間が国土交通省、国会に向けて数千人の動員を準備するという提起もあった。こうした切実な地域・単産の要求を練り上げながら、「2・13」に向けての運動をすすめてきた。農民連・食健連からは、最賃額を米価算定の基礎に据えるということで、大々的な宣伝物が提起され、生活保護の切り下げ反対と生存権裁判支援の運動についても取り組みが始まる。これら諸団体の要求とも結合して、その柱として、全国一律最賃制と当面する最賃額の大幅引き上げを求めていくと位置付けて、「2・13」の取り組みを秋年末から準備してきた。
 生協労連、JMIUなどが全国動員をかける。各単産の取り組みと呼応して、東京としても行動を成功させるために奮闘し、全体で7000人を超える総行動を成功させる一端を担うことができた。その後の3月、4月の統一行動、各単産の春闘に大きなハズミがついた。

 東京春闘共闘の総括の中でも、「たいへん大きな転機となる取り組みであった」と評価された。私たちもこの結果。早めに回答を引き出すことができ、その後も粘り強くたたかうことができた。東京の地場の賃金が、最低賃金の引き上げを通じて、パートの時給は昨年の950円が今年は997円という結果になった。今年は最賃引上げのたたかいの中で、国民共同の機運の中で、1000円を大幅に超えていく流れになるだろう。これはまた、個別企業の初任給の引き上げ、若者の賃金を引き上げ、高齢者の賃金切り下げ策を停止しなければならない、という情勢にあることが職場の賃金交渉のテーマになることも生じてきた。
 東京春闘共闘は、この秋から来年の09春闘に向けて、こういう国民共同の立場で、ナショナルミニマムの軸としての全国一律の最賃闘争を柱に据えてたたかっていきたい。秋の行動、来年の国民共同の統一行動を早めに企画し提起してほしい。


公務労組連・熊谷事務局次長 初任給引上げと、非常勤の待遇改善へ

 08春闘のポイントについて。公務は全体で原油高、物価高のもとで、燃料費負担を中心にしながら、生活防衛に結びつく賃上げを春の回答で獲得するか、とりわけ、官民で1万円以上の開きがある初任給の引き上げ、官製ワーキングプアと言われ、昨年の勧告で言及させた非常勤の労働条件問題を、いかに回答させるかが一つのポイントだった。もう一つは、公務員の労働基本権の回復への動きが出てきている中で、「人勧尊重」だけの回答でなく、政府が当事者能力を発揮した回答を、いかに引き出すことができるかがポイントだった。

 公務労組連絡会として、「2・13」「3・5」で政府・人事院に回答を迫ってきた。とくに「3・5」では「官製ワーキングプア告発集会」を、はじめて公務の共闘組織として国会内でもつことができた。全体の行動としては、交運や医療・福祉の仲間とともに独自要求を前面に押し立てて、行動参加のみなさんと一緒に霞が関を騒然とさせる取組みをすすめることができた。政府・人事院の回答は、従来の枠組みを超えることは困難、ということだが、運動を前進させる上でのステップになったと確信している。

 これから夏季闘争の本番を迎える。公務労組連としては「5・30」の行動に引き続いて、「7・17」の中央行動を最大規模で取り組みたい。同時に今年も賃金改善署名に取り組み中。夏季闘争のポイントは、新最賃法という新たな情勢のもとで、最賃と人勧闘争を本気になって一緒にたたかうことだ。したがって「7・17」は例年より10日早めて取り組む。最賃・人勧両方の山場とみて行動を配置し、最終回答を押し上げたい。署名活動も正規・非正規の枠を超えて「すべての労働者の引き上げ」を明確にしながら、50万筆を目指して取り組んでいる。「7・17集会」の準備はこれからだが、従来は公務各単産のパフォーマンスをしながら盛り上げてきたが、今年は、生協や全国一般の仲間のみなさんと一緒に、集会を楽しみながら取り組んでいきたい。自治労連も従来の「水戸黄門」を脱皮してくれるのではないかと期待している。この行動を春闘共闘全体の力で、官民総がかりの行動として成功させたい。

