組織拡大強化4か年計画 <2016〜19年度>

歴史的な情勢を主体的に切り拓く要求実現と組織の飛躍に挑戦しよう

労働運動と日本社会は今、歴史的な岐路に立たされている。安倍「暴走」政権は国民的な世論と共同を無視して、憲法違反が明白な安保法制(戦争法)を国会議員の数の力だけを頼りに強行し、立憲主義・民主主義を蔑ろにして、「戦争する国づくり」をおしすすめている。参議院選挙において、与党は70議席を獲得し、改憲勢力全体で参議院でも3分の2を確保した。安倍政権は改憲の野望を膨らませており、この国の在り方の根幹が問われる重大な事態となっている。

くわえて、アベノミクスの第2ステージと称して、「一億総活躍社会」なる新たな看板を掲げ、労働者・国民の暮らしと雇用、地域社会・経済を踏み台に、グローバル大企業の利益に全面奉仕する「グローバル競争国家づくり」を加速させている。

こうしたもとで、安倍政権の「暴走」が加速すればするほど、国民各層との矛盾や亀裂が拡大しており、戦争法廃止を求める世論と共同の歴史的な高揚をはじめ、私たちは各分野で安倍「暴走」政治に抗する運動が発展させてきた。そして今、力関係を変えて要求実現と組織拡大強化の新たな展望を切り拓くことが可能な情勢をひろげている。

それをさらに前にすすめ、労働者・国民の暮らしと日本社会の未来を切り拓くためにも、全労連組織の質量ともの拡大強化が不可欠の緊急課題になっている。戦争法廃止・立憲主義まもれの国民的な共同にくわえ、①暮らしと雇用をまもる課題でも、“地域”を基礎に国民的な共同を大きく発展させ、労働運動への信頼と結びつき、社会的な影響力を格段に強化することによって、要求実現と組織拡大強化の好循環、相乗効果をつくりだしていくことが求められている。そのためにも、②あらためて組織の基礎を見つめ直し、全組合員参加型の活動で日常活動を活性化し、組合員参加型の組織拡大強化を前進させねばならない。全労連結成から26年余、全労連と加盟組織は労働者・国民の切実な要求を基礎にねばり強くたたかいを継続し、戦争法反対の国民的な共同を全国で献身的に支え、牽引してきた。今こそ、その真価が試されている。

よって、現行中期計画(組織拡大強化中期計画<2012〜15年度>)を引き継ぐ新たな中期計画(新4か年計画)を策定し、加盟組織の総力をあげて、150万全労連めざす新たな前進・飛躍に挑んでいく。

1.新たな中期計画の名称

150万全労連めざす組織拡大強化4か年計画 <2016〜19年度> (新4か年計画)

2.実施期間

2016年8月〜2020年7月の4か年(第28回定期大会からの2期4年)

3.現行中期計画の到達点と教訓、課題

(1)現行中期計画の内容

全労連は2012年7月の第26回定期大会で「組織拡大強化中期計画<2012〜15年度>」を決定し、「200万全労連への強固な地歩を築く」ため、①安定した良質な雇用の実現や社会保障の拡充の課題など、質量ともに社会的影響力のある組織になること、②すべての組織で連続的な純増を実現し、「150万全労連」に接近することを目標に据えた。

具体的には、①非正規雇用労働者や青年・女性などあらゆる階層の労働者を視野に、「目に見える」運動の強化・発展や旺盛な「総対話」運動の展開などによって、毎年10万人を超える既存組織内での拡大を実現すること、②要求にもとづく友好・中立組合との共同と連帯の拡大や、単産と地方組織の連携による中立労組訪問作戦等の「総がかり作戦」の確立・強化などによって、4年間で20万人を超える労働組合の加入・結成を実現することを掲げた。

また、①地域及び産業・業種に重点をおいた組織化運動の実施(被災3県への支援、介護など単産・地方組織が連携した「総がかり」作戦、5,000人未満地方組織への特別対策)と、②未組織労働者の組織化運動の連続的な実施(全国的な労働相談活動の体制の維持・整備やオルグ養成講座の開催)、③次世代育成を焦点にした「初級教育制度」の3つを「特定事業」とした。

その財源は、①全労連一般会計からの繰り入れにくわえ、②単産・地方組織による「特別会費」(単産正規・月額3円、減額・月額1円、地方組織・月額1円)を充てることとした。

(2)組織拡大の到達点

① この4年間の年間拡大数は以下のとおりであり、この2年間は年間10万人程度の拡大数にまで増えた。その結果、目標とした「毎年10万人を超える既存組織内での拡大」については、それに近い拡大が実践されるようになった。

 

年間拡大数 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度
全体計 89,214 95,002 101,781 99,102
単産計 42,696 45,017 46,859 45,553
地方計 46,518 49,985 54,922 53,549

 

② しかし、依然として組織減に歯止めをかけ、増勢に転じるには至っていない。2016年6月末現在の組織現勢は1,060,118人(前年比−22,781人)であり、中期計画の4年間全体では−77,465人の減員となった。

