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全労連第23回定期大会 2008年7月23日〜7月25日
 
【第1号議案/付属文書】

重点課題及び組織強化・

拡大の取り組みの経過と到達点(案)

 全労連は第23回大会で、「憲法をくらしと職場にいかす運動」を展開することとし、生活できる賃金、ベア獲得をめざす賃金闘争などでの重点課題とたたかいを提起した。
 それからの1年、金融危機、経済危機が日本の労働者を襲い、雇用、生活、営業破壊が一気に深刻化した。かつてない急激な状況変化の下で、全労連に結集する単産、地方組織は、結成以来の運動の蓄積を活用して国民的な共同を広げ、世論と運動をリードしてきた。

I 重点とした課題ごとの取り組みについて

1 生活できる賃金、ベア獲得をめざす賃金闘争について

(1) 08年秋闘の取り組み
 1) 8月5日、中央最低賃金審議会・目安小委員会は、東京などAランク・15円、栃木などBランク・11円、福島などCランク・10円、岩手などDランク・7円とする地方最低賃金の引き上げ額目安を示した。同時に、改正最低賃金法の趣旨をふまえ、一定条件下での最低賃金と生活保護と比較を行った結果として、12都道府県では地域最低賃金が生活保護を下回っているとして、そのかい離を原則2年〜5年で解消することが適当とした。
 これを受けた地域最低賃金の改定は、東京、神奈川の766円から宮崎、鹿児島、沖縄の627円まで139円の格差に拡大した。加重平均は、昨年比16円アップの703円となった。
 目安改定は、「生活保護費」の算定を県内加重平均とし、「勤労控除」を無視するなど恣意的なデーター使用があり、またかい離解消の調整期間が長く設定されるなど改正法が求めた「生活保護との整合性」は実現していない。そのことから、改定水準自体の低さも含め36地方組織が異議申し立てをおこなった。

2)  8月11日、人事院は、給与及び勤務時間の勧告と公務員制度改革の報告を行った。
 この内、給与勧告については、ベア、一時金とも官民較差が小さいことを理由に据え置くとしながら、2005年勧告以来すすめてきた本省優遇の給与構造見直しの具体策である「本省業務調整手当」の新設は強行した。勧告に向け、中央行動などを取り組んだ。
 また、勤務時間については、1日の所定内勤務時間を15分短縮して7時間45分とする積極的な勧告をおこなった。勧告に基づく給与法改正は、12月19日に成立した。
 なお、非常勤職員の給与について、俸給表との均衡や通勤手当、一時金の支給をも求めるなどの前進的な「指針」を明らかにし、8月26日に人事院事務総長通知を発出した。
 人事院勧告も受けた各自治体人事委員会の勧告は、一部で賃下げ勧告がおこなわれたが、多くはゼロ勧告であった。人事委員会勧告を無視し、財政事情を口実とする賃下げ改定が29都道府県で強行され、勧告制度を形骸化させる動きが強まった。

 3) 08年年末一時金闘争は、燃料、価格高騰に加えて、外需の急激な縮小が企業経営に影を落とし始めたもとでのたたかいとなった。各単産は、11月13日に設定した統一行動を中心にストライキなどを配置して、回答引き出し上積みを求めて年末までたたかいを継続した。
 12月22日の最終集計では、登録712組合中590組合(82.9%)が回答を引き出した。妥結・回答の単純平均額は68万6,141円(2.15月+アルファー)となり、同一組合比でマイナス3万1,773円(マイナス4.43%、0.09月減)となった。回答上積みを求めてストライキや残業拒否などのたたかいが展開されたが、経済状況の悪化が顕在しはじめるもとでのきびしい結果となった。なお、この時期のたたかいは09年春闘にも影響した。

(2) 09年春闘での取り組み
 1) 09年1月22日、23日に開催した第43回評議員会で、09年春闘方針を決定した。
 「貧困・生活危機突破の大運動で、かえるぞ大企業中心社会」をスローガンに、「労働組合の役割が問われる09年春闘」で、「雇用破壊を許さず、貧困・生活危機突破の大運動を地域から追求」し、「『カジノ資本主義』失敗の『ツケ』を労働者・国民に押し付けることに反対して大企業の社会的責任追及を強化」することなどを強調した。
 方針では、統一闘争を配置して取り組む重点課題として、「誰でも月額1万円以上、時給100円以上」の統一賃金要求と「月額16万円、日額7500円、時給1000円以上」の最低賃金獲得及び「地場賃金の引き上げや相互支援」などによる地域春闘の強化などを確認した。
 1月から2月初旬にかけた大企業包囲行動、2月中旬から月末の中央行動、地域総行動、3月5日の中央行動を経た3月11日に第1次回答日の設定と12日、13日の統一行動配置、4月下旬(20〜22日)の回答引き出し、追い上げの集中日(ゾーン)配置など決定した。
 なお、単産の春闘方針論議や連合の集中回答日が3月18日に配置されたこともふまえ、第2次集中回答日として3月23日〜25日のゾーンを後日設定し、第1次、第2次の集中回答での回答引き出しが低調だったこともあり、3月の第5回幹事会で4月28日に第3次集中回答日を設けるなど、情勢に対応して行動を修正し単産、地方のたたかいを激励した。

 2) 日本経団連が12月16日に明らかにした経営労働政策委員会報告は、「労使一丸で難局を乗り越え、さらなる飛躍に挑戦」とする副題を付したように、経済危機を労使協調で乗り切ることを呼びかけ、非正規切りと正規労働者の賃金抑制の姿勢を露骨に示した。
 これに対して連合は、雇用維持優先の立場から、09年1月15日に日本経団連と「雇用安定・創出に向けて労使共同宣言」を交わし、雇用安定と景気回復への労使協調を確認し、雇用安定の責任を政府の施策に丸投げした。このような「宣言」が個別企業の労使交渉に否定的影響を与えたことは、3月18日の電機、自動車などJC関連産別が賃金体系維持分のみのベアゼロに加え、一時金大幅削減での妥結となり、電機は、回答直後に定期昇給凍結を経営側が申し入れるという異例の状況となったことからも明らかである。
 なお、JC回答の前日3月17日に、連合傘下の高島屋など内需関連産別の一部単産が回答日を設定して10組合がベアを獲得したことは、新たな動きである。
 このような春闘山場の回答状況に対して経団連は、「経営側が定期昇給を維持したことは従業員への最大配慮」、「(一時金引き下げは)想定の範囲内」としている。

