2007国民春闘方針

2007年1月18日

国民春闘共闘委員会 単産・地方代表者会議


 1.情勢と特徴 


 (1) 90年代から続く多国籍大企業中心の社会・経済体制づくりをめざす「構造改革」のもとで、労働者、国民には格差と貧困の拡大などの「痛み」が強いられ続けてきた。
 例えば、1998年以降、8年連続して年間の自殺者は3万人を越え、同じ期間、給与所得者の年収は低下し続け、2005年度に生活保護を受けた世帯総数は100万世帯にのぼり、「日本の貧困率はアメリカに次いで世界第2位(2000年時点)」とするOECDの調査結果も明らかにされている。

 また、1997年の行政改革会議最終報告以降、公務のリストラも加速し、定員削減、賃下げ、「民間開放」などを内容とする総人件費削減攻撃が、年々強まっている。とくに、地方交付税交付金削減などの「三位一体改革」の影響もあって、北海道・夕張市の例にみられるような地方自治体の財政危機下でのリストラ「合理化」が顕在化している。
 このような格差と貧困の拡大状況や地域社会の危機の深まりに対して異議を申し立て、転換を迫るたたかいや世論が急速に広がっている。07年春闘は、実施される統一地方選挙や参議院選挙ともかかわって、その「流れ」をより確実にしていくことがもとめられる。

 (2) 06年10月の完全失業率(速報)は4.0%(259万人)と発表され、若干の改善はあるものの厳しい状況に変化はない。有効求人倍率(06年11月・全国平均1.06倍)を地域別に見ると、1.93倍の愛知県と0.43倍の沖縄県では5倍の格差があり、その傾向は新卒者の求人でも現れていることなど、地域間の経済格差がさらに拡大している。
 06年4月から6月の間の非正規労働者数は1647万人と公表されており、小泉内閣発足前の2001年2月段階と比較して287万人の増加となっている。この間、正規労働者は186万人減少し、非正規労働者が雇用者全体に占める割合は、32.3%と5.1ポイント上昇している。とりわけ、青年、女性では非正規労働者が5割を越え、非正規労働への固定化がすすんでいる。このような雇用状況の変化が、働いていながら生活保護基準を下回る収入で生活する「ワーキング・プア」問題や、格差と貧困の拡大・固定化の要因になっていることは、政府文書でも指摘されている。また、労働者全体の賃金水準低下と非正規労働者増との関係も明白になっている。

 さらに、『厚生労働白書』によれば、2004年度の労働者1人当たりの年間総実労働時間は約1808時間であり、この10年で約100時間短縮している。しかし、その原因は全労働者に占めるパートタイム労働者の割合の増加であり、1週間の就業時間が35時間未満の雇用者の割合が増えている。一方で、週60時間以上の雇用者の割合も男性を中心に増加し「労働時間の二極化」状況となっている。このような長時間労働が、成果主義賃金などの人事管理ともあいまって、職場のメンタルヘルス問題を深刻にしていることも見過ごせない。

 (3) パート労働や、派遣、請負などの間接雇用労働者の増加は、企業が社会保険料などの負担を避けるためにおこなっている場合が少なくない。非正規労働者労働者は、所得だけでなく社会保障の面でも国民年金や国民健康保険の水準に止めおかれ、格差を強いられる状況になっている。同時に、低賃金で働く非正規労働者の増加が、国民年金の保険料未納者増と比例していることに見られるように、社会保障制度の維持さえ困難にしてきている。
 賃金の引き下げ・抑制、正規雇用から非正規雇用への「切り替え」、正規労働者での成果主義賃金と長時間労働の押し付けと言う「3点セット」で、大企業は労働分配率を大幅に低下させている。ピーク時には60%近くあった大企業の労働分配率は、06年には40%近くにまで低下している。リストラに限界のある中小企業が、70%台半ばの労働分配率で推移してきたこととは対照的である。

