国民春闘共闘2005年春闘方針

 

―春闘で明日を変える 未来を拓く―

2005年国民春闘方針

2005年1月13日

国民春闘共闘委員会 第1回単産・地方代表者会議

 T 春闘50年―国民春闘の発展めざして


1.「春闘50年」のあゆみ

 春闘は、日本の「高度成長」がはじまった1955年に8単産共闘会議(炭労、合化、私鉄、電産、紙パ、全国金属、化学同盟、電機労連)方式によってはじまり、企業内主義的な弱点をもつ日本の労働組合が、春の時期にいっせいに賃上げ要求を提出し、全国統一闘争によって社会的相場を形成し、賃金の社会的水準をかちとる労働組合の統一闘争として、大きな役割を果たしてきました。
 しかし、74年の日経連「大幅賃上げの行方研究委員会」の発足や75年の「賃金ガイドライン」の設定を機に本格的な賃上げ抑制攻撃が強まり、「八社懇」によるJC回答方式など労資一体による「管理春闘」が定着化、低賃金決定パターンが押しつけられるようになりました。
 また、95年の「新日本的経営」方針は企業の利益を最優先し、雇用・賃金システムの転換(労働力の流動化、業績・成績主義賃金の導入等)を強行、春闘変質攻撃の強まりによって毎年史上最低の賃上げを更新してきています。


2.「国民春闘」発展への大きな流れー春闘共闘の結成

 80年代における労働戦線再編の動きとあいまって、賃金自粛路線が強まり、労働者の切実な要求が一層増すなかで「まともな春闘をわれわれの手で」「たたかう春闘」をスローガンに85年以降、統一労組懇や総評左派組合を中心に国民春闘再構築という流れが全国に広がりました。こうしたなか、89年1月に幅広い労働組合が結集して37単産による「89春闘共同行動実行委員会」=「春闘1日共闘」が実現。この「春闘1日共闘」は、90年には全労連単産や春闘懇(当時)、純中立労組懇が参加して「90国民春闘共闘委員会」を結成し、新たな国民春闘の発展をめざして運動を進めてきました。
 90年結成による国民春闘共闘委員会の15年のたたかいは、国民春闘の前進にむけて少なからず貢献し、その存在と役割を果たしてきました。

 第一に、賃上げ抑制攻撃に反対し、生活と労働に根ざした積極的賃上げ要求を掲げて大企業をふくむ多くの労働者を激励する役割を果たしてきました。
 第二に、賃金底上げや均等待遇、最賃改善など労働者共通の課題による統一的闘争を前進させてきました。
 第三には、大企業や政府によるリストラ「合理化」や労働諸法制改悪に反対し、サービス残業根絶にむけて人間らしく生き、働くための雇用・働くルールづくりにむけたとりくみと社会的世論をはかってきました。
 また第四には、不況打開、地域経済の活性化にむけて自治体や中小業者とも連帯し、国民諸階層が連帯・共同した共同行動を追求してきました。とくに、93年の不況打開にむけた中央・地方での中小業者との共同行動をはじめ03年の健保改悪反対スト、04年の年金ストなど国民共通課題で100万人規模の統一ストライキをたたかうなど国民春闘の前進をかちとってきました。また地域春闘の発展・強化も同時に追求してきました。
 第五には、職場から地域にうってでて国民の目に見える春闘を地域からひろげてきた地域春闘の積極的役割がありました。そして地域春闘が多様な要求を結集し、街づくりにも貢献して地域住民の労働組合に対する期待に応えてきたことです。
 春闘共闘15年のたたかいは春闘の積極的伝統を引き継ぎつつ、幅広い労働者、労働組合を結集し国民的共同を追求するなど新たな国民春闘の発展をめざす15年でありました。

 一方、95年の日経連(当時)による「新日本的経営」方針による賃金・雇用システムの転換による春闘変質攻撃の強まりは「春闘」そのものの形骸化を招きました。また政府・財界による労働分野における規制緩和策の推進は、雇用労働者の30%を超える不安定雇用労働者の増大、派遣・請負労働者の採用など雇用・労働条件の激変を生み出し、職場の変化に十分対応できない企業内労働組合の弱点を露呈しました。
 またリストラ「合理化」攻撃や交替制勤務、賃下げ、業績・成績主義賃金の導入は、職場における労働組合の弱体化、組合への結集度の希薄さを増大させ、要求提出やスト権確立など「力の集中度」を弱めるものとなっています。いま、職場の実態や労働者の意識・要求に根ざした要求づくりや組合活動、春闘の進め方、学習・教育を通じた後継者育成が強く求められています。