 3) 経営側の回答をたたかわずに受け入れた連合の相場が形成されたもとで、全労連・国民春闘共闘委員会に結集する単産は、粘り強くたたかいを展開した。
 それは、7次にわたって設定した国民春闘共闘委員会の回答集計での回答引き出し組合が、3月11日・88組合、3月26日・265組合、4月10日・343組合、4月24日・387組合、5月8日・419組合、5月28日・484組合、6月19日・538組合と増加したこと、最終集計では加重平均で5926円・1.94%となり、前年から794円・0.14ポイント減少したものの、連合の5月27日の集計(4,925円・1.69%)を額・率とも上回る結果となったことからもいえる。
 また、要求提出率や妥結率などもわずかではあるが08年春闘の到達点を上回っている。厳しい状況のもとでも職場段階の取り組みを強め、交渉による決着をめざす動きが強められたことを示している。
 取り組みを強調したパート賃上げでは、6月22日の集計で、23.2円と20円をこえる到達点となった。回答引き出し組合は減少したものの公務職場での労働時間短縮分の上乗せ要求などが前進し、成果を勝ち取っている。

 4)  統一行動として提起した行動での取り組み状況は以下のようなものであった。
 1月初旬の新春宣伝行動は、全国329ヶ所で取り組まれ、約13万枚の宣伝ビラを配布した。1月14日の「闘争宣言行動」(日本経団連包囲行動)には、延べ1700名が参加し、従来以上の取り組みとなり、1月28日の春闘総決起集会にも1000名が参加した。
 大企業包囲の取り組みでは、2月4日のキヤノン本社前行動や、2月11日のトヨタ総行動などが取り組まれ、大企業の内部留保を告発し、その取り崩しを世論に訴えた。
 「なくせ貧困、仕事よこせ」などの要求を掲げて取り組んだ2.13中央行動は、延べ1万人が結集し、2波の集会、府省前行動、デモなどを成功させ、国民春闘をアピールする取り組みとなった。
 春闘第1次集中回答を前に、賃上げ・雇用確保の要求などを掲げて取り組んだ3.5中央行動には延べ3000人が参加して府省前行動などを成功させた。
 これらの行動の成功の上に、3月12日、13日の全国統一行動を取り組み、ストライキを含め全国で20万人が行動に決起した。また、3月12日には、トヨタ、キヤノンなど「派遣切りワースト10企業」に「株主配当より雇用確保を」などの要請行動をおこなった。13日の第40回重税反対全国統一行動は、全国590ヶ所で取り組まれ約17万人が参加した。
 3月23日からの第2次集中回答ゾーンでは、民営化後初のストライキを郵産労が取り組み、本社前行動を150名で成功させるなど11単産が行動に取り組んだ。
 4月22日には、「許すな!雇用・営業・暮らし破壊」の要求で、労働組合、民主団体など22団体による緊急行動が取り組まれ2000人が結集し、終日の行動を展開した。
 4月28日には、公務員の夏季一時金削減を目的とした人事院の特別調査強行に抗議し、緊急の人事院前行動が500名の参加で取り組まれた。

 5) 経済状況の厳しさをはね返す職場と地域のたたかいが旺盛に展開され、組織的な前進を勝ち取っている単産、地方組織の奮闘が報告されている。
 建交労は集団交渉で、厳しい情勢の下での成果を勝ち取っている。3月12日の統一行動に10年ぶりの産別ストライキを取り組んだ映演労連、3月23日に民営化後はじめてのストライキを実施した郵産労には、職場の未組織労働者から激励が寄せられ、組織の団結が深まった。ストライキも含む「目に見える行動」を配置して交渉を徹底して強めたJMIUでは、労働者の雇用・くらしに配慮した回答引き出しに成功している。
 営業収入減のもとでのたたかいとなった自交総連では、職場要求も積極的に取り上げ、納得のいく解決を図っている。検数労連でも、粘り強い交渉で経営者を追い詰め、有額回答(定昇実施)を引きだした。医労連や生協労連、福祉保育労では、介護労働者の労働条件改善で前進的な到達点を築くとともに、賃金改善のための新たな公的援助の実施を勝ち取っている。
 民放労連では、最低賃金協定を粘り強く迫り、産別では2例目となる成果を勝ちとった。
 これらのたたかいの中で、非正規労働者をはじめとする組織化が前進している。建交労、JMIU、自交総連、通信労組、医労連、福祉保育労、年金者組合、自治労連、郵産労などで、昨年を上回る組織拡大や非正規労働者の組織化が春闘期を中心におこなわれた。また、金融労連、全国一般などでも、労働相談を通じた組織化と運動が取り組まれている。
 6) 地方での地域総行動をはじめとする取り組みも旺盛に展開された。
 地域総行動は、2月下旬を中心に44都道府県で実施され、自治体要請行動(339自治体)、労働局・労基署要請(84ヶ所)、経営団体(92団体)、労働団体、企業などへの要請(418団体)、集会(203ヶ所)、デモ、宣伝行動、学習会などが取り組まれている。また、3月下旬を中心に、北海道、大阪などで大規模な集会も開き、社会的なアピールを強めた。
 春闘と連続して取り組んだ第80回メーデーは、全国357ヶ所で22万人が参加して開催された。北海道、三重、兵庫、和歌山、徳島、香川、熊本で参加目標人員を増加させ、労働・生活相談を合わせて取り組んだ集会もあり、春闘の一環に位置づけて取り組まれた。