 『日経新聞』11月6日付けでは、「上場企業・経常利益16%増」とする記事を掲載し、リストラと円安効果もあって、06年9月期決算でも大企業が高収益を上げていることを報道している。また、同新聞11月13日付けでは、05年上半期以降、海外投資による所得黒字が貿易黒字を上回っていることを報じている。大企業は、労働者や下請け企業に痛みを押し付けながら史上空前の利益をあげ続け、その利益を「投資」に振り向けると言う構図が極めて鮮明になってきている。
 07年春闘では、雇用、賃金、労働時間の改善を迫るたたかいを職場と地域双方で強め、大企業のぼろ儲けを社会的に還元させるたたかいに高めていくことが重要になっている。

 (4) 光洋シーリング・テクノや、松下プラズマなどでの偽装請負や違法派遣を告発も契機となり、マスコミがこの問題を大々的に取り上げる中で、厚生労働省は「偽装請負の是正指導強化」の通達を発出した。10月には派遣会社・コラボレートに対して、大阪労働局が、偽装請負を理由にした業務停止と改善命令を出している。
 また、請負元の企業の社員を請負企業に出向させていた松下プラズマディスプレイや、請負先の社員を出向の形で受け入れていた日野自動車の実態を、「偽装出向」で職安法違反に当たるとする指導を関係労働局がおこなった。

 さらに、11月には、日亜化学工業(徳島)がJMIUとの交渉で、請負労働者1600人の直接雇用について労使合意するという画期的な事例も生まれている。
 偽装請負などの違法な雇用関係やそれを糊塗するための「法の網のすり抜け」を許さず、直雇用や正規労働への転換を迫るたたかいが大きく前進してきている。
 また、全国の労働局がサービス残業として是正を指導した「未払い賃金額」は、232億円(1524社)と公表されている。

 このような到達点を教訓にすれば、大企業のぼろ儲けを社会的に還元させるとり組みの重要な柱として、偽装請負やサービス残業などの企業の違法行為を告発し、是正をせまるたたかいを組織する重要性が確認される。

 (5) 小泉内閣が押しすすめた「構造改革」で、最も強い「痛み」を強いられたのが年金生活者である。年金給付額の削減、介護保険料の引き上げと自己負担増、高齢者医療制度の改悪、そして年金控除や定率減税廃止などの税制改悪による負担増などによって、高齢者層には年間3970億円の負担増が押しつけられ、最低限の生活さえ脅かされる事態が政府によって作り出されている。ちなみに、02年度に導入された連結納税制度による大企業減税額は、05年度だけで約3700億円と推計されている。

 また、公共事業では02年から5年間で「15%のコスト削減」(名目対前年度比マイナス3%)のもとで労務費を中心に単価の大幅切り下げがすすめられ、談合摘発を口実に一般競争入札制度の強化をはかりダンピング競争を激化させ、下請単価の一方的切り下げ、賃金ダウンが建設労働者の生活を直撃する状況も生まれている。

 ピーク時から比べると100万社も減少し、廃業が開業を上回る状態が続く中小企業、生産費を大幅に下回るにも関わらず価格保障が全廃されようとしている農民、資源の枯渇が懸念される漁民など、労働者以外にも格差と貧困が広がっている。
 格差と貧困の是正を求めるたたかいの先頭に労働者が立ち、広範な国民共同のとり組みとして発展させる条件がさらに整っているといえる。

 (6) 労働法制だけでなく、会社法の「改正」など経済法制の規制緩和も急速に進み、株主の利益のために企業の合従連衡が頻繁にくり返される状況が強まり、そのことも労働者の雇用を不安定化させている。