 08勧告全体としては厳しいが、先日、人事院が「非常勤に関わる指針の案」というのを公表した。この間、先進的に取り組んできたところから見ると、さしたる前進とはならないが、地方を含む公務全体としては、地域で民間の足を引っ張ってきた公務非正規の条件を引き上げるうえでは、条件改善を切り開くものになるのではないかと思う。
 こうした動きを広げながら、最賃闘争、人勧闘争の要求前進のために奮闘していきたいと思う。そうすることが、労働基本権回復に向けた私たちの力、意思を明らかにすることだと思う。


自交総連・菊池書記次長 「労働条件改善のための運賃改定」を守らせる

 タクシー労働者にとっては、12年ぶりに運賃が改定される下での春闘となった。全国で半分ほどの地域で改定された。賃金は歩合給なので、運賃と賃金は密接な関係がある。売り上げが増えれば、比例して賃金も増える。経営者の方は、組合が何も言わなければ、運賃の値上げ分を賃金に回さない方策、賃金の率を切り下げることをいろいろやってきたので、今回は賃金にはね返るよう「ノースライド」というスローガンでたたかってきた。昨年来、国土交通省交渉を行い、「労働条件改善のための運賃改定なので、賃金の切り下げはダメ」という通達を出させてたたかった結果、自交総連の組合は「ノースライド」の成果を勝ち取ることができた。
 労働条件の改善でも東京などで、クレジットカードの手数料(3%前後)が運転手の給料から引かれていたが、値上げとともに改善要求して、多くの単組で労働者に戻す成果も勝ちとった。

 タクシーのパートは「定時制乗務員」というが、定年後の高齢者が多い。正規が月に12乗務のところ定時制は8回くらい乗る。この労働者の賃金は、正規労働者が売り上げの55%なら、定時制は52%で、これを2〜3%UPさせる成果をあげた。このほか、定時制でも有給休暇の権利を認めさせ、一部だが退職慰労金(金一封)を出させる成果もあげた。
 ノースライドによって、売り上げが増えたところでは1万円以上の賃上げになった。但し、東京など大都市では不況が深刻化して売上げが増えないという問題が出ている。賃上げに結び付かない。これは、タクシーの規制緩和、この間の増車とも結びついている。政府の責任でもあり、組合では「多すぎるタクシーを減らせ」と要求中だ。
 そういう中で、「格差是正」の世論もあって、政治の世界でも大きな変化が生まれた。自民党のハイタク議員連盟で規制強化の改正法案をこの秋に提出することになり、民主党も法改正することになった。我々が10年に亘って「規制緩和反対」と訴えてきたことが、主犯の自民党、民主党が法律を元に戻さなくてはいけないというところまで追い込んできた。規制緩和を見直し、タクシーの台数を減らし、運転手が安心して暮らせるよう、秋に向けても全力で奮闘したい。


全労連・伊藤常任幹事 運動の目線を「生活の危機」から「社会の危機」へ

 「なくせ貧困、格差是正」について、情勢を含め、もう少し危機感を持った方が良いのではないか。私たちの組合のあるところでは非正規の目線から、底上げのたたかいが地に付いてきている。ここで私たちは、「生活の危機」から「社会の危機」というところまで目配せした取り組みをした方が良いのではないか。この間、全労連は、組合員だけではなく、生活していけない人達を支援している団体との連携を深めてきた。彼らが関わっている人達の世の中に対する考え方、これを私たちも目線に入れていかないといけないと思う。