ただし、2014年度の増勢は単産では日本医労連と年金者組合の2組織だけだった(地方組織の増勢は15組織)が、2015年度は、日本医労連と年金者組合にくわえ、生協労連、全労連・全国一般、民放労連、映演労連、国公労連の計7単産が増勢となり、地方組織では、2年連続増勢の福島・群馬・石川・福井・徳島・大分をはじめ、計13組織が増勢となった。久々に増勢となった単産が現れるとともに、民間単産全体では組織減が止まりつつあること(15年度は民間単産計で前年度比−391人)や、JMITUなどから報告されているように若者の労働組合への結集の新たな強まりなど、変化が始まっている。

最高時(1998年の1,530,769人)との比較(仮)では、−470,651人(−30.7%)という大幅な減少である。1990年代は増勢だったが、その後はベアゼロをはじめ要求実現の停滞と組合活動家の大量退職(定年)などで組織減が続いている。2000年代初頭の大幅減からは若干持ち直したが、増勢に転じることはできておらず、平均すれば年間2万人近い減員が依然として続いている(結成時1989年11月・1,186,733人、1990年・1,283,194人、1995年・1,334,470人、2000年・1,500,440人、2005年・1,280,608人、2010年・1,195,276人、2015年・1,082,907人)。

この3年、ベア獲得がふたたびひろがりつつあり、状態悪化のもとで要求もいっそう切実になっているが、日常活動の弱まりなどもあり、拡大の新たな条件を活かしきれていない。職場の日常活動の現状など、より踏みこんで分析・検証を深め、すべての組合で組合員参加型の組織拡大強化のとりくみを不断に追求していく体制を確立することが強く求められている。

また、みえ労連が系統的なとりくみで地域労連を結成・整備し、組織人員を系統的に増やしてきたことや、高知県労連がここ数年、新規加盟で前進をつくりだしていることなど、地方組織での前進の教訓を全体のものとしていくことが重要である。

 

組合員数

13年6月

14年6月

15年6月

166

2012

全体計

1,113,101

1,099,386

1,082,899

1,060,118

‐77,465

前年比

‐24,482

‐13,715

‐16,487

‐22,781

 

 単産計

810,388

798,162

783,961

770,341

‐52,623

前年比

‐12,576

‐12,226

‐14,201

‐13,620

 

 地方計

1,004,121

984,357

962,145

946,386

‐77,551

前年比

‐19,816

‐19,764

‐22,212

‐15,759

 

民間単産

344,314

339,427

337,365

336,974

‐10,541

公務単産

354,512

344,276

331,116

317,214

‐50,041

年金者組合

111,562

114,459

115,480

116,153

+7,959

 

③ とくに新規結成・加盟については、未集約組織があり、2015年度は129組合1,337人に止まっている。中期計画4年間全体でも621組合14,276人であり、現行中期計画の目標(4年間で20万人超)には遠く及んでいない。共同のひろがりや「全労連大運動」、さらには「地域活性化大運動」の具体としての対話・懇談運動における一致点の拡大などに比して、新規結成・加盟が低い到達に止まっていることは大きな問題といわなければならない。

未組織・中立組合への系統的な働きかけなど、対策の抜本的な強化が求められている。この分野の前進なくして、全労連運動と社会的影響力の本物の前進はないという構えで、総対話と共同を系統的に推進し組織化につなげていくことなど、対策を抜本的に強める必要がある。

 

新結成・加盟

2012年度

2013年度

2014年度

2015年度

年計

全体計

185組合7,154人

147組合2,937人

160組合2,848人

129組合1,337人

14,276人

単産計

126組合4,670人

112組合2,188人

92組合1,038人

82組合958人

8,854人

地方計

59組合2,484人

35組合749人

68組合1,810人

47組合379人

5,422人

 

④ こうしたもとで、会費登録人員についてもこの4年間で、単産が54,953人減の453,089人、地方組織が51,266人減の664,535人となっている。

会費収入も、最高時(1998年・1,433,140人)と比較すると、登録人員で78.0%に、金額では67.2%にまで減少しており、財政的にも組織拡大は待ったなしの緊急課題である。

(3)今後にいかすべき教訓

依然として増勢に転じることはできていないが、ベアゼロや雇用破壊の進行、人員抑制と非正規雇用労働者への置き換えなどのもとでも、各加盟組織のねばり強いとりくみを通して、あと一歩で増勢に転じることができる到達点、変化が築かれつつある。以下の教訓と確信を組織全体にひろげていく必要がある。

① 各組織において組織拡大が正面に据えられ、集約・報告体制が強まるなどするなかで、拡大数そのものは増加傾向にあること。 ⇒ ただし、成果をあげていない職場組織がまだ数多く残されている点をよく踏まえて、職場活動の活性化とあわせた、よりきめ細かな対策・援助を強めて、組織拡大強化がすべての職場で日常的に追求される状況をつくりだしていく必要がある。

② 組織建設推進員の登録制度など体制をつくり組織減に歯止めをかけつつある建交労や、青年組合員が青年を増やしている全教のとりくみなど、組合員参加型の組織拡大の体制づくりが成果につながっていること。 ⇒そのなかでは、組合員参加型の拡大運動や「1人が10人と対話」「1人に10回対話」「対象労働者と近い人が当たる」などの教訓が明らかになっている。

③ 介護分野を中心に単産と地方組織が一体となった総がかり作戦が37県までひろがり、定着して成果につながり始めたこと。 ⇒「組合に入ろう」の訴えを徹底し、どこに組合をつくるのかを明確にしながら、この4年間のとりくみでひろげてきたつながりを大きな成果に結実させていく必要がある。