 交通運輸・流通、通信、金融など先行した規制緩和の弊害が明らかになっているにもかかわらず、教育、医療、福祉などの公共サービス分野における営利企業の参入や医療での混合診療問題や農協のあり方問題など、規制改革の焦点が、最低生活保障や地域経済と密接にかかわる部分での規制改革を推しすすめようとする動きが強まっている。また、これまでの規制改革(緩和)によって、多くの規制が事後的になり、「駐車違反の取り締まり」などにも見られるような厳罰化を伴う対症療法的な対応が国民の安全・安心を損なう状況も生じている。

 さらに、指定管理者制度や市場化テストなど公共サービスの民間化など、市場原理の徹底と公共サービスの商品化も急速に進み、効率化を原因とする事故の発生なども安全・安心を脅かすものとなっている。
 行革推進法が成立し、規制緩和や公共サービスの民間化、公務リストラが加速する状況のもとで、それに反対する地域のたたかいを強めることも春闘の重要な課題である。

 (7) いじめを原因とする子供の自殺が社会問題化し、学力問題にも大きな関心が寄せられている。これらの問題の根底にある従来からの学歴社会、受験競争の問題に加え、弱肉強食の市場原理主義が強調され「自立した個」が強調されるという社会的背景がある。
 そのような状況にあるにもかかわらず、政府は、全国一斉学力テストの実施、学校選択制の拡大や週5日制の「見直し」、教育への営利企業参入、学童保育の有料化など、競争政策を強め、教育の市場化をすすめようとしている。そのことが、さらなる混乱を教育現場に生じさせる危険性は少なくない。教育問題が社会問題化している今こそ、子供の人格形成を中心においた教育の実現や教育予算の拡充を国に迫る地域からのとり組みが求められている。

 教育基本法改悪が強行され、改憲のための「国民投票法」の成立がもくろまれる状況下で、これに反対するたたかいが大きく前進してきている。教育基本法改悪に反対するたたかいは、労働組合の系列や枠組みを超えて広がり、国会を世論で包囲する状況をつくり出し、政府・与党をぎりぎりの局面にまで追い込んだ。
 また、教育基本法改悪反対のたたかいを通じて、「戦争をする国」への転換が、国民の思想・信条などの市民的自由を制約することと結びついていることが明らかになり、改憲反対のとり組みの前進にも影響した。この間、職場、地域の「9条の会」は、全国で6000に迫る勢いで結成され、11月3日を中心にとり組まれた「憲法60年」ともかかわる集会などに、多くの市民が駆けつける状況も生まれている。
 このような草の根からのとり組みの前進にも目を向けつつ、労働組合としての改憲反対のたたかいを前進させていく必要がある。

 (8) 「小泉『構造改革』を引き継ぐ」として誕生した安倍政権は、公共サービスの「商品化」や、労働者保護の規制緩和をさらにすすめ、企業の儲けの自由を拡大する「小さな政府」への「改革」や、日米軍事同盟の強化と、その障害となっているとの位置づけでの憲法「改正」をさらに突きすすめようとしている。
 5年以内の改憲を公言し、明文と解釈両面からの改憲によって、海外での武力行使と集団的自衛権の実施の合憲化や、教育改革も強調するなど、復古的な「小さくて戦争をする強い政府」作りを隠そうとしていない。

 07年4月には統一地方選挙が、7月には参議院選挙が予定されている。すでに述べた労働者や国民の「痛み」が、「構造改革」という政治によってもたらされていること、「構造改革」が労働者の切実な要求を実現していく上での障害になっていることなどに目を向け、政治革新をめざす労働組合のとり組みを強めていく必要がある。

 07年春闘では、安倍政権の政策と労働者の要求との矛盾や、労働者・国民いじめの実態を明らかにするとり組みを、要求闘争と一体ですすめる必要がある。

 (9) 経済財政諮問会議の民間議員でもある日本経団連・御手洗会長は、「偽装請負が起きるのは請負法制に問題がある」、「法人税の実行税率40%を30%に」になどと主張している。
 その主張をふまえる形で、経済財政諮問会議は10月以降、民間議員が提出した「創造と成長」にもとづく集中審議をすすめており、雇用の「弾力化」などを内容とする「労働ビッグバン」についても審議するとしている。また、自民党も雇用・生活調査会を立ち上げ、参議院選挙も念頭に、労働法制論議でのイニシアティブをとろうとしている。

