2008国民春闘共闘情報
全労連HP

第 01 号  2007年11月02日

 

格差と貧困の是正へ、最賃1000円軸に

国民的立場の春闘を本格展開

 08年次総会で「春闘方針構想」を討議

 国民春闘共闘は10月31日、東京・全労連会館で08年度年次総会をひらき、当面する秋季年末闘争の強化と08春闘方針構想、新年度の役員体制、予算などを確立しました。総会には26単産・団体・6地方の代表ら75名が出席。参院選後の有利な政治情勢を生かし、大企業の大儲けをすべての労働者・国民に還元させる国民的立場に立った春闘の前進を確認しました。重点課題では、格差と貧困の是正をはかる賃金底上げと働くルールの確立、最賃時給1000円の実現をはじめ、雇用の安定と労働時間の短縮、公務サービスの充実と労働基本権の確立、安全・安心な地域社会の実現、教育、医療、福祉などの拡充、改憲策動反対などの課題をとりくむ08春闘を、熱く語り合いました。



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 主催者あいさつした代表幹事の坂内三夫全労連議長(写真)は、08春闘の特徴について、「究極の生活破壊、貧困化のもとで、職場を基礎にたたかいを地域に広げ、全国統一闘争によって労働者と国民の生活を守るという春闘の原点」を強調。我々の運動によって政治を動かすことができる情勢を説明したうえで、「全労働者の賃金底上げを軸に、憲法25条の実現を迫る国民春闘の本格的展開が必要」との考えを示しました。「結果は前進しなかったが、方針は正しかった」という運動でなく、「石にしがみついても労働者の実利・実益をかちとろう」と呼びかけ、骨太の議論を要請しました。

● 小田川事務局長が春闘構想案を提案

なくせ貧困、ストップ改憲!つくろう平和で公正な社会

 小田川義和事務局長が「08春闘方針構想案」を提案。主要課題の取り組みとして、@格差と貧困是正をめざした賃金底上げ、働くルール確立のたたかい、A安全・安心な地域社会を求める取り組み、B改憲策動に反対し、平和と民主主義をまもる憲法闘争について、運動の具体化を説明しました。
これを踏まえた08春闘のスローガンを
 「なくせ貧困、ストップ改憲!つくろう平和で公正な社会」でどうかと提案し、討論を呼びかけました(最終確定は11月27日の常幹会議)。

 第1の主要課題「格差と貧困是正」を求めるたたかいでは、生計費重視の観点からすべての参加組織にベア要求を掲げることを呼びかけ、最低賃金闘争とも連帯させた「賃金底上げ」の重視、「最賃協約」の締結運動、最低賃金「時給1000円」実現にむけたとりくみ強化を挙げ、最低保障年金、生活保護、重税反対を求める国民的な運動、米価など農民の生活保障を求めるたたかいとの連帯を強調しました。また、雇用の安定、労働時間短縮を重視した「働くルール確立」運動、100万署名を強め、所定外割増150%の統一要求を提案。労働者派遣法の改善、公務サービスの充実、労働基本権の確立と、争議の勝利解決を呼びかけました。

 第2の主要課題「安全・安心な地域社会」では、教育、医療、福祉などの充実を求める地域行動の具体化をはかることとし、2月下旬に地域総行動を設定します。住民要求を取りまとめた自治体要求運動や、公契約条例制定を求める運動を共同してとりくむとしています。
 第3の主要課題「改憲策動阻止」では、各団体がとりくんでいる「改憲反対署名」の相互協力を強めること、「テロ特措法」にかかわる自衛隊のイラク、インド洋からの撤退と在日米軍基地強化に反対するとりくみ強化を要請しました。

 統一行動の配置は、解散・総選挙も意識して2月段階の国民的共同を重視しているのが特徴です。1月は8日の新春宣伝行動、18日の日本経団連包囲行動(午後、単産地方代表者会議)、28日の週に春闘決起集会、要求確認職場行動週間、2月は中旬(12日の週)に「08春闘総決起、ストップ貧困中央行動(仮称)」を開催し、27〜29日に地域総行動、29日までに要求提出します。3月は中旬に第1次集中回答日を設け、翌日にストライキを含む統一行動、4月は23日頃に春闘回答追い上げ、早期解決をはかる全国統一行動を構える計画です。

● 討論に14名が発言

情勢の変化、格差・貧困化とのたたかいを交流

最低賃金を軸に共同ひろげ、要求実現を

 討論では、民間・公務の各単産や地方代表ら14名の発言がつづきました(以下は要旨)。

 ◇厳しい民間労働者の実態と取り組みについて
 全農協労連は、「コメ農家の労賃が時間当たり256円(06年度)と言われている。我々の賃金はこれに大きく影響されている」として、最低賃金とともに大幅賃上げの必要性を説明しました。今年、コメの価格が大暴落している問題について、「全農が7000円(60kg)の仮払いをしているが、大手が入札せず売れずに推移している」として、買い入れを遅らせ価格暴落を招いた大手と政府の農政を批判しました。