3.春闘共闘発足の原点に立った05春闘を

 政府・財界による全面的な賃金破壊や雇用・働くルール・福祉・平和の破壊のなかで、05春闘は、労働組合の「企業内主義」を克服し、労働者をはじめ中小企業・業者、農民、市民などあらゆる国民とともに春闘をたたかい、反転攻勢にうってでるチャンスを迎えています。
 すでに、小泉「構造改革」路線に立ち向かう労働者・国民の反撃が開始され、共同が広がっています。それは、
1) 労働者、市民、女性団体、NPOなどが一体となったイラク戦争反対、自衛隊の海外派兵反対での共同、
2) 「解雇権濫用は無効」とさせた解雇自由ルールなど労働法制の改悪をストップさせた共同の力、
3) 04人勧で月例給のマイナス勧告を阻止し、地域別最賃で44都道府県で引き上げ改定を勝ちとった共同の力、
4) この3年間で2,201企業から427億円のサービス残業代を支払わせた共同の力、
5) 年金・社会保障改革の破綻、財政再建の破綻、大増税など小泉「構造改革」に対する国民の怒りと共同、
6) 自治体、中小企業家・業者、農民などくらしと地域経済を守る共同、
7) 国鉄・NTT闘争や公務員制度改悪反対闘争でのILO勧告による国際的な支持
など、運動のあらたな前進がつくられてきています。

 「たかが選手(労働者)が」発言に怒り、球団合併(リストラ)反対、プロ野球の発展を求める選手会のたたかいは労働組合の存在と運動に社会の注目と関心を集めました。多くの国民のなかに「労働組合」、「ストライキ」ということがこれほど身近に受け止められた機会があったでしょうか。今回のプロ野球選手会のたたかいとそれに対する多くの国民の支持・共感する姿は、あるべき労働組合のスタンスと閉塞社会に息する国民の意識、「社会不条理」に対する怒りとたたかうエネルギーの顕在化を垣間見るものとなりました。
 一方で、12月14日に発表された日本経団連「05年版経営労働政策委員会報告」は、大企業が史上最高の利益をあげているもとで、労働者の声を無視できず「働く人の努力に対して積極的に報いる必要がある」とする一方で、「ベア交渉は役割を終えた、春闘は『春討』とすべし」と春闘の変質・解体攻撃を繰り返しています。更に重大なのは、労働法制の更なる規制緩和を主張し、消費税の大増税を公言する身勝手・傲慢な姿勢をうちだしています。
 05春闘は、こうした大企業の横暴をゆるさず、小泉内閣による憲法改悪、労働者犠牲の悪政と正面から対決して労働者・国民の生活と権利、平和を守り発展させなければなりません。
 春闘共闘は、いまこそ結成の原点に立ち、
1) 職場の実態やとりくみについての交流と激励をすべての労働組合を対象に行なう、
2) すべての労働者を視野に生活と労働の実態に根ざした要求づくり、
3) 「一致する要求」に基づき、その実現にむけた「力の集中」と共同行動、
4) 国民の諸要求を総結集し、支持・共感される「国民春闘」の追求
などについて、05春闘を新たな高揚・前進を創り出すことが求められています。
 春闘共闘は50年目の春闘にあたり、「21世紀の新たな国民春闘の前進」にむけ、職場・地域をはじめ地方、中央での幅広い労働者、労働組合との「対話・共同」、新たな総結集をよびかるものです。


 U 05国民春闘での重点課題


 国民春闘共闘は、戦後60年、春闘発足50年の節目の05春闘を闘うにあたり、戦後の労働運動が、国民主権、平和主義、基本的人権の保障など、人間らしく生き働く権利を保障した日本国憲法をよりどころとして、さまざまな要求を前進させてきたことを再確認し、憲法改悪阻止・憲法を職場と社会の隅々に生かす運動を、すべての闘争課題を貫く柱と位置づけて取組みます。