 厚生労働省が労働契約法制、労働時間法制、パート労働法、最低賃金法などの「見直し」改悪論議を審議会ですすめているなか、改悪を加速させる意図は明らかである。
 また、生活扶助基準の引き下げや失業給付への国庫負担廃止の動きも強まっている。
 「再チャレンジ」を主張する安倍政権の本質は、労働者保護の制度と国による最低生活保障の制度の形骸化が同時にすすめられていることからも明らかである。
 経済財政諮問会議などの政策決定機関の動向を監視し、これへの対応を強めることが、春闘期にも必要である。

 (10) 連合は、労働者の強い要求を背景に、07年春闘でもベア要求(35歳標準労働者で1.6%の賃上げ)を呼びかけ、労働分配率の引き上げをもとめるとともに、長時間労働の是正を強める立場から残業割増率の引き上げをもとめることなどの「07年春季生活闘争基本構想」を12月7日の中央委員会で決定した。

 連合傘下のビッグユニオンでは、基幹労連が07年は賃金闘争をとり組まないこともあり、中小企業中心の闘いになること、引き続き「1000円〜2000円要求で調整中」とするトヨタ労連など自動車関連労組の動向とその影響が大きいものと考えられる。
 日本経団連が12月19日に明らかにした『2007年版経営労働政策委員会報告』では、「絶えざるイノベーション(革新)」での成長経済の継続を主張し、雇用・賃金・労働時間の「多様化」、個別化を強く主張し、その障害として労働法制の規制緩和の推進を政府に迫っている。また、国際競争力強化を口実に、法人税率引き下げを主張するなど、大企業の身勝手さを露呈させている。

 また、深刻化する格差問題についても、競争の結果の経済的格差を当然視し、非正規労働者の正規化については高いハードルを主張し、さらに国民に自立を求めるとして、公的社会保険制度の改悪も主張している。企業の社会的責任を省みず、大企業の儲けを一円でも多くの姿勢に貫かれた報告内容であり、身勝手さを隠そうともしていない。
 報告は、日本が世界的にトップクラスの賃金水準、高コスト体質であるとする破綻した論理をくり返し、格差と貧困の広がりや、偽装請負など大企業の違法行為の続発には口を閉ざし、07年春闘での「一律の賃金水準引き上げ」を真っ向から否定している。
 財界は、再開した企業献金もテコに、報告の具体化を政府に迫るのは明白であり、それだけに、これへの批判を強め、大企業の横暴を許さないたたかいは、07年春闘でも重要な課題となっている。



 2. 07年春闘をとり組む基本的な構え 


 (1) 07年春闘では、格差と貧困の拡大に苦しみ、不安を募らせている労働者の雇用、権利、くらしの擁護、改善のとり組みに力の結集をめざす。
 単産、地方の要求闘争とそれへの支援、共同行動をより前進させ、政府、自治体に対する共同のたたかいを前進させる。
 改憲策動反対のとり組みをすすめる。

 (2) 07年春闘は、統一地方選挙(4月)と参議院選挙(7月)という二大政治戦が予定され、その結果が要求実現ともかかわる。そのことから、
@ 「戦争をしない、参加しない日本」をつらぬくこと、
A 働くルールを確立し、格差と貧困の是正をはかること、
B 安全・安心な地域社会を実現すること

の3点を重視して、職場からの要求と運動の具体化をはかる。

 (3)  07年春闘のスローガンを「まもろう憲法・平和、なくそう格差と貧困、つくろう安全・安心な社会を」とし、職場と地域から仲間の力を結集し、たたかいを組織する。
 たたかいをすすめながら、職場と地域の労働者、労働組合に、参加、結集の呼びかけ、働きかけを強めるなど、春闘共闘委員会の影響を広げる。