④ 次世代育成のとりくみが全体として強められ、全労連としての初級教育制度も今年度から開始され、初年度の受講生2,000人目標を突破し、2,800人を超え、受講者が新たな活動家として動きだしていること。 ⇒第2年度以降のとりくみをいっそう強化して、継続的に受講者を確保しながら、青年組合員のつながりの強化、集団づくりを推進していく必要がある。

(4)克服すべき4つの課題

一方で、この間のとりくみで不十分だった点として、以下の4点が指摘される。その克服を次期中期計画(新4か年計画)に反映させていく必要がある。

① 第一に指摘すべきは、戦争法廃止など大きな運動課題が錯綜するもとで、組織拡大の追求と要求実現など運動課題との結合に弱さがあったことである。

拡大数の独自追求が必要不可欠であることはいうまでもないし、いっそう強める必要があるが、くわえて、要求実現のとりくみが前進するなかでこそ、組織拡大強化の課題もより前進し、相乗効果がうまれることを常に強く意識して方針化し、とりくむ必要がある。)賃上げや労働時間短縮など職場活動の活性化と結合して組織内での拡大を日常不断に強化すること、)戦争法廃止のたたかいや「地域活性化大運動」における懇談・対話運動、さらには「全国最賃アクションプラン」や安倍「雇用改革」反対の共同したとりくみなどとも結合しながら、未組織・未加盟対策を計画的・系統的に推進することが重要である。

なお、現行計画では「毎年10万人を超える既存組織内での拡大」が目標とされているが、現在の到達点をみたとき、目標の引き上げが必要になっている。

② 第二は、現行中期計画を推進する独自の体制とできなかったことが、組織拡大の推進力という点で弱さにつながったということである。組織拡大の中核となる組織内での拡大の日常的な推進のためにも、また、未組織・未加盟対策の系統的な追求のためにも、組合員参加型の組織拡大運動を強めることにくわえて、組織拡大強化の先頭に立って推進していく特別の体制・人員配置を確立・整備していく必要がある。

③ 第三は、安倍政権の「二つの暴走」が国民各層との矛盾を深めるなかで、戦争法廃止のたたかいや地域活性化大運動の推進などによって未加盟労働組合や未組織労働者、市民団体などとの共同がひろがるなど垣根が下がり、組織拡大の新たな可能性が拡大しているにも関わらず、新規結成・加盟の課題で大きな立ち遅れがあることである。

この課題を打開してこそ、組織全体の新たな前進、飛躍は可能となる。ひろがっている新たなつながり、労働運動への信頼を活かし、働きかけを系統的に強めていく必要がある。「地域活性化大運動」の系統的な推進や「全国最賃アクションプラン」の攻勢的な展開などとも結んで、力を集中して打開していかねばならない。

④ 第四は、公務職場や比較的規模の大きい職場などでの後退傾向に歯止めがかかっておらず、影響力の低下、職場活動の停滞という悪循環を抜け出せていないことである。

非正規雇用への置き換えやアウトソーシング、人事評価制度がすすむもとで、底上げや非正規雇用労働者の組織化の強化が重要である。くわえて、安倍「暴走」政治の嵐が襲い、格差の拡大や分断、組合攻撃が強まっていることを踏まえれば、政策提起をいっそう強め、労働組合の優位性と社会的な影響力を拡大していくことが、組織拡大の面からも重要になっている。

4.新4か年計画の基本的な構え

(1) 全労連と加盟組織はこの間、安倍「暴走」政治のもとで厳しさを増す労働者・国民の切実な要求とひろがる矛盾を基礎に、国民的な共同を各分野で大きく前進させてきた。

新4か年計画は、そうした到達点をさらに前にすすめながら、組織拡大強化の面でも、単産と地域が総がかりで切磋琢磨し、それぞれの組織を質的にも量的にも強化し、150万全労連への新たな飛躍をつくりだしていく4か年計画とする。

(2) 歴史の岐路というべき情勢のもとで、職場・地域の切実な要求に深く立脚し、①賃金の底上げや②ブラック企業なくせ、③格差是正のキャンペーン運動など、底上げ・格差是正の課題を重視し、「地域活性化大運動」や新たに提起した「全国最賃アクションプラン」、さらには産業政策・地域政策などを深めるなかで、広範な人々との共同をさらに前にすすめ、労働運動への信頼と結びつき、社会的な影響力を格段に強める質的強化の課題を大きく位置づけ推進することによって、要求実現と組織拡大強化の相乗効果をつくりだしていくことを最大の柱に据える。

(3) あわせて、組織の基礎を見つめ直し、切実な要求を基礎に、日常活動の活性化、全組合員参加の組合活動を貫き、組織拡大強化でも組合員参加型の系統的な拡大運動を推進していくことを、もうひとつの大きな柱に据える。

(4) 単産と地方組織が一体となった総がかりの組織拡大強化大運動として推進していくため、人的にも、また予算上も特別の対策を講じる。全労連組織の実態を見つめ直し、すべてのとりくみを通じて、組織拡大強化を中心にした活動スタイルを日常不断に追求し、組織拡大強化と要求実現の相乗効果、好循環をつくりだす。