 7)  一方で情勢の厳しさもあって、克服すべき課題も明白になっている。
 要求討議や要求書提出など職場の日常活動や交渉力の格差が従来以上に結果に反映したことが、単産報告からも明らかになっている。その点で、複雑化する制度や多様化する労働者の要求などもふまえた学習の必要性が強調されている。
 また、企業の収益悪化の宣伝とも対になった労働者の分断攻撃に押され、職場のすべての労働者を視野に入れたたたかいを組織しきれない企業内労働運動の弱点が顕在化したとの単産報告もある。この点は、個別労使関係に埋没するあまりの統一闘争への結集の弱まりとしても報告されている。
 春闘の長期化や、要求提出、回答引き出しが年々遅れているとの報告や、春闘山場の行動結集の弱まりも報告されている。また、有額回答ではなく「文言回答」の広がりを報告する単産もある。
 いずれも、克服に向けて全労連全体の知恵と力を寄せ合うべき課題である。

 8) 人事院は、4月に入り、春闘結果から09年夏の民間一時金が大幅に低下する可能性があるとして、突然の一時金特別調査を強行した。その背景には、与党で強まっていた一時金削減法案の動きに過敏に反応したことがある。同時に見過ごせないのは、その後の調査結果でも明らかになったように、一時金を大幅に切り下げていたのは製造業大企業であり、人事院勧告制度を活用した年収賃金抑制強化の意図が見え隠れしていることである。
 全労連公務部会のたたかいとともに、民間単産が内需を冷え込ます調査・勧告反対の申し入れをおこなったが、結局人事院は、5月1日に、09年6月に支給が予定された夏季一時金2.15月のうちの0.2月分の凍結を求める勧告をおこなった。
 これを受けた政府は、この勧告の「完全実施」を5月15日に法案提出し、5月29日に、自民、公明、民主、国民新党の賛成で成立した。また、人事委員会の勧告なども受けて、35都道府県で国並みの一時金抑制策が取られることとなった。

(3) 09年最低賃金引き上げを求める取り組み
 中央最低賃金審議会に対し、1月14日に、公正任命を求めて委員推薦をおこなったことを皮切りに、全国32県の労働局に委員推薦をおこなった。しかし、すべての推薦が拒否され、連合独占の不公正任命が継続されることとなった。
 この結果への怒りも胸に、4月22日の中央行動での取り組みを皮切りに、09年最低賃金の大幅改定を求める取り組みをスタートさせた。
 08年改定の問題として指摘している生活保護との整合性の適正化や、地域間格差の縮小などを求め、毎月の統一行動を配置して取り組みを強めている。
 また、全労連青年部を中心とした最賃生活体験運動なども取り組まれている。

(4) 公契約運動について
 公契約条例制定を求める取り組みが大きく前進した。
 兵庫県尼崎市議会に公契約条例が議員提出された。この条例制定の取り組みを全労連としても支援した。また、条例案とかかわって出されていた質問主意書に対して政府は「(条例において)最低賃金を上回る賃金を支払わなくてはならないとすることは、最低賃金法上、問題となるものではない」、「落札者決定基準として、入札に参加する企業等の使用者が地域別最低賃金を上回る賃金を労働者に支払っているか否かを定めることは、最低賃金法上、問題となるものではない」などとする答弁をおこなった。条例制定運動を大きく励ます取り組みの到達点である。

2 働くルールの確立、雇用を守るたたかい

(1) 派遣切りなど雇用破壊に反対し、大企業の雇用責任を追及する雇用闘争
 1) 全労連は、08年8月20日、幹事会のもとに「生活危機突破闘争本部」を設置し、投機マネーによる原油、穀物高騰を要因とする物価高への対策強化を政府に迫るたたかいを強めた。政府への緊急申し入れをおこない、08年度第1次補正予算などへの反映を求めた。
 その後の金融危機や円高で、原油等の価格が下落する一方で、前述のような雇用破壊が進行する状況となった。そのことから、12月1日の常任幹事会で、雇用闘争本部の設置を確認し、緊急の取り組みをおこなってきた。
 また、3月には、東京地評など諸団体と共同で、「許すな!雇用・営業・暮らし破壊」緊急行動実行委員会を結成し、4月22日の緊急集会などを取り組んだ。

 2) アメリカの過剰消費に依存した過剰生産、大量輸出の態勢を取っていた自動車、電機などの製造業大企業は、10月以降、生産調整をはじめ、派遣労働者、期間工の大量解雇や雇止めを強行した。08年秋からの製造業大企業を中心とする「派遣切り」によって、09年6月までに20万7000人もの雇用が失われるとする調査結果を厚生労働省が明らかにしているが、多くが契約途中での契約解除であるにもかかわらず、なんらの保障もないまま一方的に解雇され、寮や社宅からの追い出しにあった者も少なくない。

 3) その中で、11月17日、いすゞ自動車は役員報酬や株主配当、内部留保には手を付けず12月26日付けで、1400名の派遣労働者、期間工全員を解雇するという計画を発表した。これに怒ったいすゞ・栃木工場の派遣労働者、期間工が、12月3日、JMIUに結集してたたかいに立ち上がり、翌週には同社・藤沢工場からも組合への加入者がでた。その後、大分キヤノン、広島、山口のマツダ、ソニー長崎などで働いていた派遣労働者などが労働組合に結集してたたかいに立ち上がりはじめた。
 労働者を機械の部品のように使い捨てる企業の身勝手に怒り、雇用の安定を求める労働者が自らたたかいに立ち上がり、労働組合に結集する事例は、08年12月以降6月末までに、36都道府県、210組織1303名にのぼった。非正規労働者が全労連に結集し、直接雇用などを求め、たたかいに立ち上がったことに激動の時代の変化があり、社会的な関心を高めた。