 3. 07年春闘で重視する課題 


(1) これまでの「構造改革」によって、深刻となった労働者層での格差の是正と貧困の解消を求め、働くルールの整備、確立が、労働者の賃金改善や労働条件改善の要求前進に直接的に影響してきていることに目をむけ、この点での職場、地域のとり組みを従来以上に強める。
 偽装請負や違法派遣などの雇用破壊を告発し、労働者を使い捨てる企業追及と、安定した雇用確保のための施策実現、違法行為の規制強化をもとめる政府追及を強める。
これらのとり組みでの青年の自発的な運動への援助を強める。
 働くルールの整備を中心においた少子化対策の策定、具体化にむけた政府追及を強め、この点での個別企業ごとに労働協約締結などのとり組み強化を呼びかける。

(2) 「構造改革」の継続による格差と貧困の拡大を許さないとり組みを強める。
 労働条件の一方的な不利益変更を可能とする労働契約法制、ただ働き残業の「合法化」をねらう労働時間法制など、労働法制の改悪に反対する政府追及と国会行動を職場・地域から強める。
 このたたかいを前進させるためにも、長時間過密労働のもたらす職場と地域、家庭のゆがみの社会的告発(メンタルヘルス問題や、少子化、晩婚化問題、地域社会への影響など)と企業内での労働時間短縮運動を強化する。また、残業手当割増率の引き上げを求めるとり組みを強める。

(3) 積極的な賃金引き上げ要求の実現、最低賃金の底上げを求め、統一要求目標、統一行動を設定し、相互の支援行動も強め、力を結集して要求前進をめざす。
 全国一律最低賃金制度の確立、最低賃金制度改正を求めるとり組みをすすめる。
 均等待遇の実現につながる「パート労働法改正」の要求運動を展開する。
 全職場での賃金底上げ闘争を強化し、地域最低賃金や産業別最低賃金など現行制度での改善闘争を引き続き重視し、「最賃デー」などを設定した運動の強化をはかる。
 自治体や関連職場で働く労働者や、官公需契約での賃金・労働条件確保を求める公契約運動を地域における賃金底上げ闘争の位置づけで、その前進をめざす。
 史上空前の利益をあげながら賃金、雇用、労働時間の「破壊」攻撃を続ける大企業の社会的責任を追及するCSRのとり組みをすすめる。

(4) 地域間格差の是正や、地域経済の活性化、公共サービスの後退に反対する課題などをかかげ、地域での共同行動の前進をめざす。
 改悪された医療制度、介護保険と障害者自立支援法の実害を食いとめるとり組みや、地域医療を守る運動、保育の民営化反対のとり組み、国の責任による教育の整備・拡充を求めるとり組みなどの前進をめざす。
 生活保護基準の「見直し」など、国民にいじめの「構造改革」の強行、「骨太の方針2006」の具体化となる政府予算や法制度の改悪に反対し、政府追及、自治体要請、国会行動などをとり組む。

(5) 労働組合における憲法改悪に反対するとり組みの飛躍的な前進をめざす。
 職場「9条の会」などの促進、全自治体をカバーする「共同センター」の確立、改憲反対署名の国民過半数の達成を追求する。
 国民投票法案など改憲につながる法案や、米軍基地再編にかかわる法案等の整備やイラク特措法「見直し」など、解釈改憲の拡大となる動きに反対する国会闘争を国民諸階層と共同してとり組む。