 建交労は、「ニューヨークの原油市場が1バーレル92ドルを付けた。灯油、ガス、電気代がつぎつぎ値上げされているが、大手スーパーは原油高騰の価格転嫁を認めず、中小企業や運送会社に押し付けている。このままでは年が越せない」として、大企業の横暴を打ち破る国民的なたたかいを訴えました。

 自交総連は、「全国各地でタクシー労働者の賃金は最賃法違反になっている」として、長崎県の平均時給が600円に満たず、東北、四国、九州などの厳しい実態を紹介。「最低賃金以下の職場をなくしたい。運賃値上げ分を労働条件改善に反映させるように、国交相に通達を出させた。値上げに合わせて賃下げを策動する経営者もいるが、これを許さないたたかいもがんばる」と決意を語りました。

 民放労連は、「時給1200円、年収300万円以下の労働者をなくそうと取り組んできた」経験を報告。構内最賃のルールをつくるために、「要求は出すが、『企業籍の違う人の労働条件は交渉に馴染まない』と言われて前進できない」としながらも、要求と運動によって、非正規労働者が請負から派遣に切り替わったり、全員に1万円の金一封やクオカードを支給する放送局が増えてきたことを紹介しました。あわせて、多様な非正規労働者を正規化するための方策と運動づくりを要請しました。

 出版労連は、「たくさん働いている非正規労働者の均等待遇を求めている」として、一時金の獲得、労働条件の均等化、企業内最賃のとりくみなどを紹介。東京出版最賃の時給を11円引き上げ、805円としたことを報告しました。また、「非正規だけでなく原稿料払いのフリーランスの労働者が増えている。契約書をきちんと交わすことや、原稿料の引き上げを求めていきたい。育児、介護、看護も含め均等待遇をめざしていきたい」と語りました。

 生協労連は、「最賃と均等待遇を中心にとりくんできたが、『暮らせる賃金が貰えないので、ダブルやトリプルで働いている』という仲間」の実態を紹介。「中央・地方で最低賃金審議委員に立候補してたたかった経験をさらに広め、来年4月施行の『改正パート法』の積極部分も活用して、具体的な改善をかちとっていきたい」と述べました。最賃体験運動では「時給1000円であったら、どんな暮らしができるか。現実と比較できるものをやってみたい」と語りました。

 ◇公務員労働者の厳しい実態と取り組みについて
 公務労組連絡会は、前日に人勧の一部を除き実施することが閣議決定されたことについて、「一般職は完全実施。初任給を中心にした引き上げとなった。政府といえども、最賃ギリギリにおかれている公務員の賃上げをストップさせることはできなかった」と評価しました。08春闘にむけて、「労働基本権回復のたたかいが重要。『最終報告』では、労働協約締結権を認めることになったがスト権は見送られ、不十分な内容だ。公務職場の働くルール署名を11月からスタートさせ、100万の署名を集めたい」として、民間組合にも協力を要請しました。

 国公労連は、「公務員バッシングで、みんなが委縮し、3〜4割のなかまがメンタルヘルス問題で悩み、休職者が大量に出ている」実態を紹介するとともに、春闘で労働条件の具体的な引き上げの必要性を強調しました。とくに、「非常勤の方の不安定な労働条件改善を中心にしないと、正職員の労働条件も改善されない」として、非正規労働者重視の春闘構築を訴えました。

 自治労連は、「非正規職員の時間給引き上げなど待遇改善を、10月15日から非正規関連闘争ゾーンとしてたたかい、初めて統一要求を追求し、三重県などで具体的な成果をあげた」と報告しました。北海道の公立病院で統廃合がすすみ、通院に3時間かかることや、後期高齢者医療で1人づつ1万2290円が年金から天引きされることなどを紹介。「1億1600万円以上(100万ドル)の金融資産家への課税強化だけでも、税収不足など解消される」ことを指摘しました。

 全教は、安倍内閣がすすめた教員免許の更新制度を批判。「都道府県教育長協議会が『この制度は馴染まない』と主張している」ことを紹介。免職制度について、「教員の研修を大学に委嘱し、クビにするのが教育委員会」というシステムを批判しました。これに関わって、教員の賃金制度も大きく変わり「超勤の実態は40時間と、自宅持ち帰りが20時間ある。文科省はこれを値切ったうえで、10%の超勤手当しか出さない方向。加えて賃金体系そのものに差別を導入しようとしている」と批判しました。また、非常勤講師の労働条件改善にもがんばる決意を表明しました。

