2006国民春闘共闘情報
全労連HP

第 40 号  2006年08月08日

 

官民比較の改悪で「ベアゼロ」を勧告

 06人勧  比較対象を「50人以上」に引下げる

公務各単産、怒りの抗議声明

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 人事院は8日、国家公務員の2006年度給与等の改定について、(1) 官民給与比較方法を従来の「100人以上」から「50人以上」に引き下げたうえで、給与水準がほぼ均衡しているとして、月例給、ボーナスとも据え置く、(2) 少子化対策として、3人目以降の扶養手当改善、育児のための短時間勤務制度を新設するという勧告・報告を行いました。
 官民給与の比較方法の改悪によって、「官民格差は18円、0.00%(現行38万1212円、平均年齢40.4歳)で、月例給の改定を見送る」「ボーナスは公務の支給月数(4.45月)とおおむね均衡している」としています。
 しかし、従来の「100人以上」との比較なら1.12%(月例給4252円)、ボーナス0.05月の改善が可能でした。こうした傾向が予測されたもとで、関係労働組合との十分な話し合いもなく、合意もないままに「不利益変更」を一方的に押し付けたものであり、公務労働者の権利を侵害する不当な措置です。


不公正取引や、労基法違反の企業との比較は不当

 今回の勧告の最大の問題は、人事院が政府の『骨太方針』で示された「小さな政府」にむけた総額人件費削減に迎合し、そのために「官民給与の比較方法のあり方に関する研究会」をつくり、研究会を隠れ蓑にしながら、事実上の「賃下げ」を強行したことです。これは、労働基本権制約の「代償機関」としての役割と責任を放棄したものです。
 この間、公務労組連絡会は、公務・民間労組の共同を重視し、「人勧・最賃」の改善、引上げを求める中央行動などを取りくみ、のべ6000人が結集して人事院への要請行動を展開してきました。全労連や民間単産も人事院要請を行い、50〜100人未満の企業では、資金繰りが苦しいこと、不公正な下請取引の犠牲になっていること、中途採用の比率が高いこと、残業代の不払いなどの労基法違反が多いことなどをあげて、「公務との比較に馴染まない」と強く要請してきました。




 

 

2006年人事院勧告にあたっての幹事会声明

2006年8月08日・公務労組連絡会幹事会

1、人事院は本日、一般職国家公務員の給与改定などにかかわって、官民の給与がほぼ均衡しているとして、月例給・特別給ともに据え置く勧告をおこなった。また、少子化対策が急務となっているなかで、3人目以降の子等の扶養手当改善や、育児支援のための短時間勤務制度の新設なども示された。
 06春闘では、景気の回復基調のもとで、自動車・電機など大企業各社の5年ぶりのベースアップや冬・夏のボーナス改善など賃上げにむけた明るい兆しが見え始めていた。また、「給与構造の見直し」による賃金水準の引き下げに加え、定率減税の縮小・廃止や社会保障制度の連続改悪のもとで、公務労働者の生活改善にむけた積極的な賃金改善こそ求められていた。
 しかし、人事院は、従来の「企業規模100人以上」ならば月例給で「1.12%、4,252円」、特別給で0.05月プラスの官民較差があったものを、比較対象を「50人以上」にまで引き下げることで、ベースアップにむけた仲間たちの切実な願いを打ち砕いた。人事院によって意図的に作り出された「ベアゼロ勧告」に、怒りを持って抗議するものである。