 4 国民春闘共闘委員会としての重点課題ととり組み 


(1) 格差と貧困の是正、働くルールの確立、雇用確保を求め、とり組みを強める

 1) 非正規雇用の増加、所得格差の拡大、ワーキング・プアの発生、長時間過密労働の一層の深刻化、成果主義賃金などによる人事管理の強化などによるメンタル問題など、人間らしく働き続けるためのルールが壊れ、社会問題化している。
 このような時に政府は、労働条件の不利益変更を就業規則改訂で行うなど労使関係の個別化を促進する労働契約法制、労働時間管理の規制を緩和するなどの労働時間法制をねらうとともに、地域最低賃金への地域の生計費反映などの基準見直しにとどめる最低賃金法、限定した範囲でのパート労働者と正規労働者の「均衡待遇」などの不十分な内容での「パート労働法改正」の法案提出を狙っている。また、直接雇用の申し込み義務を「免除」する労働者派遣法の改悪など、雇用の弾力化を促進する「労働ビッグバン」を参議院選挙にむけた目玉にしようとする動きも強まっている。

 2) これらのことから、次のようなとり組みを行う。
 第1に、「安心できる雇用と賃金を!」運動(全国各地での集会などの開催と中央行動、各種媒体を活用した宣伝などを中心としたとり組み)を展開する。
 職業訓練の充実や失業給付の改善、請負、派遣などの間接雇用労働者の縮小、労働条件確保の要求をもとにした政府・自治体要請や交渉を強化する。 
 安易な間接雇用への切り替えに反対し、社会保険への加入をはじめとする使用者責任の履行を求め、経営者団体・企業などへの要請行動を強める。
 正規労働者(期間の定めのない労働者)による必要な人員配置を求める社会的なアピール運動の具体化を検討する。
 格差と貧困の是正を求め、政府等に実現を迫るデモンストレーションの行動を国民各層にも呼びかけ、3月6日の一日行動としてとり組むことで準備をすすめる。

 3) 第2に、労働法制改悪に反対し、働くルールの確立を求めてとり組む。
 署名行動(国会請願署名)を軸に、あらゆる傾向の労働組合、団体への申し入れ行動を組織し、世論の結集をはかる。署名は、働くルールの確立を総合的に求め、制度改善を迫る国会請願署名とし、100万筆以上の集約を目標にすすめる。
 労働法制改悪法案の取りまとめに反対し、政府追及をつよめる。春闘決起集会(1月29日)の中心的課題に位置づけ、国会段階に向けてのたたかいの意思統一を行う。
 集約した国会請願署名なども活用し、数次の国会行動などを配置する。
 労働法制改悪をめぐる重要な国会審議の段階には、ストライキを含む職場からの最大限のたたかい組織をめざす。
 均等待遇を実現する「パート労働法」の改正を求めるとり組み(集会、署名、交渉、要請行動など)をすすめる。
 労働時間の短縮やメンタルヘルス対策の充実などを求め、職場と地域のとり組みを強める。サービス残業や労働基準法違反を告発する社会的な運動を強めるため、職場と地域での宣伝行動などを強める。「残業割増率」の引き上げを求める職場のとり組み強化を呼びかけるとともに、法制度改善の運動をすすめる。

 4) 第3に、男女雇用機会均等法の積極部分の職場への定着、希望者全員の高齢者継続雇用の実現、次世代育成支援策の改善、定着、300人以下の中小企業での策定、短時間勤務制度や育児休業制度の拡充、育児にかかる公的支援制度の拡充などを求め、政府、自治体、経営団体への要請行動などを具体化する。各企業での実施状況の実態調査などを検討する。
 労働災害の根絶、じん肺、アスベスト被害の国と企業の責任での解決などを求めるとり組みを支援する。

 5) 第4に、公務員労働者の労働基本権回復をめざすとり組みを強化する。政府宛の「回復要請書」(団体要請書)など、職場からのとり組みを具体化し、政府・専門調査会での論議促進を求める。
 国鉄闘争、NTT闘争、東京海上日動争議をはじめ、全ての争議の勝利解決をめざし、とり組みを強化する。
 労働委員会労働者委員の公正任命を求め、たたかいを全国的に展開する。
 社会保険庁「改革」にともなう雇用破壊に反対するたたかいを支援する。