 象徴的なのは「秋葉原の事件」だが、その前に、ひきこもり、ニートの若い人達が親を殺すという事件が相当発生し、無差別殺人も起きていた。2チャンネルに書き込みがあるが、同じような境遇で働いている人達から「心情的に理解できる」というのが相当ある。非正規で差別的に扱われている日々の想いだ。「ある日出社したら、自分の作業服が見つからない」「クビだと言われた」「その怒りは本当にわかる」「すべてを敵に回すという気持ちになる」という。
 我々は、そこから殺人までいくのか?で、止まってしまうが、そうではなく、ああいう事件が起きるほど酷い目に遭っているんだという目線で、危機感を募らせることが必要ではないか。
 そこから考えると、最賃闘争、派遣法の闘争だが、「最賃ギリギリは組合員にはいない」とか、「派遣の組合員はいない」ということで、今ひとつ腰が入らない場面が見られるが、そうではない。私たちの隣で働く者にどう連帯していくのかという視点で取り組んでいきたい。

 もう一つは、私たちはこの間、法改悪をやられ放題だったが、2006年のホワイトカラー・エグゼンプションから情勢は変わった。派遣法について言えば、当局は3年前から改悪案を準備しているのに、出せないでいる。派遣法違反が蔓延していることを我々が告発して、マスコミにも曝露されているが、これを積み重ねて法改悪を出せない状況を我々がつくってきた。こうして、こちらから法改正させるところまできている。是非とも秋の臨時国会から、まずは日雇い派遣禁止の提案もあるが、上限規制の問題、直接雇用申し入れ義務、事前面接などの課題について、みなさんとしっかり目線を合わせて、今度は法改正をさせる。派遣法を一気になくして職安法44条を守らせるところまではいかないが、まずは派遣労働者保護法だ。派遣労働者の理解も得ながら規制を強化して、良い法改正を勝ち取りたい。

 最賃闘争についても、「最賃とは何か」という話しを、我々は「単身者として生きる命の値段」だ。相手側は、そこらの「企業の支払能力」の目安である高卒初任給、それも一番小さく統計が取れるものを、さらに10分位をして、サルでも払える初任給でガマンしておけ。しかもそれを5年間かけて到達するというふざけた話しだ。68円など単年度で到達して当たり前のものを出して来るなど許せない。それが出てくる背景は、「生活できる賃金を」という声が反映していないからだ。我々が、「暮らせる賃金をよこせ」と迫力をもってたたかい取る。暑い夏の成果を勝ちとりたい。皆さんのご協力も得たいと思う。

 生活保護の問題。期待された東京地裁の判決は、正反対に悪いものが出た。使われたネタは、生活援護局が出している全国消費実態調査の分析そのものだ。低所得層の第10分位で、最も極貧の層の実態を出して、「これでも生きているではないか」「それよりましな生活保護は下げてもよいでしょう」という理屈だ。これは、最賃にも適用される。政府から見れば、どんどん底を抜いて貧困を作る。人が死ぬ限界まで落として、それでも生きている実績があれば、そこまで下げても良いということになってしまう。動物的なギリギリの生命を維持するところまで最賃なり生活保護を下げようとする政府の目論見を絶対食い止めなければいけない。これは来年、生活保護・扶助のT類、U類を崩すことが出て来るので、最賃とリンクしている生活保護を壊されたのでは、我々の依拠するところもなくなるという目線で、生存権裁判への支援をお願いしたい。


全労連・大西常任幹事 女性労働実態調査に見る違法な働かせ方の是正を

 働くルールの確立について。女性部は、5年ごとに女性労働者の実態調査、妊娠・出産に関わる実態調査を行っている。07年分がようやくまとまり、冊子になった(全労連のHPにも掲載中)。この5年間は、構造改革の影響が実態として表れている。
 まず、時間外労働が伸びている。妊娠・出産では5人に1人が異常出産という事態になっている。自由記載欄の声を紹介すると、民間職場では「ノルマを達成できなければ、休み時間も返上」、妊娠している方は「それでも出来なければ休日出勤せよ」、これは労基法第66条違反だ。公務の職場では「医師の診断にもとづき休日申請すると、ツワリくらいで休むのかと言われ、休み明けには机の上に書類が山積みされている」、均等法第13条違反だ。「3人産むのは異常だと言われた。子育てをすることで迷惑をかけるなら辞めてもらってもかまわないと所長に言われた」(公務現場)、均等法第9条違反。「夫が(長時間労働で)家に帰ってこない」など。女性は職場で過密労働をしながらお迎え時間までには帰らなければいけない。帰れば家事・育児に追われ、24時間、時間に追われている。「2人目は絶対産めません」という声が聞かれる。