(T).賃下げを許さず、すべての組合で賃上げの実現を

1.大企業の社会的責任追及と職場の賃金闘争

 大企業はV字型の利益回復を謳歌し、トヨタ自動車は年間1兆1620億円、1日32億円もの利益をあげ、他の上場企業も連結決算、純粋持株会社のもとで軒並みITバブル期を抜いて過去最高の利益を更新しています。その背景に労働者の賃下げ、リストラ・人減らしがあることは明白です。国民春闘共闘は、膨大な大企業内部留保の社会的還元を求める運動を引き続き展開し、社会的な賃金闘争を闘います。

 同時に05春闘では賃下げ攻撃に歯止めをかけ、反転攻勢に転ずる賃金闘争を重視し、定昇廃止、賃金体系改悪などの賃下げ攻撃に対しては、単産、地方組織の支援を強め断固として跳ね返します。職場・地域から生活と労働の実態にもとづく切実な要求を練りあげ、要求の実現をめざします。すべての組合が統一要求基準として「誰でも10、000円以上、時間給50円以上」の賃金引上げ、「月額15万円、日額7400円、時間給1000円」以上の最低賃金を要求して闘います。
 非正規労働者をふくむ職場の全労働者を対象とした賃金引上げ、均等待遇実現の要求をかかげ、具体的な前進をはかります。


2.最低賃金闘争、均等待遇、公契約運動の強化

 すべての職場・組合で「時間額」「日額」「月額」による企業内最賃協定の締結・改善を追求します。同時に、地域最低賃金の引き上げをめざし、都道府県ごとの目標を設定して「1,000人の最賃体験運動」(04年29県500人)「1,000自治体意見書」(04年194自治体)に取組みます。
 全国一律最賃制の確立に向けた「最賃要求大綱」にもとづく学習と討議、署名運動などを展開します。下請単価保障、農産物の最低価格保障、最低保障年金制度の確立など全国民の最低生活保障を求める運動との結合を重視し、中央・地方に共同の運動を推進する体制の確立を追求します。

 パートなど非正規労働者は、賃金、一時金、退職金、昇給・昇格、福利厚生などにおいて著しい差別的取り扱いを受けています。均等待遇にむけ、
1) 職場のパート時給の引き上げ、
2) 未組織事業所への要請訪問、
3) 自治体決議・意見書採択、
4) 差別禁止のパート労働法の制定を求める署名の推進、ILO条約の批准、
5) 大規模なパート労働者中央行動
などに取組みます。すべての都道府県でパート臨時労組連絡会の確立をめざします。

 自治体に対して、契約業者や下請け業者に適正賃金確保の義務づける「公契約」の運動を全国各地から取組みます。
1) 議会・自治体における意見書採択と行政指導強化を求める自治体と議員要請、自治体交渉、
2) 労務単価の透明化をめざす調査活動、
3) 官公需や業務委託で適正賃金を確保させる「条例化」運動、
4) 運動推進にむけた「懇談会」づくり、学習会・シンポジウム
などの運動を推進します。


3.公務員賃金闘争と成果・業績賃金との闘い

 政府や財界は、労働者全体への賃下げ攻撃のテコとして、公務員賃金について定期昇給廃止・査定昇給の導入、ブロック別格差賃金の導入、国家公務員賃金の見直しと地場の中小零細企業水準に連動させる地方公務員給与「適正化」など、あいつぐ攻撃をしかけてきています。これらの改悪攻撃に反対するとともに、「最低賃金」「賃金底上げ」「パート均等待遇」「公契約」を官民・地方共同の通年闘争として前進させるものです。  成果・業績主義賃金が導入されている職場では、集団的な人間関係や業務の連携が弱まり、企業の健全な発展を阻害する問題点が明らかになっています。職場の全構成員とともに、「労働者の生活や業務・経営にどんな影響を及ぼすのか」を徹底して討議し、成果・業績主義賃金の導入・拡大をはねかえします。すでに導入されている職場では恣意的・一方的査定を許さず、公開、労使協議制度を求めます。