(2) 賃金改善、全国一律最低賃金制度の実現を求め、

                    「社会的にアピールする春闘」を展開する

 1) 利益をためこみ、社会的還元に背を向ける大企業の社会的責任を追及し、労働分配率の改善、下請け単価の引き上げなどの必要性を主張する社会的運動強化をよびかける。
 また、職場のすべての労働者を視野においた賃金闘争を展開し、格差の是正を労使関係の場でも追求することをよびかける。

 2) それらのことから、次のようなとり組みを行う。
 第1に、「旧8者懇」企業などに対する要請行動や内部留保を告発するとり組み(企業通信簿、Vマップ運動など)を行う。とりわけ、春闘相場の形成に大きな影響を持つとともに、下請けいじめや偽装請負などの違法行為をくり返しながら膨大な利益をため込み続けているトヨタに焦点をあて、全国的な「トヨタ行動」(集会、宣伝、関連企業要請行動など)を2月12日中心に全国での具体化をよびかける。
 企業の社会的責任を問い、告発する「CSR運動」の継続、発展をめざす。

 3) 第2に、ベア要求を掲げた積極的な賃金引き上げのたたかいをよびかける。
 要求アンケートにもとづく単産、単組のベア要求の確立と要求提出、ストライキを構えた要求実現のとり組み、相互のたたかい支援の強化をよびかける。
 統一行動日(要求提出・2月12日の週〜2月末日、回答日・3月14日、回答促進・4月下旬のゾーン)を設定し、集中したとり組みをよびかける。
 春闘共闘として「誰でも月額10,000円以上、時間給100円以上」の賃金改善(底上げ)要求を確認し、その実現にむけたたたかいへの参加を広くよびかける。
 短期の評価(成果)を賃金に反映させる成果主義賃金の導入を阻止するとともに、修正・撤回をもとめ、成果主義賃金の弊害を告発する職場・地域のとり組みを組織する。
 財政事情などを口実とした公務員賃金の一方的な引き下げや、地域間格差の拡大、公務員賃金への成果主義導入などに反対するとり組みと、その支援を強める。

 4) 第3に、全国一律最低賃金制度の確立を含む実効ある最低賃金法の改正を求め、産業別最低賃金制度の廃止に反対して政府追及を強める。地域、産別最低賃金の大幅引き上げを求め、社会的にアピールするとり組みや政府交渉などをすすめる。
 「月額15万円、日額7400円、時給1000円以下の労働者をなくそう」の要求を確認し、その実現を社会的にアピールするとり組み(署名、統一行動日を設定した宣伝行動、労働組合・団体要請行動など)をすすめる。
 企業内最低賃金協定の改善、実現のとり組みを強化する。
 実効ある「パート労働法の改正」など、非正規労働者の均等待遇を求める運動をすすめる。
 自治体の非正規労働者の賃金単価調査や改善を求める要請行動の具体化をよびかける。


(3) 安全・安心な地域社会の実現を求める運動を強める

 1)  地域経済の疲弊が深刻になると同時に、政府の施策が「地方自治体の自律」を迫り、国の責任を転嫁するものに変わってきている。
 このようななかで、地方自治体の中にも、効率化のみを追求する「自治体経営」の姿勢を強めるところが増え、教育、医療、福祉の民間化が加速している。また、市場化テストなどの民間化手法を積極的に導入し、あるいは「公共サービス制限条例」などを制定する動きも出はじめている。
 労働者の生活の場である地域で、最低生活を支える社会的基盤が壊されてきている。

 2) これらのことから、安全・安心の地域を求める共同のとり組みへの積極的な結集を広く呼びかけ、春闘期における地域総行動を展開する。
 第1に、公契約運動を地域からさらに前進させる。
 官公需や委託契約における適正単価の確保を含む公契約条例の制定を求めるとり組みを前進させる。