(5) なお、単産と地域が総がかりで、賃金の底上げや地域活性化大運動などを推進することと組織拡大大運動をつなぎ合わせて一体的に推進するということは、単産と地域で構成する全労連組織の特性(強味)を活かした活動スタイルであり、もう一度、「全労連とは何か」ということを問い直すとりくみでもある。言い換えれば、「単産と地域、官と民が文字どおり一体になって推進する総対話と共同、組織拡大強化の総がかり作戦」というイメージであり、とくに単産が積極的な役割を果たすことが成功のカギを握っている。

5.日常活動を活性化し、組合員参加型の組織拡大運動を飛躍させる

(1) 前出のとおり、全労連の組織現勢は1998年の153万人をピークに約3割もの大幅な減少となっており、いまだ増勢に転じるに至っていない。ベアゼロなど要求実現の停滞にくわえ、団塊の世代を中心とした組合役員・職場活動家の大量退職(定年)などによって、職場の日常活動が弱まったことが大きな要因であり、その克服は、要求実現のうえでも、また、組織の拡大強化のうえでも、全労連と多くの加盟組織が直面する緊急・最重要課題になっている。

(2) よって、全労連に加盟するすべての組織が総がかりで声を掛けあい励ましあって、①第一に、職場と組合員の切実な要求に深く立脚し、賃上げや時短・働くルール確立など要求実現のとりくみと組織拡大強化の相乗効果をつくりだすこと(とくに非正規雇用労働者や底上げの課題を重視)、②第二に、機関会議の定例開催を基礎に、ニュース発行や職場討議、組合員からの署名集約、全労連共済の活用など日常活動を活性化し、眼に見える組合活動を推進すること、そして、③第三には、単産と地方組織が協力して、毎月拡大、退職者を上回る拡大という原則を貫き、「1人が10人と対話」「1人に10回対話」「対象労働者と近い人が当たる」など試され済の方針を実践し、組合員参加型の組織拡大運動を定着させるなど、組織拡大強化中心の活動スタイルを確立していくこと、の三点をすべての組合が全面実践する。

(3) 組合員参加型の組織拡大強化のとりくみを推進していく中軸として、後述のとおり、単産と地方組織が協力して、加盟組合のあるすべての職場・地域に、「組合員10人に1人」をひとつの指標に、「組織建設委員」を選出する。

それを選出・配置していくこと自体が運動である。「10人に1人」の選出をめざすことをテコに、組合員参加型の組織拡大強化運動を職場と地域に根づかせることによって、既存組織内での拡大を飛躍させ、すべての加盟組合が増勢に転じる。

注)既存組織内での組織拡大強化の委員については、例えば、建交労が「組織建設推進委員」としていることなど、単産・地方組織ごとにさまざまな名称が使われているが、「新4か年計画」においては「組織建設委員」に統一し、組合員参加型の組織拡大強化運動を、すべての加盟組織が一体となって推進していくこととする。

6.2025年めざし全労連運動への信頼と社会的影響力を格段に強化する

(1) 安倍政権の「二つの暴走」がますます乱暴に加速されている背景には、経済のグローバル化のもとでの自民党流の政策の破綻と資本主義の深刻な行き詰まりがある。安倍「暴走」政治とは、その行き詰まりをより反動的に乗り切ろうという企みにほかならない。だからこそ、労働者・国民の暮らしと地域社会に全面的な攻撃が仕かけられ、格差と貧困が加速度的に拡大し、地域経済の疲弊が急速に進行して、従来の保守支配層を含む広範な人々との間に深刻な矛盾と亀裂をうみだしている。こうしたもとで、全労連と加盟組織が果たすべき社会的な役割がいっそう高まっており、たたかいを保障する質量ともに強大な組織への飛躍が求められている。

よって、高齢化のピークとされ、安倍政権や財界も政策の焦点としている2025年を目途に、私たちの対抗構想、すべての働く人々の賃金の底上げや地域活性化、持続可能な地域循環型の経済・社会への転換など、今後10年でどんな全労連と加盟組織に発展させるのかを明確にしたとりくみを推進し、それと一体で組織拡大強化を戦略的に追求していくこととする。

(2) 戦争する国づくりと改憲策動に反対する共同にくわえ、暮らしと雇用をまもる課題でも共同の輪を大きく発展させ、賃金の底上げと雇用の安定、社会保障の充実など安全・安心社会を構築し、地域経済の活性化、持続可能な地域循環型の社会をめざすとりくみを戦略的に強化する。それを組織拡大強化においても中心課題に据えて、要求実現との相乗効果をつくりだし、全労連運動への信頼と結びつき、社会的な影響力を格段に強化しながら、新加盟・新組合結成の飛躍につなげていく。それは、既存組織内での要求実現と組織拡大にも必ず好影響を与える。

経済のグローバル化と新自由主義改革の矛盾が集中する“地域”を特別に重視し、産業政策・地域政策を深め、制度政策闘争を強化する。すべての労働組合や労働者、中小企業・業者、商店街、農林漁業者、医療や介護、福祉関係者、広範な市民団体、また、自治体などとの対話・懇談運動を単産と地域が総がかりで推進して一致点を拡大し、国民的な共同を積みあげていく。