 ◇年金生活者も苦しいけれど、元気に活動推進中
 年金者組合は、年金3万円で暮らす女性の自殺未遂を紹介しながら、みんなで支えあうことの大切さを強調。最低保障年金を求める「11・8年金者一揆」では、中央は日比谷屋音に3000人、全国では8000人の行動を組織すると報告しました。中央集会には、日本共産党、民主党、社民党がそろって初めてあいさつする予定。「情勢の変化を実感する」とのべ、参院選後の情勢を生かして後期高齢者医療制度の中止など、運動で政治を動かしたいと述べました。

 ◇地方も厳しいけれど、展望ひらく08春闘を追求
 北海道では、今年、最賃が10円アップになりました。「ところが、ある職場では『10円アップになったからと、7人のうち1人に辞めてもらう』、またある職場では『7時間の仕事を6時間でやってくれ』と言われた」として、最賃が反動的に使われている実態を紹介。1800万非正規労働者にむけて「時給1000円要求のストライキ」を呼びかけることの検討を要請しました。

 東京は、「全国一律最賃を柱にしつつ、国民の格差と貧困の是正はかることを、もっと強調してほしい」と要望。「農家が生活できる労賃を」と、米価引き上げや自家労賃の保障、下請単価の保障などを求める農民連の活動を紹介し、中小企業家、業者とも共同をすすめながら、制度づくりのたたかいと金額引き上げを求めるたたかいを、ナショナル・ミニマムの基軸として広げていこう」と強調しました。

 奈良では、いま、資料集500セットを作成して自治体キャラバンを実施中。「財政状況から乳幼児医療、非正規時給、看護師アンケート結果、地域交通問題」なども入っています。最賃審議会での青年の意見陳述、自治体保育士の均等待遇要求から出発した労組づくりを紹介したうえで、「格差、差別は許さない。食品偽装やボクシングの反則は許されないのと同じように、平等感覚と格差をなくそうという意識は共通している。『なくせ貧困、奪うな命』をキーワードに秋季年末をたたかっている」「歪みを正す春闘にすべき」と述べました。

● 小田川事務局長が討論のまとめ

 討論のまとめに立った小田川事務局長は、概要つぎのようにまとめて了承されました。

@ 14名からの発言は、貧困の解消をめざす春闘、その要に最低賃金の改善、国民共同の構えが大事だという点も一致している。ただし、最賃引き上げと制度の改善についての区分と関連を整理する必要がある。

A たたかいの集中、山場の設定、節目と結節点について、08春闘では国民春闘の山場を2月にもってきている。「ふっとばせ!貧困」のようなテーマでたたかう。単産の山場と国民春闘の山場も一致させていきたい。

B 建交労から出された価格高騰の問題は、下請単価、不公正取引是正の動きもあるので、この秋、なにができるか相談したい。

C 全農協労連からの大幅賃上げ要求について、ベア要求を重視する考え方は変わらないが、議論を深めたい。

D 自治体の正規・非正規問題は、ともに公務員制度改革とも係わって議論を深めたい。非常勤の賃金・労働条件など実態調査は30県以上ですすめられたが、さらに広げていきたい。

E 守られない法律の代表に「労基法」が挙げられて、その中には最賃法もある。法違反を告発する運動と、貧困打開の運動を08春闘の中心軸にしていく。

F 11月30日〜12月1日の国民春闘討論集会での議論を経て、1月18日の単産・地方代表者会議は、決起集会になるよう、まとめていきたい。

● 新年度役員を選出

代表幹事に坂内、老田、堤の各氏、事務局長に小田川氏を再選

 新年度の役員体制(三役)は以下のとおり。
◇代表幹事=坂内三夫(全労連)、老田弘道(純中立労組懇)、堤 敬(東京春闘共闘)
◇事務局長=小田川義和(全労連)
◇事務局次長=渡辺正道(全労連)、浦上義人(純中立労組懇)、伊藤潤一(東京春闘共闘)。
◇常任幹事=各団体・大産業別グループより17名(うち2名が新任)、特別常任幹事=首都圏地方より3名、会計監査=2名(再任。氏名略)
 なお、非正規労働者の運動を強化するため、パート・臨時労組連に役員の推薦を打診中です。




● 主催者あいさつ  坂内三夫代表幹事

最賃、自家労賃、米価保障、最低保障年金、生活保護基準

実利・実益と憲法25条の実現を

 来年の08春闘は、1955年の春闘開始から54回目の春闘になります。半世紀以上にわたる歴史の中でも、08春闘は大きな節目に立つ春闘ではないでしょうか。また、そういう春闘にすることが求められているのではないでしょうか。

