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【談話】2019年地域別最低賃金の改定答申について

2019年9月3日
全国労働組合総連合(全労連)
事務局長  野 村  幸 裕

 8月下旬、すべての地方で、2019年の地域別最低賃金の改定答申に対する意見についての異議審議が終了し、2019年10月からの地域別最低賃金が確定した。
 今年の最低賃金審議の最大の特徴は、骨太方針でさえ指摘した「地域間格差」をいかに解消するかであった。7月31日の第54回中央最低賃金審議会で確認されたAランクの28円、Bランク27円、C・Dランクが26円と、地域間の実額差を2円拡大(昨年は4円)することを容認する目安答申について、各地方最低賃金審議会では、Bランクの兵庫(1/11)、Cランクの福岡、新潟、和歌山、山口、徳島(5/14:35.7%)、Dランクの13県(13/16:81.3%)と、合計19県(38.3%)が中央最低賃金審議会の目安に上乗せする答申を行った(昨年は23県:48.9%)。なかでもDランクの多くは、2年連続で上乗せの答申を行った。なかでも全国単独最下位だった鹿児島では、Aランクの28円を1円上回る29円引き上げを答申した。そのため、最高と最低の実額差224円が223円へ1円縮小した。これは2007年の最低賃金法改正後で初めてである。
 全労連は、一貫して「地域間格差の解消」を求めて運動に取り組み、社会的合意を広げてきた。地方最低賃金審議会での意見陳述などの運動とあわせて、最低賃金を低く抑えられてきた地方の怒りや広がり続ける地域間格差に対する苛立ち、厚生労働省と中央最低賃金審議会に対する不信感などが結び付いて、上乗せ答申を相次いで勝ち取った。中央最低賃金審議会は、地域経済を指数化し、それを根拠に地方を4ランクに分け、ランクごとの目安に沿って改定額を決める現行の審議方法、「加重平均」が日本の最低賃金の水準であるように見せ、低い地方への注目をそらせる手法、地域間格差は「あって当たり前」とする基本姿勢などで、地域間格差の拡大を続けてきた。しかし、現行制度が限界にきていることは明らかだ。
 地域間格差の拡大が、労働人口の都市部への集中に拍車をかけ、地域の過疎化・高齢化をすすめ、地域経済の深刻な疲弊を招いている。さらに、日本の低賃金の温床にもなっている。さらに業者間の公正競争の阻害要因にもなりうるという指摘も出されている。厚生労働省は、地方の願いに真摯に応え、地域間格差を解消する最低賃金制度に変える必要がある。
 なお、各委員の奮闘もあって東京と神奈川が初めて1000円を超えた。地域最低賃金が1000円を超えたことは評価するが、「時給1000円」では、人間らしい暮らしはできず、更なる大幅な引き上げが必要だ。

 全労連は、マーケットバスケット方式による最低生計費試算調査を全国各地で順次実施している。その結果、全国どこでも“健康で文化的な最低限のくらし”を保障する最低生計費には大きな違いはなく、25歳単身者が自立して暮らすには時給1500円が必要なことが明らかになった。生計費に地域差がない以上、全国一律最低賃金制こそがふさわしい制度である。
 全労連は、1989年の結成時に定めた行動綱領で「全国一律最低賃金制の実現」を掲げて、さまざまな運動を続け、世論に訴え、社会的合意を拡げてきた。骨太方針が「最低賃金のあり方について引き続き検討する」と明記したことなどで、厚生労働省は最低賃金制度研究官を配置するなどの動きを見せている。
 最低賃金が、「国民経済の健全な発展に寄与する」とする目的を実現するために、全労連は、安倍政権が続ける財界・大企業優先の経済政策を、労働者のくらしを底上げする国民本位の経済政策に転換し、中小企業支援の拡充も含めて、人間らしい最低限度のくらしを保障する「全国一律最低賃金制」の確立に向けて、国民的な合意づくりをすすめ、組織の総力を上げて早期に実現する運動を推進していく。

以 上

 
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