 4) 派遣切りにあった労働者を支援し、たたかいに連帯する取り組みも大きく前進した。東京・日比谷公園で取り組まれた「年越し派遣村」を契機に生活・労働相談の取り組みが全国各地に広がり、雇用、住宅、生活の保障を政府に迫り、制度改善を求める運動として発展している。
 全労連調査では、1月から7月の間に45都道府県・240ヶ所以上で、様々な形態で取り組まれ、10680人が労働相談員などで参加し、5738人が相談で訪れ、120人が労働組合に加入し、生活保護申請を742人、労働局申告を21件おこなわれている。
 短期間に全国運動として広がっただけではなく、市民団体などとのネットワークづくりや、定期的な取り組みとして定着するなど、質的な面でも大きく前進した取り組みとなっている。
 この取り組みにつながるものとして、人間らしく働きたいとの要求を掲げ4600名の青年が全国から結集した「10.5全国青年大集会2008」や、10月19日の「反貧困世直しイッキ大集会」、09年3月28日の「反貧困フェスタ」などがあり、これらの成功にも奮闘した。

 5) 全労連は、「非正規切り」反対の取り組みに積極的にかかわっただけでなく、労働相談体制などを強化するための「ワンコインカンパ」を呼びかけ、地方組織の取り組みを支援した。
 「ワンコインカンパ」は、最終時点で19単産16地方組織が取り組み、3332万円が寄せられた。これをもとに、34地方組織への支援をおこなった。
 また、大企業の派遣切り等をやめさせるため、現行法も活用した取り組み強化を呼びかけた。偽装請負や派遣期間制限違反などを労働局に告発する取り組みは、79件(253人)行われ、労働局からの派遣先への是正指導や「直接雇用」に言及した指導もおこなわれている。
 さらに3月30日の横浜地方裁判所での派遣契約途中での解雇を不当とする仮処分決定や、5月12日の期間工での契約残期間の休業扱いにかかわる宇都宮地方裁判所の仮処分決定などで、有期雇用契約の契約途中での解雇規制の強さを確定させてきた。
 日本トムソンが派遣社員を有期雇用という不当性はあるものの直接雇用を受け入れ、大分キヤノン、福山シャープ、長崎ソニーなどで金銭による勝利的解決が図られるなど、団体交渉を通じた到達点でも前進している。
 期間満了後の派遣先大企業の雇用責任を追及する裁判闘争も始まっており、たたかいで大企業をおいつめてきている。
 4月21日には、これらの取り組みを交流・激励するために「ストップ!派遣切り・雇用確保・たたかう労働者の交流会」を開催し、当事者を先頭に全国から204人が参加した。

 6) 全国的なたたかいで政府の対応も変化させてきた。
 厚生労働省などは、雇用促進住宅などを利用した住宅あっせん、労働金庫と連携した住宅資金貸し付け、雇用調整助成金の支給基準緩和や期間延長、職業訓練期間中の貸付制度の新設、日系人就労事業の新設、中途契約解除にかかわる派遣先企業の責任明確化などの通達整備などをおこなっている。また、政府が4月27日に決定した経済対策では、雇用保険が支給されない失業者を対象とする「人材育成・就職支援基金」が創設された。
 しかし一方で、09年3月31日に、労働者派遣と請負の区分にかかわる指導基準が改悪されるという逆流も生じており、引き続くたたかいの強化が求められている。

(2) 労働者派遣法の抜本改正を迫る取り組み
 1) 08年8月6日から労働政策審議会「労働力需給制度部会」が開催され、日雇い派遣禁止などの規制強化の論議が進められた。9月24日に同部会は、日雇い派遣を原則禁止する一方で、登録型派遣の規制や派遣先企業の責任には踏みこまない不十分な内容で労働者派遣法「改正」を答申した。国会解散が先送りされるもとで厚生労働省は、11月4日に法案を国会に提出した。
 労働者派遣法をめぐる政府の動きも踏まえて全労連は、「改正」内容の不十分さを批判する見解を明らかにするとともに、労働法制中央連絡会と共同した院内集会や、ナショナルセンターの枠を越えた共同を追求した。また、大企業で相次ぐ「派遣切り」の原因に労働者派遣法が在ることを訴える宣伝行動なども強めた。
 11月13日には、労働者派遣法抜本改正を求め、中央行動と連動させた国会議員要請行動に取りくんだ。12月4日には、労働者派遣法抜本改正の1点で、労働組合、市民団体、弁護士などとの共同で中央集会(日比谷野外音楽堂)を開催し、民主党、日本共産党、社民党、国民新党の野党がそろって出席して成功させ、「年越し派遣村」の成功や政府主導の派遣法改正論議を許さない状況を作り出す契機となった。

 2) 日本弁護士連合会は、11月に、政府の労働者派遣法改正法案の不十分さを指摘する会長声明を出し、12月には改正意見を明らかにした。それもふまえ、3月には独自で抜本改正を求める院内集会等を開催している。
 全労連も、労働法制中央連絡会や抜本改正を求める共同行動などとともに、3月、4月、5月に集会等を取り組み、通常国会中の抜本改正成立を求めた。
 しかし、景気後退も口実にした財界等の巻き返しもあり、野党共同での改正案論議が難航した。6月22日になって、民主党、社民党、国民新党の3党のみの労働者派遣法改正案が一致し、開会中の通常国会への法案提出を確認した。3党の改正案は、偽装請負などの違法行為をおこなった派遣先企業に直接雇用を義務付ける「みなし雇用」創設や、法の目的に派遣労働者保護を盛り込むなど、全労連の主張と一致する点もある。一方で、製造業派遣を全面禁止とせず、専門業務については容認して「しり抜け」規制になる懸念があること、日雇い派遣禁止や登録型派遣禁止についての規制が弱いことなどの不十分さをもっている。全労連は、これらの点の是正と労働者派遣法抜本改正の実現をもとめる幹事会見解を明らかにし、総選挙後も視野に入れた取り組みを強めた。
 なお、労働者派遣法の抜本改正をはじめ、雇用の安定と最低生活保障の制度改善をせまる「働くルール署名」は24万筆強にとどまり、組合員レベルの運動の広がりの不十分さも明らかになっている。