 アンケートでは、こうした関係法律、例えば「時間外、休日労働の制限があるのを知らなかった」人が3割もいた。女性部としても、育児介護休業法とか次世代育成推進法、改正均等法などを職場に周知徹底しなければいけないということで、女性が声をあげ、組合として協定化を呼び掛けているが、制度的要求の前進が64組合の報告で、少なかったと反省している。
 女性労働者の7割が妊娠・出産を契機に辞職するという実態が、ここ10数年続いている。政府は、少子化対策とか、女性と高齢者活用の目標を掲げ、「ワーク・ライフ・バランス憲章」を昨年12月に打ち出した。女性の離職を緩和させる施策として、労働時間の短縮とか、男性の育児時間の取得率向上などの数値目標を定めている。政府はこれに基づき、各種法律を改正、整備するよう動きだした。次世代育成対策推進法が先の国会で衆議院にかかっていたが、参議院で廃案になっている。この法案は、いままで300人以上事業所での実施義務を100人以上に摘要するというもの。また、育児介護休業法案も子どもの看護休暇5日が1人5日にするとか、育児休業の申請回数1回を期間中は何回でも取れるようにする法改正に向けて「仕事と生活の調和を推進する研究会」が昨日、素案を提案した。次期通常国会に向けて審議会にかけてくる。

 一方、ワーク・ライフ・バランスのなかに、多様な働き方やテレワークなどの推進が提起されている。さらなる不安定雇用を拡大させるのではないかと懸念される。また、既に製薬会社に取り入れられているテレワークは、ホワイトカラー・エグゼンプションそのものの働き方になっている。言葉に惑わされず、注意しながら運動をすすめていきたい。本当のワーク・ライフ・バランスを推進するためには、「働くルール署名」の項目をすべて実現していくことが必要で、この秋から来春闘に向けての運動を本格的に展開していきたい。


埼玉・原冨議長 地域労連の賃上げ要求に、自治体が有額回答

 埼玉でも毎年秋に県内すべての自治体を訪問して懇談している。公契約と地域経済、とくに焦眉の課題は自治体で働く臨時、非常勤、パートの時給の引き上げを要請してきた。2〜3年前から11月に訪問して、春闘期2月の地域総行動時に、地域労連としての要求書を出すようになった。「あなたの役所の時給は、いくら以上にしなさい」ということを全県統一要求で出す。埼労連と地域労連の連名で出し、今年は3月12日に回答指定日として、回答を求めた。

 今年、初めてのことだが、有額の回答が出始めた。本来、役所と地域労連の間に団体交渉権がある訳はないが、今年は5〜6か所で有額回答が出るようになった。三芳町は労組がないところ、周辺の市に自治労連の組合があって、横並びで790円だった。一昨年訪問した時、ロビーに所沢ハローワークの資料「パート募集チラシ」が置いてあって、800円以下の時給が管内に4カ所あった。防衛医大、さいたまコープ、医療生協の老健施設と、小企業1カ所。懇談の時、「この4カ所に役所を加えると5カ所だ」と指摘した。「うち2カ所には埼労連の組合があるから何とかするので、役所も何とかしてくれ。そうすれば他の2カ所も『恥ずかしい』となって、全体800円以下はなくなるのでは」と提案した。今年、三芳町から回答があって、「そう言われて誠に恥ずかしい」ということで20円アップの810円になった。

 越谷市と秩父市からも有額回答があった。両市とも組合はあるが、連合・自治労だ。そこに地域労連が行って、有額回答を寄こすという関係はわからないと思うが…。労働組合のないところにも、私たちとは違う労働組合があるところにも、地域労連が要求書を出して、これに有額回答で応えてきたという事実は、今後の運動の方向性について、大きなヒントがあるのではないか。