(U).まともな雇用と働くルールの確立、企業の社会的責任の確立

1.企業の社会的責任(CSR)を明確にする運動

 三菱自動車、東京電力、西武・コクド、野村証券など、大企業のモラルハザードや男女差別が国際的にも批判され、労働者・国民の大企業の社会的責任を求める運動とあいまって、政府をして「労働におけるCSRの在り方」を議論させるようになっています。大企業の社会的責任を追及する新たな運動として、「企業通信簿」運動を展開します。
1) 賃金・労働条件の水準と権利保障、
2) 労働訴訟、サービス残業や労基法違反の実態、
3) 雇用形態や均等待遇の状況、
4) 内部留保と地域社会への貢献
などを具体化して社会的アピールをはかります。単産・地方・地域でも産業別、地域ごとに企業を評価する「企業通信簿」運動に取組み、労働者の視点から企業をチェックし世論を広げます。同時に告発だけにとどめず、「働くルールチェックリスト」を作成し、ビラにして企業門前で配布することなど労働者の協力のもとに、職場から「働くルールの確立」と「企業にたいする点検」活動を展開し、労働組合の社会的役割を発揮します。

 「トヨタ総行動」を大企業の社会的責任追及の象徴的な運動として全国的に展開します。また国鉄闘争やNTT闘争についても、CSR確立の視点からあらためて位置づけを強め、大企業の社会的責任を果たさせる立場から再強化します。さらに、小泉首相が「改革の本丸」と強調する「郵政民営化法案」が05年通常国会に提出されようとしており、反対世論をひろげるための大量宣伝活動や「国民のための郵政事業確立めざす全国キャラバン行動」(2月末〜4月中旬)の実施など国鉄、NTT闘争と結合して全国的なたたかいを展開します。公的サービスの「民間開放」は、国民の人権保障を担う国・自治体の責任を放棄し、国民の安全・安心を奪い社会不安をひろげるものでありす。

 CSRの確立を求める運動と連動して、政府がたくらむ解雇の金銭解決、変更解約告知、ホワイトカラーエグゼンプションなど労働法制の改悪に反対する取組みを具体化します。またハローワークの「市場化テスト」(官民競争入札制度)や労災保険の民営化などに反対します。また妊娠・出産にともなう差別・不利益扱いの禁止、母性保護の拡充、男女ともに仕事と家庭を両立できる施策、間接差別をふくむ男女賃金格差や昇進・昇格差別の是正などを求めて闘います。


2.雇用確保、サービス残業根絶、労働時間短縮、中小企業を守る運動

 緊急地域雇用創出交付金制度については、地方自治体が企画する雇用創出事業に対して国の支援継続、予算増額の運動に取組みます。政府が打ち切りの姿勢に固執する重大な事態にあり、04秋闘の段階から自治体意見書と自治体担当者から政府への要望運動、政党・議員要請、「職よこせ座り込み行動」などを展開します。

 派遣や業務委託という雇用形態が急増していますが、これは安易に雇用でき、安易に解雇できる「柔軟性」と低賃金にメリットを感じる企業が、リストラ・雇用の流動化として活用しているからです。これに対し、職場から現行法制の遵守と違法の摘発を強化するとともに、登録型派遣の廃止など法改正を求めて闘います。

 仕事に見合う適正な人員の配置を求めるとともに、欠員補充は正規雇用を基本に職場の増員闘争を闘い、とくに青年の雇用を強く要求します。依然として深刻な青年の雇用、高校・大学新卒者の就労問題を、社会全体の雇用不安や労働条件切り下げ、社会保障システムの機能崩壊、後継者不足・技術力の低下などの視点から社会問題としてとらえ、「高校・大学生、青年の雇用と働くルールを求める連絡会」を全国に立ち上げながら、共同行動を展開します。

 引き続き、サービス残業、過労死の根絶、健康・メンタルヘルス対策の強化を春闘の重点課題として取組みます。毎月第3水曜日の「ノー残業デー」の実施、職場の健康実態調査と労災職業病の告発・認定闘争、年次有給休暇の完全取得と時間外労働の割増賃金の改善、政府・企業に対するメンタルへルス対策の要請行動など労働時間短縮、過重労働解消の取組みを重視します。

 中小企業の経営環境と労働条件改善をめざす春闘を中央・地方で展開します。中小企業への訪問活動、中小企業アンケートと実態調査、主要経済団体、商工会議所、商店会連合会との懇談などにとりくみ、地場産業の育成、公正取引の確立をめざす共同を広げます。また全国各地から、自治体をまきこんで地域経済を活性化する運動、循環型の地域社会づくりをめざす住民共同の運動を発展させます。