(3) その他の労働法制改正を求める取り組み
 12月5日、衆議院で、残業代割増率について、月45時間までは25%以上、45時間から60時間までは25%以上引き上げるよう労使で協議、月60時間以上は50%とする労働基準法改正案が成立し、2009年4月から施行されることとなった。このこともふまえた協約改定の取り組みが春闘期にも進んだ。
 12月25日に、労働政策審議会雇用均等部会は、育児・介護休業制度の改正を求める建議をおこなった。これを受けて、通常国会に法案が提出され、不利益取り扱いの厳格などの修正のうえ6月24日に成立した。この間、より良い制度改正をもとめる署名行動なども背景に、政府要求を強め、国会闘争を強化した。
 雇用状況が悪化するもとで、雇用保険法の加入期間制限や給付期間を延長する法改正が緊急におこなわれ、3月31日から施行された。この論議過程で、雇用保険制度の不十分さが改めて問題視されてきている。

(4) 労働基本権拡充の取り組み
 1) 11月16日、政府は、第30期中央労働委員会労働委員(特定独法担当)に労働委員会民主化対策会議で推薦していた淀房子氏を任命した。しかし、同じく推薦していた水久保文明氏については任命をおこなわなかった。長年のたたかいが反映し、偏向任命の風穴はあけたものの、民間担当委員については連合独占を続けるという結果となった。この結果もふまえ、11月18日には、労働委員会民主化対策会議の総会が開催され、新たな段階でのたたかいの方向を確認した。また、12月10日、第28期労働委員の偏向任命にかかわって争った裁判で、最高裁判所は上告不受理の不当な決定を通知してきた。
 09年4月1日には、滋賀県で、滋賀県労連が推薦した宮武真知子氏が、労働委員会委員に任命された。

 2) 10月14日、公務員制度改革推進本部に設けられた労使関係検討委員会の委員について、全労連傘下の国公労連、自治労連を排除するという不当な対応がおこなわれた。抗議を強めるとともに、意見反映の方策等について申し入れをおこなった。また、この点も含めた公務員制度改革の現状についてILOに追加情報を提出したが、ILOは6月の理事会で日本政府の対応の問題性を指摘する結社の自由委員会勧告を了承している。
 なお、09年6月から、労使関係検討委員会のもとにおかれたワーキンググループで、全労連公務員制度改革闘争本部からのヒアリングが常時おこなわれるという変化が生まれた。
 3月31日、政府は人事院の労働基本権代償機能を見直すことなどを内容とする国家公務員法改正法案を国会に提出した。09年内に公務員の労働基本権問題の結論を出すことは前提となっているが、その内容が未確定な段階での労働基本権論議をなし崩しにする法案提出であり、全労連や関係単産との協議も不十分なもとでの提出強行に抗議を強めた。
 なお、法案は、実質審議に入らないまま国会終盤を迎えた。

 3) 「教員の地位勧告」に基づき08年4月に来日したILO・ユネスコ共同調査団の中間報告・勧告が12月に公表され、教員評価にかかわっての交渉の不十分さや教員評価の目的と運用実態などについて厳しい指摘がおこなわれた。これも受けた、国際シンポジウムが6月13日に開催された。
 障害者自立支援法などの障害者雇用政策がILO159号条約違反だとして福祉保育労などが提訴していた案件で、09年3月、ILO理事会は、障害者の労働者性などに対する申し立ての趣旨を認める特別委員会の報告を承認し、引き続き、日本政府からの情報提供などを求める決定をおこなった。最低賃金制度の適用も含めた労働・雇用分野での障害者差別撤廃を求めている国連・障害者権利条約の批准も含め、たたかいは新たな段階に入ってきた。

 4) 10月24日、「今こそ政治決断を!JR採用差別問題の解決要求実現をめざす10・24中央集会」が開催され、全国から12000人が参加して成功した。なお、4者4団体共催の集会でははじめて、全労連議長が連帯挨拶をおこなった。
 JR1047名不採用事件から23年目を迎えるなかで、公明党の「対応委員会」設置をはじめ「2・16国鉄集会」に自民党をのぞく全政党代表が参加するなど早期解決にむけた動きも進んできている。3月25日の「鉄建公団訴訟控訴審・東京高裁判決」では、あらためて不当労働行為を認定する判決が出され、22年にわたるたたかいの正しさを証明した。
 こうした状況をふまえ、国鉄闘争本部は国鉄闘争をめぐる現局面が新たな政治解決にむけた段階にあるとして、四者四団体を軸に早期解決にむけた取り組みを強めてきている。
 NTT闘争とかかわって、10月31日に中央労働委員会は、NTT西日本の誠実団交義務違反を認定し、救済命令を下した。さらに、1月15日、大阪高裁は、NTT西日本がおこなった遠隔地配置転換を違法とする勝利判決を下した。なお5月には、不当配転の違法性を争っていた「東京裁判」の上告が棄却されるという不当な判断が行われた。
 11月9日、徳島日亜化学に偽装請負で働かされていた労働者が直接雇用を求めているたたかいの支援集会を徳島県阿南市で開催した。
 秋と春の争議総行動を取り組みすべての争議解決をめざした。その中で、7月には東部スポーツでの解雇撤回闘争で11月21日に争議総行動を取り組むなど、すべての争議解決をめざして取り組みを強めた。このような中で、7月には、東部スポーツで解雇され正社員復帰を求めた訴訟で、最高裁判所が会社側の上告を棄却し、地位確認判決などを確定させた。

