第29回定期大会議長あいさつ

 

第29回定期大会にお集まりいただいた代議員、特別代議員、傍聴者の皆さん、酷暑の中での参加、大変ご苦労様です。

本大会の開会にあたり、幹事会を代表してあいさつ申し上げます、議長の小田川です。

 

大会には、友誼団体からも激励に駆け付けていただいています。お忙しい中、お越しいただいたことに、厚くお礼を申し上げます。

最初に、近畿地方での地震や今月初めの西日本各地での豪雨によって、多くの方々が被災され、お亡くなりになられています。心からのお見舞いと哀悼の意を表します。

また、被災地の復旧に昼夜を分かたず奮闘されている公務関係をはじめとする仲間も少なくありません。心からの敬意を表します。

すでに、カンパやボランティア活動などの取り組みを全組織にお願いしています。少しずつの力を寄せ合い、被災者、被災地の復旧、復興をめざす取り組みに寄り添いあうことを、この場でも確認しあおうではありませんか。

 

前回、2016年7月の大会からの2年間、激動という言葉では括れないような変化が、職場でも、地域でも、経済的に、政治的にも、さらには国際情勢でも、連続をしました。全労連的にも、事務局長の急逝という困難が生じた下での取り組みでもありました。

 

その激動と困難を、大会で確認した方針の実践で、前向きに、攻勢的に立ち向かい、多くの貴重な成果や取り組みの教訓を生み出していただきました。

取り組みのすべてが成果に繋がったということではないかもしれませんが、次に引き継ぐ多くの前進面が作り出されてきたことは間違いありません。

3日間の討論を通じて貴重な成果を全体で共有しあっていただき、結成30年を迎える次の2年間のたたかいを飛躍的に発展させる糧としていただくことをお願いします。

 

さて、先の通常国会で、企業の働かせ方の自由を拡大し、生産性向上に寄与するための労働法制改悪が強行されました。

過労死をなくすとかの政府の喧伝とは裏腹に、過労死促進・合法化、雇用形態による格差の固定化、雇用関係によらない個人請負型の働き方を促進するなど、劣悪な働き方をさらに悪化させる、労働者保護の底を抜く規制緩和であることは、すでにご承知のとおりです。

 

内容の酷さとともに、「ご飯論法」と揶揄されるごまかしの答弁、政府が説明責任を全く果たさない国会審議で強行された経緯も忘れてはなりません。改ざんされた労働時間データの修正が法成立後に行われたこともあわせ、国会審議を政府が形骸化させたことは重大です。

 

すでに政省令策定の論議が始まっていますが、経営側は、付帯決議の無視を迫っています。政府の国会軽視を、法成立後は財界が引き継ぐ、とても法治国家の状況とはいえません。民主主義が壊され、労働者の声が政治、行政から遠ざけられる事態です。

 

私たちの要求に耳を傾けさせるたたかいの継続が不可欠、その情勢認識を深く共有しましょう。

「働かせ方改悪法で最も大きな争点となった高度プロフェッショナル労働制は、 賃金、労働時間、休息などの労働条件に関する基準は法律で定めるとした憲法27条からも逸脱しています。

 

安倍政権の下で、特定秘密保護法、戦争法、安全保障法制、共謀罪と、立憲主義に反する違憲の法制度が強行され、その廃止を私たちは主張しています。

高度プロフェッショナル労働制も同様ではないでしょうか。

 

労使関係で職場に入れさせなければ、だけでは事足りません。政省令段階でも徹底して矛盾を追及し、廃案を主張する、制度の運用に徹底して反対すると同時に、廃止をめざす決意を本大会でも固めあおうではありませんか。

 

二つ目に、憲法課題をめぐる情勢について述べます。

昨年秋の段階から、全労連として500万人、安倍9条改憲NO!全国市民アクション全体で3000万人を目標に取り組んでいただいた9条改憲NOの国会請願署名は、7月11日段階で、全労連が246万6834人、全体で1849万7414人の集約と確認しています。おおむね目標の半分です。

 

このうちの一部を6月に立憲野党の党首にも参加いただいて提出行動を行ったことはご承知のとおりです。全国各地でのご奮闘に、敬意を表します。

署名の取り組みで、9条改憲反対の世論を広げ、可視化し、政治の場での改憲反対の結集を求めてきたことが、通常国会では自民党改憲原案の論議どころか、憲法審査会さえまともに開かせなかったと、確認しあいたいと思います。

 

しかし、安倍首相も改憲派も、2020年改憲施行を諦めたわけではありません。安倍首相が9月の自民党総裁選挙で「9条の2新設を争点化することを打ち上げ、自民党内からは単独での改憲原案提出の声も出始めています。

 

先の総選挙でも、北朝鮮の核開発、ミサイル開発を過剰に煽り、9条改憲や軍事大国化への世論動員を安倍首相は行いました。その北朝鮮の脅威は、4月の南北対話、6月の米朝対話で、根拠が崩れはじめています。

この状況の下で、9条改憲に本当に打って出れるのか、署名は一区切り、そんな声が聞こえてこないわけではありません。

 

今年は明治150年、来年には天皇の代替わり行事が予定されています。これらも最大限利用し、国家ナショナリズムをさらに煽りながら、災害救助隊としての自衛隊の活動も最大限利用して、憲法への自衛隊明記の動きを秋の段階から強めてくる、決して杞憂ではありません。

 

絶対に9条改憲に手を付けさせないとの決意を再度固めあっていただき、3000万人統一署名の目標達成に、すでに目標をクリアーされたところはより高い峰への挑戦を、秋とはいわず、大会直後から再開いただき、臨時国会にむけた世論と運動の組織をお願いします。