3.国鉄闘争、公務員制度、労働審判制度などの取り組み

 政府に、「国鉄解決のために政治的・人道的見地に立った話し合いをすべての当事者間で推進する」ことを求めたILO勧告にもとづいて、国鉄闘争の早期勝利解決をめざし全力をあげて取組みます。国労などとの共同を広げ、広範な世論の盛り上げと大衆闘争の強化を通じて、政府の責任による解決を迫ります。

 ILO勧告を無視して労働基本権問題を棚上げしたまま、公務員「改革」関連法案を提出しようとした政府のねらいは、04年通常国会に続いて秋の臨時国会でも法案提出断念に追い込まれました。公務員労働者の労働基本権問題は、日本政府や労働組合の民主主義に対する姿勢が問われる国際問題でもあり、政府に提出した全労連の「労働基本権に関する当面要求」にもとづき誠実な政労交渉を求めるとともに、公務労働の「解体」にも反対する世論を喚起するため「国際シンポジウム」に取組みます。

 06年4月からスタートする「個別労使紛争を迅速に解決する」ことを目的に創設された「労働審判制度」については、この制度の有効な運用のために、労働者に広く啓発・宣伝を行って積極的活用をすすめるとともに、あわせて労働組合運動への理解を広げる好機とします。


(V).社会保障、消費税など国民共同のとりくみ

 社会保障闘争を「第二の賃金闘争」と位置づけ、すべての組合が05春闘の重要な柱として闘います。来年度から2年間で予定されている定率減税の廃止は、実質賃金を切下げ、景気を悪化させるものであり、またこれが消費税増税に連動した動きであることを重視し、これを許さない国民的な闘いを強化します。04年10月から強行実施された「改悪年金法」を元に戻させる運動にとりくむとともに、最低保障年金制度の確立についても学習と運動を強化し、引き続き05春闘の重点課題として、中央・地方から国民的な運動をすすめます。

 政府は05年通常国会にむけて、介護保険料徴収対象の拡大、障害者支援制度と介護保険の統合、サービス利用料の引き上げ、特養ホーム入所者からの家賃・食費の徴収などを内容とする介護保険制度の改悪法案を準備し、国民的争点として浮上しており、全国各地から共同のとりくみを前進させます。高齢者医療保険制度などの新たな医療改悪、保育所運営費の削減や民間委託の名による保育条件の切り下げに反対するたたかいを強めます。  自民・公明与党と民主党や財界が、07年度をメドとした消費税大増税の方向で合意しており、マスコミをふくめた世論誘導がはかられています。消費税導入から16年に及ぶ約150兆円の税収が、そっくり企業減税の財源に回されている実態を告発し、再び消費税廃止の圧倒的な国民世論を築く運動に取組みます。 地方リストラに反対する住民ぐるみの運動を広げます。地方交付税の総額抑制、構造改革特区、地方独立行政法人、指定管理者制度を使った保育、病院、福祉施設、公民館などの民営化・企業参入に反対する運動にとりくむとともに、市町村合併の強要、新たな法律のもとでの都道府県合併・「道州制」の強要に反対します。

 BSEや国内の鳥インフルエンザ、遺伝子組み換え食品の増加など食の安全に対するとりくみを強化します。「食料自給率向上国民署名運動」を軸にして、学校給食への地場農産物の利用、地産地消運動など農林水産業の再生と食の安全を求める共同を広げます。大気汚染被害者の救済、自動車メーカーの社会的責任を追及します。

 阪神・淡路大震災から10年にあたる「05年メモリアルデー」を単産・地方の参加で大きくとりくむとともに、昨年末発生したスマトラ沖地震・津波被災者への復興支援活動に取組みます。


(W).憲法改悪阻止、核兵器廃絶をめざす大運動

 春闘課題と結合し、憲法改悪阻止、憲法を守るたたかいに総力をあげます。具体的には、
1) 大江健三郎氏など9氏による「9条の会」の呼びかけに賛同する全国的なネットワークづくり、
2) 広範な労働組合・組合役員の賛同を広げる、
3) 労働組合や諸団体と共同して憲法改悪を許さない「国民過半数署名」を軸とした運動推進に積極的な役割を果たします。