2、とりわけ、労働組合との十分な話し合いもないままに、「官民比較方法の見直し」を強行したことは、断じて認められない。
 今回の「見直し」は、二重にも三重にも問題を持っていた。その一つは、人事院が、みずからの説明責任を果たさず、「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」(以下、研究会)を隠れ蓑にしてきたことである。研究会の最終報告では、公務にふさわしい給与の在り方、人材確保などの視点はいっさい見あたらず、まさに「賃下げ」という結論を導き出すためにつくられた研究会であった。その報告を金科玉条にして、40年以上続いてきた現行方式を変更する合理的な理由が何ら示されることなく、比較企業規模引き下げが強行された。
 さらに、64年の池田首相・太田総評議長による政労トップ会談を通して、現行の「企業規模100人以上」とする比較方法への改善がはかられた経緯からすれば、不利益変更は「政労交渉」によって決着されるべきほどの重みを持った問題であり、公務労組連絡会も繰り返しそのことを要求してきた。しかし、そうした努力は、最後までおこなわれることはなかった。
 これらは、将来にわたって重大な問題を残すものである。公務労組連絡会は不当な勧告の実施を許さず、使用者・政府に対して、「100人以上」の比較にもとづく賃金改善を要求してたたかうものである。

3、比較企業規模の見直しは、「骨太の方針」で示された政府の要請でもあった。人事院は、「小さな政府」をめざす政府方針に全面的に迎合し、従来のような配分の見直しにとどまらず、比較方法そのものの変更による総額人件費削減の方向へと踏み出した。「構造改革」の推進に手を貸し、政府の圧力に屈した人事院には、労働基本権制約の「代償機関」としての役割と責任を果たそうとする姿勢はどこにも見られない。

4、今後、「骨太の方針」や「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」報告ともかかわって、勧告は、地方公務員や教員給与の引き下げにむけた動きを加速させ、さらには、民間賃金にも悪影響をおよぼし、「賃下げの悪循環」に拍車をかけることとなる。
 そのことから、公務労組連絡会は、夏季闘争では、公務・民間の共同を最大限に重視するもと、「人勧・最賃」を一体にした中央行動では官民あわせて総計6千人が結集し、地方でも、官民共同の集会・デモ、人事院包囲行動がたたかわれた。また、民間労組にも呼びかけた「給与改善署名」は、21万筆を超えて集約された。加えて最終盤では、人事院前の座り込み行動でたたかいぬいた。あらためて、職場・地域から結集された仲間のみなさんの奮闘に心より敬意を表するものである。

5、労働組合の納得と合意もなく比較方法見直しが強行されたことで、あらためて、公務員労働者の労働基本権回復が重要課題となっている点が指摘できる。政府は、労働基本権にかかわる専門調査会を立ち上げ、検討を開始した。政府に対して、公務員労働者の権利の全面的な回復を強く求めるものである。
 来るべき秋季年末闘争では、公務労働者の権利も踏みにじる不当な勧告をはね返すたたかい、地方公務員、教職員、独立行政法人職員などすべての公務・公共業務関連労働者への賃下げの連動を許さないたたかいに、中央・地方が一体となって奮闘していくことが求められている。
 さらに、秋の臨時国会では、教育基本法改悪法案、国民投票法案などの審議がねらわれるもとで、国民共同のたたかいで悪法を粉砕するため全力をあげる必要がある。
 公務労組連絡会は、国民・住民のいのちと暮らしを守り、憲法を守る使命を持つ公務労働者として、賃金・労働条件を改善するたたかいと結合させ、憲法・教育基本法の擁護、国民犠牲の「構造改革」阻止へ組織の総力をあげて奮闘する決意である。

 (以 上)  





 2006年勧告の主な内容

◎ 本年の給与勧告のポイント
〜月例給、ボーナスともに本年は水準改定なし
給与構造の抜本的な改革を実施(1957年以来約50年ぶりの改革)
(1) 官民給与の較差(0、00%)が極めて小さく、月例給の水準改定を見送り
  − 俸給月額の引下げ、配偶者に係る扶養手当の引下げ
(2) 期末・勤勉手当(ボーナス)は民間の支給割合とおおむね均衡し、改定なし
(3) 比較対象企業規模など官民給与の比較方法の見直し
(4) 給与構造の改革の計画的な実施
  一広域異動手当の新設、俸給の特別調整額の定額化等