「単産と地域、官と民が文字どおり一体になって推進する総対話と共同、組織拡大強化の総がかり作戦」というイメージで具体化し、その成果を加盟組織が享受できるとりくみにする。

(3) それは、憲法が全面的に花開く社会をめざすということにほかならない。経済のグローバル化の負の側面が明確になりつつあるもとで、その矛盾が集中的に現れている“地域”を基礎に、保守層を含む広範な人々との一致点と共同をひろげ、暮らしと雇用をまもる社会的なルールづくり、とくに“格差”を是正し、最低規制を実現することを重視してとりくむ。

また、グローバル大企業とマネーの横暴、格差と貧困の加速度的な拡大に対抗する民主的な規制を実現し、持続可能な地域循環型の経済・社会、雇用の安定と社会保障の充実を中心にした安全・安心社会をめざすとりくみとして発展させていく。

それは、仕事に対する誇りややりがいを取りもどすたたかいであると同時に、公務と中小企業の組合が多い全労連組織の特性とも合致したとりくみである。よって、単産と地方組織の要求と課題を寄せあい、産業政策、地域政策を深めていくことを重視する。公務公共サービスの役割発揮と中小労働運動の強化を大きく位置づけて一体的に推進する。

(4) 単産と地方組織の意見や政策を寄せあい、重点計画を総がかりで練りあげていく。そのうえで、重視する課題として以下をイメージし、単産・地方組織と調整をはかる。

①地域から1,000円未満の労働者をなくす賃金底上げの総がかり作戦

「全国最賃アクションプラン」の推進、合意づくりを前提にしながら、公契約条例の獲得を軸に地域から時給1,000円未満の労働者をなくすキャンペーン運動を単産と地域が一体となって推進し、低賃金・非正規雇用労働者の組織化を追求するとりくみ。公契約条例の獲得と絡めて、自治体助成や中小企業との合意づくりを前進させ、関連労働者の組織化を推進すること

②ブラック企業なくせのキャンペーン運動と一体の組織化作戦

産業や分野を明確にしながら、ブラック企業なくせの地域キャンペーン運動と組織化の総がかり作戦を一体で推進し、中小企業支援の拡充や若者定着への助成制度などを獲得しながら、若者など非正規雇用労働者を組織化していくとりくみ

③介護を軸に、社会保障解体攻撃に反撃し、医療・介護の拡充をすすめる地域運動

介護労働者等の賃金底上げ・処遇改善と組織化作戦を推進しながら、医療や介護の充実を求める地域運動とも絡めて自治体助成などを獲得していくとりくみ

④福祉や教育、保育等を重視した地域活性化のとりくみとしての総がかり作戦

人口減少、高齢化の進行のなかで福祉や教育、保育を重視した地域活性化の住民運動と関連分野の組織化を推進するとりくみ。関連単産や地域組織の共同した地域運動で住宅リフォームや介護施設の拡充、お年寄りの見守り・宅配制度や福祉タクシー等の助成制度の拡充を実現し、総がかりで組織化につなげる

⑤中小企業支援や農業、地場産業支援のとりくみとむすんだ地域運動

地場産業や農業、地域の特産品などへの助成制度をつくることと一体で、中小企業支援を抜本拡充しながら、影響力を拡大し、組織化を推進するとりくみ

⑥単産等の空白県対策と地域労連の強化の系統的な作戦

単産と地方・地域組織の共同したとりくみで、未組織産業分野の組合結成を集中的に実現し、県本部などをつくるとりくみ。また、地域労連の結成・強化を一体ですすめているとりくみ

⑦被災3県と5千人未満組織の特別対策

現行のとりくみの検証もすすめながら、より重点を明確化、特化して力を集中する

(5) 質的強化の課題で明確にすべきことは、その当面する最大の柱が賃金の底上げ、所得保障にあるということだ。

新たに開始する「全国最賃アクションプラン」を大きく推進することを柱に、最低賃金・公契約・公務賃金(とくに初任給と非正規雇用労働者)改善などの「社会的な賃金闘争」と中小企業支援の拡充を大きく位置づけ、内需拡大による経済の健全な回復を実現する。「新4か年計画」の最終年となる2020年を目途に、「ナショナル・ミニマムとしての全国一律最賃制を実現」し、地域から“広義の最賃闘争”を総合的に推進する。

単産においても、各産業の低賃金構造や人手不足などを踏まえて、産業政策を深め、賃金の最低規制や若者が選択し定着する産業づくりを打ち出し、合意づくりをすすめる。

(6) 第二には、雇用流動化に反対し、安定した良質な雇用創出を求めるとりくみを重視することである。非正規雇用労働者の格差是正・均等待遇実現と組織化を大きく位置づけ、「全国最賃アクションプラン」やブラック企業なくせのキャンペーン運動を系統的に推進することを足掛かりに、組織化を総がかり作戦として展開する。そのため、非正規センターの機能を見直し強化する。人手不足が深刻化している実態を踏まえて、雇用の安定、働き続けられる職場づくりと若者が定着する産業政策の具体化を重視しながら、とりくみを大胆に展開・加速する。