 焦点である憲法9条の改悪が強行されるならば、それは国民の幸福追求権を尊重する憲法第13条、国民の生存権を保障した第25条、勤労の権利・義務を定めた第27条、労働基本権を保障する第28条などにも重大な否定的影響を与えることを歴史的教訓や具体的事例もふまえて職場・地域から学習・討論を積み重ねるとともに、毎月9日・25日を統一行動日に設定し、宣伝・対話・学習運動を具体化します。学習・宣伝にあたっては、日本国憲法に対する素朴な疑問や問題意識にも丁寧に対応できるように配慮と創意工夫をこらします。

 憲法改悪のねらいは、「海外で戦争する国」に日本をつくり変えることにあり、そのための憲法改悪の先導として教育基本法改悪法案の国会提出がねらわれています。日本国憲法の土台そのものを否定する重大な攻撃であり、広範な教職員、民主団体、父母、国民などとの共同を広げて運動を展開します。政府は、昨年12月に日本「有事」の場合に住民の避難や救助の方法をさだめた「基本方針」を発表し、「国民保護法」が動き出しています。そして「有事」の際に政府への協力が義務づけられている指定公共機関にはメディアもふくまれて国民への管理・統制がはじまっており、国民の「知る権利」と報道の自由をもとめ闘いを強めます。

 自衛隊のイラク多国籍軍への参加は、武力行使を厳格に禁止した憲法に違反する行為。米軍主導の無法な軍事占領支配を一刻も早く終わらせ、主権を名実とともにイラク国民に返すためにも自衛隊のイラクからのすみやかな撤退を求めます。同時に全国に存在する巨大な米軍基地の撤去闘争、日米安保条約の廃棄をめざす運動を強化します。

 世界の流れに逆行するブッシュの核兵器先制使用宣言と政府のアメリカ追随のもとで、被爆60年の節目に開催される「5・1ニューヨーク100万人行動」への積極的な結集をはかります。原水禁止世界大会の成功、核兵器廃絶をめざす国内・国際的共同行動の前進、青年労働者の運動結集を強めます。


(X).要求実現に執着し、一致する要求で共同を広げる

 「要求を提出すれば逆に賃下げ提案されるかも」「経営が厳しいから要求しても…」などの「あきらめ」の一方で「何とか今の生活を改善したい」「せめてわずかでも賃上げを」などの要求も一段と切実さを増しています。あらためて「1人ひとりが自らの声をあげる春闘、働く者が手をつなぐ春闘」として闘うことを呼びかけます。春闘共闘に参加する全組織がすべての労働者を対象にして「05春闘要求アンケート」を史上最大規模で集約します。

 そして職場から生活と労働の実態を要求としてまとめあげ、全ての組合での要求確立・提出に全力をあげます。春闘50年の積極的伝統を受け継ぎ、要求確立、交渉配置、そしてストライキ行動を全組合員参加でやりぬき、要求実現に執念をもやして粘り強く闘います。職場を基礎に、産業別を軸に、地域的・全国的に共同をひろげ、力を集中して闘います。春闘にとりくむあらゆる労働組合との情報交換や学習・交流を重視するとともに、春闘共闘として幅広い連帯と共同をめざします。労働組合の存在とその社会的役割を鮮明にし、国民的支持と共感のもとに要求の実現をめざし闘います。


 V 05春闘における全国統一行動の配置


1.全国一斉新春宣伝行動(1/7)

 05春闘スタートの行動として、中央をはじめ全国一斉の新春宣伝行動に展開します。


2.日本経団連包囲、丸の内昼休みデモ(1/20)

 日本経団連による春闘変質・解体攻撃に対して、抗議するとともに本格化する05春闘の「闘争宣言行動」として位置づけ、行動を展開します。
 具体的には「VM」「企業通信簿」による中央・地方共闘での大企業への要請・交渉、社前行動、宣伝行動などを計画します。
 中央では、トヨタ東京本社や日本経団連等への要請行動、「企業通信簿」を活用した宣伝などを実施し、社会的世論の形成をはかります。また企業の社会的責任(CSR)運動の確立の視点から「国鉄」「NTT」「郵政」3課題を結合し、要求行動を配置します。地方共闘でも経営者協会をはじめ運輸局、NTT等への要請や要求行動、宣伝等を展開します。