◎ 本年の給与改定

1 比較方法の見直し(月例給)
 (1) 比較対象企業規模 従来の「100人以上」から「50人以上」に変更企業規模50人以上100人未満の企業の各役職段階との対応関係の設定
 (2) 比較対象従業員 ライン職の民間役職者の要件を変更 要件変更後のライン職の役職者と同等と認められるライン職の役職者及びスタッフ職に拡大
 (3)  給与構造の改革による俸給表の職務の級の新設・統合に伴う対応関係の整理
2 官民給与の比較
 約10,200民間事業所の約43万人の個人別給与を実地調査(完了率"89.1%)
〈月例給〉 官民の4月分給与を調査し、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴、勤務地域の同じ者同士を比較
官民較差 18円 0.00%〔行政職(一)…現行給与381,212円 平均年齢40.4歳〕
 ※官民較差が極めて小さく、適切な俸給表改定が困難であること、諸手当についても民間の支給状況とおおむね均衡していること等を勘案して、本年は月例給の水準改定を見送り
〈ボーナス〉 比較対象企業規模の見直しを行った上で、昨年冬と本年夏の1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
民間の支給割合 公務の支給月数(4.45月)とおおむね均衡
〈その他の課題〉
 (1) 特殊勤務手当の見直し 引き続き手当ごとの業務の実態等を精査して所要の見直しを検討
 (2) 独立行政法人等の給与水準 専門機関として、独立行政法人等における給与水準の在り方等の検討において今後とも適切な協力



 

◎ 給与構造の改革

 昨年の勧告時において表明。地域間給与配分の見直し、職務・職責に応じた俸給構造への転換、勤務実績の給与への反映の推進などを柱とする俸給制度、諸手当制度全般にわたる改革を平成18年度以降平成22年度までに逐次実施

1 平成19年度において実施する事項

(1) 地域手当の支給割合の改定
 地域手当は、平成22年度までの間に計画的に改定することとしており、職員の地域別在職状況等を考慮し、平成19年4月1日から平成20年3月31日までの間の暫定的な支給割合を1〜3%引上げ
(2) 広域異動手当の新設
 広域的に転勤のある民間企業の賃金水準が地域の平均的な民間企業の賃金水準よりも高いことを考慮し、広域異動を行った職員に対して手当を新設
 ・異動前後の官署間の距離及び異動前の住居から異動直後の官署までの距離のいずれもが60q以上となる職員(異動の態様等からみて・広域異動手当を支給することが適当でないと認められる職員を除く。)に支給
 ・手当額は、俸給、俸給の特別調整額及び扶養手当の月額の合計額に、異動前後の官署間の距離が、60q以上300q未満の場合には3%(平成19年度は2%)、300km以上の場合には6%(平成19年度は4%)を乗じて得た額。異動の日から3年間支給
 ・地域手当、研究員調整手当、特地勤務手当に準ずる手当と所要の調整
 ・諸手当(超過勤務手当、期末・勤勉手当等)の算定基礎に
 ・平成19年4月1日から実施
(3) 俸給の特別調整額の定額化
 年功的な給与処遇を改め、管理職員の職務・職責を端的に反映できるよう、定率制から俸給表別・職務の級別・特別調整額の区分別の定額制に移行。地方機関の管理職に適用される三種〜五種の手当額については、改善を行った上で定額化。平成19年4月1日から実施
(4) 勤務実績の給与への反映
 新たな昇給制度及び勤勉手当制度における勤務成績の判定に係る改善措置等の活用について、管理職層以外の職員についても平成19年度からの実施に向けて準備
(5) 専門スタッフ職俸給表の検討
 専門スタッフ職俸給表の新設は、各府省において検討が進められている複線型人事管理の具体的内容等を踏まえ、引き続きその具体化について検討


2 その他の改革

 少子化対策が我が国全体で取り組まれている中で、扶養手当における3人目以降の子と2人目までの子の手当額の差を改める必要があることから、平成!9年4月1日から3人目以降の子等の支給月額"を1,000円引上げ(5,000円→6,000円)、給与構造の改革とあわせて"実施


 
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