 第一は、08春闘が国民の究極の生活破壊、貧困化のもとで闘われることです。労働者の賃金が9年連続して下がり続けている。1997年に467万3000円だった民間労働者の平均給与は、2006年に434万9000円となり、生活保護にも満たない年収200万円以下がついに1023万人、全労働者の22.8%に達しました。
 パート、派遣、請負などの非正規雇用が1800万人・33.4%、青年や女性では50%以上。日雇い派遣、偽装請負、サービス残業、雇い止め。労働者がまるでボロキレのように使い捨てられ、どんなに真面目に働いても貧困から抜け出せない。

 中小企業・自営業者は、幾つかの仕事を兼業したり、わずかな年金収入で食いつないでいる。そこに資材の高騰と消費税の引き上げ。とてもやっていけません。農民は米価の暴落で米づくりもできない。150円の水のペットボトルに、米をいっぱいに詰めても90円。農民1時間あたりの労賃は256円にしかなりません。
 地域から学校がなくなり、保育所がなくなり、郵便局がなくなり、病院がなくなる。まさに、究極の格差と貧困が広がっている。こうしたなかで08春闘は、職場を基礎に闘いを地域に広げ、全国統一闘争によって労働者と国民の生活を守るという春闘の原点が問われる春闘だ。それが08春闘の第一の特徴だと思います。

 二つ目の特徴は、こうした実態のなかで大きな政治変化がおきていることです。我々の運動によって政治を動かすことができる。おそらく20年ぶり、30年ぶりの情勢ではないか。この間の春闘は、どんな大きな集会をやっても、国会前に何日座り込んでも、悪政の強行に抗議する春闘にならざるを得ませんでした。
 ところが今は、我々の運動で政治が動く。単なる願望ではなく、運動を通じて実感することができます。参議院選による議席変化は、二大政党の本質を考えれば、我々にすべて有利になった訳ではありません。しかし、いま始まっている政治変化は政党の議席変化にとどまらない。それをこえた変化だと思います。

 たとえば、憲法問題です。新しく当選した121人の参議院議員のうち、憲法9条改正に賛成と答えた議員は26%、反対が54%にのぼりました。改憲反対を訴えた日本共産党と社民党の当選者は合わせて5名、95%以上が基本的には改憲賛成の政党に所属する議員でした。それなのに54%が9条改悪に反対を表明しました。
 沖縄の教科書問題でも、障害者自立支援法の見直しでも、後期高齢者医療制度の凍結でも、被災者生活再建支援法の改正でも、いまの最大の焦点となっているテロ特措法の問題でもそうです。国民世論が、政治と国会を動かしつつあります。そして大事なことは、我々の闘いがこの情勢を切り開いてきたということです。

 新たな政治変化の背景には、構造改革に異論を唱えるのは非国民だ。そんな風潮の中でも、歯を食いしばって宣伝、署名、対話、集会を展開してきた我々の運動がある。それを組合員の確信にすることができるかどうか。確信をもって全組合員を決起させることができるか。そこに08春闘のポイントがあると思います。

 08春闘が転換期に立つ春闘である。三つ目の理由は、管理春闘を演出してきたJC・金属労協が表舞台から退場するかも知れない。JCは、来春闘から単年度交渉ではなく、4〜5年単位の交渉に転換する方向を打ち出しました。今さらJC春闘を論評しても仕方ありませんが、大きな節目であることは間違いありません。
 もちろん、前進があれば必ず逆流もおきるのが情勢です。国会で、党首討論に代わって福田・小沢の密室協議が始まる。産経新聞の朝刊・一面トップ、さっそく「大連立、じわり現実味」と報道しました。また朝日の朝刊は、中央で全国最低賃金を決めるという民主党の最賃法案に連合の横ヤリが入り、政府・与党案を軸にした妥協が始まったことを伝えました。それだけに、我々の春闘の構えが問われます。

 どんな構えが必要か。私は、労働者の最低賃金、中小企業や自営業者の自家労賃、農民の生産物価格保障、高齢者の最低保障年金、そして生活保護。すべての国民生活の最低保障を確立する。全労働者の賃金底上げを軸に、憲法25条の実現を迫る国民春闘の本格的な展開が必要ではないか。そのように考えています。

 結果は前進しなかったが方針は正しかった。哲学的価値観に凝り固まった運動でなく、石にしがみついても労働者の実利・実益をかちとる。そういう春闘が必要だと思います。国民の目に見えるインパクトのある国民春闘をどう前進させるのか。そのためにどこをどう強化するのか。骨太の議論をお願いします。

(以 上)




 
 つなごうよ くらしと平和 守る手を




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