3.「トヨタシンポ」「トヨタ総行動」など(2/10、11)

 2月11日、昨年続いて、「世界のトヨタ」に対して、そのリーデイング企業にふさわしい「春闘」や「企業の社会的責任(CSR)」を追求していきます。前回規模を上回る行動として、単産・地方共闘の協力を得て具体化します。前日の10日には現地での「トヨタシンポ」を開催します。また同時に2月11日前後を全国での企業通信簿にもとづく、企業の社会的責任(CSR)を追求する行動に取組みます。
 また2月10日には、東京春闘共闘と国民春闘共闘の共同の取組みとして、大企業労働者の集中する都内3駅頭において、「企業通信簿」・チェックリスト付ビラ配布・宣伝行動を大規模に取組みます。同時に中央社保協、大運動実行委員会、東京地評と共催で「憲法改悪・大増税反対、社会保障拡充」を課題にした「2・10中央決起集会」(午後1時半〜2時半 日比谷野音)を開催します。


4.「国民総ぐるみ春闘」へ地域総行動(2/23)

 2月23日に「地域総行動」を計画します。 単産や地方・地域共闘による「総行動実行委員会」(仮称)を結成し、具体化をはかります。
 具体的なとりくみとして、全労連は「統一要請書」にもとづく申入れ行動を行なうことも考慮し、
1) すべての職場・事業所を訪問し、要請・申し入れ行動を展開、
2) 「郵政民営化反対」「三位一体化」問題での自治体首長との懇談や地方議会への要請・交渉と決議運動、
3) 社会福祉団体、中小企業、未加盟労組、NPO・NGOに対し、「憲法改悪反対」や「介護保険制度の改悪」「定率減税の縮小・廃止」などでの懇談・要請をおこないます。


5.「青年・女性・パート」「産別」の春闘一日総行動(3/4)

 民間3単産委員長のよびかけた「3・4春闘一日総行動」(仮称)に協賛し、幅広い労働者、労働組合共同による「春闘一日総行動」成功にむけて努力します。
 同時に「パート」「青年」「女性」「失業者」に光をあてた統一行動として、中央行動を推進します。


6.回答引出し、要求獲得めざす全国統一行動(3/17)

 「上場企業、2期連続の過去最高益更新」(日経)にみられる上場企業の業績回復を背景にすべての職場からの要求の提出をおこない、05春闘を通じて賃金引下げ攻撃を打ち破り、賃金底上げを軸に賃金闘争での要求前進をかちとっていきます。
 05春闘における集中回答日を3月16日に設定します。すべての組合が春闘諸要求とともにストライキ権を確立、翌17日に「回答引き出し、要求獲得」をめざす全国統一行動を配置します。民間組合はストライキを背景に有額回答を求め、不誠実な回答や回答引き延ばしがおこなわれた場合、ストライキを決行します。
 また民間組合のストライキに呼応して、公務組合での職場集会の開催、地方・地域組織におけるスト職場激励、地域での集会・デモ、宣伝行動を計画します。


7.春闘の早期決着、悪法阻止にむけた全国統一行動(4月20日)

 05春闘の早期決着をめざすとともに、第162通常国会の重点課題である「郵政民営化」「公務の市場化テスト」「教育基本法」反対などを掲げ、4月20日に国民的な全国統一行動を展開します。


8.第76回メーデー、「5・3憲法集会」の成功

 今回の第76回中央メーデーは昨年に続き、代々木公園で開催する予定です。
 国民春闘共闘委員会は、第76回メーデーを「憲法・平和メーデー」と位置づけ、総決起します。同時に、5月1日のアメリカ・ニューヨークでのNPT再検討会議への「100万人行動」に連帯し、国内の平和団体をはじめNGO・NPOなどとも共同した企画内容についても検討します。また海外の平和組織、労働組合との国際連帯についても追求していきます。また憲法改悪の動きは加速化するもとで、「5・3憲法集会」を例年以上に重視して集会成功にむけて奮闘します。


9.「最賃」「公契約」「公務員賃金」等での中央行動(5月〜7月)

 ※今後具体化をはかっていきます。



以上