 春闘における賃金闘争は、個々の企業の労働協約闘争と並んで、社会的な展開というのがある。こういう取り組みと、全建総連関東や建交労などがやっている大手ゼネコンや大手住宅資本に対して、末端の労働者を組織する組合が、直接の雇用関係はないにしても、末端の賃金を保障させるために「元請けは社会的責任を果たせ」という交渉を重ねてきていることなども考えれば、ダイナミックに、従来の労働組合法に基づく関係を超えて、社会的なたたかいが展開できる。そういう経験をしてきたし、今後いっそう発展させていきたい。

●討論のまとめ ― 小田川事務局長

すべて補強意見。今後の運動に活かそう

非正規や青年の参加、国民共同、制度改正の活用を

 14名の発言があったが、すべての発言が方針を補強するものであった。受け止めて今後の運動に活かしていきたい。そのうえで、何点かお答えし、まとめておきたい。

<個別発言に関わって>
1.公契約法の問題について
 先般のILO総会で、94号条約が議論になった際に、日本の政府や経営者側は「この条約は陳腐化している。時代遅れだ」と発言している。世界的にも経営サイドは公契約に関わる94号条約は時代を反映していない」と批判している。我々は、その立場ではない。今日のグローバル化のもとで、この条約の必要性を確保しなければならないと思うが、連合なども含めて日本における条約適用の問題や具体化の問題について、改めて検討する、運動を強める時期に来ていることを実感している。

2.最低生活費調査について
 大阪の例が新聞などで報道されたが、つぎに首都圏での取り組みがすすんでいる。これらの成果を大いに活用する取り組みを、さらに強めていきたい。

3.民放労連・京都放送での構内最賃の成果について
 この到達点をお互いに議論し、成果を確認し合うことが必要だ。同一企業の労働者だけを対象にしているわけではない、多様な労働者がいる中での到達点ですから、是非確認しあいたい。

4.公務の非常勤職員のガイドラインについて
 高卒初任給を基準にするというのが第一で、加えて通勤手当の支給と、条件をクリアした場合の一時金支給について言及している。問題は高卒初任という考え方について、最賃でも触れたが、その意味は複雑で、通過点であることは認めなくてはならないし、同一企業内における均等待遇でもある。しかし、最低生活を保障する水準ではないということだ。ここに人勧のたたかい、最賃闘争と正規職員の賃金闘争の接点があるということを改めて確認する必要がある。

5.地域最賃の「高卒初任給」について
関連して、最低賃金の高卒初任で10分位の一番下という考え方について。10人のなかの10番目と受け止めそうだが、実はそうではないことを理解しなくてはならない。10分位は、50分位で取れば下から2番目、3番目の真ん中くらいだ。100で割っていけば、5番目と6番目の間になる。そういう統計処理の数字だ。ということは、非常に低い水準だ。100人のうちの下から5番目、6番目しか採っていない。その数字の使い方、考え方については大いなる問題意識をもって当たっていくことが必要であることを強調したい。これは、企業の支払い能力論を超えきれていないということだと思う。この点での運動強化が必要だ。

6.地域でのパート時給引上げについて
 埼玉のローカルセンター、地域におけるセンター機能の先進的な事例であって、運動の発展状況を報告していただいた。すべての県でこういうことができればよいが、多いに参考にし、広めていく努力を、お互いにすすめていきたい。

<全体のまとめ>
(1) 非正規の方や青年の参加など、前進面を確認
 全体として、非常に厳しい状況の中でたたかってきた。しかし、組合員の要求とエネルギーに依拠して精一杯たたかったと実感できたと、何人かの発言があった。お互いに確認し、とりわけ、たたかいを通じて非正規の方や青年の運動への参加が図られてきている。そういう前進面について確認しあいたい。