(7) 第三には、“地域”という視点を重視することである。単産の協力を得ながら、地域労連の体制確立、日常活動強化のための支援を強め、①今ある地域労連を活性化させるとともに、②すべての自治体をカバーする地域組織の構築をめざし、期間中の4年間に500地域労連に到達させる。「新4か年計画」と「地域活性化大運動」の進捗を勘案しながら、地域運動交流集会の2017年度開催を検討する。また、単産の県段階の組織の確立・強化を大きく位置づける。

(8) 広大な未組織への挑戦のためには、個人加盟組織の役割がいっそう重要になる。すべての単産(可能な限りすべての都道府県段階に)・地方組織(可能な限り地域労連単位で)に、一人でも加入できる個人加盟組合を整備し、若者をはじめ不安定雇用労働者への接近や、広大な未組織職場に労働組合をつくり産別組織につなげていく。また、ローカル・ユニオンについては、単産の協力も得ながら、サポーター組合員制度など支援体制を工夫し、とりくみを強化する。

青年・女性のなかでの組織拡大を重視する。拡大目標のなかでも、非正規雇用労働者と青年・女性分野の拡大目標を独自に位置づけるなど工夫を検討する。次世代育成対策の一環として、初級教育制度の円滑な継続(毎年2,000人以上の受講者をめざす)をはじめ、教育制度を引き続き充実させていく。

7.新4か年計画の具体的な数値目標  150万全労連への飛躍をめざす

(1) 「新4か年計画」は現行中期計画の成果と課題を引き継ぐ計画として策定し、すべての加盟組織が初年度(2016年度)で減勢に歯止めをかけ増勢に転じたうえで、「200万全労連への強固な地歩を築き、質量ともに社会的影響力のある組織」へと発展するため、「すべての加盟組織が連続的な純増を実現し、毎年1割増をめざすこと」を目標に据える。

その結果として、全労連全体では、①既存組織内で「毎年15万人を大きく超える拡大」を実現すること(うち、非正規雇用労働者と青年、女性がそれぞれ半数以上となることをめざす)、②未加盟労組への働きかけを強化しながら、新規結成・加盟については「4年間で20万人を超える労働組合の結成・加盟」を実現することを具体的な目標とし、③全体を通じて、4年間で150万全労連への飛躍をめざす。そのため、すべての加盟組織が対応する具体的な拡大計画を策定する。

(2) すべての加盟組織で対応する計画づくりと点検体制を強めるとともに、組織拡大強化を実践的に推進する特別の体制を確立する。
そのため、①すべての単産・地方組織において、職場活動の活性化、全組合員参加型の活動づくりと一体で、すべての職場・地域に組合員拡大を日常的に追求する独自の体制をつくる。くわえて、②単産と地方組織の協力・連携のもとに、未組織・未加盟対策を抜本的に強化し、総対話と共同、総がかり作戦を系統的に追求する県レベル・地域レベルの体制をつくる。その具体的な内容については、次項「8」のとおりとし、その体制確立そのものを運動として推進する。

現行中期計画で特定事業とされている「5,000人未満地方組織への特別対策」と「被災3県への支援」を引き続き重視する。ただし、年度ごとにより重点を絞って成果を実現する効果的な対策として推進していく。

8.組織拡大強化の具体的な体制

(1)職場段階での組織拡大強化の体制

① 日常活動の活性化とも関連させながら、加盟組合のあるすべての職場で、組織拡大強化を日常的に追求する集団をつくる。

② 具体的には、すべての単産・地方組織が、組合員10人に1人をひとつの指標・目標として、自らの職場や地域で日常活動を強め、組合員を増やしていく「組織建設委員」の選出をねばり強く追求し、組合員参加型の組織拡大運動を推進する体制を整備することを運動として系統的に追求していく。

③ そのため、加盟組織のとりくみ状況を日常的に集約し、年間を通したニュース発行、相互交流を強め、「組織建設委員」の選出と組合員参加型の拡大運動を推進する。

④ なお、この「組織建設委員」の任務は、自らの職場・地域で日常活動を強化し、組合員を増やすことである。したがって、この委員は、組合役員や職場委員など他の役職との兼務で一向に構わないし、単産等ですでに別の名称で配置をすすめている場合はそれを強めていく。

(2)単産と地方組織が一体となった総がかりの体制  総がかり推進委員

① 総対話と共同を推進し、単産と地方組織が一体になった総がかり作戦、未組織・未加盟対策を系統的に推進していく独自の専任体制をつくる。

そのため、自らの単産や地域の拡大計画等の推進をにらみながら、単産や所属組合の枠を超えて未組織・未加盟対策を系統的に追求していく総がかり作戦を推進する「総がかり推進委員」を、単産・地方組織に呼びかけて選出する。

② 「総がかり推進委員」は全労連への登録制とし、各県・地域で開催する「調整会議」に参加し、自らの単産や地域の組織拡大計画や産業政策などを相互提示しながら、地域の分析をおこない、総がかり作戦を調整、推進していくことを主要な任務とする。

したがって、各組織の執行部のなかからこの任務に優先的にあたる人として配置するとか、試され済みのOBの活用や若手の抜擢など、工夫して選出をすすめる。なお、個々の総がかり作戦では、その課題で中心となる単産等から組合役員等が参加して専門的な役割を果たしていく。

③ 「総がかり推進委員」の選出は、まずは単産において、自らの組織拡大計画や産業政策ともリンクさせながら、各県1〜2名(自らの重点県・地域については+α)の選出を基本にして、総がかり作戦の具体化・推進とあわせて順次増やしていく。