3 国民共同のたたかい

 1) 小泉「構造改革」の攻撃の焦点でも合った社会保障費削減とかかわって、医療、介護、生活保護などが連続して改悪され、生活苦に拍車を欠ける状況となってきたことから、社会保障充実を求める取り組みが広範に展開された。
 08年秋には、後期高齢者医療制度廃止法案の早期成立を求める取り組みを強めた。
 廃止法案成立を求める緊急の国会請願署名を1000万筆集約し、国会に提出した。また、法案成立を求め、10月1日、12月10日に国会行動を取り組んだ。10月16日にこの課題も掲げて取り組まれた年金者組合の「年金一揆」の取り組みもあり、11月19日に衆議院で廃止法案審議がおこなわれたが採決にはいたらず、臨時国会最終盤でも継続審議となった。
 医療従事者の確保や介護労働者の労働条件引き上げを求め、連続した取り組みを進めた。そのような中で、3月には、介護報酬引き上げを求める「介護労働者の人材確保に関する特別措置法」が野党4党で共同提出され、これも受けて政府は、09年補正予算で介護福祉士などの給与改定への助成金措置を講じた。
 相次ぐ妊産婦のたらい回しによる事故など、産科・周産期医療体制の不備があきらかになり、妊産婦健診の無料化や出産一時金の増額などをもとめて、厚生労働省交渉などにとりくみ、妊産婦健診14回無料化や出産一時金増額を勝ち取った。

 2) 第23回定期大会決定にもとづいて、8月から「大口排出源に対する削減義務化等実効ある温暖化対策を求める国民署名」運動を開始した。署名集約は、7万筆を超え、この間2回にわたる紹介議員要請の国会行動を設定し提出してきた。学習素材として9月には、DVD「地球温暖化をとめて」(公害・地球懇作成、映演労連協力)を、1月には全労連パンフを発行し単産・地方組織に署名運動前進を促した。
 この間支援を強めてきた公害被害者の救済活動では、6月の第34回全国公害被害者全国統一行動に全面的に協力した。
 さらに、再び社会問題となってきた水俣病被害者の救済を求める活動では、水俣病被害者を切り捨て、加害企業チッソの免責を行う「水俣病特別措置法案」をめぐるたたかいが6月下旬から争点となった。自民・公明の与党と民主党が密室協議し「水俣病特別措置法」合意となったことを受け、被害者の国会座り込みを中心とする国会闘争が展開され、全労連としても連日、激励・支援の行動に取り組んだ。

 3) BSE問題や汚染米事件など国民の食と健康を脅かす事件が社会問題となる中で、国際的にも食糧主権が注目されている。この1年、これまでの政府の「農政改革」に対する一層の批判が上がっている。全国食健連は、「食料自給率の向上」を中心とする全国署名運動を展開してきた。全労連でも、同署名運動に参加し3万筆を超える署名を集約し国会提出してきた。また、会社に農地を開放する「農地法改悪法案」の提出に伴って、緊急の団体署名運動にも取り組んだ。

4 憲法改悪に反対する取り組み

 1) 08年9月に召集された臨時国会冒頭で、新テロ特措法の再延長問題が最重点課題となった。早期解散の思惑から早期成立を狙う与党の姿勢を、民主党が当初容認したこともあって、10月21日には衆議院を通過した。
  その後の参議院審議の過程で、自衛隊航空幕僚長の閣議決定にも反する「侵略戦争美化」論文問題や自衛隊幹部教育の偏向問題が浮上した。自衛隊の海外派兵と符節を合わせ、自衛官の士気高揚を目的とした「歴史観、国家観」教育がおこなわれていたことが明らかになり、法案審議にも影響を与えたが、12月12日に衆議院で再議決された。
 また、審議の過程で、アフガニスタンやソマリア沖への自衛隊派遣を政府が狙っていること明らかになっている。
 これらの状況を見極めつつ、国会行動や宣伝行動などを強化した。
 2) 政府は3月14日、自衛隊法に基づき、海上自衛隊艦船のソマリア沖への派遣を強行した。「海賊行為」という私的な暴力行為への対処を軍隊である自衛隊が行うことの法的不備を補うために、海上保安庁職員が同乗するという異例な形での出港であった。その後、航空自衛隊や陸上自衛隊も現地派遣するという暴挙を政府は繰り返している。
 その前日、3月13日、海賊対策を口実に、随時、自衛隊を海外に派遣できるようにする「海賊対処」法案を閣議決定し、国会に上程した。他国の軍隊とも共同した武力行使も想定され、解釈改憲をさらに進める危険な内容の法案であることから、署名や国会行動を強めた。しかし、政局がらみの状況が続くもとで、十分な審議もおこなわれないまま、4月24日に衆議院で可決され、6月19日に参議院が否決した後再議決され、成立が強行された。

 3) 2月17日、訪日したクリントン国務長官との間で、日本政府は「在沖縄海兵隊のグアム移転にかかわる協定」を締結し、グアムでの米軍基地建設に61億ドルを拠出するとともに、名護・辺野古沖への新基地建設をワンパッケージとする極めて不当な内容であった。
 オバマ政権となっても、在日米軍基地強化、日米軍事同盟強化の路線に変化はないことが明らかになった。
 グアム移転協定は沖縄の基地負担軽減策にならないことが短時間の審議でも明らかになったが、4月12日に衆議院で採決が強行され、5月12日には参議院で否決されたが、衆議院の議決優先の憲法規定で、同日成立した。
 日米関係をめぐっては、60年安保の交渉時に、日本への核兵器持込みにかかわる密約を歴代の大臣が引き継いでいたことを複数の元外務官僚が証言し、政治課題となっている。不透明な軍事同盟のもとで、巨額な国民の血税が米軍基地に投入されることへの批判と監視の強化が求められている。