 

第三に、労働者の貧困化に歯止めがかかりません。

少子高齢化も口実に、高齢者、女性を細切れ労働力として市場に引き出し、外国人労働者の受け入れを拡大し、AIだ、第4次産業革命だといって、雇用によらない働かせ方への置き換えも急速に進めています。

 

非正規雇用労働者が4割をこえるまでの雇用破壊の下で、格差と貧困化が拡大している一方で大企業への富の集中が進んでいることは、2017年末で企業の内部留保が417兆円にも達している一事でも示されています。

その上、さらに雇用を壊し、低賃金競争を煽る仕組みが社会的に作り出されようとしているのが今です。

 

改革だ、革命だと様々打ち出される施策は、企業が世界で一番活動しやすい国づくり、企業の儲けの自由のために収れんされます。

企業中心の施策に対抗する労働運動の基軸が、すべての労働者に暮らせる賃金を、8時間働けば暮らせるルールの確立を、という社会的な運動、前回大会で提起した社会的賃金闘争だということを改めて強調します。

 

2018年最低賃金改定の目安が昨日示されましたが、26円の引き上げ、加重平均で874円とする内容では、年収200万円以下のワーキングプアが1100万人をこえる状況は改善されません。ひとり親世帯の労働者の貧困率が50%を超える深刻な状況がさらに広がり、社会保険料も払えないまま無年金者が増え続けるという底抜け状況は深刻化する一方です。

 

社会保障の連続改悪に反対し、最低生活保障を求める国民的運動と、社会的賃金闘争の連携は不可欠です。雇用、性、地域などによる不合理な格差の是正を求める取り組みと、社会的賃金闘争は一体のものです。

2017年に公正取引委員会が下請けいじめとして指導した件数が6752件と過去最高になっているような、大企業の身勝手を追求するたたかいの真ん中に、社会的賃金闘争を据えなければなりません。

本大会でも全国一律最低賃金制度の実現や公契約条例制定などを軸とする社会的賃金闘争の意義、緊急性を論議いただき、福井県知事が全国一律最賃を主張するような変化を全国で一気に広げる取り組みの意思統一をお願いします。

 

第四に、組織拡大強化について申し上げます。

前回大会で決定した組織拡大強化4か年計画の前半2年の総括と後半2年の取り組みについては方針を補強する付属議案も提案させていただいています。

 

新4か年計画は、拡大自体の運動化の必要性を確認し、全労連としても人と財政を集中的に配置し、一つに地域を主戦場に、単産の拡大計画を地域に持ち込んでいただき、地方組織と単産が力をあわせて未組織の組織化をめざすこと、二つに、職場での拡大運動を組合員参加で取り組む体制を整備して未加入者の解消をめざすこと、二点が柱となっていることはご承知のところです。

 

前半2年の取り組みをこの2点から見れば、緒に就いた段階といえなくもありません。

同時に、今年4月の有期雇用の無期転換、労働契約法第18条の実施に焦点もあてた非正規雇用労働者の組織化の取り組みの全国的な広がり、介護・福祉労働者の処遇改善運動とも結んだ組織化運動での広がりと教訓の積み上げなど、多くの財産を作り出してきたことは疑いのない事実です。

 

残念ながら、今期も純減に歯止めを打つことができませんでした。拡大を上回る減員が続いているからです。これを克服し、次の1年で純増に転化する、その固い決意と新4か年計画の実践を本大会で固めあおうではありませんか。

 

第五に、これ以上の労働条件、暮らしの悪化、平和の危機を深刻化させないためにも、政治を変えることの必要性です。

2019年は春の統一地方選挙、夏の参議院選挙があり、それらの結果如何では、政権を争う総選挙が実施される可能性も否定できません。

 

2016年参議院選挙で、昨年総選挙で、さらには先の新潟県知事選挙をはじめ諸地方での首長選挙でもはっきりしてきたことは、市民と野党の本気の共闘こそ、安倍一強政治を乗り越える力だということではなかったでしょうか。

 

その点で、戦争法の廃止、安倍政権による改憲阻止という共闘の一丁目一番地の課題にくわえ、原発ゼロ基本法案や被災者生活再建支援法改正案、介護、福祉労働者の処遇改善、さらには2018年度予算の組み替えなどでの、通常国会段階での野党共闘の前進は歓迎すべき動きです。

衆議院選挙区ごとの市民連合の結成が進み、日常的な市民と野党の共闘、連携が深まってきていることも大きな変化です。

 

私たちも、このような変化に前向きな対応、関与をさらに強めたいと思います。

3000万人統一署名などでの取り組みで積極的な役割を発揮し、原発ゼロ基本法案の成立をめざす取り組みなどとともに、市民と野党の共闘での役割発揮についての意思統一をお願いします。

 

とりわけ、11月18日投票でたたかわれる沖縄県知事選挙、そこに向けた一連の沖縄での選挙は、一地方の課題ではない特別の意味を持っています。

沖縄の人々が繰り返し選挙という形でも示した総意を踏みにじり、辺野古に巨大な基地を建設しようとする強権政治とのたたかい、安倍政権の戦争する国づくりとの真っ向からのたたかいが沖縄県知事選挙です。

特別の意味を持っています。

 

出馬されるであろう翁長現知事の、普天間基地撤去、オスプレイ撤去、辺野古新基地建設反対の建白書の実現の一致点でたたかい続けるオール沖縄の勝利を、全国で押し上げていただくことを強くお願いします。

 

以上5点を申し上げ、3日間の論議でたたかう方針を確立いただくことをお願いして、大会開会にあたってのあいさつとします。