④ くわえて、単産からの選出状況や各県・地域段階での総がかり作戦の具体化状況も見ながら、全労連の責任のもとに、地方組織の協力で「総がかり推進委員」の追加選出をおこない、各県・地域で総がかり作戦が推進できる体制を順次確立していく。

⑤ 各県・地域段階で実施する「調整会議」は、全労連の責任のもとに地方組織の協力で開催し、単産と地域の産業政策や未組織対策等の状況を出しあいながら、その時々の重点を明確にした総がかり作戦を具体化する場とする。

そのため、「新4か年計画」がスタートする秋口の段階で20県程度、年度内に全県に「調整会議」を設置し、総がかり作戦の具体化ともあわせながら、地域段階の「調整会議」を段階的に整備していく。その結果として、最終的には、県ごとに少なくとも20人以上、全体では2,000〜3,000人規模の配置をめざす。

⑥ 個々の具体的な総がかり行動では、「総がかり推進委員」にくわえて、その作戦で中心となる産業分野の組合からの積極的な参加、協力を求め、効果的な行動になるよう工夫する。

⑦ 「総がかり推進委員」の選出や総がかり作戦の具体化ができるだけ一斉にすすむよう、全労連として特段の力を注ぐ。とりわけ初年度は、より重点を明確にして、先行的な好事例をつくりだし、その教訓を全体に波及させていくことを重視し、体制整備をすすめる。

(3)4か年計画推進委員会の設置と全労連へのオルグ配置  全労連専任オルグ

① 組織拡大強化を強力に推進するため、幹事会のなかに「4か年計画推進委員会」を置く。その構成は、8人(公務3・民間3・地方2)程度の全労連幹事と全労連担当役員、「全労連専任オルグ」とする。

② 「4か年計画推進委員会」の任務は、各単産・地方組織の拡大のとりくみ状況を把握し、全労連として重点を絞り込んだ典型例づくりのために、資金や人の投入を中心に計画を策定することとする。それらを幹事会に報告し具体化・実践し、教訓の普及をおこなう。

より具体的には、単産と地域が一体となった総がかり作戦を掌握し、半年ごとに10件程度を全労連全体の「最重点計画」として、人的な支援と最大100万円程度の財政投入をおこなう。

 ③ そのため、全労連に「全労連専任オルグ」(組織拡大専任オルグ)を配置する。財政確保を検討し、初年度は5人程度の配置をめざす。具体的には常幹・事務局員数名にくわえ、試され済みのOBに協力を求める。

 ④ 全労連専任オルグの具体的な任務は、総がかりの典型例づくりとする。財政措置をともなった重点対策に力を集中することで、典型例づくりをすすめる。各自が半年ごとに2件程度を担当することとし、受け持ち、系統的な支援を一定期間に集中して実施する。

※全労連への一括配置で個人の力量頼みでない集団的対策を、半年ごとに総括しながら具体化

9.新4か年計画を推進する財政的な保障

(1) 全労連と加盟組織の組織拡大強化は、要求実現のうえでも、安倍「暴走」政治をストップし、主権者国民の声が動かす新しい時代の扉を開くうえでも待ったなしの課題となっている。そのため、「新4か年計画」を推進していく財政的な保障を攻勢的に確立する。

この間、減勢が続いたことで全労連も加盟組織も財政的には厳しい状況となっているが、だからこそ、組織拡大強化を中心に据えた活動スタイルを貫き、要求実現と組織拡大強化の相乗効果をつくりだしていくことで、効率的・効果的な財政執行をめざす。

(2) 以上の観点から、具体的には以下のとおりとする。

① 現行の「特別会費」という方法は、中期計画を策定した期間に限定のものであることなど、組織拡大の重要性に鑑みて十分な策ということはできない。よって、一般会計のうち一定割合を組織拡大強化特別会計に優先的に繰り出すという方式に切り替える。具体的には、一般会計から単年度収入の15%程度を特別会計に優先的に繰り出す。あわせて、現行は特別会費で処理されている恒常的経費は一般会計内で賄い、特別会計は特別対策に特化することを基本とする。

② そのため、現行の一般会計の支出状況を大きく見直し、効率化する。ただし、財政状況の厳しさを勘案して、現行の特別会費と同額(単産正規3円、減額1円、地方組織1円)の範囲内で会費を引き上げ、2016年8月分から会費月額をそれぞれ、単産正規会費88円(オブ加盟44円)、減額会費29円、地方組織会費7円とする。

③ 同時に、登録率のアンバランスを計画的に改善することを重視する。8割登録に到達していない組織の実態をふまえつつ、組織合意をはかり、「新4か年計画」の期間中の登録率改善計画を具体化し、計画的な登録増を推進していく。

④ 特別会計の使途は、「総がかり等対策費」「全労連専任オルグの人件費・行動費」を中心に置く。「総がかり等対策費」については、半年ごとに1件100万円を基本的な上限として、10件程度の計画に重点支出することで、典型例づくりに資するものとする。

 

 ★参考:2016年度の組織拡大推進特別会計 ★一般会計から15%相当・7500万円を繰り入れて編成


前年度繰越金

25,600,000

 