(2) 「2・13国民共同行動」の、さらなる前進を
 2月13日の国民共同の行動について、東京から発言をいただいた。国民春闘構築を進めていくうえで、ひきつづきこの形態については前に向けて議論をすすめていきたい。去年、厚生労働省との交渉で、「フィラデルフィア宣言」に触れて、「一部の貧困は社会にとって危険だ」と言ったら、相手側が鼻で笑った場面があったが、1年が経って、言ったことがその通りになったではないかと言いたい。そういう状況までこの社会がきている。「社会の危機」も指摘されたが、国民春闘再構築の本当の意味での運動強化が必要だと改めて確認した。そのためにも、国民、民主団体との共同、非正規や青年の方が参加できる大きな行動と、要求実現の場をどう創っていくかということをお互いに研究しあいたい。議論を深めあいたいし、産別の行動配置の中にもこの議論を含めていただければ有りがたい。

(3) 労働関連法案改正の積極面を職場に定着させよう
 制度要求と関わって、メンタルヘルスの問題についての発言があった。労安法が昨年改正され、これを活用する職場の取り組みが必要で、その条件ができている。総括文でも触れたが、均等法、パート労働法など、いくつかの法律の枠組みがこの1〜2年で改正されている。そういう改正要求や運動について、それを職場に定着させていくという点で、まだ努力が足りない。これは、職場の制度的要求の到達点が示しているのではないか。そのことを踏まえたうえで、お互いに到達目標を示していけるような論議を春闘共闘としてもすすめていきたい。

(4) 最賃・人観闘争の山場に向けて
 最後に当面の行動について。最賃の目安が近く諮問され、人事院勧告とほぼテンポを同じくして論議がすすんでいく。最低賃金が昨年並みの14円でいいと思っている方はいないと思う。しかし、要求を実現するためには相当な努力が必要だ。7月17日の「実施要綱案」を出しているが、公務労組連から民間への呼びかけもあった。同時に、最賃でも審議の山場はその後に1段、2段と来る。その際には、本部専従者、東京の方を中心に緊急要請をすることになるので、ご協力をお願いし、何としても改正最賃法の具体化を、芽が出た、一歩前へ進んだという状況を創りだすためにお互いに奮闘しあいたい。



 
●閉会あいさつ ― 老田代表幹事

新体制で、国民の期待に応える組織力と運動を

 議長団と、熱心な討論を展開したみなさんに感謝申し上げます。
 昨年10月31日に国民春闘の年次総会を開いてから8か月。この間、単産・地方で、皆さんには様々なご苦労があったと思う。心から感謝申し上げます。本日の出席は、19単産団体・6地方から58名が参加されました。

 実は、坂内代表幹事も私も、今回の代表者会議をもって春闘共闘の代表を降りる。堤さんもほぼそういう方向ということで、3人とも変わるということになった。
 私は5年間、代表幹事をやらせていただいたので、一言、言わせてもらいたい。「住みにくい世の中を、なんとかしてよ!」という悲鳴。「世の中おかしい!?」。そういう声が広がって我々に対する期待が、10年以上、春闘共闘に係わっているが、スパンでみても変わってきた。ちょっと前まで、我々の活動は中央では全然マスコミに取り上げられなかった。地方でやると取り上げられるが…。しかし、今はそういう状況ではない。そういう運動を我々は創ってきたんだと思う。いま紹介した悲鳴、「何とかしてほしい」というところに立脚して、しばらくはツバぜり合いが続くということですから、組織労働者、労働組合としての実力アップと、組織を拡大すること、さらに幅広い共同を創り上げていくことによって、我々の運動をさらに前進させてくことが必要だ。その可能性は十分にあるし、そうした展望を持った08春闘の到達点だと思う。

 個人的には、地球温暖化が大変な問題で、穀物の高騰、食料不足、食糧危機…。国産品が欲しいと言うが、ベルトコンベアで増産するわけにはいかない。この国が持続可能な社会として成り立っていくために、本当にこれから運動のし甲斐がある時に姿を消すということは一抹の寂しさがある。みなさん、殆どの方が残るんでしょうから、後の方に大いに期待して、大丈夫だと確信している。新たな体制、布陣でこれからの運動を創っていただきたいことをお願いして、閉会のあいさつとします。


 






 
 なくせ貧困、ストップ改憲! つくろう平和で公正な社会

 




国民春闘共闘情報