 4) 6月12日には、憲法国民投票法の施行まで1年を切ったもとで、改憲案論議をおこなう憲法審査会の規程が衆議院で強行可決された。このことにみられるように、明文改憲をねらう動きはいささかも緩んでいない。
 このような状況のもとで単産、地方組織は、憲法共同センターにも結集しながら、憲法署名の500万目標達成にむけ、粘り強く取り組んでいる。
 大阪・西淀川で住民過半数が達成されたが、それは署名推進の意思統一を重視し、延べ52回の各戸訪問の結果である。
 単産では、生協労連が「活憲月間」や憲法闘争交流集会などで署名推進を図り、全教の地方組織では1000回に達する「6.9行動」を定点で続け、自治労連は09年5月に憲法キャラバンを取り組むなど、実情に応じた創意ある取り組みが継続され、署名活動のマンネリ化を避ける努力がおこなわれている。
 全労連女性部は、100筆チャレンジャーの取り組みに引き続き「9条エコ風呂敷」をひろめ、署名・宣伝行動を全国的に展開した。
 このような結果、署名集約は、08年大会時から約70万筆増加の275万5千筆となり(7月15日時点)、目標の5割に到達した。
 なお、草の根の取り組みを進めている「9条の会」は全国で7443に達している。憲法共同センターは準備会も含め344ヶ所で結成されている。
 その憲法共同センターは、6月6日に、8回目となる全国交流集会を開催し、177名の参加で交流と取り組み強化を意思統一した。

 5) 08年原水爆禁止世界大会の確認も受けて開始された、「新・核兵器廃絶署名」を500万筆目標で開始した。この署名については、全労連の国際交流等を通じて、インド、カナダ、アメリカなどにも広がっている。
 また、 「2008年日本平和大会IN神奈川」(11月14日〜16日)、「3.1ビキニデー」、「5.3憲法集会」、09年原水爆禁止・国民平和大行進などの成功にむけ各地で奮闘した。
 このような中で、憲法の精神に則った教育をめざす基盤としての「教育子育て9条の会」の呼びかけが10月16日におこなわれるなど、前進的な動きも出ている。

5 政治の民主化をめざす取り組み

 解散・総選挙を求め、2008年9月、2009年6月に幹事会として総選挙闘争方針を確立し要求実現の立場から政治闘争を重視し取り組んだ。
 この間、山口、富山、新潟、岐阜、山形、千葉、兵庫県の知事選挙や、名古屋市、さいたま市などの政令指定都市での市長選挙、座間市、横須賀市など米軍再編とのかかわりで、行政に大きく影響する自治体首長選挙で、当該地方組織の推薦決定もふまえながら、取り組み支援をおこなった。山形県知事選挙では、吉村みえこ氏が当選を果たした。

6 全労連の国際活動

 世界経済と雇用の危機が急速に深刻化する中、二国間交流を中心に国際活動を展開した。中華全国総工会、ベトナム労働組合総連合との定期交流を継続したほか、スペイン労働者委員会連合大会、カナダ・ケベック労働組合センター大会などに代表を派遣し交流した。
 政策課題では、公務員制度改革にかかわって米・カナダ・メキシコ・日本の四ヶ国交流会議と併せ、米国の公務員制度の調査を実施した。また世界労連のアジア太平洋地域セミナーに参加し、アジア地域の加盟・友好組合、特にネパールの組織との交流も深めた。ILO総会に代表を派遣するとともに、国際労働基準の監視機構への情報提供や加盟組織からの情報提供に協力した。
 2010年5月に行われるNPT再検討会議に向け、核兵器のない世界を目指す労働組合の共同を強める活動を重視した。ベトナム、インド、パキスタン、カナダ、アメリカの友好労組が参加した世界平和労組会議をはじめ、友好組合に「核兵器のない世界を」新国際署名への協力を要請した。

II 労働組合の共同と組織拡大・強化

1 「中期計画」具体化の取り組み

(1) 08年秋、09年春の組織拡大月間
 1) 08年秋の組織拡大月間を11〜12月に設定し、9月18日〜19日の「組織拡大・強化対策会議」で月間に向けた意思統一をはかり、単産・地方で拡大目標、推進体制などを確立して取り組んできた。
 月間では、多くの単産・地方組織が貴重な成果を上げた。月間を中心とした7月〜12月の拡大運動の到達点(1月19日集約)は、単産が12,137人(前年比87%増)、地方が20,237人(前年比76%増)、全労連全体で大きな前進をつくることができた。
 組織拡大の特徴は、単産では8,749人(全体の72%)、地方で14,340人(同71%)と、組織内の拡大が大きく前進したことである。新規確立・加盟組合は、単産で95組織1,690人、地方で56組織1,185人と、この面でも前進をつくっている。この前進は、単産・地方とも、パート・アルバイト、非常勤、派遣・請負などの非正規労働者の組織化に踏み出していることが成果として結実した。

 2) 09春闘における組織拡大推進月間は、3月〜5月の3ヶ月間とし、春闘での要求実現のたたかいと、急速に悪化する雇用情勢に見合った組織拡大・強化の取り組みを結合させることとした。
 2 月12 日に単産・地方組織担当者会議を開催し、月間での単産・地方組織の取り組みの相互交流をはかった。また、春の月間を組織的に推進するために、3月に組織強化拡大推進委員会を発足させた。
 1〜6月までの到達点は、単産の新規結成が140組織6,916人、組織内拡大19,988人、合計新組合員26,917人。地方組織の新規結成が43組織833人、組織内拡大14,718人、合計新組合員15,569人の集約となっている。