総がかり等対策費

18,000,000

先進的な経験づくりに重点

一般会計繰り入れ

75,000,000

 

被災三県・5千未満

9,000,000

大幅に見直し重点作戦に特化

単産特別会費

0

 

会議費

9,000,000

調整会議に600万程度

地方特別会費

0

 

人件費・行動費

40,000,000

全労連専任オルグを5名程度

雑収入

 

 

宣伝費など

4,000,000

 

 

 

 

予備費

20,600,000

500万円を16年度に充填し減額

合 計

100,600,000

 

合 計

100,600,000

 

   注)恒常的経費となる「わくわく講座」等については、特別会計から外し、別途手当てする

 

 参考:2015年度の組織拡大推進特別会計


前年度繰越金

38,079,983

 

組織強化対策費★

28,000,000

被災3県、5千未満、総がかり

一般会計繰り入れ

20,000,000

 

未組織対策費

17,000,000

常設労働相談、オルグ養成講座

単産特別会費

16,404,540

 

次世代育成対策費

8,600,000

わくわく講座、各県開講式助成

地方特別会費

8,556,012

 

事務費

100,000

振込手数料等

雑収入

59,465

 

予備費1

1,100,000

 

 

 

 

予備費2

28,300,000

 

合 計

83,100,000

 

合 計

83,100,000

 

   注)「組織強化対策費」は被災3県1080万円(3県担当者配置300×3+180)、5千人未満540万円(福井150+一律30×13)、総がかり作戦630万円(1件30上限)、介護550万円(滋賀・愛媛・福岡対策+全国支援)

 参考資料:総がかり作戦の具体的なイメージ例

○ ブラック企業なくせ、最賃今すぐ1,000円を軸にしたA地域の作戦(フィクション)

A地域労連は都市部にあり、A駅周辺には商業施設、商店街、飲食店がひろがっているが、最近は個人商店が少なくなり、チェーン店などが急激に増えている。そのため、労働相談でもブラック企業と疑われる事例が多く、A地域労連はローカル・ユニオンを結成し、若者を中心に100人近い組合員を抱え、最賃引上げの運動にも精力的にとりくんできた。

また、A地域労連に加盟するいくつかの単産の地域組織も個人加盟組合を要し、未組織の拡大にかなり力をいれており、友誼組合・中立組合もいくつか抱えている。

こうしたもとで、A地域労連では、全労連の新4か年計画案を受けて、いち早く調整会議が立ち上がり、各単産の産業政策も示されるなかで、「ブラック企業なくせ、最賃今すぐ1,000円」のキャンペーン運動を展開することとし、その目標に沿って、単産ごとに対象の企業と担当オルグも明確にし、また、全体ではファストフードや居酒屋チェーンなどの対象を明確にして、実践に踏みだし、最賃署名の推進や最賃デモなどの実践に踏みだし、組合員拡大でも成果が上がりだした。そのため、全労連の推進委員会でも位置づけ、人的・財政的支援を決定し、集中したとりくみを支援していくこととした。

○ 地域の賃金底上げ、公契約条例制定を軸にしたB地域労連の作戦(フィクション)

B地域は、隣接県と大きな賃金格差があり、最近は若者の流出など人口減に拍車がかかり、高齢化が進行して介護施設等の不足が深刻化している。また、豊かな自然を持ち、大都市に隣接する利点をいかした農林漁業と沿岸部の中小企業の街として栄えていたが、それも衰退している。そのため、自治体や商工会なども危機感を強め、地域労連のキャラバン行動でも反応が格段によくなって、中核B市では市長も公契約条例に意欲を示すなど変化がうまれている。

B地域労連の中心的な組合は自治労連と医労連、自交総連に加盟する組合であり、また、JMIU加盟の組合も二つが活発に活動し、中小企業の中立組合もいくつか存在している。

そこで、B地域労連は県労連の支援も受けて、「若者が定着し暮らしやすいB地域」を掲げ、①B市を足掛かりに、5市町村すべてで公契約条例の制定をめざすこと、②介護施設の不足を解消するために、自治体に介護施設の緊急増設と人手確保のための賃上げの独自助成を創設し、公共交通機関の不足を補う福祉タクシーの拡充を求めていくこと、③中小企業の伝統技術をいかした地場産業支援と若者の定着のための独自助成制度の拡充の三課題を重点に提言をまとめ、対話・懇談運動をすすめ、そこで出された諸団体の要望をくわえて、第2次提言とした。

また、新4か年計画案を受けて先行的に各加盟組合に全労連オルグの選出を呼びかけ、上記の提言とセットで組織拡大強化のローラー作戦を実施した。最賃と中小企業支援の署名も好評で、建設関係の組合やいくつかの中立労組との関係も深まり、地域労組に介護や流通関係で10名強の組合員が組織でき、ひとつの介護施設では組合結成の準備がはじまったことなどの変化がうまれた。また、これらのとりくみを通して、市職労の活動が活性化した。

そこで、県労連との相談で、全労連第28回で新4か年計画が決定された段階では、人的・財政的な支援を要請し、A市での公契約条例を確実に獲得し、他の自治体にもひろげることを軸に、賃金底上げのとりくみを強化し、若者などの組織化と中立労組の加盟で総がかり作戦を秋に集中的に実施していこうと計画している。