 3) 第2に、行政機関や医療機関の統廃合反対や、医師・看護師確保も含めた「地域医療守れ」のとり組み強化をよびかける。
 指定管理者制度や「市場化テスト」の強行、教育、医療、福祉の「民営化」や統廃合などによるサービス低下に反対するとともに、「まちづくり条例」制定運動、大企業優遇の官公需・公共事業の見直し、地域での雇用確保などを求めるとり組みを強める。

 4) 以上を課題とする自治体要請行動などを具体的なとり組みとする地域総行動を2月21日〜23日のゾーンで展開する。
 郵政公社の集配局統合・廃止に反対し、郵政事業のユニバーサルサービスの維持・確保を求めるとり組みを継続する。


(4) 社会保障の連続改悪、消費税率引き上げに反対し、

                 国民負担の軽減を求める国民共同にとり組む

 1) 政府が06年7月に決定している「骨太の方針2006」では、2011年度までに11兆4000億円〜14兆3000億円の歳出削減、4兆1000億円〜2兆2000億円規模の歳入改革(増税)をおこなうことを決定している。この内、歳出削減の内容は、社会保障費の抑制(1.6兆円程度)、人件費削減(2.6兆円程度)、公共事業費(5.6兆円〜3.9兆円程度)などとされている。
 歳入・歳出改革の初年度となる2007年度では、社会保障費の「自然増」7700億円を生活保護基準の見直し、雇用保険への国庫負担金の削減で2200億円圧縮、国家公務員純減(5年間・5.7%)、地方公務員の純減(国家公務員と同程度)の「着実」な実施と、そのための「市場化テスト」などの「合理化」徹底、公共事業費の3%削減などを行うこととされている。一方で、06年度予算比で1.5%増の4兆9000億円程度を要求した防衛費や、東京都のオリンピック誘致ともかかわる首都圏環状道路などの整備費の21%増(06年度予算比)にも見られる大型開発温存の公共事業費などを「聖域化」した07年度予算案が編成されている。
 また、歳入にかかわっても、07年1月から、定率減税を廃止しながら、企業の設備投資減税を拡大する法人税減税を行うことも決定している。

 2) このことから、政府がすすめる社会保障の「一体的改革」や「骨太の方針2006」の具体化に反対する運動を前進させる。
 第1に、生活保護基準の改悪に反対するたたかいと、高齢者、障害者などに相対的な負担増が押しつけられたこの間の社会保障、税制改悪の矛盾を告発するとり組みを一体的に展開する。
 消費税率引き上げ反対のたたかいを継続する。同時に、大企業・大金持ちに税金の「応能負担」(累進税率の確立、租税特別措置法の改正、総合課税など)を求め、この間の税制度「改革」が大企業優遇であることを告発する宣伝行動などを行う。また、住民税の引き上げが、国民健康保険料などの負担増にも直結していることも重視した宣伝行動や、負担減を求める対自治体要請行動などを強める。
 3月13日の重税反対行動などにとり組む。

 3) 第2に、非正規労働者の急増なども背景とする公的年金制度の空洞化を食いとめるためにも、早期の最低保障年金制度確立を求める政府追及などのとり組みを強める。低位平準化を目的とする被用者年金制度の一元化には反対し、高齢期の生活を保障する公的年金制度の確立を求めて政府交渉、国会行動などにとり組む。年金給付引き下げに反対するとり組みを支援する。


(5) 憲法改悪を阻止し、平和を守るたたかいを旺盛に展開する

 職場「9条の会」の結成を促進する。
 2007年5月3日を中心に「憲法60年・全国行動(仮称)」として、宣伝、集会、パフォーマンス、意見広告など多様なとり組みを具体化するようよびかける。
 改憲につながるあらゆる法案の成立に反対する国会行動などを強める。
 在日米軍基地と自衛隊の再編・強化に反対し、全国的な運動をすすめる。全国的な基地行動の具体化を検討する。



以上




 
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