 3) この1年間(08年7月〜09年6月)の組織拡大は、単産・地方組織での意欲的なとりくみによって、単産は42659人(前期15445、後期27214)、地方が41007人(前期24524、後期16483)、全体で83666人(6月30日現在〜組織拡大推進委員会7月9日)と大きな前進をつくることができた。新規確立・加盟組合は、単産235組織3585人(前期2355、後期1230)、地方で99組織2253人(前期833人、後期1420人)の計5830人を数えている。
 このような到達点を作り出したとりくみの特徴点は、(1)第23回定期大会で確認した「組織拡大月間を中心に、全組合員参加の組織拡大運動の展開めざす」との方針にもとづいて、職場・地域の切実な要求をかかげ、10〜12月の秋の拡大月間、3〜5月の春の月間を中心に組織の拡大・強化に結び付けてきたこと、(2)「非正規センター」を確立し、全国交流集会(5月23〜24日)を成功させ、派遣切りなどとたたかう非正規労働者の組織化をすべての組織で重視してきたこと、(3)「全国いっせい労働相談ホットライン」(2月20日〜21日)などを設定し「雇い止め、解雇」に焦点を定めた相談と組織化を重視したこと、などである。
 このような取り組みが全労連全体への信頼を高め、単産、地方組織での組織拡大運動にも好影響を及ぼした。

(2) 労働相談などを契機とする日常的な組織拡大の状況
 労働相談では、12月12日を中心に実施した全労連の「全国一斉労働相談ホットライン」に全国で前年の2.5倍となる692件の労働相談が寄せられたことも契機に、12月以降、各単産、地方組織での労働相談件数が急増した。2月20〜21日に実施した全労連の「全国一斉労働相談ホットライン」では、全国で828件の労働相談が寄せられた(昨年3月は110件で過去最高を更新)。1月から6月の件数は前年比で2倍を超えるところが続出している。
 1〜6月の6か月間で、労働相談を通じて組織化した組合員は2,002人(35地方組織)と前年1年間の1,931人を大幅に上回る拡大が報告されている。
 この時期の相談の6割弱が派遣労働者など非正規労働者であり、解雇相談が3割強を占めている。このことからもいえるように、労働相談は単なる駆け込み寺ではなく、非正規労働者組織化の重要なツールとなっている。
 組織拡大推進費も活用して、労働相談体制を維持、強化し、オルグ要請をすすめていることとも合致した状況となっている。

(3)  単産一般労組、ローカルユニオンでの組織化の取り組み
 昨年7月以降の組織化キャンペーンなどを通じて建交労、JMIU、全労連・全国一般の三単産だけを見ても、新規結成および既存組織への加入者は346組織5,164人となっている。
 ローカルユニオンは、09年5月末現在、全国41都道府県135ユニオン1万355人の組合員を組織し、一昨年5月より4,397人、昨年5月末より3,739人も増え、1万人の大台を突破した。「回転ドア」といわれるほど組合員の出入りが激しく、組織への定着率が低い特徴があるローカルユニオンで、組織の倍加に近い純増を達成していることに、直近の全労連運動の特徴が現れている。同時に、このような急激な拡大は、ローカルユニオンを支える地方組織、地域組織の体制整備の必要性などをあらためて浮上させている。

2 非正規労働者の組織化の取り組み

 全労連は、パート・臨時労組連絡会、ヘルパー・ネット、派遣・請負労働者連絡会、外国人労働者問題連絡会の4連絡会(ネット)の運動を束ね、「非正規雇用労働者全国センター」を発足させ、非正規の組織拡大を最重点にすえた。
 昨秋来、製造業大企業での非正規労働者きりの嵐が吹き荒れる中で、非正規労働者の組織化とたたかいが前進したことは、非正規労働者の組織化を重点課題とし、単産と地方で構成する全労連運動の特質と優位性の発揮をめざしてきたことの成果でもある。
 なお、5月23日(土)から24日(日)にかけて京都で行われた「第17回パート派遣など非正規ではたらくなかまの全国交流集会」は、非正規雇用労働者全国センター主催で開催し、全国から500名を超える非正規のなかまが参加して交流した。

3 ナショナルセンターとしての機能強化

(1) 組織拡大推進費を活用した取り組み
 組織拡大推進費を活用して重点的な取り組みを進めるとした三つの課題(教育、地方組織、非正規労働者)の内、非正規労働者の組織化については、先述したように、労働相談の拡充や宣伝行動などに集中して活用した。
 地方組織対策については、5000人未満組織対策の具体化にむけ関係地方組織や単産との調整を進めてきている。また、急激な非正規切りのもとで緊急の対応が求められた栃木県労連、岐阜県労連、大分県労連には、全労連からの役員派遣や短期専従者配置などの機動的な対応をおこない、組織化運動を支援した。
 教育学習委員会を設け、従来からの組織拡大オルグ要請講座(ブロック開催)を継続して開催し、延べ400人を超えて受講した。幹部セミナー、青年教育については、その位置づけや労働者教育協会との調整などを論議し、基本のカリキュラム整備の論議を進め、09年8月(幹部セミナー)、青年教育(09年10月)の開催準備を進めている。

(2) 全労連の共済事業実施の準備について
 第23回大会の決定もふまえて「全労連・共済検討委員会」を設け、09年1月までに5回の検討委員会を開催し、「全労連共済(仮称)」の枠組みや実施事業などの検討をおこなった。その結果、(1)全労連が、労働組合の福祉事業の中核をなす共済をその活動に明確に位置付けることで、労働者の団結権をより豊かに発展させる可能性を開くこと、(2)非正規労働者、未組織労働者の組織化を促進する可能性を大きくすること、(3)全労連のすべての組合員を対象とする共済活動に発展させることは、助け合いの基盤を安定させること、(4)保険業法改悪による自主共済への不当な攻撃とたたかうこと、の4点の意義を確認し、全労連に加盟するすべての組合員を対象に、労働共済及び労働共済連の活動内容を継承するとの結論を得て、第43回評議員会に予備的提案をおこなった。
 その後、3月の幹事会で、全労連共済の枠組みと準備会発足を確認し、5月の幹事会で具体的な規約改正内容や移行スケジュールなどを確認して組織討議を呼びかけ、具体化をはかってきた。

以 上